2015年01月27日

テロ対策へ日本の心構えを問う 杏林大学名誉教授・田久保忠衛

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 今朝の産経新聞「正論」の「テロ対策へ日本の心構えを問う」
 杏林大学名誉教授・田久保忠衛
 を以下に掲載します。

 
 日本における不可思議な議論

 安倍晋三首相は中東訪問を繰り上げて帰国し、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人人質事件に対して不眠不休で陣頭指揮に当たっている。首相は「人命を第一に、テロには屈しない」決意を表明している。

 野党政治家の中には首相の中東訪問自体がイスラム国を刺激したといった心ない発言をする人物もいる。奇怪なのは、元防衛庁高官で、内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏の「唯一、人質の生命を救う手段があるとしたら、イスラム国に対する対決姿勢を表明した安倍首相自身が辞任することだ」との放言だろう。

 「人命尊重」と「テロリストとの闘争」は今回の人質問題が絡んでくると、どちらが重要なのか曖昧になってくる。「人命は大切だが、テロリストとはいっさい妥協しない」「テロリストとは戦うが、人命は尊重しなければならない」という2つの文章で分かる通り、主語と従属文を入れ替えると、意味はがらりと変わってくる。

 それを取り違えたうえで、さらに、テロリストを刺激してはいけない、などとの議論が新聞やテレビで行われているのは、日本以外の国では珍しいのではないか。

 イスラム国と関連があるのか、ないのか定かではないが、直前にフランスで週刊紙「シャルリー・エブド」、次いでユダヤ系食料品店がテロリストによって襲撃された。痛烈な風刺で知られるこの週刊紙の編集部員ら12人が殺害された事件は、とりわけ世界の言論、報道関係者に一大衝撃を与えた。私は米欧諸国の主要英字紙に掲載された社説、評論類に目を通して感ずるところが少なくなかった。


≪爽快感を覚える米欧の論調≫

 第1に、言論・表現の自由とテロとの関係で「言論は自由だが、さりとてシャルリー・エブド紙の漫画はひどい」といった右も悪いが左も悪いといった論調は皆無だった。自由な社会では行き過ぎの表現はあっても社会の良識で自然に修正されていくのが望ましいのであって、自己による、あるいは他者による規制はいっさい認めないと説くエコノミスト誌1月15日号の論調などは爽快感を覚える。当然ながら、テロを正当化するものは何もないとの結論だ。

 第2は、20年近く前にハーバード大学のハンチントン教授が書いた「文明の衝突」にならって、キリスト教文明とイスラム教文明がぶつかり合っていると説く議論に対する強い批判である。

 人口の約10%という最多のイスラム系移民を持つフランスをはじめ欧州諸国はこの問題に頭を悩ませてきたから、大規模な宗教的、民族的対立は何としても回避したいとの配慮も働くのだろうか。

 テロリストには中東、アフガニスタン、パキスタンなどで訓練を受けた分子がいるのは事実だが、イスラム全体を危険視する材料は乏しい。エジプトのシーシー大統領は1月1日にアル・アズハル大学で聖職者の前で演説し、自分たちだけが聖なるものとする観念が世界全体に殺害、破壊の不安を与える源になっていると警告した。中東の大国からの反省である。

 第3は、移民政策に関連した欧州各国の右翼政党への警戒心が、すこぶる強い事実である。欧州の経済的な低迷を背景に、イスラム系移民によって自分たちの職が奪われているとの気持ちが一般労働者には強く、その不満をかき立てるポピュリズム政党が超右翼と称されていることを、恥ずかしながら私は初めて知った。


 もっと大切なものがある

 1月11日にはパリで犠牲者を悼む大行進が行われ、オランド・フランス大統領、メルケル・ドイツ首相、ケイタ・マリ大統領、トゥスク欧州連合(EU)大統領、ネタニヤフ・イスラエル首相、アッバス・パレスチナ自治政府議長ら約120万人が参加した。

 しかし、ここにはフランスの右翼、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首は招かれなかった。ルペン党首が対抗して主催した会議にはそこそこの人数が集まっているし、昨年5月に行われたEU議会選挙では25%の得票率を得て、2017年の大統領選の有力候補である。

 ドイツ、英国、オランダ、ギリシャ、スウェーデンなどでも同じ傾向の政党が勢いを増している。ルペン党首が2年後の大統領選に当選したら、EUを支えてきた独仏関係に亀裂が入るだろうし、EUは危機に陥る。欧米のすべての新聞がとは言わないが、大方はテロがすでに深刻化している移民問題に火をつけ、EUの崩壊につながる危険な先行きに警鐘を乱打していると考えられる。

 テロの背景、連鎖反応などに目配りをしたうえで世界は本格的なテロ対策に入った。シリアやイラクからこの1、2年に3千人が帰国し、欧米各国は「国産型テロ」に備えなければならなくなった。彼我の事情は異なるが、日本のテロに対する心構えは次元が低い。人命第一の掛け声だけでなく、この世の中には人命より大切なものがあると私は考えている。(たくぼ ただえ)

shige_tamura at 10:27│Comments(0)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

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