2009年10月30日

自民党・小池正勝参議院議員代表質問(参院本会議)

(21・10・30)

 私は、自由民主党・改革クラブを代表し、鳩山総理の所信表明演説に対し、地方の立場から質問をいたします。
 総理は、「国民の命と生活を守る政治」、「地域主権の実現」、「無駄遣いの徹底的な排除」を訴えられました。どうか、その初心を忘れず、今後とも日本国と国民のために全力を尽くしていただきたいと思います。
 問題は、その政治理念をいかに具体的に政策として実行していくかにあります。

(地方との協議)
 まず初めに、補正予算執行停止についてお尋ねいたします。
 民主党は先般の総選挙において、「地域主権の確立」と「国と地方の協議の場の設置」を訴えられました。このことから、国が決定したことを、まさか一方的に地方に押し付けるようなことはないと、地方の皆様は考えておられるのではないでしょうか。
 しかしながら、今般の補正予算執行停止について、地方と協議した形跡はまったく見られません。補正予算が五月末に成立したことを受け、地方議会は六月定例議会、および九月の定例議会で地方負担分について補正予算を組み、事業を執行する準備を進めていたことはご承知の通りであります。そこに降って湧いたように執行停止がなされ、地方自治体に大きな混乱が生じ、地方住民も困惑しています。こうした混乱について、総理はどのように受け止められておられるのか、また、なぜ執行停止するにあたって地方と相談をされなかったのか、その理由をお聞かせ下さい。
 先日の所信表明演説でも、「地域のことは地域に住む住民が決める」とおっしゃったことと矛盾しませんか。お尋ねします。

(子育て応援特別手当)
 例えば、「子育て応援特別手当」について具体的に伺います。
 この手当を政府は一方的に執行停止いたしました。これは、早期の支給を心待ちにしていた子育て世帯の期待を踏みにじるものであります。しかも、全国の市町村では議会の議決を経て事業費が予算化され、給付申請手続について既に広報がなされています。しかも、ドメスティック・バイオレンス被害者にあっては、十月一日から申請の受付が始まるなど、事業は既に進行しているのです。
 にもかかわらず、一方的に執行停止したことは、住民や自治体の現場に大きな混乱を与えています。また、国と地方の信頼関係を損なうものです。このような一方的な執行停止が許されるはずはありません。
 「国と地方の協議の場」はあったのでしょうか。これが「地域主権の実現」と言えるのでしょうか。まさに正反対ではありませんか。ご見解を伺います。
 また鳩山内閣は、子育てを応援するため、来年度から「子ども手当」を支給するとしています。来年の「子ども手当」は必要で、今年の「子育て応援特別手当」はなぜ不要不急なのでしょうか。ムダなのでしょうか。明快なご答弁を求めます。

(森林整備事業)
 申し上げるまでもなく、平成二十一年度補正予算は、昨年秋に起こった経済危機に対する直近の対策と、中長期的な発展を図るための対策を主な柱に編成されたものです。
 この中から三兆円を執行停止するに当たり、総理は十月七日、記者団に対し、「ムダ遣いが補正予算の中に多く存在しているのではないかとの認識のもと、まずは補正予算の中のムダ遣いはなくそうということで各省庁が全力を挙げて見直しを行った」と述べられました。
 ところが個別の事業を見ると、なぜ執行停止されたのか理由が判然としない事業も多くあります。
 補正予算が執行停止された事業の中に、「森林整備事業」がありますが、森林は、二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の防止に大きな役割を果たすばかりでなく、大雨の際に洪水や崖崩れを防ぐ役割を果たし、樹木は建築材料をはじめ多くの有用な資源として利用されています。また、菅副総理は、林業を雇用の場として期待している旨の発言を度々されております。
 「森林整備事業」は、間伐や路網整備を進め、間伐材の有効利用を図る事などを中身とする事業です。この事業の、どこがムダ、あるいは不要不急と判断されたのでしょうか。所信表明で、二十五%の二酸化炭素削減を目指し、「緑の産業を成長の柱として育てあげる」とおっしゃったことと矛盾しませんか。お尋ねします。

(地方消費者行政支援事業)
 次に消費者担当大臣に伺います。
「地方消費者行政支援事業予算」も執行停止対象事業となっておりますが、この事業は、地方の消費生活センターの設置・拡充、相談員のレベルアップ等の地方の取り組みを支援する事業であり、消費者庁を設置するにあたって、社民党も民主党も、消費生活センターの充実・強化を主張されていたと記憶しております。
 特に、福島大臣は社民党党首として、消費者庁設置法案審議にあたり、本年二月、センターの充実強化をはじめ地方消費者行政を抜本的に強化するよう、当時法案担当大臣だった野田消費者行政担当大臣に対して直接申し入れをされたのではないですか。
 そのご本人が、この事業の予算を、なぜムダ、あるいは不要不急な予算と判断されたのでしょうか。お尋ねします。

