2010年02月01日

谷垣禎一総裁代表質問(その1)

 今日(2月1日)の衆議院本会議での谷垣禎一総裁代表質問全文を掲載します。


一、はじめに

 私は自由民主党・改革クラブを代表して、先の鳩山総理の施政方針演説について質問致します。
 演説において総理は、「いのちを守る」という美しい理念を掲げられ、さらには、マハトマ・ガンジーの「七つの社会的大罪」まで引用されました。しかしながら、国民が政治に求めていることに真正面から向き合っておられないのではないかとの危惧の念を強く抱きました。
 そして何より、私は、今、わが国の民主主義及び法治主義が深刻な危機に瀕していることを指摘しなければなりません。
 民主党小沢幹事長の公設秘書や元秘書が相次いで政治資金規正法違反容疑で逮捕されたにもかかわらず、小沢幹事長はいまだ不十分かつ不可解な説明を繰り返すばかりであります。追及さるべきは、単なる「政治とカネ」の問題ではありません。より憂慮しなければならないのは、このように政治と国民との信頼関係をつくることに消極的な方が、鳩山政権の実質的なリーダーであることです。
 小沢幹事長は、この4ヶ月余りの間、要所で鳩山政権の政策決定の鍵を握ってきました。わが国の内閣総理大臣であり、かつ、民主党の代表である鳩山総理の小沢幹事長に対するコメントが、「2度と出てこない政治家」という礼賛であったり、幾度にもわたる「信じております」という盲目的信頼の発言であったりしたことは、この国の実質的な支配者が誰かということを如実に示しています。
 鳩山総理が小沢幹事長に対してこのようにモノも言えない状況であるとすれば、施政方針演説への質問に当たり、私は、根源的な問いから投げ掛けなければならないのではないかと考えています。あえてお尋ねします。
 鳩山総理、あなたは、本当にこの国の為政者であり、最高意思決定権者なのでしょうか。名実共に民主党を代表されているのでしょうか。「小沢独裁」と言われる政権及び民主党の現状に対する見解を冒頭にお尋ねします。

 小沢幹事長の件については、司直の手が周辺に及んでいる者が、与党の幹事長に居座り、党大会という公の場で検察当局に対決を宣言したり、検察を含む行政の長である総理までが「どうぞ闘ってください」とそれを擁護したりすることは、極めて異様な事態であります。
 権力の座にある者が、その地位を利用して検察当局の捜査に有形無形の圧力を加えていく、そのようなことが許されてよい筈がありません。
 先日の民主党大会では、小沢幹事長の弁明に対し大きな異論も無いばかりか、その後も所属議員から検察批判が繰り広げられています。権力の座にある者には、ただでさえ、「李下に冠を正さず」という慎重さと謙虚さが求められるはずです。
 にもかかわらず、いまや政権の責任者である総理大臣、与党第一党の責任者である幹事長、そしてそこに所属する国会議員・党員までもが、そろいも揃って、検察との対決を公言し、喝采する、そんなことでは、わが国の法治国家としての実質を、政権の側から崩すことになってしまいます。
 私も身を置いてまいりました法曹界では、剣と天秤を持つ正義の女神の姿が、司法の公正さを表わす象徴として尊ばれてきました。天秤は「正義」を、剣は「力」を表し、剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力に過ぎないとして、法秩序がその適正な執行と車の両輪の関係にあるものとされてきました。
 更に重要なことは、この正義の女神は目隠しをしているということです。これは、法秩序がすべての人に等しく適用されるべきとの理念を体現するものとされています。
 このような司法の公正の精神からは、検察の捜査が、権力のあり処にとらわれず、公平・公正に行われ、ときにはそれが政権与党に及ぶことは、むしろ健全なことと受け止めるべきです。
 然るに、今般の鳩山総理や小沢幹事長、そして多くの民主党議員の対応には、残念ながら、権力を有するが故に求められる謙虚さが決定的に欠けており、自浄作用の断片すら存在しません。私は、厳しい自省を求めたいと思います。鳩山総理、いかがでしょう。反論はございますか。ご意見を求めます。

 今回の件で最も遺憾なことは、鳩山総理が、ご自身の献金問題も含めて、「既に総選挙前から出ていた話で、こういう問題があるにもかかわらず、民主党を選んでいただいた」と国民の理解が先般の総選挙で得られたかのような発言をされたことです。 しかし、今回の小沢幹事長に関わる政治資金規正法違反事件や、鳩山総理への御母堂からの12億6,000万円にも上る贈与の話は、総選挙前には明らかにされておりませんでした。
 国民は、先般の総選挙で、確かにマニフェストを信じ、鳩山政権への交代を選択したのだと思います。しかし、政府がまとめた平成22年度予算案は明白な「マニフェスト違反予算」であり、マニフェストはもはや過去の空証文となっています。
 更には、新たな内閣の実態は「小沢内閣」であり、その影の総理大臣に重大な「政治とカネ」の問題が発生し、その独善的な検察批判に対して、民主党議員が万雷の拍手か、重苦しい沈黙で応えるに及んで、このような党のために自らの票を投じたのではないという思いに駆り立てられている国民も少なくないのではないでしょうか。

 このような「小沢独裁」に堕した鳩山政権には、もはや民意に支持された政権としての正統性は喪われていると考えますが、総理は、なお、国民の信は鳩山政権にあるとお考えなのでしょうか、ご見解をお伺いします。

 わが自民党は、昨年夏の総選挙に敗北して以来、「日本らしい日本」を建設するという結党以来の党是に立ち返り、国民の皆様の信頼を再び獲得できるよう、努力を積み重ねてまいりました。保守主義とは、人間の良心、矜持に期待する行動規範であるとともに、一人の判断より多数の判断、一時期の熱情より時代を超えて積みあげられてきた良き伝統、規範、秩序を大切にする。
 時代に適さぬものは改め、秩序のなかに進歩を求めるということであります。
現在の民主党の姿はわれわれが目指すものとは対極にあるものと言わざるを得ません。すなわち、鳩山民主党政権から浮かび上がるのは、衆知を集めてより良きものをつくっていくこととは無縁な姿であります。その如実な表現が小沢幹事長ではないでしょうか。
 1人で密室ですべてを決め、小沢幹事長がいなければ司令塔も羅針盤もないというのが政権の実態です。政府への政策の一元化は掛け声に過ぎず、進んでいるのは小沢幹事長への権力の一元化であります。わが党は、このような鳩山政権の本質たる「小沢独裁」と徹底して対峙していく決意です。

 まずは、鳩山総理の偽装献金疑惑及び小沢幹事長の土地購入に係る政治資金疑惑の双方について、関係者を幅広く証人や参考人として国会に招致し、真相究明のために立法府としての役割を果たすことを求めます。
 その上で、予算及び予算関連法案の質疑・論戦を通じて、鳩山政権の闇を追及し、総辞職又は解散総選挙を迫ってまいります。

shige_tamura at 16:22│Comments(1)TrackBack(0)clip!自由民主党 

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この記事へのコメント

1. Posted by 観音寺   2010年02月02日 19:49
>鳩山総理、あなたは、本当にこの国の為政者であり、最高意思決定権者なのでしょうか。名実共に民主党を代表されているのでしょうか。


ここの所、痛烈でした。
鳩山総理の答弁は相変わらず・・・でしたが。何と言うか、鈍感なんでしょうか。

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