2014年03月
2014年03月31日
<遠藤誉が斬る>案外弱い中国の戦闘力と軍の士気――対日強硬路線は戦意高揚のためか
『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
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<遠藤誉が斬る>案外弱い中国の戦闘力と軍の士気――対日強硬路線は戦意高揚のためか
(3月31日、レコードチャイナより)
中共中央軍事委員会は「中央軍事委員会深化国防和軍隊改革領導小組」(国防と軍隊改革を深化させる中共中央軍事委員会指導グループ)なる、非常に長い名前の領導小組(指導グループ)を設立した。
組長は習近平、副組長は軍事委員会副主席の範長龍(陸軍)、常務副組長は軍事委員会副主席・許其亮(空軍)だ。
同日開催された第一次全体会議で、習近平は中共中央軍事委員会主席として「重要講話」を行った。
その内容は「国防と軍隊改革を深化させよ」「思想と行動を党中央と中央軍事委員会の決定に統一させよ」「強軍目標を軸として改革を促進せよ」「強固な国防と強大な軍隊を目指す」など抽象的なものが多い。
それがいくらか具体的に見え始めたのは、3月17日に全軍と武装警察部隊の各地域各レベルの中国共産党委員会に出された司令だ。中共中央軍事委員会は各支部の会議室に「毛沢東、トウ小平、江沢民、胡錦濤、習近平の標語を掲げること」という奇妙な命令を出したのである。
たとえば毛沢東の「正確な政治的方向と、質素で艱難辛苦に耐える気風および機動的な戦略戦術を指し示せ」とか、胡錦濤の「党への忠誠、国に報いる崇高な使命感」あるいは習近平の「党の指揮に従い、戦勝を収める」といった具合に、標語の文言まで指示している。
ここからは以下のことが読み取れる。
1. 軍隊に政治性をしっかり持たせること。
2. 軍隊が腐敗の温床となって軍規律が乱れており、党への忠誠に欠けている(特に中年以上の兵士や幹部は贅沢に慣れ、私腹を肥やすことに専念している)。
3. 若い兵士には艱難辛苦に耐えるガッツはない。
◆戦意がない「一人っ子世代」の兵士たち――薄弱な戦闘力
この視点の正当性をさらに裏付ける通達が3月20日に発布された。
題して「軍事訓練実戦化のレベルアップに関する意見」。
「いつでも戦える準備をし、戦ったら必ず勝利すること」という習近平政権発足以来のスローガンを前提として、「本当に戦うんだ、ということを兵士に学ばせろ」ということを中心に、「教育」とか「使命感・緊迫感を持て」といった言葉が目立つ。筆者はこの「教育」という言葉に注目した。
よくよく見れば、3月15日の新指導グループ第一次会議における習近平の重要講話の中には「戦闘力の薄弱さを認識して、改革の方向を定め、問題点を明確にせよ」という趣旨の文言までがある。
これでようやく分かった。
つまり、これら一連の動きから見えて来るのは「戦争を知らない若い解放軍世代に、戦争の実感をたたき込み、実践力を学ばせろ」という、中国の戦闘力の「思わぬ落とし穴」だ。
中国の軍事費増加は前年比12.2%増(2013年)と大きいものの、戦意となると、一人っ子世代が大勢を占めているため、意識高揚でもしない限り上がらない。
◆対日強硬批判は戦意高揚のため?
