2015年03月18日
イギリスのアジア投資銀参加で日本孤立化?――キッシンジャー訪中は如何なるシグナルか?(遠藤誉氏)
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日本政策学校の「田村塾」が開講されました。 塾生が40人を突破しました!ありがとうございます。
中国が主導するアジア投資銀にイギリスが参加を表明し、フランスも続く見込みで日米は厳しい状況に。ウィリアム王子訪中はチャールズ皇太子と英首相のダライラマ会見の尻拭い。さらにキッシンジャー訪中が続く。
◆イギリスが中国に対して持つ弱み――ダライ・ラマをめぐる中英間相克
3月14日付本コラム国際金融センターをアメリカから中国――習近平政権のもう一つの狙いの内容と多少重なるが、イギリスが「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に参加表明せざるを得ないところに追い込まれた理由を、もう一度明確に位置付けたい。
イギリスのチャールズ皇太子はチベット仏教のダライ・ラマ14世を「法王」と位置づけて尊重し、2008年3月に起きたチベット騒乱を受けて、同年8月に開催された北京オリンピックには出席しない旨、「フリー・チベット運動」に書簡を送付したことさえある。
フリー・チベット運動は、中国のチベット自治区における人権弾圧などに抗議して中国政府を非難している団体だが、チャールズ皇太子はこの団体の支援者だった。
2012年5月〜6月、中国政府の猛反対を押し切ってイギリスのキャメロン首相とダライ・ラマ14世が会談し、チャールズ皇太子もダライラマを自宅に招待して歓待した。
これにより英中関係は最悪の事態になる。
まだ胡錦濤政権だった中国政府は、内政干渉だと激しくイギリスを非難して抗議した。そのため中英間の経済交流にも悪影響が及び、キャメロン首相は人権問題と経済の間で苦しんだ。それでも謝罪を求める中国政府側に対して、イギリスは「誰が誰とどこで会うかは、自分で決める権利がある」として、突っぱねてはみたものの、中国からの投資は急減していった。リーマン・ショック以降、貧富の格差が増大して経済破綻の危機に喘(あえ)いでいたイギリスにとっては、チャイナ・マネーは魅力的だったにちがいない。
そこで2013年12月2日、キャメロン首相はついに折れて中国訪問に漕ぎ着けた。
「イギリスは西側世界における最強の中国支持国になるだろう」
「イギリスは中国の主権と領土保全を尊重し、チベットが中国の一部であることを承認しており、これまで通りチベット独立は認めない」
など、キャメロン首相は中国を礼賛し屈服。
◆イギリスをジリジリと追い込む習近平の戦略
しかしそれでもなお、習近平はイギリスを追い込む戦略の手を緩めなかった。
2014年3月、オランダのハーグで開かれた核セキュリティ・サミット(NSS)閉幕後、フランスやドイツ、ベルギーなどを歴訪した習近平国家主席は、このヨーロッパ歴訪の旅から「イギリスを外した!」のである。
目標はAIIBにイギリスを参加させて、G7の切り崩しを図ることになる。そして日本が主導している「アジア開発銀行」を骨抜きにして中国がアジアの覇者になることだ。中国は早くから、G7(G8)などは虚構だと鼻であしらっていた。
李克強首相の姿がウインザー城に現れ、優雅なエリザベス女王と握手したのは、その3カ月後の2014年6月18日のことである。
中国の「上から目線」対英外交が始まった。
エリザベス女王に会わせないのなら、「何なら訪英を取り消しましょうか?」と言ったとされている。
こうして英中経済交流に関する数々の協定が結ばれた。
だから2014年の9月末から香港デモ「雨傘革命」が起きると、英上院(元王室系貴族院)のパウウェル卿(薄熙来の息子の下後見人。2014年12月6日本コラム英上院パウウェル卿、香港デモで中国擁護参照)を使って中国政府を擁護させることなど、中国にとってはたやすいわざだったのである。パウウェル卿は香港デモが不当であることとともに、英中貿易交流の重要性を強調した。
そして極めつけは今年3月1日の、ウィリアム王子訪中だ。
その背後には、このたびのイギリスのAIIB参加を取り付ける、中国の権謀術数があった。
G7の大国の一つであるイギリスがAIIB創設メンバーになれば、G7は実態を持たない虚構と化す。アメリカがロシアを外させたところで、イギリスが中国主導型のAIIBに参画すれば、フランスも続くにちがいない。
◆キッシンジャー・習近平会談――日米主導型の金融界に激震か?
