2007年05月16日
5大新聞の国民投票法の賛否は
5月14日の参議院本会議で、憲法改正のための国民投票法が成立したのを受けて、翌日(5月15日)の新聞各紙はいっせいに社説を掲載した。
憲法や安全保障政策に関して、新聞の主張の違いが明確になる。
そこで、今回5大新聞各紙の社説を掲載した。
国民投票法の賛成派は、読売新聞、日経新聞、産経新聞。
国民投票法の反対派は、朝日新聞。
国民投票法の中間派は、毎日新聞。
以下5大新聞社の社説の概要を掲載した。
●読売新聞、「国民投票法成立 新憲法へ具体論に入る時だ」
憲法制定以来、60年以上も放置されてきた憲法体制の欠陥がようやく是正された。
憲法改正の手続きを定める国民投票法が、自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。国民の主権行使の中で最も重要な憲法改正にかかわる主権を行使することができるようになる。
国際情勢や日本の安全保障環境の劇的な変貌(へんぼう)、日本の経済・社会の根本的な変化など、今日の内外の姿は、憲法制定時には想像すらできなかったものだ。しかも、今後さらに大きな変化の波を乗り切っていかねばならない。
(略)
憲法審査会の論議が進めば、有権者は現実の課題として憲法改正に向き合うことになるだろう。時代の要請に応えて、新憲法へ、大きな一歩をしっかりと踏み出さねばならない。
●日本経済新聞、「画期的な憲法国民投票法の成立」
憲法改正手続きを定める国民投票法が14日の参院本会議で成立した。60年間も放置されてきた主権者国民の憲法を改正する権利がようやく具体化されたことは画期的であり、その意義は極めて大きい。自民、民主、公明など各党は国民世論の動向を踏まえ、21世紀にふさわしい憲法のあり方について真剣な議論を進めてほしい。
中立・客観的なルールである国民投票法は本来、野党第一党である民主党も賛成して成立することが望ましかった。7月の参院選を控えて与党との対決姿勢を重視した民主党が反対に回ったのは残念だが、衆院採決前までの与野党協議のプロセスで、民主党の主張も与党案にかなり反映されており、国民投票法は実質的に自公民3党の合作と見てよい。
参院審議で野党は最低投票率の導入を提起したが、最低投票率を何%にするかは主張する人たちの間でもバラバラだった。何%が適切なのか、その根拠は何なのかを明確に示さない限り、まじめな提案とは言い難い。基本的に成熟した民主国家では最低投票率のような制度は不要である。民主党が参院に提出した対案に最低投票率を盛り込まなかったのは当然の対応である。
国民投票法に基づき、次期国会から衆参両院に憲法審査会が設置される。国民に対する発議原案の審議は3年間凍結されるが、発議原案に至らない要綱、骨子の審議まで凍結されるわけではない。自民党はすでに新憲法草案を一昨年とりまとめた。民主党や公明党も速やかに憲法改正に関する具体案をとりまとめ、それを要綱や骨子の形で国会の憲法審査会に提出すべきである。
(略)
国民投票法成立の意義は3年後から憲法改正が可能になるというだけにとどまらない。憲法改正を国民に発議するには衆参両院それぞれ3分の2の賛成が必要である。3分の2の多数を形成するために今後、自民・民主の大連立など政界再編を模索する動きも出てくるだろう。政界に新たな緊張感をもたらすことも国民投票法の重要な意味合いである。
●産経新聞、「国民投票法成立 新憲法制定が政治課題だ」
憲法改正手続きを定める国民投票法が成立し、施行から60年間放置され、改正を事実上阻んできた法的不備の状態が解消された。新憲法制定が現実的な政治課題となった歴史的な節目といえる。
憲法改正原案の提出や審査は、平成22年の国民投票法施行まで3年間凍結されるが、国民投票の実施に備えて詰めておくべき課題は多い。
新憲法が国民参加の下で制定される過程で、中立性を求められる公務員にどこまで政治的活動が認められるかという問題もその一つだ。
(略)
参院選後、衆参両院に置かれる憲法審査会が新しい議論の舞台となる。国民投票実施に向けた環境整備にしっかり取り組んでほしい。
もとより、肝心の憲法改正の中身の方の議論を忘れてもらっては困る。すでに自民党は新憲法草案を持っているが、公明、民主両党はいまだに条文化作業に着手していない。
14日の参院本会議では、与党案に反対の立場をとった民主党から賛成者、欠席者が出た。3年間の凍結期間を理由に、党内論議を先送りするような姿勢はもう取れないはずだ。
●朝日新聞、「投票法成立―「さあ改憲」とはいかぬ」
憲法改正の是非を問う国民投票法が成立した。野党第1党の民主党も含め、政党間の幅広い合意を目指してきたが、結局、自民と公明の与党が野党の反対を押し切った。
いまの憲法ができて60年。初めて国民投票の手続きを定める法律をつくろうというのに、こんな形の決着になったのはきわめて遺憾である。
