2009年04月24日

海賊対処法案 参院でも迅速に審議を進めよ(読売・社説)

(4月24日付・読売社説)

 ソマリア沖での海賊被害は最近、さらに増えている。海上自衛隊の活動の実効性を高めるため、法案の早期成立の必要性は大きくなっている。
 海賊対処法案が衆院本会議で与党などの賛成多数で可決された。審議入り以来、10日間で衆院を通過した。

 民主党は反対したが、海賊対策に積極的に取り組むことの重要性は認め、早期採決を容認した。参院でも法案審議を引き延ばさず、迅速な審議に協力してほしい。

 今年のソマリア沖での海賊事件は87件に上り、昨年の発生件数の8割に迫る。特に4月は1日1・5件のペースで起きている。
 被害の防止を図るには、日本は関係国との連携を強化し、対応することが重要だ。現行法では海自の警護対象が日本関係船舶に限られる。外国船の警護も可能にする法案の成立が急務である。

 民主党は与党との修正協議で、海賊対処本部の新設や国会の事前承認の義務づけを主張した。
 与党は、これらの修正は拒否する一方で、海賊対処を所管する国土交通相が海自派遣を要請する手続きの追加を提案した。国会承認に代わるものとして、衆参両院の議決により海賊対処行動を終了するという修正案も示した。
 この案なら、ねじれ国会の下でも対処行動を継続できるという、ぎりぎりの妥協案だったが、民主党は受け入れなかった。

 自衛隊を海外に派遣する法案は本来、多数の政党の賛成で成立させることが望ましい。だが、民主党が何の譲歩もしない以上、修正協議の決裂はやむを得ない。
 国会の事前承認がなければ、自衛隊に対する文民統制が担保されない、と民主党は主張する。果たしてそうだろうか。

 国会の関与の仕方は、自衛隊の活動内容に応じて、事前承認、事後承認、報告など、様々あってしかるべきだ。
 現行法では、防衛出動や周辺事態への出動は事前承認、治安出動は事後承認、国連平和維持活動(PKO)は国会報告である。
 海賊対処行動は実質的に海上警察活動であり、法案の定めるよう国会報告で十分だ。すべて事前承認でなければ文民統制ができないかのような議論はおかしい。

 海賊対処法案は、ソマリア沖に限った特別措置法案ではなく、世界中の海賊に対応する恒久法案だ。今回、民主党の賛成が得られるなら、国会承認に修正してもいい、といった安易な姿勢は将来に禍根を残しかねない。

shige_tamura at 08:40│Comments(0)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

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