2009年06月10日
計画破産国家 アメリカの罠(原田武夫著、講談社)

「略奪に協力した経済評論家たちの大罪」として、売れっ子女性エコノミストを批判する。「金融リテラシー」とか何とか、結局は「当たるも八卦、当たらぬも八卦」と言うのである。
経済本が好きな人にこそ、一読を薦めたい。
以下、「景気回復」について掲載する。
しばしば私たちが口にする「景気回復」といった場合、それは結局のところ何を意味するのかといえば、往々にして株価が上昇局面に転ずることを指している。確かにそれは最初、実体経済における回復を前提としないため、見掛け倒しで上滑りのバブルのように見えなくもない。
だが、株価が上がればそれはややあって企業の財務諸表を数字の上で潤すことにつながるはずであり、それがやがて実体経済における調整を加速させ、日本経済全体を本格上昇へと導くはずなのだ。
――つまり、「よりマシなマーケット」として選ばれた私たちの国・日本は、麻生太郎首相の言葉を借りると「世界の中で、最も早くこの不況から脱する」ことになる。しかも、それが当面の間、すなわち2〜3年の間だけだとすれば、なおのこと「越境する投資主体」たちは日本マーケットを極端なスピードで上げるべく奔走することであろう。その結果、世間でいう「景気回復」は株価の上昇をもって達成されたことになり、日本郵政株の売却、消費税増税、そして衆院解散総選挙とこれまで封印されてきたはずのコマが三つ、大胆にも逆向きへ動き始めるのである。
ここで誤解なきよう申し上げたい。私と我が研究所はいかなる意味においても、日本政府や与党サイドから支援を受けてはいないし、指導も受けていない、れっきとした独立系シンクタンクである。ここでいう麻生太郎首相の「潮目」感覚を巡る発言の解釈のいずれもが、純粋にプライヴェート・インテリジェンス・エージェンシーとしての情勢分析を通 じて得られたものである。
しかし、ここで繰り返しになるが、二〇〇八年晩秋から密かにマーケットで見られた「越境する投資主体」たちの動き、そしてそれにともなう非公開情報に端を発する一連の「潮目」の予兆をつなぎあわせると、それが目指す方向は唯一でしかないのである。
――そう、「最後に選ばれたのは日本であった」。