衆参各院で3分の2の賛成がなければ発議すらできないという憲法改正の規定は、改正にあたって国民の幅広い合意形成を要請したものだ。そのルールを定める話なのに、参院選への思惑といった政党の損得勘定が絡み、冷静な議論ができないまま終わってしまった。
最低投票率の問題をはじめ、公務員や教員の運動に対する規制など、詰めるべき点を残したままの見切り発車である。18項目にもわたる付帯決議でそうした問題の検討を続けるとしたが、ならばじっくりと論議し、結論を出してから法律をつくるべきではなかったか。
(略)
投票法ができたといっても、自民党草案や自衛軍についての国民の論議は進んでいない。参院選ではそこをあいまいにすることは許されない。
●毎日新聞、「国民投票法成立 論憲をいっそう深めよう」
憲法改正の手続きを定める国民投票法が14日成立した。憲法が施行されて60年。手続き法とはいえ戦後政治が大きな節目を迎えたことは間違いなかろう。
毎日新聞は社説で憲法に改正条項がある以上、国民投票の仕組みを決めるのは当然だと主張してきた。しかし、手続き法の制定が即、改憲につながるとも考えていない。今後、避けなければならないのは、具体的、現実的な議論もなしに「改憲か、護憲か」と単純に色分けするようなムードが広がることだ。大切なのは国民が判断するに足る冷静な論議の積み重ねである。
国の最高法規である憲法の改正について落ち着いた議論を進めるためにも、私たちはせめて手続き法は各党が納得ずくで結論を得るのが望ましく、そのためには与党と少なくとも野党第1党・民主党の合意が不可欠だと再三、主張してきた。その点、参院に審議が移った後も双方が歩み寄ることがなかったのは極めて残念だ。
(略)
首相が参院選の争点にするというのなら「押し付け憲法だから」とか、「時代に合わないから」といった抽象論ではもう済まない。分からぬことが多いままで、賛成か反対かで世論を二分するのではなく、いかに国民のコンセンサスを作っていくかが重要なのだ。どんな国にしたいのか、それが国民にどう影響を及ぼすのか。地道に議論を重ね、国民の判断を仰いでいく。それが毎日新聞が提唱してきた論憲の意味である。
民主党も論戦から逃げてはならない。昨年末には専守防衛の原則を確認する一方で、国連の平和活動には積極参加するとの基本方針をまとめているが、改憲の必要はないということなのかどうか。党内議論を進めるべきだ。
結論を急げというのではない。だが、憲法問題が新たな段階に入ったことを正面から受け止めたいと思う。私たちもいっそう議論を深めていきたいと考えている。
憲法や安全保障政策に関して、新聞の主張の違いが明確になる。
そこで、今回5大新聞各紙の社説を掲載した。
国民投票法の賛成派は、読売新聞、日経新聞、産経新聞。
国民投票法の反対派は、朝日新聞。
国民投票法の中間派は、毎日新聞。
以下5大新聞社の社説の概要を掲載した。
●読売新聞、「国民投票法成立 新憲法へ具体論に入る時だ」
憲法制定以来、60年以上も放置されてきた憲法体制の欠陥がようやく是正された。
憲法改正の手続きを定める国民投票法が、自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。国民の主権行使の中で最も重要な憲法改正にかかわる主権を行使することができるようになる。
国際情勢や日本の安全保障環境の劇的な変貌(へんぼう)、日本の経済・社会の根本的な変化など、今日の内外の姿は、憲法制定時には想像すらできなかったものだ。しかも、今後さらに大きな変化の波を乗り切っていかねばならない。
(略)
憲法審査会の論議が進めば、有権者は現実の課題として憲法改正に向き合うことになるだろう。時代の要請に応えて、新憲法へ、大きな一歩をしっかりと踏み出さねばならない。
●日本経済新聞、「画期的な憲法国民投票法の成立」
憲法改正手続きを定める国民投票法が14日の参院本会議で成立した。60年間も放置されてきた主権者国民の憲法を改正する権利がようやく具体化されたことは画期的であり、その意義は極めて大きい。自民、民主、公明など各党は国民世論の動向を踏まえ、21世紀にふさわしい憲法のあり方について真剣な議論を進めてほしい。
中立・客観的なルールである国民投票法は本来、野党第一党である民主党も賛成して成立することが望ましかった。7月の参院選を控えて与党との対決姿勢を重視した民主党が反対に回ったのは残念だが、衆院採決前までの与野党協議のプロセスで、民主党の主張も与党案にかなり反映されており、国民投票法は実質的に自公民3党の合作と見てよい。
参院審議で野党は最低投票率の導入を提起したが、最低投票率を何%にするかは主張する人たちの間でもバラバラだった。何%が適切なのか、その根拠は何なのかを明確に示さない限り、まじめな提案とは言い難い。基本的に成熟した民主国家では最低投票率のような制度は不要である。民主党が参院に提出した対案に最低投票率を盛り込まなかったのは当然の対応である。
