2009年03月26日
アフリカ 苦悩する大陸(ロバート・ゲスト著、東洋経済新報社)

この著者はロバート・ゲストさんという方で、経済誌『エコノミスト』の元アフリカ担当編集長で、一九九〇年代に英国紙『デイリーテレグラフ』の日本特派員を務めたことがあって、それから『エコノミスト』特派員として南アフリカを拠点に七年間にわたりアフリカをいろいろ取材して、現在はアメリカ特派員として、ワシントンDCに住んでいるイギリス人です。
この本を読んで、なるほど政治というのは本当に重要なんだ、政治指導者というのはすごく大事なのだと思ったものですから、そこのところをちょっと紹介します。
それは「日本語版へのまえがき」というところに書いてあります。
「貧しい国々はどうすれば豊かになるのか――これは私が最も関心を寄せている問題のひとつだ。どんな国もかつては貧しかった。だが今や豊かになった国もあるし、成長への道を順調に歩んでいる国はさらに多い。秘訣はどこにあるのか。
その答えを、少なくともひとつの答えを見つけたいと、私は日本へやってきたのだった。オックスフォード大学で日本語と経済学を学び、明治維新から軍国主義へと突入した日本が、戦後に奇跡的な経済成長を遂げた歩みも学んだからだ」と。
だから日本というのは、やはりすごい国だなと思ったのでしょう。
日本は、戦争でぺしゃんこになって、それから世界経済第二位の国になったわけです。彼は、それはすごいなと思って、その秘訣を学ぼうとしたわけです。
「私は日本が収めた成功についてじっくり考えを巡らせた。日本がここまで豊かになった秘密を解き明かすため、経済学者やビジネスマン、歴史学者や主婦たちに自分の疑問をぶつけてみた。官僚たちが緻密に計画を立てたおかげだと指摘する人たちがいた。学校でよく学び、職場では遅くまで働く日本人の国民性を理由に挙げる人もいた。しかし、どうすれば国が豊かになるのかは、貧困から抜け出せないでいる国々をこの目でじかに見るまでわからない――それが私のたどり着いた結論だった」と。
彼は、日本にいても、よく分からなくなったということを言ってるんです。
それでアフリカに行ったんです。
「アフリカが貧しいのは、政府に問題があるからだ」。
政治をやっているリーダーに問題があるからという結論にたどりついたわけです。
「あまりに多くの政府が国民を食い物にしている」。
アフリカのたくさんの国の政府が、アフリカにおいては、国民を食い物にしていると。
「政府は正しく統治するためではなく、権力を行使する人間が私腹を肥やすためだけに存在しているように見える。官僚たちは仕事の見返りに袖の下を要求する。警察官は正直な市民から金品を奪い、犯罪者たちは野放しだ。多くの場合、国で一番の大金持ちは大統領だ。彼らは大統領に就任してから、地位にものを言わせて富を溜め込んできたのだ」ということなんです。
そういう国では、「賄賂は商売の潤滑油」だと言われている。
「富を手にする最も確実な道が『権力』だとなれば、人々は権力を求めて殺し合う。アフリカはしばしば内戦に悩まされ、おかげで開発もままならない。安全な環境のもとで暮らしていると、人は安全に慣れてしまうものだ」「平和な国に暮らす人々がいかに幸福かということに、私は気づいたのだった」ということです。
「アフリカには、貧しくとも自分は幸福だと言う人がたくさんいる」と。いうけれども、
「飢えを堪え忍ぶのはつらい。充分食べることができなければ、子供は肉体的にも精神的にも発育を阻害される。今や裕福な国々では、飢える人などほとんどいない。これは実は驚くべきことで、人類の歴史を見ても画期的なことなのだが、今さら不思議に思う人もほとんどいない。
少し乱暴な言い方をすれば、繁栄はもっと大きな自由をもたらしてくれるのだ。貧困に喘いでいる国の農民たちは、ただ日々暮らしていくために、つらく危険な仕事を死ぬまで泥まみれになって続けている。一方、裕福な国の人々には選択の余地がある。能力さえあれば、希望する職業を選択できる。長時間働いて存分に稼ぐこともできれば、稼ぎより自分の時間を大切にすることもできる。余暇はたっぷりあるし、楽しむ方法も選り取り見取りだ。テニスやゴルフ、マンガやモーツァルトの音楽、ナイトクラブや夜間教室もある。
アフリカの人々は豊かになったらどのように暮らし、どのような社会を築いていくのか?――それはひとえにアフリカ人自身にかかっている。しかし、選択肢はもう充分だという人に、私はまだ会ったことがない」。
どういうことかというと、日本だって、戦争でどん底になって、そして今豊かな国なったでしょう。アフリカにある多くの国はいつまでたっても豊かにならない。それは何が違うかというと、政治指導者、政治の力によって国民生活は大きく変わるんだということをきちっと確認しておく必要があるだろうということなんです。