G7諸国が相次いでAIIBの宗主国になることは、日米にとっては手痛い話だ。特にAIIBと拮抗するアジア開発銀行の歴代総裁を輩出してきた日本にとっては、孤立化を招きかねない事態が待っている可能性がある。
なぜならあの「忍者外交」(1971年)で日本の頭越しに中国に接近したことのあるキッシンジャー元国務長官が、3月17日、人民大会堂で習近平と会談した。
キッシンジャーは当時の周恩来首相と機密会談を行い、日米同盟は日本の軍事暴走を食い止めることになり、米軍が日本に駐在していないと日本がいつ暴走するか分からないためだと、周恩来に行っているような人物だ。習近平が国家主席だった時代(2007年〜2012年)から、習近平とは非常に緊密な仲だ。
よもや、あの忍者外交のときのようにアメリカが掌を返すようなことはあるまいが、しかし油断は禁物。
麻生外務大臣はAIIBには透明性がないので(世界はついていかないだろう)という趣旨の発言をし、筆者も言論の自由のないところに国際金融センターは似合わないと書いたが、しかし「チャイナ・マネーが民主を買った」香港の例を考えると、楽観視はできない。
AIIB創設メンバー参加申請の締め切りは、今月一杯だ。
中国の戦略とチャイナ・マネーが勝つのか、「自由と民主」が勝つのか、人類の「試験」が始まっている。
遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
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中国が主導するアジア投資銀にイギリスが参加を表明し、フランスも続く見込みで日米は厳しい状況に。ウィリアム王子訪中はチャールズ皇太子と英首相のダライラマ会見の尻拭い。さらにキッシンジャー訪中が続く。
◆イギリスが中国に対して持つ弱み――ダライ・ラマをめぐる中英間相克
3月14日付本コラム国際金融センターをアメリカから中国――習近平政権のもう一つの狙いの内容と多少重なるが、イギリスが「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に参加表明せざるを得ないところに追い込まれた理由を、もう一度明確に位置付けたい。
イギリスのチャールズ皇太子はチベット仏教のダライ・ラマ14世を「法王」と位置づけて尊重し、2008年3月に起きたチベット騒乱を受けて、同年8月に開催された北京オリンピックには出席しない旨、「フリー・チベット運動」に書簡を送付したことさえある。
フリー・チベット運動は、中国のチベット自治区における人権弾圧などに抗議して中国政府を非難している団体だが、チャールズ皇太子はこの団体の支援者だった。
2012年5月〜6月、中国政府の猛反対を押し切ってイギリスのキャメロン首相とダライ・ラマ14世が会談し、チャールズ皇太子もダライラマを自宅に招待して歓待した。
これにより英中関係は最悪の事態になる。
まだ胡錦濤政権だった中国政府は、内政干渉だと激しくイギリスを非難して抗議した。そのため中英間の経済交流にも悪影響が及び、キャメロン首相は人権問題と経済の間で苦しんだ。それでも謝罪を求める中国政府側に対して、イギリスは「誰が誰とどこで会うかは、自分で決める権利がある」として、突っぱねてはみたものの、中国からの投資は急減していった。リーマン・ショック以降、貧富の格差が増大して経済破綻の危機に喘(あえ)いでいたイギリスにとっては、チャイナ・マネーは魅力的だったにちがいない。
そこで2013年12月2日、キャメロン首相はついに折れて中国訪問に漕ぎ着けた。
「イギリスは西側世界における最強の中国支持国になるだろう」
「イギリスは中国の主権と領土保全を尊重し、チベットが中国の一部であることを承認しており、これまで通りチベット独立は認めない」
など、キャメロン首相は中国を礼賛し屈服。
◆イギリスをジリジリと追い込む習近平の戦略
しかしそれでもなお、習近平はイギリスを追い込む戦略の手を緩めなかった。
2014年3月、オランダのハーグで開かれた核セキュリティ・サミット(NSS)閉幕後、フランスやドイツ、ベルギーなどを歴訪した習近平国家主席は、このヨーロッパ歴訪の旅から「イギリスを外した!」のである。
目標はAIIBにイギリスを参加させて、G7の切り崩しを図ることになる。そして日本が主導している「アジア開発銀行」を骨抜きにして中国がアジアの覇者になることだ。中国は早くから、G7(G8)などは虚構だと鼻であしらっていた。
李克強首相の姿がウインザー城に現れ、優雅なエリザベス女王と握手したのは、その3カ月後の2014年6月18日のことである。
中国の「上から目線」対英外交が始まった。
エリザベス女王に会わせないのなら、「何なら訪英を取り消しましょうか?」と言ったとされている。
こうして英中経済交流に関する数々の協定が結ばれた。
だから2014年の9月末から香港デモ「雨傘革命」が起きると、英上院(元王室系貴族院)のパウウェル卿(薄熙来の息子の下後見人。2014年12月6日本コラム英上院パウウェル卿、香港デモで中国擁護参照)を使って中国政府を擁護させることなど、中国にとってはたやすいわざだったのである。パウウェル卿は香港デモが不当であることとともに、英中貿易交流の重要性を強調した。
そして極めつけは今年3月1日の、ウィリアム王子訪中だ。
その背後には、このたびのイギリスのAIIB参加を取り付ける、中国の権謀術数があった。
G7の大国の一つであるイギリスがAIIB創設メンバーになれば、G7は実態を持たない虚構と化す。アメリカがロシアを外させたところで、イギリスが中国主導型のAIIBに参画すれば、フランスも続くにちがいない。
◆キッシンジャー・習近平会談――日米主導型の金融界に激震か?
G7諸国が相次いでAIIBの宗主国になることは、日米にとっては手痛い話だ。特にAIIBと拮抗するアジア開発銀行の歴代総裁を輩出してきた日本にとっては、孤立化を招きかねない事態が待っている可能性がある。
なぜならあの「忍者外交」(1971年)で日本の頭越しに中国に接近したことのあるキッシンジャー元国務長官が、3月17日、人民大会堂で習近平と会談した。
キッシンジャーは当時の周恩来首相と機密会談を行い、日米同盟は日本の軍事暴走を食い止めることになり、米軍が日本に駐在していないと日本がいつ暴走するか分からないためだと、周恩来に行っているような人物だ。習近平が国家主席だった時代(2007年〜2012年)から、習近平とは非常に緊密な仲だ。
よもや、あの忍者外交のときのようにアメリカが掌を返すようなことはあるまいが、しかし油断は禁物。
麻生外務大臣はAIIBには透明性がないので(世界はついていかないだろう)という趣旨の発言をし、筆者も言論の自由のないところに国際金融センターは似合わないと書いたが、しかし「チャイナ・マネーが民主を買った」香港の例を考えると、楽観視はできない。
AIIB創設メンバー参加申請の締め切りは、今月一杯だ。
中国の戦略とチャイナ・マネーが勝つのか、「自由と民主」が勝つのか、人類の「試験」が始まっている。
遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士