(地域医療再生臨時特別交付金)
 厚生労働大臣に、「地域医療再生臨時特別交付金」について質問いたします。この交付金についても政府は、七百五十億円を執行停止しました。
 徳島県をはじめ全国各地で、車で何時間も走らないとお産ができないという産婦人科医不足、子供が病気にかかっても小児科がなくて車で何時間も走らなければ小児科医に診てもらえない等、地域医療の崩壊が問題となっています。
 この交付金によって、「地域医療再生計画」を策定し、地域医療に関する諸問題を抜本的に解決しようと、全国各地で取り組んでいた矢先です。このような一方的な執行停止は、地域医療の再生に遅れが生じることはもとより、地域医療の崩壊が加速することにもなりかねません。
 医療の問題は命の問題です。これが「命を守る政治」と言えるのでしょうか。ご見解を伺います。なぜムダ、あるいは不要不急と判断したのか、お訊ねします。

(執行停止事業の解除)
 総理にお尋ねします。
 一旦、国会で議決され、地方も執行の準備を進めていた事業が、ムダあるいは不要不急な事業として、突然、執行停止されれば、地方が混乱することは明らかなことです。多くの都道府県から、執行停止の解除を求める意見書が政府に対し提出されていると聞いておりますが、当然のことと思います。
 地方から意見書が出ている以上、また、「国と地方の協議の場の設置」を約束されている以上、当然、再検討されると存じます。
 昨日、藤井財務大臣は「執行停止した事業について、来年度予算の中で復活させることもあり得る」と答弁されました。総理も、同じ考え方をされておられますか、伺います。
 今年度はまだ半年残っております。今後政府においての再検討をされ、ムダ、あるいは不要不急でないと判断が変わった場合は、執行停止を解除するお考えはあるのか、併せてご答弁下さい。

(暫定税率廃止に伴う補填措置)
 次に、来年度予算の編成方針、および今後の施政方針に関しお伺いいたします。
 まず財務大臣にお尋ねいたします。
 財務大臣は、再編された政府税制調査会の会長に就任されたと伺っております。民主党のマニフェストを拝見いたしますと、「自動車関係諸税の暫定税率を廃止する」とされており、財務大臣も廃止に意欲的な発言をされていると承知しております。廃止によって国税で約一・七兆円、都道府県税・市町村税で約八,000億円の減収が見込まれております。
 地方の減収分については、適切な補填措置を講ずるというだけで、具体策は示されておりません。また、肝心の地方交付税の増額について、総務省の来年度予算概算要求では、金額が明示されない事項要求として提出されています。
 財務大臣は、事項要求されたものについては、「断固査定する。ほとんど実現できないだろう」と述べられたとの報道があります。
 ただでさえ厳しい地方財政が、暫定税率廃止によって減収となれば、多くの自治体が財政破綻に追い込まれることも考えられます。これでは「地域主権を確立し、第一歩として地方の自主財源を大幅に増やします」という総選挙の公約に逆行することになりませんか。
 どのような方針で今後望まれるお考えか、お答え願います。

(原子力政策)
 総理は九月に開かれた国連気候変動首脳会合で、日本の温室効果ガスを二〇二〇年までに、一九九〇年比で二五%削減するとの目標を発表されました。
 温室効果ガスの排出を削減するためには、エネルギー源を化石燃料から非化石燃料に転換していくことと、使用エネルギーを減らしていくことの両面の対策が不可欠です。
 まずエネルギー源の転換促進策、とくに原子力発電政策についてお伺いします。
 現在、非化石燃料である原子力による発電は、総発電量の三分の一を占め、今後ますます重要性を増しております。民主党のマニフェストを拝見しますと、「原子力利用について着実に取り組む」と記されており、この方針に基づき、小沢環境大臣は鹿児島県川内市に建設が予定されている原発3号機について、温室効果ガス排出抑制のために3号機を最大限活用することを求める意見書を経済産業大臣あてに提出されたと承知しております。
 一方、連立を組まれておられる社民党は、マニフェストに「脱原発をめざす」と謳っており、福島党首は、川内原発については問題がある旨発言されたと伺っております。
 福島大臣に伺いますが、政府与党になったことにより、原子力政策についての方針を転換されるお考えはありますか。お答え下さい。
 また総理は、原子力発電について、今後どのような方針で進めていかれるのか。また、プルサーマル計画を含め、核燃料サイクルを今後どのように進めていかれるお考えか伺います。