中央テレビ局CCTVでは毎日のように日本がいかに右傾化しており、「日本軍国主義」への道を歩もうとしているかを、これでもかこれでもかと報道し続けている。
この先鋭化する対日批判は、歴史カードを用いてアメリカを弱体化させ日米分断を謀るためだと筆者は論じてきた(詳細は拙著『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』に書いた)。
しかし中国が展開する「日本軍国主義化」を中心とする「日本脅威論」は、案外、この「教育」を目的の一つとしているという確信を、軍事委員会新指導グループ設立と新しい通達により得ることができた。
もっとも重要講話の中には「軍隊組織形態の現代化」という言葉があり、従来の陸海空軍以外に第二砲兵部隊(情報、偵察、核ミサイル迎撃を含む戦略ミサイル部隊)を重視した再編成が成され強軍に向かうのも事実だ。
しかし中共中央政治局会議は「戦争はしない」という意思を示唆している。強軍目標は日米に対する防衛的な威嚇のための軍事力作りとみなすべきだろう。
武力から見た戦闘力においても、中国はとてもアメリカの武力には及ばない。
それは命令指揮系統が「純粋な軍」ではなく、軍は「党の軍」であり、軍事委員会の「総政治部」が大きな力を持っているからだ。
そのことは3月17日の命令である「毛沢東の標語」(政治方向性を定めよ)にも如実に表れており、また胡錦濤や習近平の「党への忠誠」とか「党の指揮に従う」にも表れている。
それ故に戦闘指揮系統や作戦戦略に関しても、脆弱さを本質的に抱えているのである。
<遠藤誉が斬る>第28回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。
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<遠藤誉が斬る>案外弱い中国の戦闘力と軍の士気――対日強硬路線は戦意高揚のためか
(3月31日、レコードチャイナより)
中共中央軍事委員会は「中央軍事委員会深化国防和軍隊改革領導小組」(国防と軍隊改革を深化させる中共中央軍事委員会指導グループ)なる、非常に長い名前の領導小組(指導グループ)を設立した。
組長は習近平、副組長は軍事委員会副主席の範長龍(陸軍)、常務副組長は軍事委員会副主席・許其亮(空軍)だ。
同日開催された第一次全体会議で、習近平は中共中央軍事委員会主席として「重要講話」を行った。
その内容は「国防と軍隊改革を深化させよ」「思想と行動を党中央と中央軍事委員会の決定に統一させよ」「強軍目標を軸として改革を促進せよ」「強固な国防と強大な軍隊を目指す」など抽象的なものが多い。
それがいくらか具体的に見え始めたのは、3月17日に全軍と武装警察部隊の各地域各レベルの中国共産党委員会に出された司令だ。中共中央軍事委員会は各支部の会議室に「毛沢東、トウ小平、江沢民、胡錦濤、習近平の標語を掲げること」という奇妙な命令を出したのである。
たとえば毛沢東の「正確な政治的方向と、質素で艱難辛苦に耐える気風および機動的な戦略戦術を指し示せ」とか、胡錦濤の「党への忠誠、国に報いる崇高な使命感」あるいは習近平の「党の指揮に従い、戦勝を収める」といった具合に、標語の文言まで指示している。
ここからは以下のことが読み取れる。
1. 軍隊に政治性をしっかり持たせること。
2. 軍隊が腐敗の温床となって軍規律が乱れており、党への忠誠に欠けている(特に中年以上の兵士や幹部は贅沢に慣れ、私腹を肥やすことに専念している)。
3. 若い兵士には艱難辛苦に耐えるガッツはない。
◆戦意がない「一人っ子世代」の兵士たち――薄弱な戦闘力
この視点の正当性をさらに裏付ける通達が3月20日に発布された。
題して「軍事訓練実戦化のレベルアップに関する意見」。
「いつでも戦える準備をし、戦ったら必ず勝利すること」という習近平政権発足以来のスローガンを前提として、「本当に戦うんだ、ということを兵士に学ばせろ」ということを中心に、「教育」とか「使命感・緊迫感を持て」といった言葉が目立つ。筆者はこの「教育」という言葉に注目した。
よくよく見れば、3月15日の新指導グループ第一次会議における習近平の重要講話の中には「戦闘力の薄弱さを認識して、改革の方向を定め、問題点を明確にせよ」という趣旨の文言までがある。
これでようやく分かった。
つまり、これら一連の動きから見えて来るのは「戦争を知らない若い解放軍世代に、戦争の実感をたたき込み、実践力を学ばせろ」という、中国の戦闘力の「思わぬ落とし穴」だ。
中国の軍事費増加は前年比12.2%増(2013年)と大きいものの、戦意となると、一人っ子世代が大勢を占めているため、意識高揚でもしない限り上がらない。
◆対日強硬批判は戦意高揚のため?
