2011年10月31日
谷垣禎一自民党総裁の代表質問全文(その1)
「天に向かって!」「日本を美しく!」(歌・田村重信)が、セントラルレコードのHPからユーチューブで聴けます。
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今日の衆議院本会議、谷垣禎一自民党総裁の代表質問全文です。
一、はじめに
私は自由民主党・無所属の会を代表して、先般の野田総理の所信表明演説、安住財務大臣の財政演説について質問いたします。
冒頭、東日本大震災ならびに相次ぐ台風の被害によって、不自由かつ不安な日々をお過ごしの皆様に対し、心からお見舞い申し上げるとともに、地域における復旧・復興に向けて、自民党は引き続き総力を挙げてまいることをここに約束いたします。また、先般のタイ王国大規模洪水およびトルコ共和国大地震災害に対して、政府においては最大限の支援策を講じることを強く求めます。
さらには、歴史的な円高の影響によって、多くの企業が厳しい経営を強いられています。政府は本日、市場介入を行いましたが、引き続き市場に対して断固たる姿勢を示すよう求めます。
さて、政権交代よりはや2年の歳月が過ぎ、その間、民主党政権において3代目の総理に至りました。わが自民党も小泉総理で総選挙を行い、その後3人の総理が替わったことは、公平に述べておかねばなりません。しかし、その際に野田総理、あなたは「与党のトップが交代する際には、民意を問うべきである」と言われたことを憶えておられるでしょうか。今もその意見は変わりませんか。
この2年間、民主党内の絶え間ない内紛、統治能力の欠如によって国政の著しい停滞を招き、内政・外交にわたって多大なる国益の損失をもたらしました。これを「民主主義のコスト」として安易に片付けてしまうことは、到底許されません。国際社会においては、来年の主要国における権力の移行期を控えつつ、欧米諸国の財政リスクが顕在化し、他国を顧みるゆとりもなくひたすら自らの国益を追求して鎬を削りあう情勢にあります。
一方、国内に目を向ければ、少子高齢化は急速にその進行の度を深め、経済の高成長、それに拠って立つ財政の分配を期待する経済社会システムはもはや昔日のものとなりました。そのうえに、この大震災がわれわれを襲ったわけです。これらを踏まえれば、民主党の政権担当能力を磨くための授業料を支払う余裕が残されていないことは、国際情勢からも国民の懐具合からも明らかです。
また、民主党政権におけるマニフェスト施策の実現が進まないどころか後退、違背を繰り返すことによって、国民との契約違反の状態が続いています。野田総理はその不履行の要因として、景気後退による税収減、ねじれ国会、東日本大震災の3つを挙げています。しかし、これらは全て、無駄を排除して財源を確保することで施策を実施するというマニフェストの基本構造に対しては何ら関係がありません。
どれが無駄の削減額を左右しえたのでしょうか。震災前の昨年末に野田財務大臣のもとで編成された平成23年度予算において、16.8兆円と言っていたマニフェストの実行額が僅か3.6兆円にとどまっていたことこそ、その構造的欠陥の明らかな証左です。国民は先の総選挙で票という代金を支払ったものの、約束された商品を受け取れないままとなっています。嘘をついて奪い取った政権はそのままに、誠実な履行をすることができないのであれば、根強い政治不信を払拭することもできず、国民はコストをひたすら払い続けるのみです。
これらの厳然たる事実を、政権運営にあたる野田総理においては十二分に認識すべきと考えますが如何でしょうか。
二、平成23年度第3次補正予算案・復興財源確保法案等
さて、平成23年度第3次補正予算案と東日本大震災に係る復興財源の確保のあり方について、わが党の基本的考え方を申し述べつつ、政府・与党の考え方を質してまいります。
はじめに明らかにしておきますが、わが自民党は7月8日には総額17兆円の震災対策を公表しており、その財源のうち歳出削減や税外収入で賄えない分について復興債を発行することとし、その信認を担保するために、所得税、法人税等の付加税により償還の道筋を明確にすべきといち早く表明しております。わが国財政事情は深刻さを極めており、東日本大震災からの復旧・復興対策経費が巨額に上る中で、いかに財政規律を確保するかという基本的認識において政府・与党と違いはありません。
しかし、今回の政府・与党の3次補正予算案と復興財源確保法案は、わが党の取りまとめから3ヶ月半以上遅れているうえ、その間、内容についてよほど詰めが進んでいるのかと思いきや、国民の皆様に負担を求めるにしては、随分粗っぽいいい加減な案を出してきたとの印象です。国民の皆様に負担を求めるためには、丁寧な説明と合理的な制度設計が必要です。
