2012年06月01日
ワシントン情報「スペースXとイノベーション」(横江公美氏)
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ヘリテージ ワシントン ニュースレター No.43、横江公美・アジア研究センター 2012年5月31日
をお送りします。
スペースXとイノベーション
アメリカは、新しいイノベーションを手中に収めたようだ。
スペース・エクスプロレーション・テクノロジー社(スペースX)が5月22日無人ロケットの打ち上げ、そして、無事、25日国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功し、31日に計画されたとおりメキシコ沖にパラシュートで無事に帰還した。
民間が打ち上げた宇宙船がISSとのドッキングを果たしたのは世界初であり、アメリカのマスコミは連日、その意義を取り上げ、盛り上がっている。マスコミは「新しい歴史の始まり」とその功績を称えた。
というのも、政府が開発した技術を民間に開放することが、アメリカでは最大のイノベーションだからである。
最近の例でいえば、インターネットである。
軍が開発したアーパネットが民間に開放され、民間のプロバイダーが参入し、あっという間に世界中に広がった。GPS産業もしかりである。1990年代クリントン政権が衛星から届くGPS情報を一般公開したことからGPS産業が生まれた。
今回のスペースXの成功は、今までNASAが独占して開発してきた宇宙という空間に民間が参入し、宇宙開発は新しい時代に入ったことを意味する。
今回のスペースXのロケット打ち上げは、NASAからの委託で、Commercial Orbital Transportation Serviceというプログラムの一環である。NASAは、スペースXに4億ドルを前金として支払い、今後総額16億ドル支払われるとロサンゼルス・タイムズは報道する。
スペースX社は、さらに12件の契約をNASAと結んでいると言われている。
民間が宇宙に参入することは、政府にとっては最大のコスト削減を意味し、一方、産業界にとってはイノベーションを手に入れるチャンスとなる。
ヘリテージ財団の経済学者デレク・シザーズは「イノベーションの鍵は、民間の参入だ」と語る。というのも、米ソは軍拡と宇宙戦争を繰り広げてきたが、その技術の使用が国の経済につながるかどうかは、そういった技術をいかにビジネスに転用できるかどうかに関わってきた。この部分はまさに資本主義対共産主義の構図である。
この視点で見ると、アメリカにとって、スペースXのロケット打ち上げとISSとのドッキングの成功がいかに意味があることなのか、わかるであろう。
宇宙産業が次のイノベーション市場とにらみ、資金提供してきた人の存在も見逃せない。
スペースX社は、ペイパルの共同創設者イーロン・マスクである。他にもアマゾン社のポール・ベゾスが始めたブルーオリジン、マイクロソフトの共同創設者ポール・アレンのストラト・ラウンチ・システム、そしてグーグル社のラリー・ページとエリック・シュミッドがプラネタリー・リソースに投資する。
IT長者以外には、バージングループのリチャード・ブランソンが作ったバージン・ギャラクティック、元NASAのデビッド・トンプソンが作ったオービタル・サイエンス、ボーイング、アリアント・テックシステムズ社なども宇宙産業を睨んでいる。
アメリカでは、中小企業がイノベーションを起こすと言われるが、今回の宇宙産業イノベーションは、IT長者たちがベンチャーマネーを提供したベンチャー企業が主役である。
スペースXの打ち上げを支える背景を見ると、まさに、アメリカ型イノベーションの典型的な例といえよう。
宇宙のイノベーションは大成功を収めるのか、それとも経費の折り合いがつかず民間部門は縮小するのか。宇宙産業は、どのように発展していくのか目が離せない。
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キャピトルの丘
5月18日、日本でもJAXAと三菱重工が協力し、韓国の衛星を打ち上げた。日本も偉業を成し遂げ、宇宙産業競争に入る足がかりを築いている。
この分野にも日米の違いが出ていて興味深い。
アメリカではベンチャー企業が「歴史を作った」のに対し、日本は大企業が先導する。
この違いは、NASAとJAXAの役割の違いやベンチャーマネーの環境、顧客の相違などが要因と考えられるが、最初の要因は、宇宙と軍開発で先端にいるアメリカと先端になれない日本との立場の差異にあるのではないかと思われる。この差は、成功についてのリアクションにも現れている。スペースXにプライドを持つアメリカと、ニュースの一つとして流れる日本。
日本が「もの作りの国」と自らを呼ぶのは、日本の環境が、アメリカ的イノベーションの環境とは異なっているからなのだろうか。
日米宇宙産業界の問題はコストであることは共通する。今回の日本のロケットは、アメリカのスペースXの2倍のコストがかかっていると言う。
スペースX社のコスト削減の最大の成功要因は、エンジニアを雇い、自前開発に拘ったことにあると言われている。
日本のロケット打ち上げの強みは、失敗の少なさだという。やはり、「もの作り」的強みである。
総額43億ドルと言われる宇宙産業を、ロシア、フランス、インドも狙っている。
宇宙開発を先駆けるアメリカと「もの作り」では定評のある日本がタッグを組めば、強力だ。
先端技術が重なり合う宇宙産業の国際競争とコラボレーションの今後も興味深い。
横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て2011年7月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。