中央テレビ局CCTVでは毎日のように日本がいかに右傾化しており、「日本軍国主義」への道を歩もうとしているかを、これでもかこれでもかと報道し続けている。
この先鋭化する対日批判は、歴史カードを用いてアメリカを弱体化させ日米分断を謀るためだと筆者は論じてきた(詳細は拙著『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』に書いた)。
しかし中国が展開する「日本軍国主義化」を中心とする「日本脅威論」は、案外、この「教育」を目的の一つとしているという確信を、軍事委員会新指導グループ設立と新しい通達により得ることができた。
もっとも重要講話の中には「軍隊組織形態の現代化」という言葉があり、従来の陸海空軍以外に第二砲兵部隊(情報、偵察、核ミサイル迎撃を含む戦略ミサイル部隊)を重視した再編成が成され強軍に向かうのも事実だ。
しかし中共中央政治局会議は「戦争はしない」という意思を示唆している。強軍目標は日米に対する防衛的な威嚇のための軍事力作りとみなすべきだろう。
武力から見た戦闘力においても、中国はとてもアメリカの武力には及ばない。
それは命令指揮系統が「純粋な軍」ではなく、軍は「党の軍」であり、軍事委員会の「総政治部」が大きな力を持っているからだ。
そのことは3月17日の命令である「毛沢東の標語」(政治方向性を定めよ)にも如実に表れており、また胡錦濤や習近平の「党への忠誠」とか「党の指揮に従う」にも表れている。
それ故に戦闘指揮系統や作戦戦略に関しても、脆弱さを本質的に抱えているのである。
<遠藤誉が斬る>第28回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。
2014年03月28日
オバマ大統領のアジア訪問の行方(ワシントン報告、横江公美氏)
『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
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ヘリテージ財団、アジア研究センター、2014年3月27日
オバマ大統領のアジア訪問の行方
先日、ヘリテージ財団では、「オバマ大統領のアジア訪問Preview of the President’s Trip to Asia」についての公開フォーラムが行われた。オバマ大統領は、4月に日本、韓国、マレーシア、フィリピンを訪問することになっている。
モデレーターはヘリテージ財団のアジア部のウォルター・ローマン部長、パネリストは、ジョージ・W・ブッシュ政権で国務省の副次官補をつとめ、現在、Project2049のランダル・シェリバー所長、そして、CIAで韓国部長をつとめたヘリテージ財団のブルース・クリンガー研究員だ。
ローマンは、「ここでの議論は,国務省のブリーフィングスタイルのようにオバマ大統領は何をする予定なのかについてではなく、何をすべきなのかについてを議論する」と口火を切った。
ランダル・シェリバーは、今回のアジア訪問、とりわけ日本への訪問についての意義について語った。
最初にシェリバーは、3つの意義について語った。
1つは、安倍政権が小泉政権以来珍しく、安定した政権あることをあげた。
2つめは、シリア、ウクライナと中東、東ヨーロッパで混乱が続く今こそ、アジアへの回帰に変化がないことをしっかりと表明するときであるとした。
そして、3つ目に、アジアが今まで以上に危機感が必要な状況であるとした。
東シナ海と南シナ海への侵入を繰り返す中国、そして今まで以上にミサイルテストを繰り返し先が読めない北朝鮮と同時に2つの重大な危険要素がアジアで重なる時期は初めてであると、今まで以上に日米同盟が強硬であるとした。
続いてシェリバーは、3つの課題について述べた。
1つ目はTPPであり、その中心であるのが日本との議論であるとした。
シェリバーは「アメリカにとっては議会におけるTPAの承認が重要である」と語り、「TPAがない状態で、日本と農業について交渉すれば、日本側からTPAについてどうなっているか、突っ込まれるだろう」と懸念した。
2つ目は、オバマ大統領は、日本の日米同盟強化のための試みに支援すると表明すべきであるとした。シェリバーはその例として憲法第9条と集団的自衛権をあげた。
3つ目はエネルギーにおけるパートナーシップの構築である。
とりわけ日本は311以後、深刻なエネルギー不足になっており、「ロシアからのエネルギー輸入に大きく頼るようになっている」と懸念を語り、「TPPの結果、日本の問題を解決するために、アメリカのLNGを輸出し、エネルギー・パートナーシップを構築することも必要である」と語った。
続くクリグナーは、韓国訪問について語った。
