2009年07月24日

働く幸せ(大山泰弘著、WAVE出版)

働く この本は、ベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)で紹介された知的障害者雇用で有名になった日本理化学工業(株)の会長が書かれたもの。
 この本も、良い本です。以下、2か所を紹介します。


 ふと私の口から出たのはこんな質問でした。
「うちの工場には知的障害者の人たちが働いているのですが、どうして彼女たちは施設より工場にきたがるのでしょう」

 唐突な問いかけでしたが、ご住職はつぎのように答えてくださいました。

「人間の幸せは、ものやお金ではありません。人間の究極の幸せは、次の4つです。
その1つは、人に愛されること。2つは、人にほめられること。3つは、人の役に立つこと。そして最後に、人から必要とされること。障害者の方たちが、施設で保護されるより、企業で働きたいと願うのは、社会で必要とされて、本当の幸せを求める人間の証しなのです」

 私は、思わず、言葉をなくしました。
 そして、胸につかえていたものが、すっととれた気がしました。
 私が根本的に間違っていたことを気づかされたのです。


 日本人の「共生の思想」

 ただ、私は、日本人には「働く幸せ」を分かち合うことができると信じています。
 なぜなら、日本には古くから「共生の思想」が根づいているからです。
 たとえば、えびす様。みなさんは、商売繁盛の神様であるえびす様が、足の立たない障害者だったことをご存知でしょうか?
 神話事典によると、えびす様は「蛭子(ひるこ)」という、いまでいう小児麻痺のような病気だったようです。生まれてすぐ笹舟に乗せて流されてしまい、潮の流れでめぐりめぐってたどり着いたのが瀬戸内海。笹舟を見つけた漁師が、かわいい赤ちゃんといって家に連れて帰り、自分で育てることにしました。そして、町の人たちもみんな大事にして、神様と祀(まつ)ったのだといいます。
 祀った理由がおもしろい。足がないことをもって、「お足が出ない」(お金が出て行かない)といってありがたく祀ってきたのです。ユーモアとやさしさを感じさせる、優れた「共生の思想」だと思います。
 このように、日本には素晴らしい文化が残されています。
 戦後、日本はアメリカの影響を強く受けてきました。もちろん、好ましい影響もたくさんありましたが、こと経済に関しては 「マネー至上主義」 をはじめとする悪影響もあったように思います。このたびの世界的な大不況も、アメリカのサブプライムローン問題に端を発しています。

 そろそろ、私たちは日本古来の価値観に立ち戻ってみてはどうでしょうか?
 人間の幸せの道を説くために、「働」という漢字をつくり出したのも日本人です。
 人のために動くこととして「働」。実に素晴らしい考え方ではないでしょうか?
 お金のためでもない、自分のためでもない、人のために動くからこそ、人は、ほめられ、人の役にたち、必要とされる――。 

 私たち日本人は、もう一度このことを思い出すことによって、「働く幸せ」を取り戻し、もっと生き生きとした社会をつくり出すことができるに違いありません。
経営者も、正社員も、派遣社員も、男性も女性も、老いも若きも、そして障害者も……。分け隔てなく、みんなが「働く幸せ」を実感できる社会――。

 私はそんな社会は決して“夢物語”ではないと思います。

shige_tamura at 18:42│Comments(4)TrackBack(0)clip!本の紹介 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by 「働く幸せ」公式ブログ   2009年10月10日 23:12
はじめまして。
WAVE出版の田中と申します。
このたびは、ブログにて大山泰弘さんの『働く幸せ』を取り上げてくださいまして、
まことにありがとうございました。

「働く幸せ公式ブログ」(http://ameblo.jp/hatarakushiawase/)にて、
リンクを貼らせていただくともに、
お礼の文面を掲載させていただきました。
ご覧いただけますと幸いです。

これからも、応援していただけるような出版活動に全力で取り組んでまいります。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
3. Posted by shige_tamura   2009年10月12日 09:08
> はじめまして。
> WAVE出版の田中と申します。
> このたびは、ブログにて大山泰弘さんの『働く幸せ』を取り上げてくださいまして、
> まことにありがとうございました。
>
> 「働く幸せ公式ブログ」(http://ameblo.jp/hatarakushiawase/)にて、
> リンクを貼らせていただくともに、
> お礼の文面を掲載させていただきました。
> ご覧いただけますと幸いです。
>
> これからも、応援していただけるような出版活動に全力で取り組んでまいります。
> 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

本当に良い本でした。
良い国をつくりたいですね。
日本論語研究会を主宰しています。
良かったらおいでください。
ホームページです。http://www.rongoken.jp/index.html
こちらこそよろしくお願いします。

田 村 重 信

4. Posted by WAVE出版 田中   2009年10月13日 11:38
田村さま

コメントありがとうございます。
日本論語研究会のサイト訪問いたしました。
「論語」への関心が高まっているようですね。
これは、何か社会のサインなんだろうという気がいたします。
ときどき、訪問させていただきます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
5. Posted by 働く幸せ公式ブログ   2009年11月25日 11:48
たいへんお世話になっております。

現在、「ビジネス書大賞biz-tai2010 」(http://biztai.jp/index.html)の選考が進められています。

この賞は、日本のビジネスパーソンの成長、ひいては日本の産業界の発展に貢献することを目的に創設されました。

書店、ブロガー、マスコミなど60名の選考委員による第1次審査、ネット上での一般投票による第2次審査などを経て、12月に大賞が決定します。

ただいま、ネット上の一般投票が行われています。
ご関心のある方はぜひ、票を投じてください。

『働く幸せ』も、第1次審査を高評価で通過した書籍27冊 に選ばれています。
ぜひ、ご覧ください!

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
ランキング一覧

人気blogランキング

人気blogランキングに参加しました。
応援よろしくお願いします。
月別アーカイブ
最新コメント