2016年11月
2016年11月11日
「南スーダン国際平和協力業務実施計画の変更」について
この度『日本の防衛政策 第2版』(田村重信編著、内外出版)を出版しました。
増刷となりました。
「南スーダン国際平和協力業務実施計画の変更」について
本件は、南スーダン国際平和協力業務を実施している施設部隊に、平和安全法制で新たに規定した、国際平和協力法第3条第5号ラの業務、いわゆる「駆け付け警護」及び宿営地の共同防護の任務を付与するものです。
南スーダンの情勢について
南スーダンでは、本年7月7日、首都ジュバでキール大統領派とマシャール第一副大統領派との間で衝突が発生しました。同月26日、ジュバから退避したマシャール前第一副大統領に代わり、タバン・デン前工業大臣が第一副大統領に就任しました。
国連は8月12日、UNMISSマンデートを延長し、活動期限を本年12月15日までとするとともに、地域保護部隊を創設する等を決定しました。
10月1日から11月1日かけて現地を訪問された柴山総理大臣補佐官も、現在、ジュバは比較的落ち着いている状況であり、自衛隊が安全を確保した上で、意義ある活動を行える状況とのことです。
他方、地方においては武力衝突や一般市民の殺害行為が度々発生していることから、情勢は厳しく、楽観はできないと考えています。
11月20日から派遣が開始される、南スーダン派遣施設隊第11要員の準備訓練について
本年8月25日から10月26日にかけて、青森駐屯地、岩手山演習場等において、第11次要員の準備訓練を実施しました。
実動を伴う訓練の中では、9月14日から、「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」に係る訓練についても実施しました。
この訓練については、10月21日に統合幕僚長、23日に防衛大臣が視察を行い、その後陸上幕僚長から防衛大臣に対し、訓練の総括が報告されました。
その結果、防衛省として、第11次要員の練度については、新たな任務に十分対応可能なレベルに到達しているとのことです。
新任務付与に関する考え方と今後の方向性等について
今般、付与する方向の任務は「駆け付け警護」と宿営地の共同防護です。
「駆け付け警護」
「駆け付け警護」は、自衛隊の施設部隊の近傍でNGO等の活動関係者が襲われ、他に対応できる国連部隊が存在しない等の極めて限定的な場面で、要請を受け、応急的かつ一時的な措置として行うものです。
南スーダンには現在も少数ながら邦人が滞在しており、厳しい治安情勢を踏まえると、邦人に不測の事態が生じる可能性は皆無ではありません。このような状況である以上、「駆け付け警護」という任務と必要な権限を付与し、事前に十分な訓練を行う等の体制を整えることで、邦人の安全に資するのみならず、実施に際しての自衛隊のリスクの低減に資する面もあると考えられます。
なお、PKO法上、「駆け付け警護」を実施するためには、受入れ国政府の同意が国連の活動及び自衛隊の業務が行われる期間を通じて安定的に維持されると認められることが必要です。
この点、関連する要素を総合的に考慮すれば、受入れ同意は安定的に維持されていると認められ、実施計画に規定されている我が国の活動期限である来年3月31日まで、切れ目なく、「駆け付け警護」を実施することが可能と考えます。
なお、現在のUNMISSマンデートの期限は本年12月15日までですが、マンデートが延長される場合その他必要な場合には、速やかに国家安全保障会議でその評価を再確認する方針です。
宿営地の共同防護
南スーダンにおいては、一つの宿営地を、我が国を含む複数の国の部隊が活動拠点として使用しています。 このような状況において、他国の要員がたおれてしまえば、自衛隊員が襲撃される恐れがあり、他国の要員と自衛隊員は、いわば運命共同体であることから、共同して襲撃に対処した方が、安全を高めることができます。
宿営地の共同防護は、情勢が厳しいからこそ実施する、自己の安全を高めるための任務です。
これにより、自衛隊は、より円滑かつ安全な活動が実現可能となり、自衛隊に対するリスクの低減に資すると考えられます。
なお、PKO法上、宿営地の共同防護は「自己保存のための自然権的権利」であり、実施計画の変更は不要です。
また、ゴラン高原国際平和協力活動のように、5原則は維持されている状況にあっても、安全を確保しつつ有意義な活動が困難となった場合、我が国独自の判断で撤収するという政府の方針についても、実施計画に明記する方向です。
本件は、稲田防衛大臣及び柴山首相補佐官も出席されて8日朝開催された国防・内閣第一・外交合同部会にて御審議の上、了承。その後、10日の政調審議会、本日の総務会でも了承、与党政策責任者会議でも了承されました。
政府は、15日の閣議決定を経て、11月20日から派遣が開始される施設部隊の第11次要員から新任務が付与されます予定です。