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スペースXとイノベーション
アメリカは、新しいイノベーションを手中に収めたようだ。
スペース・エクスプロレーション・テクノロジー社(スペースX)が5月22日無人ロケットの打ち上げ、そして、無事、25日国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功し、31日に計画されたとおりメキシコ沖にパラシュートで無事に帰還した。
民間が打ち上げた宇宙船がISSとのドッキングを果たしたのは世界初であり、アメリカのマスコミは連日、その意義を取り上げ、盛り上がっている。マスコミは「新しい歴史の始まり」とその功績を称えた。
というのも、政府が開発した技術を民間に開放することが、アメリカでは最大のイノベーションだからである。
最近の例でいえば、インターネットである。
軍が開発したアーパネットが民間に開放され、民間のプロバイダーが参入し、あっという間に世界中に広がった。GPS産業もしかりである。1990年代クリントン政権が衛星から届くGPS情報を一般公開したことからGPS産業が生まれた。
今回のスペースXの成功は、今までNASAが独占して開発してきた宇宙という空間に民間が参入し、宇宙開発は新しい時代に入ったことを意味する。
今回のスペースXのロケット打ち上げは、NASAからの委託で、Commercial Orbital Transportation Serviceというプログラムの一環である。NASAは、スペースXに4億ドルを前金として支払い、今後総額16億ドル支払われるとロサンゼルス・タイムズは報道する。
スペースX社は、さらに12件の契約をNASAと結んでいると言われている。
民間が宇宙に参入することは、政府にとっては最大のコスト削減を意味し、一方、産業界にとってはイノベーションを手に入れるチャンスとなる。
ヘリテージ財団の経済学者デレク・シザーズは「イノベーションの鍵は、民間の参入だ」と語る。というのも、米ソは軍拡と宇宙戦争を繰り広げてきたが、その技術の使用が国の経済につながるかどうかは、そういった技術をいかにビジネスに転用できるかどうかに関わってきた。この部分はまさに資本主義対共産主義の構図である。
この視点で見ると、アメリカにとって、スペースXのロケット打ち上げとISSとのドッキングの成功がいかに意味があることなのか、わかるであろう。
宇宙産業が次のイノベーション市場とにらみ、資金提供してきた人の存在も見逃せない。
スペースX社は、ペイパルの共同創設者イーロン・マスクである。他にもアマゾン社のポール・ベゾスが始めたブルーオリジン、マイクロソフトの共同創設者ポール・アレンのストラト・ラウンチ・システム、そしてグーグル社のラリー・ページとエリック・シュミッドがプラネタリー・リソースに投資する。
IT長者以外には、バージングループのリチャード・ブランソンが作ったバージン・ギャラクティック、元NASAのデビッド・トンプソンが作ったオービタル・サイエンス、ボーイング、アリアント・テックシステムズ社なども宇宙産業を睨んでいる。
アメリカでは、中小企業がイノベーションを起こすと言われるが、今回の宇宙産業イノベーションは、IT長者たちがベンチャーマネーを提供したベンチャー企業が主役である。
スペースXの打ち上げを支える背景を見ると、まさに、アメリカ型イノベーションの典型的な例といえよう。
宇宙のイノベーションは大成功を収めるのか、それとも経費の折り合いがつかず民間部門は縮小するのか。宇宙産業は、どのように発展していくのか目が離せない。
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キャピトルの丘
5月18日、日本でもJAXAと三菱重工が協力し、韓国の衛星を打ち上げた。日本も偉業を成し遂げ、宇宙産業競争に入る足がかりを築いている。
この分野にも日米の違いが出ていて興味深い。
アメリカではベンチャー企業が「歴史を作った」のに対し、日本は大企業が先導する。
この違いは、NASAとJAXAの役割の違いやベンチャーマネーの環境、顧客の相違などが要因と考えられるが、最初の要因は、宇宙と軍開発で先端にいるアメリカと先端になれない日本との立場の差異にあるのではないかと思われる。この差は、成功についてのリアクションにも現れている。スペースXにプライドを持つアメリカと、ニュースの一つとして流れる日本。
日本が「もの作りの国」と自らを呼ぶのは、日本の環境が、アメリカ的イノベーションの環境とは異なっているからなのだろうか。
日米宇宙産業界の問題はコストであることは共通する。今回の日本のロケットは、アメリカのスペースXの2倍のコストがかかっていると言う。
スペースX社のコスト削減の最大の成功要因は、エンジニアを雇い、自前開発に拘ったことにあると言われている。
日本のロケット打ち上げの強みは、失敗の少なさだという。やはり、「もの作り」的強みである。
総額43億ドルと言われる宇宙産業を、ロシア、フランス、インドも狙っている。
宇宙開発を先駆けるアメリカと「もの作り」では定評のある日本がタッグを組めば、強力だ。
先端技術が重なり合う宇宙産業の国際競争とコラボレーションの今後も興味深い。
横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て2011年7月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。