クリグナーは「オバマ大統領が今回のアジア訪問に韓国訪問を加えたことは正しい」と始め、2つの理由をあげた。
一つは、アメリカの大統領がアジアを訪問する際には必ず日韓の両方を訪問することが先例になっていること、
2つ目は日韓関係が今のようにこじれているときこと、両国を訪問する必要がある、と語った。
さらに、ブルースは、「米韓関係は、現在、もっとも強固な関係にあるだろう」と語った。その理由のひとつは北朝鮮である。北朝鮮がさらに行方が読めない国になっているだけに、米韓の安全保障における関係は強固にならざるを得ないと語った。
もう一つは米韓の経済関係である。日米間ではTPPの交渉の先行きが読めない状況にあるが、米韓の間ではすでに米韓FTAを締結されている、とした。
最後に、東南アジアを専門とするローマンは、マレーシアとフィリピン訪問での意義を3つの分野で語った。
1つは貿易についてで、ローマンは、オバマ大統領は、マレーシアとフィリピンにさらにTPPについてプッシュし、同時にアメリカ議会がTPAを承認するように働きかけるべきだとした。
2つ目は、安全保障についてで、南シナ海での中国のふるまいについてオバマ大統領は強固に立ち向かうべきであるとし、ASEANに強固なバックボーンを与えるべきである、とした。
3つ目は、政治についてで、オバマ大統領が訪問することでマレーシアに世界からの注目が集まることは良いことだ、とした。
キャピトルの丘
3月25日ハーグで、日米韓の首脳会談がついに行われた。
その際、韓国の朴大統領は、挨拶のときですら、安倍首相と目をあわせなかったと報道されていた。日本では報道されていないようだが、韓国では、会談の際に、時折、朴大統領が唇を噛みしめていた、と報道されていた。
通常、仕事では、好き嫌いの感情は、なるべく表にださない努力をする。取引や交渉においては、好き嫌いの感情を出すことはないだろう。ましてや、「政治家」という言葉は、「誰とでも仲良くする」という意味で使われることもある。首脳会談で大統領・首相が好き嫌いの関係を見せることは、非常に稀なことである。
「唇を噛みしめていた」と聞いたときに、朴大統領の「長年の憎しみ」を感じずにはいられない。
「日本への嫌悪感は、最近の生まれたものではなく、もっと根が深いのではないか」と韓国の歴史に詳しいジャーナリストに尋ねてみた。
「もしかしたら、母親が殺されたことかもしれない」という言葉が返ってきた。父である朴大統領はKCIA長官に暗殺される前、1974年、朴大統領がフランス留学中に母親は在日韓国人に殺されている(文世光事件)。母親は韓国では「国母」と呼ばれるほど尊敬され愛されていた。愛する母親の無慈悲な死に面して、憎む対象を持とうとすることは、ある意味、不思議なことではない。
その時に使った銃は日本の警察から盗んだものであり、韓国に入国した際には日本の偽造旅券を使っていた、と言う。
首脳会談の場で唇を噛むほどの思いを持っていることを見せ付けられると、トップ日韓関係改善の足がかりは、思った以上に容易ではないように思われる。日韓関係の改善は、首脳会談以外の手立てを探る必要がある。
横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て2011年7月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。
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ヘリテージ財団、アジア研究センター、2014年3月27日
オバマ大統領のアジア訪問の行方
先日、ヘリテージ財団では、「オバマ大統領のアジア訪問Preview of the President’s Trip to Asia」についての公開フォーラムが行われた。オバマ大統領は、4月に日本、韓国、マレーシア、フィリピンを訪問することになっている。
モデレーターはヘリテージ財団のアジア部のウォルター・ローマン部長、パネリストは、ジョージ・W・ブッシュ政権で国務省の副次官補をつとめ、現在、Project2049のランダル・シェリバー所長、そして、CIAで韓国部長をつとめたヘリテージ財団のブルース・クリンガー研究員だ。
ローマンは、「ここでの議論は,国務省のブリーフィングスタイルのようにオバマ大統領は何をする予定なのかについてではなく、何をすべきなのかについてを議論する」と口火を切った。
ランダル・シェリバーは、今回のアジア訪問、とりわけ日本への訪問についての意義について語った。
最初にシェリバーは、3つの意義について語った。
1つは、安倍政権が小泉政権以来珍しく、安定した政権あることをあげた。