政府・与党の案は、その双方の要素に欠けており、運び方も案の内容も稚拙そのものです。このような政府・与党が、今後、消費税で更に大きな国民負担をお願いすることに取り組むというのであれば、その資質からして大いに疑問を抱かざるを得ません。このことを、質問を通じて明らかにしてまいる所存です。
わが党は第1に、現在の政府・与党案の復興債の償還期間が10年とされているのは、短すぎると考えており、その大幅な延長を求めております。
理由としてはまず、千年に一度という大震災の復旧・復興経費に係る財源調達を現世代の負担によってのみ賄うとすれば、現世代が前後の世代と比較して大震災があったばかりに過重な負担を強いられることになり、不公平と言わざるを得ません。特に復興による受益を後世代が享受することを踏まえれば、世代をまたいで負担を分かち合う必要があります。しかも、復旧・復興経費の内容を見れば、3次補正で計上されている全国防災対策費などは全国で行われるハード事業であり、中身において通常の建設公債発行対象経費と明確に区別が可能なものとは到底思えず、復興債及びその償還財源としての税制措置で賄わなければならない理由が分かりません。
また、われわれは、単に長く償還期間を延ばせと申し上げているつもりはありません。わが国財政に対する市場の信認を高めるうえで大事なことは、償還の道筋をしっかりと付けることであって、償還期間を徒に短くすることではありません。政府・与党はこの点を混同しています。
さらには、わが国財政の今後の課題を見据えれば、徒に短く設定することには疑義があります。わが国は基礎的財政収支の黒字化などの財政健全化目標を設定しており、その達成に向けて消費税を含む税制抜本改革は避けられません。目先の性急な復興財源確保のみに囚われず、マクロの財政健全化の取組みとの関係にも配意し、償還期間を長くとることでその負担を薄いものにしておく必要があります。
そこで総理に質問いたします。一つ一つお答えください。
まず、3次補正予算に係る東日本大震災復興経費11兆7,335億円のうち公債発行対象経費とそれ以外は幾らずつか。言いかえれば、この部分について今回のような異例の対応でなく、通常の公債の追加発行による対応をとった場合、建設公債、特例公債はそれぞれ幾らとなったのか、伺います。
そのうえで、それらについて建設公債等によらず、あえて復興債及びその償還財源の確保のための税制措置というスキームに依ることとした理由を改めて伺います。
次いで、政府・与党案では、復興債の償還期間は通常の60年償還ルールに対して10年と大幅な短縮がなされたことについて、如何なる理由付けがなされているのかお答えください。
更には、そこまで償還期間に差を設けるからには、債券の発行で賄われる事業の性質についても明確な差が認められるのでしょうか。例えば、全国防災対策経費の定義は何か、単なる公共事業が紛れていることはないのか、両者を区別する基準は何でしょうか。
さらに伺いますが、消費税の取扱いなどを含めて今後の財政健全化への取組みが具体的に固まっていない中で、短い償還期間を設定して単年度あたりの国民負担を大きなものにしてしまうことが、今後の取組みへの足枷となるのではないでしょうか。
これらに対する答弁を踏まえたうえで、改めて償還期間の大幅延長を求めているわが党の見解に対するお答えをいただきたいと存じます。
第2に、わが党は23年度予算における子ども手当の減額措置に伴って特例公債を減額することを求めています。これは、民主党のマニフェスト施策を目の敵にして、その歳出削減に見合う特例公債減額を立てることであえて辱めに遭わせようとしているわけではありません。子ども手当の見直しの要因を震災に求めることが筋違いだと申し上げているわけです。
そもそも、特例公債発行額を極力圧縮するというのが財政運営の基本ルールであり、特例公債の発行によって全体の予算が賄われている以上、歳出の削減を行う一方で建設公債発行対象経費の増額が行われた場合、特例公債を減額して建設公債に振り替えるのが補正予算の通例であるはずです。なぜ今般はそのような対応をとらないのでしょうか。政府・与党が、マニフェスト政策については特例公債に頼らず財源をきちんと確保したという建前と、復興債と建設公債を同時発行しないことにこだわるあまりに、特例公債発行の減額に努めるという財政運営の基本ルールを蔑ろにしてしまっているのが今回の対応ではないかと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