(エコポイント制度、エコカー補助・減税)
 温室効果ガス削減のための、省エネルギー政策について伺います。
 部門別の二酸化炭素排出量の推移を見ますと、産業部門では減少しているのに反し、家庭部門は増加が続いております。燃料別の内訳では電気からが四十二%、ガソリンからが二十七%と、この二つで全体の七割を占めています。すなわち家電製品と自家用車からの排出が七割を占めているわけです。
 そこで、麻生内閣では、地球温暖化対策と景気浮揚対策の二つの効果を図るため、省エネ家電の購入を促す「エコポイント制度」と低燃費車への買い替えを支援する「エコカー補助およびエコカー減税」を実施することといたしました。
環境大臣は、来年4月以降も実施すべきとのお考えのようで来年度予算の概算要求に盛られたが、経済産業大臣は概算要求に盛り込まなかったと伺っております。
政府として今後どのような方針で臨まれるのか総理のご所見を伺います。

(中小企業減税・予算)
 今日、地方経済は非常に厳しい状況にあります。
 公共事業については来年度予算を十四%削減する概算要求がなされており、地方の建設業は今後さらに厳しい状況に追い込まれることになります。
 中小企業については、「町の小さな会社や工場を支える」ため、「中小企業の法人税を十一%に引き下げます」と公約されました。
 ところが峰崎財務副大臣は十月二十二日の記者会見で、「鳩山首相の諮問に入っていない」と述べられ、来年度税制改正には盛り込まない見通しを述べられています。なぜ公約を諮問しなかったのか、ご答弁をお願いいたします。
 また、民主党は総選挙の公約で、中小企業予算を三倍に増やすとしておりますが、来年度予算の概算要求では六・四%の増加にとどまっております。今後三倍増に向け、どのように対処していかれるお考えか、併せてお答え下さい。

(農業政策)
 いずれにしても、こうした政策を実行していけば、地方の経済を底上げするどころか、冷やすことになりませんか。地方経済の現状と今後の地方活性化策について、総理はどのように考えておられるのか、ご所見を伺います。
 地域経済を支えるいま一つの主要産業である農業の問題について総理にお伺いいたします。
 民主党は前回の参議院選挙、つまり、平成十九年の選挙で、農業の戸別所得補償制度をマニフェストに掲げられ、我が自民党は農村部で惨敗いたしました。
民主党の、「すべての農家の所得を直接補償する」というスローガン、この言葉に皆振り回されてしまい、どの農家も一律に所得が補償されるという、バラ色の生活が実現されるかのような錯覚に陥ってしまったのです。
 しかし、このたび政府が示された戸別所得補償制度に関するモデル対策を見て、今までの宣伝は何だったのか、と全く拍子抜けしてしまいました。
 まずは助成対象ですが、すべての農家が対象ではなく、あくまでコメが中心であり、水田農家が対象であります。
 農業生産額、約九兆六千億のうち、コメは一兆八千億円に満たず、二割弱にすぎません。また、食糧自給率を高める目的もあるのであれば、余剰が生じ減反を実施している米作だけを対象とするのは納得がいきません。野菜・果樹・酪農等はどうなさるおつもりでしょうか。こうした生産物については、当面、自民党政権時代と同じ政策を続けられるのでしょうか。
 仮に、他品目にも助成を広げた場合、戸別所得補償に係る予算の総額はどの程度になるとお考えでしょうか。試算があればお示し下さい。
 この制度の前提としてお伺いしますが、民主党は農産物をはじめとする市場開放を主張していらしたと認識しておりますが、豪州や米国とのFTAをはじめとする農産物の市場開放が進められた場合、農産物の価格が暴落はしないのでしょうか。その場合、助成は際限ない金額になるのではないのでしょうか。
 さらに、この仕組みでは、全国で一律の単価を交付するため、コストを圧縮し、高く売れる商品を生産した農家もそうでない農家も、政府が同様に面倒をみるという、極めて不公平な制度のように思われます。これでは日本農業は産業として強くならず、いつまでも多額の税金をつぎ込まざるをえません。日本農業の根本的な問題である高コスト体質を変えない限り、日本の食糧安全保障に未来はないと考えますが、いかがでしょうか。総理のご所見をお伺いし、私の質問を終わります。

shige_tamura at 15:19│Comments(1)TrackBack(0)clip!自由民主党 

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この記事へのコメント

1. Posted by 観音寺   2009年10月30日 17:25
小池議員の質問、良かったですね。細田前幹事長を思わせるような鋭さでした。(雰囲気も似ておられますね)
ネット上では「参院にもクリオネが現れた?!」なんて評判になっているようで。
でも首相の答弁は相変わらずでしたね(苦笑)

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