2011年07月19日
「日本の危機管理法制について」講演録(田村重信・その1)
「天に向かって!」(歌・田村重信)が、カラオケ「ウガとジョイサウンド」で歌えます。よろしく!
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この講演は、平成十七年五月二十七日(金)、八王子市倫理法人会経営者イブニングセミナーで行ったものです。
今、なぜ憲法改正か?
ご紹介頂きました田村でございます。
今日は皆さんとこうしてお会いできることを楽しみにしておりました。
今日もらった演題が「日本の危機管理法制について」という、かなり硬い題名でございましたので、レジュメをご用意致しました。従いまして、そちらを参考にして聞いて頂ければと思います。
さて、日本は戦後、奇跡的な復興を遂げ、世界に名立たる経済大国になりました。
しかし、バブルの崩壊で、何となく日本人が自信を失ってきたように思えます。
人間は経済的な豊かさを追求することは大切です。
しかし、ただ「それだけで良いのか」ということを何年か前から感じるようになりました。
今、日本人が一番欠けているもの、それは「日本人としての精神や心」だと思います。
例えば今、憲法改正の議論が盛んに行われていますが、その発端は、一九九〇年八月のイラク軍がクウェイトに侵攻し、翌年一月に多国籍軍が「砂漠の嵐」作戦を開始、勃発した湾岸戦争にあるんですね。
湾岸戦争が起きて、日本はどのような協力をしたのかと申しますと、たくさんお金を出したわけです。
しかし、それは世界の人々から余り感謝されなかった。
お金を出せばそれで良いというのではなくて、世界の人々と共に汗を流して、一緒に活動するということが大切だったわけです。
それはどういうことかと申しますと、「人的貢献」です。
湾岸戦争は、「戦争」です。戦争が終わってから協力するということであっても、一般の民間人では危険が伴います。
そのため、人的貢献は軍人さんでないとできないわけです。
日本は湾岸戦争終結後、まず、海上自衛隊の掃海艇を派遣しました。
その後、PKO法(「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」)をつくって日本の自衛隊が海外でいろんな活動ができるようにしました。
しかし、当時は大変な論争になったんですね。
自衛隊が海外に出るということで「また戦争になるんじゃないか」というような騒ぎが起こりました。最近、国会で牛歩戦術がありましたが、その当時の牛歩戦術は、今よりも、もっとすごい。自衛隊の海外派遣に反対する日本社会党の国会議員が全員辞表を出すという話もありました。
さらに、国会議事堂の周りでは連日のようにデモが行われました。
こうした紆余曲折を経て、日本の人的貢献が行われるようになったわけです。
余りメディアでは、はっきり報道されていませんが、これは日本の「軍事的貢献」なんですね。自衛隊が戦争で荒廃した地に出向いて活動するわけですから、軍人が活動することと同じなんです。
ここで問題になったのは憲法との絡みですね。
つまり、安全保障の観点から第九条に関する議論が大きくなったわけです。
そして、バブルが崩壊した頃から、行政改革がテーマになりました。
「これからの日本は金儲けばかりで良いのだろうか」、「私たち日本人はどんな生き方をすれば良いのだろうか」ということが叫ばれるようになったんです。
作家の司馬遼太郎さんは「この国のかたち」という本を書きました。
この中で「日本はどうあるべきか」ということを提起しておられます。
最近の憲法改正の議論も「日本はどうあるべきか」とうことで、第九条の問題と併せて、前文のあり方についても大きくクローズアップされています。
この前文に「日本のあるべき姿」を盛り込もうというわけです。
日本人が失ってしまった、日本人としての精神や心をどう立て直すか。
これは教育基本法も同じです。
こうした背景があって議論が行われているというわけですね。
しかし私は、いくら憲法や教育基本法が改正されても、それで終わりではないと思うのです。
今、私たちが真剣に考えなければならないのは、倫理、道徳の問題です。
「親を尊敬する、大切にする」、あるいは「自分の住む地域社会をどうやって住みやすい街にするか、日本をもっと素晴らしい国にするためにはどうしたら良いのか、そして世界を平和にするためには何をすれば良いのか」ということを考える。
でもこれは憲法や教育基本法が改正されて済む話じゃありません。
気付いた人が実践することの大切さ
私は、「気が付いた人が実践すること」が大切だと思うんですね。
実は今年一月に「日本論語研究会」というものを立ち上げました。
第一回目は、北区赤羽の文化センターを使って、慶應義塾大学教授の小林節先生とか、陸上自衛隊第一次イラク復興支援群長の番匠幸一郎さん、孫子の兵法研究で有名な元防衛大学教授の杉之尾宜生先生などが来て開催しました。
そうしたら、小林節先生が「私も慶應だし、田村さんも慶應だから、これから慶應でやろう」とおっしゃって下さいまして、第二回目からは、慶應義塾大学を使って、月一回、開催しております。
お陰さまで、少しずつ輪が広まっております。毎回五十名くらいの方が参加されます。
ですから私は、「気が付いた人が実践する」ということを身を持って経験しているわけです。
論語で一番大切なのは「言」ではなくて「行」なんですね。