2つめは、シリア、ウクライナと中東、東ヨーロッパで混乱が続く今こそ、アジアへの回帰に変化がないことをしっかりと表明するときであるとした。
そして、3つ目に、アジアが今まで以上に危機感が必要な状況であるとした。
東シナ海と南シナ海への侵入を繰り返す中国、そして今まで以上にミサイルテストを繰り返し先が読めない北朝鮮と同時に2つの重大な危険要素がアジアで重なる時期は初めてであると、今まで以上に日米同盟が強硬であるとした。
続いてシェリバーは、3つの課題について述べた。
1つ目はTPPであり、その中心であるのが日本との議論であるとした。
シェリバーは「アメリカにとっては議会におけるTPAの承認が重要である」と語り、「TPAがない状態で、日本と農業について交渉すれば、日本側からTPAについてどうなっているか、突っ込まれるだろう」と懸念した。
2つ目は、オバマ大統領は、日本の日米同盟強化のための試みに支援すると表明すべきであるとした。シェリバーはその例として憲法第9条と集団的自衛権をあげた。
3つ目はエネルギーにおけるパートナーシップの構築である。
とりわけ日本は311以後、深刻なエネルギー不足になっており、「ロシアからのエネルギー輸入に大きく頼るようになっている」と懸念を語り、「TPPの結果、日本の問題を解決するために、アメリカのLNGを輸出し、エネルギー・パートナーシップを構築することも必要である」と語った。
続くクリグナーは、韓国訪問について語った。
クリグナーは「オバマ大統領が今回のアジア訪問に韓国訪問を加えたことは正しい」と始め、2つの理由をあげた。
一つは、アメリカの大統領がアジアを訪問する際には必ず日韓の両方を訪問することが先例になっていること、
2つ目は日韓関係が今のようにこじれているときこと、両国を訪問する必要がある、と語った。
さらに、ブルースは、「米韓関係は、現在、もっとも強固な関係にあるだろう」と語った。その理由のひとつは北朝鮮である。北朝鮮がさらに行方が読めない国になっているだけに、米韓の安全保障における関係は強固にならざるを得ないと語った。
もう一つは米韓の経済関係である。日米間ではTPPの交渉の先行きが読めない状況にあるが、米韓の間ではすでに米韓FTAを締結されている、とした。
最後に、東南アジアを専門とするローマンは、マレーシアとフィリピン訪問での意義を3つの分野で語った。
1つは貿易についてで、ローマンは、オバマ大統領は、マレーシアとフィリピンにさらにTPPについてプッシュし、同時にアメリカ議会がTPAを承認するように働きかけるべきだとした。
2つ目は、安全保障についてで、南シナ海での中国のふるまいについてオバマ大統領は強固に立ち向かうべきであるとし、ASEANに強固なバックボーンを与えるべきである、とした。
3つ目は、政治についてで、オバマ大統領が訪問することでマレーシアに世界からの注目が集まることは良いことだ、とした。
キャピトルの丘
3月25日ハーグで、日米韓の首脳会談がついに行われた。
その際、韓国の朴大統領は、挨拶のときですら、安倍首相と目をあわせなかったと報道されていた。日本では報道されていないようだが、韓国では、会談の際に、時折、朴大統領が唇を噛みしめていた、と報道されていた。
通常、仕事では、好き嫌いの感情は、なるべく表にださない努力をする。取引や交渉においては、好き嫌いの感情を出すことはないだろう。ましてや、「政治家」という言葉は、「誰とでも仲良くする」という意味で使われることもある。首脳会談で大統領・首相が好き嫌いの関係を見せることは、非常に稀なことである。
「唇を噛みしめていた」と聞いたときに、朴大統領の「長年の憎しみ」を感じずにはいられない。
「日本への嫌悪感は、最近の生まれたものではなく、もっと根が深いのではないか」と韓国の歴史に詳しいジャーナリストに尋ねてみた。
「もしかしたら、母親が殺されたことかもしれない」という言葉が返ってきた。父である朴大統領はKCIA長官に暗殺される前、1974年、朴大統領がフランス留学中に母親は在日韓国人に殺されている(文世光事件)。母親は韓国では「国母」と呼ばれるほど尊敬され愛されていた。愛する母親の無慈悲な死に面して、憎む対象を持とうとすることは、ある意味、不思議なことではない。
その時に使った銃は日本の警察から盗んだものであり、韓国に入国した際には日本の偽造旅券を使っていた、と言う。
首脳会談の場で唇を噛むほどの思いを持っていることを見せ付けられると、トップ日韓関係改善の足がかりは、思った以上に容易ではないように思われる。日韓関係の改善は、首脳会談以外の手立てを探る必要がある。
横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て2011年7月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。