そして、このような対応を今後も踏襲していくとなると、24年度以降の当初予算についても、復興財源となる歳出削減分について、その見合いとなる復興経費に幾ら公債発行対象経費があっても、特例公債発行額を減額しない措置をとり続けるにことになりかねませんが、それで宜しいのでしょうか。本来圧縮できるはずの相当規模の特例公債発行額が毎年度圧縮できないということになってしまいますが、そのことは財政運営として妥当なのか、あわせてご回答願います。
以上を踏まえたうえで、改めて今般の3次補正予算、さらには24年度予算以降における子ども手当の歳出削減分を特例公債減額に充てることを求めます。
第3に、われわれは復旧・復興経費を管理する特別会計の創設を求めています。
今回の政府・与党の復興財源確保のスキームがあまりにいい加減で、国民にとって受益と負担の対応関係が見えにくいものであることを踏まえると、特別会計の創設はいよいよ必要となります。それにより、復興経費は新たな特別会計で管理されることとなるため、その他の経費との差別化が進み、単なる通常の公共事業関係費が全国防災対策費として復興経費に紛れ込んでくるようなことも防がれていくと考えられ、B型肝炎対策との区分も明確になります。
税財源が確保されている復興事業の進捗度合いが明確になり、今後、国民からも更なる税制上の措置が必要な状況にあるのかどうかということが見えやすくなります。復興を名目に講じられた税制措置による増収分が他の事業に費消されることなく、必ず被災地向け歳出に充てられることが明確になることで、国民の納税意識も高まるものと考えます。政府・与党は今回の復興財源確保のスキームについてよくよく居住まいを正したうえで、国民に増税の理解を求めていくべきです。
特別会計設置に関する野田総理の見解を改めて伺います。
復興財源としての税外収入・歳出削減を巡っては、前原政調会長と政府側とで、増税額を巡って行ったり来たりのやり取りが続くという混迷振りを見せつけましたが、相変わらず取扱いがすっきりしません。関連してお尋ねしますが、国家公務員給与特例法案による国家公務員給与の引下げ分は復興財源にカウントされている一方、24年度予算などで連動して行われる地方公務員給与に係る地財措置、更には義務教育国庫負担金や独立行政法人運営費交付金の見直しなどによって生み出される財源については、復興財源に使うのではなく財政再建に使うとの報道もあり、現段階では復興財源としてはカウントされていないようです。
しかし、やはり公的部門全体で捻出する復興財源として整理することが適切であり、今後復興経費の増加が確実な中で、これ以上税負担を増やさないために用いるべきと考えますが如何でしょうか。
三、社会保障・税一体改革
社会保障・税一体改革について伺います。
先般、五十嵐財務副大臣が2015年度までの消費税率の10%への引上げは2段階に分けて行い、その第1段階目は再来年秋の衆院任期満了後に行う旨を示唆しましたが、本来、財政や経済の状況を踏まえ決せられるべき消費税率の引上げのタイミングがそれらとはおよそ関係ない政治日程との関係で決まるというのはいかにもナンセンスであり、いかにマニフェストとの関係で民主党が消費増税の検討を行うことが破綻を来しているかの表れです。
そもそも、あなた方が法案提出の拠り所としている、消費税を含む税制抜本改革の規定を含む平成21年度税制改正法に、民主党は反対されたのではありませんか。先の総選挙におけるマニフェストには、消費税について一言の言及もありませんでした。当時の鳩山代表は「消費税は20年間上げない」ことを公然と述べておられました。社会保障・税一体改革は必要な政策ではありますが、ここでもまた国民に対して言行不一致な行動をとろうとするあなた方は、票を投じた有権者にどう説明するのでしょうか。
また、平成21年度税制改正法附則第104条との関係で今年度内に具体的な法案提出ということになれば、年内にはその概要を固める必要がありますが、議論の時間があまりに不足しています。6月に「成案」をとりまとめて以降、社会保障機能強化の進め方等、具体的な検討が進んでいるようには聞こえてきません。複数税率など逆進性対策をどうするのかといった受益と負担の関係もまったく見えないまま、年末までの2ヶ月ですべてを決めてしまうことには相当無理が伴います。
このように無理に無理を重ね、国民に言ったことと違う政策を押し通そうとするあなた方の社会保障・税一体改革への取組みの前途は多難と考えますが、野田総理としては、この窮屈な日程の中で具体的なスケジュールをどのように進めていこうとされているのか具体的にお示しいただくとともに、改めてご決意を伺います。(続く)
