2012年09月20日
尖閣、反日デモ、中国国内事情、日中の海軍力比較、日本の野田政権の問題点など(在英ジャーナリストの木村正人氏)
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尖閣、反日デモ、中国国内事情、日中の海軍力比較、日本の野田政権の問題点など、在英ジャーナリストの木村正人氏(前、産経新聞ロンドン支局長)のブログhttp://kimumasa2012london.blog.fc2.com/に英キングス・カレッジ・ロンドンのアレッシオ・パタラーノ講師のインタビューが掲載されました。
内容が非常に良かったので転載しました。
英安全保障専門家「机上では中国海軍が優っていても、現実的には日本の海上自衛隊の優位は揺るがない」
日本政府の尖閣諸島(沖縄県)国有化に抗議するデモが中国各地に拡大している。軍事研究書『日英同盟から9・11後までの日英両国の海洋戦略と国家安全保障』を編集し、日本海軍の歴史にも詳しい英キングス・カレッジ・ロンドンのアレッシオ・パタラーノ講師(36)に、日本は尖閣問題にどう対処すべきかをインタビューした。
――南シナ海に続いて東シナ海でも中国は領有権問題で動きを強めているように見えるが
「南シナ海と東シナ海での決定的な違いは米軍の存在があるかないかだ。確かに中国は南シナ海で軍事力を行使するのをためらわなかった。米国は日中両国間の領有権問題について中立の立場だが、東シナ海にある尖閣諸島について日米安保条約の適用対象になるとの立場を表明している。中国政府も中国人民解放軍も事態が(軍事レベルに)エスカレートするのを望んでいない。ただ、中国の公安辺防海警部隊(沿岸警備隊)や漁業監視船が中国国内で海上警備における影響力や存在感を増すため活動を活発化させ、緊張を高めている。中国漁船と海上保安庁の船の衝突、水死事故など突発事故の発生が最も心配だ」
――日中両国間に緊張が高まっているが
「中国は胡錦濤から習近平への権力移行期にあり、日本に対して弱いところは見せられないという国内事情がある。米国、韓国でも大統領選挙が予定され、日本でも次期総選挙が早まる可能性が強まっている。それぞれの国で権力移行が終わるまで、事態が収束するようには思えない。状況が改善するとしても来年になってからだろう」
「日本、中国、米国の経済は緊密につながっており、尖閣問題が紛争に発展すれば甚大な結果をもたらす。現在、抗議活動に参加している中国人が日本企業を攻撃しているが、彼らは自分たちの利益を破壊している」
――中国は軍備を増強しているが、日本の海上自衛隊で対処できるのか
「確かに中国は数で優っており、質も向上させている。しかし、海賊対策で遠洋に派遣されている艦船はいつも同じ船だ。これに対して、日本の海上自衛隊はプロ集団だ。中国に比べて数で負けていても、指揮系統や錬度で中国を上回っている。さらに日米安保の後ろ盾もある。紙の上では中国が勝っていても、現実的には包括的な海上自衛隊の優位は揺るがない。しかし今後10年間、中国の経済成長が続けば、中国海軍は活動をさらに活発化させ、緊張は高まるだろう」
――日本の何が問題なのか
「日本政府は落ち着いて対応すべきだ。水面下で中国政府と交渉すると同時に、尖閣問題で海上自衛隊の出動が必要な事態に発展したときに備えて海上自衛隊をどのように運用するかの危機管理シナリオを明確にすべきだ。現段階で海上保安庁が対応しているのは適切だ」
「日本の問題は防衛能力より、政治のリーダーシップと危機管理能力だ。東京都の石原慎太郎知事が今年4月に尖閣諸島購入計画を発表したとき野田佳彦首相が『これは国の問題だ』と即座に対応しておけば、事態はここまで悪化していなかったのではないか。日本ではシビリアン・コントロール(文民統制)よりも、内局(背広組)が制服組の上に立つ“文官優位”の問題が残っている。文官優位は次第に解消されているが、内局と制服組の関係見直しが不可欠だ」
――今後、軍事面で日英両国の関係をどう強化していくべきか
「近くバーレーン周辺海域で昨年に続き2度目の米国、英国、日本の多国間掃海訓練が行われる。英海軍が極東海域でプレゼンスを増すとは考えにくいが、利害が一致する中東での協力強化は国際政治での日本の立場を強めることになる」(了)