つまり「言葉だけじゃなくて実行しなさい」というのが論語の教えなんです。
最近の日本人は、いろんなことを分析、評論はするんですが、それを具体的に行動する方は極めて少ない。それが問題なんです。やはり「気が付いた人が実践する」といのが大切だと思います。
第三回目の日本論語研究会で、「論語とそろばん」と題しまして、私がお話を致しました。
渋沢栄一さんのことです。渋沢さんは、生涯五〇〇もの会社をつくりました。日本で初めて銀行をつくったのも渋沢さんです。あと教育にも力を注ぎまして、今の日本女子大学もつくりました。
まさに、近代日本の資本主義社会をつくり上げた人なんですね。
渋沢さんは実は論語に従って商売をやったんです。
商売で一番大切なもの、それは「信用」です。人を裏切らないということです。
日本の製品は非常に性能がいい。
ですから戦前、日本の製品は非常に評判が良かった。
戦後、経済がメチャクチャになっても復興を成し遂げたのは、やはり世界からの日本に対する信用があったからですよ。
今、エルメスやルイビトンといったブランドがありますが、私は日本というブランドをつくったのは渋沢さんだと思います。
ところが最近、おかしくなった。
大企業のトップは平気で嘘をつくようになった。それは日本の信用を失墜させていくことです。
商売においても、人を騙し、誤魔化したら、一時的にはうまくいくかもしれませんが、その後は衰退します。
商売というのは、やはり、良いモノをお客さんに提供する、そして相手を満足させる、そしてお客さんは「また今度もここで買おう」と思う。そうやって信用を維持させるわけです。
論語の一節にこんな言葉があります。
子貢問いて曰く、「一言にして以て終身之を行うべきもの有りや。」と。
子曰く、「其れ恕か。己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ。」と。
子貢とは、孔子の十人の弟子の一人です。子貢が孔子に「たった一言で、生涯を通じて実践すべきことはありますか」と尋ねました。これに対して孔子は「それは『恕』だ。恕とは『思いやり』だ。自分が他人からやって欲しくないことは、自分も他人にやってはいけない」と答えました。
それは言い換えると、「他人のことでも自分のことのように考える」とうことになります。これが大切なんですね。キリスト教にも同じような言葉があります。「愛」です。「自分のしてほしいことを他人にもしてあげなさい」ということです。それと仏教にも「慈悲」という言葉があります。
やはり人間にとって大切なのは、「己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ」ということではないでしょうか。
難しいことかもしれませんが、私はいつもこのことを自問自答しております。
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この講演は、平成十七年五月二十七日(金)、八王子市倫理法人会経営者イブニングセミナーで行ったものです。
今、なぜ憲法改正か?
ご紹介頂きました田村でございます。
今日は皆さんとこうしてお会いできることを楽しみにしておりました。
今日もらった演題が「日本の危機管理法制について」という、かなり硬い題名でございましたので、レジュメをご用意致しました。従いまして、そちらを参考にして聞いて頂ければと思います。
さて、日本は戦後、奇跡的な復興を遂げ、世界に名立たる経済大国になりました。
しかし、バブルの崩壊で、何となく日本人が自信を失ってきたように思えます。
人間は経済的な豊かさを追求することは大切です。
しかし、ただ「それだけで良いのか」ということを何年か前から感じるようになりました。
今、日本人が一番欠けているもの、それは「日本人としての精神や心」だと思います。
例えば今、憲法改正の議論が盛んに行われていますが、その発端は、一九九〇年八月のイラク軍がクウェイトに侵攻し、翌年一月に多国籍軍が「砂漠の嵐」作戦を開始、勃発した湾岸戦争にあるんですね。
湾岸戦争が起きて、日本はどのような協力をしたのかと申しますと、たくさんお金を出したわけです。
しかし、それは世界の人々から余り感謝されなかった。
お金を出せばそれで良いというのではなくて、世界の人々と共に汗を流して、一緒に活動するということが大切だったわけです。
それはどういうことかと申しますと、「人的貢献」です。
湾岸戦争は、「戦争」です。戦争が終わってから協力するということであっても、一般の民間人では危険が伴います。
そのため、人的貢献は軍人さんでないとできないわけです。
日本は湾岸戦争終結後、まず、海上自衛隊の掃海艇を派遣しました。
その後、PKO法(「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」)をつくって日本の自衛隊が海外でいろんな活動ができるようにしました。
しかし、当時は大変な論争になったんですね。
自衛隊が海外に出るということで「また戦争になるんじゃないか」というような騒ぎが起こりました。最近、国会で牛歩戦術がありましたが、その当時の牛歩戦術は、今よりも、もっとすごい。自衛隊の海外派遣に反対する日本社会党の国会議員が全員辞表を出すという話もありました。
さらに、国会議事堂の周りでは連日のようにデモが行われました。
こうした紆余曲折を経て、日本の人的貢献が行われるようになったわけです。