国民投票法に基づき、次期国会から衆参両院に憲法審査会が設置される。国民に対する発議原案の審議は3年間凍結されるが、発議原案に至らない要綱、骨子の審議まで凍結されるわけではない。自民党はすでに新憲法草案を一昨年とりまとめた。民主党や公明党も速やかに憲法改正に関する具体案をとりまとめ、それを要綱や骨子の形で国会の憲法審査会に提出すべきである。
(略)
国民投票法成立の意義は3年後から憲法改正が可能になるというだけにとどまらない。憲法改正を国民に発議するには衆参両院それぞれ3分の2の賛成が必要である。3分の2の多数を形成するために今後、自民・民主の大連立など政界再編を模索する動きも出てくるだろう。政界に新たな緊張感をもたらすことも国民投票法の重要な意味合いである。
●産経新聞、「国民投票法成立 新憲法制定が政治課題だ」
憲法改正手続きを定める国民投票法が成立し、施行から60年間放置され、改正を事実上阻んできた法的不備の状態が解消された。新憲法制定が現実的な政治課題となった歴史的な節目といえる。
憲法改正原案の提出や審査は、平成22年の国民投票法施行まで3年間凍結されるが、国民投票の実施に備えて詰めておくべき課題は多い。
新憲法が国民参加の下で制定される過程で、中立性を求められる公務員にどこまで政治的活動が認められるかという問題もその一つだ。
(略)
参院選後、衆参両院に置かれる憲法審査会が新しい議論の舞台となる。国民投票実施に向けた環境整備にしっかり取り組んでほしい。
もとより、肝心の憲法改正の中身の方の議論を忘れてもらっては困る。すでに自民党は新憲法草案を持っているが、公明、民主両党はいまだに条文化作業に着手していない。
14日の参院本会議では、与党案に反対の立場をとった民主党から賛成者、欠席者が出た。3年間の凍結期間を理由に、党内論議を先送りするような姿勢はもう取れないはずだ。
●朝日新聞、「投票法成立―「さあ改憲」とはいかぬ」
憲法改正の是非を問う国民投票法が成立した。野党第1党の民主党も含め、政党間の幅広い合意を目指してきたが、結局、自民と公明の与党が野党の反対を押し切った。
いまの憲法ができて60年。初めて国民投票の手続きを定める法律をつくろうというのに、こんな形の決着になったのはきわめて遺憾である。
衆参各院で3分の2の賛成がなければ発議すらできないという憲法改正の規定は、改正にあたって国民の幅広い合意形成を要請したものだ。そのルールを定める話なのに、参院選への思惑といった政党の損得勘定が絡み、冷静な議論ができないまま終わってしまった。
最低投票率の問題をはじめ、公務員や教員の運動に対する規制など、詰めるべき点を残したままの見切り発車である。18項目にもわたる付帯決議でそうした問題の検討を続けるとしたが、ならばじっくりと論議し、結論を出してから法律をつくるべきではなかったか。
(略)
投票法ができたといっても、自民党草案や自衛軍についての国民の論議は進んでいない。参院選ではそこをあいまいにすることは許されない。
●毎日新聞、「国民投票法成立 論憲をいっそう深めよう」
憲法改正の手続きを定める国民投票法が14日成立した。憲法が施行されて60年。手続き法とはいえ戦後政治が大きな節目を迎えたことは間違いなかろう。
毎日新聞は社説で憲法に改正条項がある以上、国民投票の仕組みを決めるのは当然だと主張してきた。しかし、手続き法の制定が即、改憲につながるとも考えていない。今後、避けなければならないのは、具体的、現実的な議論もなしに「改憲か、護憲か」と単純に色分けするようなムードが広がることだ。大切なのは国民が判断するに足る冷静な論議の積み重ねである。
国の最高法規である憲法の改正について落ち着いた議論を進めるためにも、私たちはせめて手続き法は各党が納得ずくで結論を得るのが望ましく、そのためには与党と少なくとも野党第1党・民主党の合意が不可欠だと再三、主張してきた。その点、参院に審議が移った後も双方が歩み寄ることがなかったのは極めて残念だ。
(略)
首相が参院選の争点にするというのなら「押し付け憲法だから」とか、「時代に合わないから」といった抽象論ではもう済まない。分からぬことが多いままで、賛成か反対かで世論を二分するのではなく、いかに国民のコンセンサスを作っていくかが重要なのだ。どんな国にしたいのか、それが国民にどう影響を及ぼすのか。地道に議論を重ね、国民の判断を仰いでいく。それが毎日新聞が提唱してきた論憲の意味である。
民主党も論戦から逃げてはならない。昨年末には専守防衛の原則を確認する一方で、国連の平和活動には積極参加するとの基本方針をまとめているが、改憲の必要はないということなのかどうか。党内議論を進めるべきだ。
結論を急げというのではない。だが、憲法問題が新たな段階に入ったことを正面から受け止めたいと思う。私たちもいっそう議論を深めていきたいと考えている。