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今日の衆議院本会議、谷垣禎一自民党総裁の代表質問全文です。
一、はじめに
私は自由民主党・無所属の会を代表して、先般の野田総理の所信表明演説、安住財務大臣の財政演説について質問いたします。
冒頭、東日本大震災ならびに相次ぐ台風の被害によって、不自由かつ不安な日々をお過ごしの皆様に対し、心からお見舞い申し上げるとともに、地域における復旧・復興に向けて、自民党は引き続き総力を挙げてまいることをここに約束いたします。また、先般のタイ王国大規模洪水およびトルコ共和国大地震災害に対して、政府においては最大限の支援策を講じることを強く求めます。
さらには、歴史的な円高の影響によって、多くの企業が厳しい経営を強いられています。政府は本日、市場介入を行いましたが、引き続き市場に対して断固たる姿勢を示すよう求めます。
さて、政権交代よりはや2年の歳月が過ぎ、その間、民主党政権において3代目の総理に至りました。わが自民党も小泉総理で総選挙を行い、その後3人の総理が替わったことは、公平に述べておかねばなりません。しかし、その際に野田総理、あなたは「与党のトップが交代する際には、民意を問うべきである」と言われたことを憶えておられるでしょうか。今もその意見は変わりませんか。
この2年間、民主党内の絶え間ない内紛、統治能力の欠如によって国政の著しい停滞を招き、内政・外交にわたって多大なる国益の損失をもたらしました。これを「民主主義のコスト」として安易に片付けてしまうことは、到底許されません。国際社会においては、来年の主要国における権力の移行期を控えつつ、欧米諸国の財政リスクが顕在化し、他国を顧みるゆとりもなくひたすら自らの国益を追求して鎬を削りあう情勢にあります。
一方、国内に目を向ければ、少子高齢化は急速にその進行の度を深め、経済の高成長、それに拠って立つ財政の分配を期待する経済社会システムはもはや昔日のものとなりました。そのうえに、この大震災がわれわれを襲ったわけです。これらを踏まえれば、民主党の政権担当能力を磨くための授業料を支払う余裕が残されていないことは、国際情勢からも国民の懐具合からも明らかです。
また、民主党政権におけるマニフェスト施策の実現が進まないどころか後退、違背を繰り返すことによって、国民との契約違反の状態が続いています。野田総理はその不履行の要因として、景気後退による税収減、ねじれ国会、東日本大震災の3つを挙げています。しかし、これらは全て、無駄を排除して財源を確保することで施策を実施するというマニフェストの基本構造に対しては何ら関係がありません。
どれが無駄の削減額を左右しえたのでしょうか。震災前の昨年末に野田財務大臣のもとで編成された平成23年度予算において、16.8兆円と言っていたマニフェストの実行額が僅か3.6兆円にとどまっていたことこそ、その構造的欠陥の明らかな証左です。国民は先の総選挙で票という代金を支払ったものの、約束された商品を受け取れないままとなっています。嘘をついて奪い取った政権はそのままに、誠実な履行をすることができないのであれば、根強い政治不信を払拭することもできず、国民はコストをひたすら払い続けるのみです。
これらの厳然たる事実を、政権運営にあたる野田総理においては十二分に認識すべきと考えますが如何でしょうか。
二、平成23年度第3次補正予算案・復興財源確保法案等
さて、平成23年度第3次補正予算案と東日本大震災に係る復興財源の確保のあり方について、わが党の基本的考え方を申し述べつつ、政府・与党の考え方を質してまいります。
はじめに明らかにしておきますが、わが自民党は7月8日には総額17兆円の震災対策を公表しており、その財源のうち歳出削減や税外収入で賄えない分について復興債を発行することとし、その信認を担保するために、所得税、法人税等の付加税により償還の道筋を明確にすべきといち早く表明しております。わが国財政事情は深刻さを極めており、東日本大震災からの復旧・復興対策経費が巨額に上る中で、いかに財政規律を確保するかという基本的認識において政府・与党と違いはありません。
しかし、今回の政府・与党の3次補正予算案と復興財源確保法案は、わが党の取りまとめから3ヶ月半以上遅れているうえ、その間、内容についてよほど詰めが進んでいるのかと思いきや、国民の皆様に負担を求めるにしては、随分粗っぽいいい加減な案を出してきたとの印象です。国民の皆様に負担を求めるためには、丁寧な説明と合理的な制度設計が必要です。
