2010年02月01日

谷垣禎一総裁代表質問(その3)

 三、政治主導のあり方及び外交
 
 次に、「政治主導」のあり方についてお伺いします。
 議会制民主主義の下、国民に選ばれた国会議員が中心となって政策の決定・実行を行うべきであるとの考え方にはもちろん賛成です。利害関係が錯綜する中で、自らの信念と主義・主張に沿って、必要な調整を行い、いずれの道を進むべきかの選択をするのが政治の役割と心得ます。
 しかしながら、鳩山政権の唱える「政治主導」には幾つかの点で違和感を拭えません。
 その原因の第一は、本当に求められている政治決断がなされていないことにあります。
 昨年11月13日の首脳会談でオバマ大統領が普天間基地問題の早期決断を促したのに対し、鳩山総理自ら「信じてほしい」と応えたにもかかわらず、鳩山政権は、12月15日には移転先の決定を先送りしました。総理の「信じてほしい」とか「信じる」という言葉がいかに中身に乏しいものであるかが、ここでも明らかにされた訳です。

 総理は、その後、何よりも沖縄県民の気持ちを大事にしながら5月までに結論を出す旨再三答弁されていますが、他方で平野官房長官は、「沖縄県名護市長選の結果を斟酌してやらなければいけないという理由はない」と発言され、移転先の合意がなくても移転先の決定を行うかのような発言を繰り返されています。

 平野官房長官の発言のとおりであるとしたら、鳩山政権は、時間を空費していたずらに沖縄県民の心情を弄んでいるだけです。結局は、国の責任で決めるというのなら、何のために決断に何ヶ月もの時間を費やしているのでしょうか。「政治主導」を叫ぶにふさわしい決断力や胆力を欠いているだけではないかという疑いを禁じえません。
 政治決断をここまでずるずると引き延ばしていることで、緊密であった日米同盟に深い亀裂が入り、国益の重大な損失を招いています。これらの責任を総理はどうお考えでしょうか、お尋ねします。また、5月に適切な移転先を決定できなければ、いかなる責任をお取りになるかについてもお伺いいたします。

 鳩山政権の「政治主導」への疑念はこの点にとどまりません。予算編成においては政務三役が電卓を叩いたり、官僚より夜遅くまで働いたことをもって「政治主導」を誇るがごとき場面すらありました。このように政治家が官僚化することが「政治主導」というのであれば、履き違えも甚だしいことと考えます。
 そもそも、黙っていても背中に人が付いてくるのがリーダーであり、「私が主導している」と一々言わなければならないとすれば、それこそリーダーシップが欠如していることの表れに他なりません。鳩山政権が「政治主導」を呼号すればするほど、「政治主導」の空回りを感じざるを得ません。内閣において「政治主導」が真に機能しているのであれば、最高意思決定権者である総理のおられる官邸こそが存在感を発揮するはずです。
 しかし、内閣の実態は、政治家が官僚化し、本来行われるべき政治決断が空洞化している「政治主導」ならぬ「政治空洞」なのではないでしょうか。自らの政治的指導力への評価とあわせて、鳩山総理のお考えを伺います。

 政府参考人制度の廃止や内閣法制局長官の答弁禁止にも問題があります。
 「政治主導」の実現に向けて、国会審議の場において政治家同士が十分に議論を尽くす前提として、国会議員が、その議論の基礎となる情報収集を自由に行うことができなければなりません。その際、専門的技術的知見を有する官僚に質問を行うことは不可欠ですし、「官僚隠し」によって国会の行政監視機能が弱体化することがあってもいけません。
 憲法解釈に関する答弁が多い内閣法制局長官についても同様であります。実際、先日の予算委員会において、私が天皇の憲法上の地位につき質問した際、内閣法制局長官に答弁いただければ、より審議がスムーズであったことは疑いようもありません。
 いずれにしても、「政治主導」の名の下に不都合な真実を覆い隠すことは、国民の手に政治を取り戻すどころか、国民の知るすべを奪い、政治を国民の手の届かないところに追いやってしまうことになりかねません。それは、「政治独裁」に他なりません。
 政府参考人制度の廃止や内閣法制局長官の答弁禁止について慎重な対応を求めますが、総理の見解をお伺いします。

四、おわりに

 私は、今回の質問を通して、内政・外交の全般にわたって民主的プロセスに鈍感な鳩山政権における「小沢支配」の一端について指摘させていただきました。
 これに対する鳩山総理の危機意識や存在感は驚くほど乏しいものです。今、インターネットの動画投稿サイトにおいては、鳩山総理が野党時代になされた発言と総理大臣になってからされた答弁をつなぎ合わせ、その矛盾をあからさまにした「鳩山由紀夫VS鳩山由紀夫」という動画が大きな反響を呼んでいると聞きます。総理には、その場しのぎの言葉がいかに多いか改めて思い知らされます。

 総理は、年頭所感で「ハネムーンの期間は過ぎました。」と述べられましたが、果たして国民にとってこの4ヶ月余りの新婚旅行は如何なものであったのでしょうか。仲人がいつの間にか影のように寄り添い、旅行計画は好き放題に変えられ、楽しみにしていた場所に行けず、約束されたお土産も買えませんでした。過去の疑惑が噴出しても「分かっていて結婚したはずだ」と開き直られる始末。新郎に将来設計がまったくなく、今後生活が成り立つ見通しもありません。「信じてくれ」と繰り返されても、空しく響くばかりです。

 いまや鳩山政権の政権たる正統性は、政策面でも政権担当者の資質の面でも崩壊しました。日米間の信頼に亀裂を入れ、経済財政のマクロの政策が不在のままミクロの政策に血道をあげて、テレビ映りの出来栄えに終始する。せめて、今国会を通じ、自ら及び小沢幹事長の疑惑の真相解明に全力を尽くすこと、予算案及び予算関連法案の論戦に当たっては、われわれ野党の主張に十分耳を傾け、改めるべき政府・与党の過ちは速やかに改めることを求めて、私の質問を終わります。(以上)

shige_tamura at 16:12│Comments(1)TrackBack(0)clip!自由民主党 

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この記事へのコメント

1. Posted by ずるやすみ   2010年02月03日 00:18
会社をずる休みしてテレビで見ていました。

「四、おわりに」の部分の演説は秀逸でした。
相当文才のある方のものとお見受けしました。

氏の気迫も感じられとても印象に残りました。

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