余りメディアでは、はっきり報道されていませんが、これは日本の「軍事的貢献」なんですね。自衛隊が戦争で荒廃した地に出向いて活動するわけですから、軍人が活動することと同じなんです。
ここで問題になったのは憲法との絡みですね。
つまり、安全保障の観点から第九条に関する議論が大きくなったわけです。
そして、バブルが崩壊した頃から、行政改革がテーマになりました。
「これからの日本は金儲けばかりで良いのだろうか」、「私たち日本人はどんな生き方をすれば良いのだろうか」ということが叫ばれるようになったんです。
作家の司馬遼太郎さんは「この国のかたち」という本を書きました。
この中で「日本はどうあるべきか」ということを提起しておられます。
最近の憲法改正の議論も「日本はどうあるべきか」とうことで、第九条の問題と併せて、前文のあり方についても大きくクローズアップされています。
この前文に「日本のあるべき姿」を盛り込もうというわけです。
日本人が失ってしまった、日本人としての精神や心をどう立て直すか。
これは教育基本法も同じです。
こうした背景があって議論が行われているというわけですね。
しかし私は、いくら憲法や教育基本法が改正されても、それで終わりではないと思うのです。
今、私たちが真剣に考えなければならないのは、倫理、道徳の問題です。
「親を尊敬する、大切にする」、あるいは「自分の住む地域社会をどうやって住みやすい街にするか、日本をもっと素晴らしい国にするためにはどうしたら良いのか、そして世界を平和にするためには何をすれば良いのか」ということを考える。
でもこれは憲法や教育基本法が改正されて済む話じゃありません。
気付いた人が実践することの大切さ
私は、「気が付いた人が実践すること」が大切だと思うんですね。
実は今年一月に「日本論語研究会」というものを立ち上げました。
第一回目は、北区赤羽の文化センターを使って、慶應義塾大学教授の小林節先生とか、陸上自衛隊第一次イラク復興支援群長の番匠幸一郎さん、孫子の兵法研究で有名な元防衛大学教授の杉之尾宜生先生などが来て開催しました。
そうしたら、小林節先生が「私も慶應だし、田村さんも慶應だから、これから慶應でやろう」とおっしゃって下さいまして、第二回目からは、慶應義塾大学を使って、月一回、開催しております。
お陰さまで、少しずつ輪が広まっております。毎回五十名くらいの方が参加されます。
ですから私は、「気が付いた人が実践する」ということを身を持って経験しているわけです。
論語で一番大切なのは「言」ではなくて「行」なんですね。
つまり「言葉だけじゃなくて実行しなさい」というのが論語の教えなんです。
最近の日本人は、いろんなことを分析、評論はするんですが、それを具体的に行動する方は極めて少ない。それが問題なんです。やはり「気が付いた人が実践する」といのが大切だと思います。
第三回目の日本論語研究会で、「論語とそろばん」と題しまして、私がお話を致しました。
渋沢栄一さんのことです。渋沢さんは、生涯五〇〇もの会社をつくりました。日本で初めて銀行をつくったのも渋沢さんです。あと教育にも力を注ぎまして、今の日本女子大学もつくりました。
まさに、近代日本の資本主義社会をつくり上げた人なんですね。
渋沢さんは実は論語に従って商売をやったんです。
商売で一番大切なもの、それは「信用」です。人を裏切らないということです。
日本の製品は非常に性能がいい。
ですから戦前、日本の製品は非常に評判が良かった。
戦後、経済がメチャクチャになっても復興を成し遂げたのは、やはり世界からの日本に対する信用があったからですよ。
今、エルメスやルイビトンといったブランドがありますが、私は日本というブランドをつくったのは渋沢さんだと思います。
ところが最近、おかしくなった。
大企業のトップは平気で嘘をつくようになった。それは日本の信用を失墜させていくことです。
商売においても、人を騙し、誤魔化したら、一時的にはうまくいくかもしれませんが、その後は衰退します。
商売というのは、やはり、良いモノをお客さんに提供する、そして相手を満足させる、そしてお客さんは「また今度もここで買おう」と思う。そうやって信用を維持させるわけです。
論語の一節にこんな言葉があります。
子貢問いて曰く、「一言にして以て終身之を行うべきもの有りや。」と。
子曰く、「其れ恕か。己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ。」と。
子貢とは、孔子の十人の弟子の一人です。子貢が孔子に「たった一言で、生涯を通じて実践すべきことはありますか」と尋ねました。これに対して孔子は「それは『恕』だ。恕とは『思いやり』だ。自分が他人からやって欲しくないことは、自分も他人にやってはいけない」と答えました。
それは言い換えると、「他人のことでも自分のことのように考える」とうことになります。これが大切なんですね。キリスト教にも同じような言葉があります。「愛」です。「自分のしてほしいことを他人にもしてあげなさい」ということです。それと仏教にも「慈悲」という言葉があります。
やはり人間にとって大切なのは、「己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ」ということではないでしょうか。
難しいことかもしれませんが、私はいつもこのことを自問自答しております。