政府・与党の案は、その双方の要素に欠けており、運び方も案の内容も稚拙そのものです。このような政府・与党が、今後、消費税で更に大きな国民負担をお願いすることに取り組むというのであれば、その資質からして大いに疑問を抱かざるを得ません。このことを、質問を通じて明らかにしてまいる所存です。
わが党は第1に、現在の政府・与党案の復興債の償還期間が10年とされているのは、短すぎると考えており、その大幅な延長を求めております。
理由としてはまず、千年に一度という大震災の復旧・復興経費に係る財源調達を現世代の負担によってのみ賄うとすれば、現世代が前後の世代と比較して大震災があったばかりに過重な負担を強いられることになり、不公平と言わざるを得ません。特に復興による受益を後世代が享受することを踏まえれば、世代をまたいで負担を分かち合う必要があります。しかも、復旧・復興経費の内容を見れば、3次補正で計上されている全国防災対策費などは全国で行われるハード事業であり、中身において通常の建設公債発行対象経費と明確に区別が可能なものとは到底思えず、復興債及びその償還財源としての税制措置で賄わなければならない理由が分かりません。
また、われわれは、単に長く償還期間を延ばせと申し上げているつもりはありません。わが国財政に対する市場の信認を高めるうえで大事なことは、償還の道筋をしっかりと付けることであって、償還期間を徒に短くすることではありません。政府・与党はこの点を混同しています。
さらには、わが国財政の今後の課題を見据えれば、徒に短く設定することには疑義があります。わが国は基礎的財政収支の黒字化などの財政健全化目標を設定しており、その達成に向けて消費税を含む税制抜本改革は避けられません。目先の性急な復興財源確保のみに囚われず、マクロの財政健全化の取組みとの関係にも配意し、償還期間を長くとることでその負担を薄いものにしておく必要があります。
そこで総理に質問いたします。一つ一つお答えください。
まず、3次補正予算に係る東日本大震災復興経費11兆7,335億円のうち公債発行対象経費とそれ以外は幾らずつか。言いかえれば、この部分について今回のような異例の対応でなく、通常の公債の追加発行による対応をとった場合、建設公債、特例公債はそれぞれ幾らとなったのか、伺います。
そのうえで、それらについて建設公債等によらず、あえて復興債及びその償還財源の確保のための税制措置というスキームに依ることとした理由を改めて伺います。
次いで、政府・与党案では、復興債の償還期間は通常の60年償還ルールに対して10年と大幅な短縮がなされたことについて、如何なる理由付けがなされているのかお答えください。
更には、そこまで償還期間に差を設けるからには、債券の発行で賄われる事業の性質についても明確な差が認められるのでしょうか。例えば、全国防災対策経費の定義は何か、単なる公共事業が紛れていることはないのか、両者を区別する基準は何でしょうか。
さらに伺いますが、消費税の取扱いなどを含めて今後の財政健全化への取組みが具体的に固まっていない中で、短い償還期間を設定して単年度あたりの国民負担を大きなものにしてしまうことが、今後の取組みへの足枷となるのではないでしょうか。
これらに対する答弁を踏まえたうえで、改めて償還期間の大幅延長を求めているわが党の見解に対するお答えをいただきたいと存じます。
第2に、わが党は23年度予算における子ども手当の減額措置に伴って特例公債を減額することを求めています。これは、民主党のマニフェスト施策を目の敵にして、その歳出削減に見合う特例公債減額を立てることであえて辱めに遭わせようとしているわけではありません。子ども手当の見直しの要因を震災に求めることが筋違いだと申し上げているわけです。
そもそも、特例公債発行額を極力圧縮するというのが財政運営の基本ルールであり、特例公債の発行によって全体の予算が賄われている以上、歳出の削減を行う一方で建設公債発行対象経費の増額が行われた場合、特例公債を減額して建設公債に振り替えるのが補正予算の通例であるはずです。なぜ今般はそのような対応をとらないのでしょうか。政府・与党が、マニフェスト政策については特例公債に頼らず財源をきちんと確保したという建前と、復興債と建設公債を同時発行しないことにこだわるあまりに、特例公債発行の減額に努めるという財政運営の基本ルールを蔑ろにしてしまっているのが今回の対応ではないかと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
