2009年07月14日
民主党の空想と幻想の景気対策
「政権交代」は「景気後退」
民主党は4月8日の「緊急経済対策」で「2年間で景気を回復させる」と明記していた。
同対策は、同党がこれまで掲げてきた「子ども手当」や高校授業料の無料化、高速道路の原則無料化などを、2年間に21兆円を投じて集中的に実施し、可処分所得を2割増やそうというもの。
同党が今、総選挙のために準備しているマニフェストでは4年間で段階的に約17兆円の財源を捻出して所要の政策に投じるらしい。政策はさきの緊急対策と同じようだが、期間も規模も異なるのはどういうことか。
このため、対策の中心的な政策である「子ども手当」は、最初の2年間を半額支給にし、所得制限も設ける方向となった。また、農産物などの市場価格と生産コストの差額を交付する戸別補償も3年後に先送りされるようだ。
緊急経済対策に比べ、スピード感もスケールも格段に小さくなり、これでは「可処分所得の2割増」は達成できず、当然、「2年間で景気を回復させる」との約束は破棄されたとみなくてはならない。
同党からマニフェスト案と同対策との差異についての説明はないが、細かく精査した結果、思ったより「無駄使い」がなかったのがということだろう。しかし、マニフェスト案に示された財源ですら、実現性は怪しい。与謝野馨財務大臣は「空想と幻想の世界で遊ぶのは楽しいことではあるが、国民生活がそれによって保障されるという錯覚を与えることは、ほとんど犯罪に近い」と酷評した。
もともと、民主党の緊急経済対策については、これで消費が活発化するかどうか疑問の声が上がっていた。
例えば、「子ども手当」。同手当の創設に伴い配偶者控除や扶養控除などが廃止されるため、同手当が支給されても、それほど可処分所得は増えない。また、児童手当も同時に廃止されるので、同手当を受けている家庭の手取りはさらに減る。
確かに、子供の数が多ければたくさんの給付が受けられるが、対象となる中学生以下の子供がいない家庭では、まるまる増税となり、可処分所得は逆に減ることになる。
他の政策も同様だ。要するに、予算を付け替えるだけのことで、恩恵を受ける人と受けない人とで効果が相半ばし、全体としてはほとんど変わらないということだ。
問題点が多い民主党の「緊急経済対策」だが、それでも、同党が景気対策に関して示した唯一の目標といっていい。それ以外は「解散・総選挙こそ、最大の景気対策」として、麻生太郎総理の経済対策をことごとく批判してきたといって過言ではない。
これに対し麻生総理は昨年来、いち早くリーマンショックの影響の大きさを見抜き、4回にわたる経済対策をまとめて成立させた。依然、厳しい状況にあることは変わりないが、もし、民主党の主張通り総選挙をやっていたら、少なくとも「最悪期は脱した」といわれる現在の経済状況はなかっただろう。
「政権交代は景気後退」――民主党に経済運営を任せたら、せっかく曙光が見てきた日本経済が、再び後退するのは火を見るより明かだ。
(以上、「自由民主」7月21日号より転載しました)
民主党は4月8日の「緊急経済対策」で「2年間で景気を回復させる」と明記していた。
同対策は、同党がこれまで掲げてきた「子ども手当」や高校授業料の無料化、高速道路の原則無料化などを、2年間に21兆円を投じて集中的に実施し、可処分所得を2割増やそうというもの。
同党が今、総選挙のために準備しているマニフェストでは4年間で段階的に約17兆円の財源を捻出して所要の政策に投じるらしい。政策はさきの緊急対策と同じようだが、期間も規模も異なるのはどういうことか。
このため、対策の中心的な政策である「子ども手当」は、最初の2年間を半額支給にし、所得制限も設ける方向となった。また、農産物などの市場価格と生産コストの差額を交付する戸別補償も3年後に先送りされるようだ。
緊急経済対策に比べ、スピード感もスケールも格段に小さくなり、これでは「可処分所得の2割増」は達成できず、当然、「2年間で景気を回復させる」との約束は破棄されたとみなくてはならない。
同党からマニフェスト案と同対策との差異についての説明はないが、細かく精査した結果、思ったより「無駄使い」がなかったのがということだろう。しかし、マニフェスト案に示された財源ですら、実現性は怪しい。与謝野馨財務大臣は「空想と幻想の世界で遊ぶのは楽しいことではあるが、国民生活がそれによって保障されるという錯覚を与えることは、ほとんど犯罪に近い」と酷評した。
もともと、民主党の緊急経済対策については、これで消費が活発化するかどうか疑問の声が上がっていた。
例えば、「子ども手当」。同手当の創設に伴い配偶者控除や扶養控除などが廃止されるため、同手当が支給されても、それほど可処分所得は増えない。また、児童手当も同時に廃止されるので、同手当を受けている家庭の手取りはさらに減る。
確かに、子供の数が多ければたくさんの給付が受けられるが、対象となる中学生以下の子供がいない家庭では、まるまる増税となり、可処分所得は逆に減ることになる。
他の政策も同様だ。要するに、予算を付け替えるだけのことで、恩恵を受ける人と受けない人とで効果が相半ばし、全体としてはほとんど変わらないということだ。
問題点が多い民主党の「緊急経済対策」だが、それでも、同党が景気対策に関して示した唯一の目標といっていい。それ以外は「解散・総選挙こそ、最大の景気対策」として、麻生太郎総理の経済対策をことごとく批判してきたといって過言ではない。
これに対し麻生総理は昨年来、いち早くリーマンショックの影響の大きさを見抜き、4回にわたる経済対策をまとめて成立させた。依然、厳しい状況にあることは変わりないが、もし、民主党の主張通り総選挙をやっていたら、少なくとも「最悪期は脱した」といわれる現在の経済状況はなかっただろう。
「政権交代は景気後退」――民主党に経済運営を任せたら、せっかく曙光が見てきた日本経済が、再び後退するのは火を見るより明かだ。
(以上、「自由民主」7月21日号より転載しました)