そして、このような対応を今後も踏襲していくとなると、24年度以降の当初予算についても、復興財源となる歳出削減分について、その見合いとなる復興経費に幾ら公債発行対象経費があっても、特例公債発行額を減額しない措置をとり続けるにことになりかねませんが、それで宜しいのでしょうか。本来圧縮できるはずの相当規模の特例公債発行額が毎年度圧縮できないということになってしまいますが、そのことは財政運営として妥当なのか、あわせてご回答願います。
以上を踏まえたうえで、改めて今般の3次補正予算、さらには24年度予算以降における子ども手当の歳出削減分を特例公債減額に充てることを求めます。
第3に、われわれは復旧・復興経費を管理する特別会計の創設を求めています。
今回の政府・与党の復興財源確保のスキームがあまりにいい加減で、国民にとって受益と負担の対応関係が見えにくいものであることを踏まえると、特別会計の創設はいよいよ必要となります。それにより、復興経費は新たな特別会計で管理されることとなるため、その他の経費との差別化が進み、単なる通常の公共事業関係費が全国防災対策費として復興経費に紛れ込んでくるようなことも防がれていくと考えられ、B型肝炎対策との区分も明確になります。
税財源が確保されている復興事業の進捗度合いが明確になり、今後、国民からも更なる税制上の措置が必要な状況にあるのかどうかということが見えやすくなります。復興を名目に講じられた税制措置による増収分が他の事業に費消されることなく、必ず被災地向け歳出に充てられることが明確になることで、国民の納税意識も高まるものと考えます。政府・与党は今回の復興財源確保のスキームについてよくよく居住まいを正したうえで、国民に増税の理解を求めていくべきです。
特別会計設置に関する野田総理の見解を改めて伺います。
復興財源としての税外収入・歳出削減を巡っては、前原政調会長と政府側とで、増税額を巡って行ったり来たりのやり取りが続くという混迷振りを見せつけましたが、相変わらず取扱いがすっきりしません。関連してお尋ねしますが、国家公務員給与特例法案による国家公務員給与の引下げ分は復興財源にカウントされている一方、24年度予算などで連動して行われる地方公務員給与に係る地財措置、更には義務教育国庫負担金や独立行政法人運営費交付金の見直しなどによって生み出される財源については、復興財源に使うのではなく財政再建に使うとの報道もあり、現段階では復興財源としてはカウントされていないようです。
しかし、やはり公的部門全体で捻出する復興財源として整理することが適切であり、今後復興経費の増加が確実な中で、これ以上税負担を増やさないために用いるべきと考えますが如何でしょうか。
三、社会保障・税一体改革
社会保障・税一体改革について伺います。
先般、五十嵐財務副大臣が2015年度までの消費税率の10%への引上げは2段階に分けて行い、その第1段階目は再来年秋の衆院任期満了後に行う旨を示唆しましたが、本来、財政や経済の状況を踏まえ決せられるべき消費税率の引上げのタイミングがそれらとはおよそ関係ない政治日程との関係で決まるというのはいかにもナンセンスであり、いかにマニフェストとの関係で民主党が消費増税の検討を行うことが破綻を来しているかの表れです。
そもそも、あなた方が法案提出の拠り所としている、消費税を含む税制抜本改革の規定を含む平成21年度税制改正法に、民主党は反対されたのではありませんか。先の総選挙におけるマニフェストには、消費税について一言の言及もありませんでした。当時の鳩山代表は「消費税は20年間上げない」ことを公然と述べておられました。社会保障・税一体改革は必要な政策ではありますが、ここでもまた国民に対して言行不一致な行動をとろうとするあなた方は、票を投じた有権者にどう説明するのでしょうか。
また、平成21年度税制改正法附則第104条との関係で今年度内に具体的な法案提出ということになれば、年内にはその概要を固める必要がありますが、議論の時間があまりに不足しています。6月に「成案」をとりまとめて以降、社会保障機能強化の進め方等、具体的な検討が進んでいるようには聞こえてきません。複数税率など逆進性対策をどうするのかといった受益と負担の関係もまったく見えないまま、年末までの2ヶ月ですべてを決めてしまうことには相当無理が伴います。
このように無理に無理を重ね、国民に言ったことと違う政策を押し通そうとするあなた方の社会保障・税一体改革への取組みの前途は多難と考えますが、野田総理としては、この窮屈な日程の中で具体的なスケジュールをどのように進めていこうとされているのか具体的にお示しいただくとともに、改めてご決意を伺います。(続く)