2014年03月26日
防衛大学校卒業式 安倍晋三内閣総理大臣訓示(全文)
『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
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平成25年度 防衛大学校卒業式 内閣総理大臣訓示
本日、伝統ある防衛大学校の卒業式に当たり、これからの我が国の防衛を担うこととなる諸君に、心からお祝いを申し上げます。
卒業、おめでとう。
諸君の、誠に凛々しく、希望に満ち溢れた勇姿に接し、自衛隊の最高指揮官として、心強く、頼もしく思います。
また、学生の教育に尽力されてこられた、國分学校長をはじめ、教職員の方々に敬意を表します。日頃から防衛大学校に御理解と御協力を頂いている御来賓・御家族の皆様には、心より感謝申し上げます。
本日は、諸君がそれぞれの現場へと巣立つ、良い機会ですので、内閣総理大臣、そして自衛隊の最高指揮官として、一言申し上げさせていただきます。
今日は、22日。15年前の11月、中川尋史空将補と、門屋義廣一等空佐が殉職したのは、22日でありました。まずは、諸君と共に、お二人の御冥福を心よりお祈りしたいと思います。
突然のトラブルにより、急速に高度を下げるT33A。この自衛隊機から、緊急脱出を告げる声が、入間タワーに届きました。
「ベール・アウト」
しかし、そこから20秒間。事故の直前まで、二人は脱出せず、機中に残りました。
眼下に広がる、狭山市の住宅街。何としてでも、住宅街への墜落を避け、入間川の河川敷へ事故機を操縦する。5000時間を超える飛行経験、それまでの自衛官人生の全てを懸けて、最後の瞬間まで、国民の命を守ろうとしました。
二人は、まさに、命を懸けて、自衛隊員としての強い使命感と責任感を、私たちに示してくれたと思います。
「雪中の松柏、いよいよ青々たり」という言葉があります。
雪が降り積もる中でも、青々と葉をつけ、凛とした松の木のたたずまい。そこに重ねて、いかなる困難に直面しても、強い信念を持って立ち向かう人を、たたえる言葉です。
もちろん、このような事故は二度とあってはならない。我々は、そのために全力を尽くさねばなりません。
しかし、国家の存立にかかわる困難な任務に就く諸君は、万が一の事態に直面するかもしれない。
その時には、全身全霊を捧げて、国民の生命と財産、日本の領土・領海・領空は、断固として守り抜く。その信念を、堅く持ち続けてほしいと思います。
そのために、どんな風雪にもビクともしない、あの松の木のごとく、諸君には、いかなる厳しい訓練や任務にも、耐えていってもらいたいと思います。
厳しい冬の中で、松の木の青々とした姿は、周囲の見る人たちを、大いに励ましてくれるものであります。
2月の大雪災害において、雪で閉ざされ孤立した集落の人たちが、昼夜を分かたず救助活動にあたる自衛隊員の姿に、どれほど勇気づけられたことか。
昨年、豪雨被害を受けた伊豆大島でも、行方不明者の捜索を懸命に続ける自衛隊員の姿は、国民に大きな勇気を与えてくれました。
今ほど、自衛隊が、国民から信頼され、頼りにされている時代は、かつてなかったのではないでしょうか。
諸君には、その自信と誇りを胸に、どんなに困難な現場にあっても、国民を守るという崇高な任務を全うしてほしい。そして、国民に安心を与える存在であってほしいと願います。
常に国民のそばにあって、気高く存在する、「雪中の松柏」たれ。諸君には、こう申し上げたいと思います。
自衛隊を頼りにするのは、今や、日本だけではありません。
マレーシアでは、行方不明となった航空機の捜索に協力しています。フィリピンの台風被害では、1200人規模の自衛隊員が緊急支援にあたり、世界中から感謝の声が寄せられました。
ジブチや南スーダンでも、摂氏50度にも及ぶ過酷な環境のもと、高い士気を保つ自衛隊の姿は、国際的に高い評価を受けています。
冷戦後の地域紛争の増加、テロによる脅威。変わりゆく世界の現実を常に見つめながら、自衛隊は、PKOやテロ対策など、その役割を大きく広げてきました。
自衛隊の高い能力をもってすれば、もっと世界の平和と安定に貢献できるはず。世界は、諸君に、大きく期待しています。
今日、この場には、カンボジア、インドネシア、モンゴル、フィリピン、大韓民国、タイ、そしてベトナムからの留学生諸君がいます。
日本は、諸君の母国とも手を携えて、世界の平和と安定に貢献していきたい。ここでの学びの日々で育まれた深い絆をもとに、諸君には、母国と我が国との友情の架け橋になってほしいと願います。
日本を取り巻く現実は、一層、厳しさを増しています。
緊張感の高い現場で、今この瞬間も、士気高く任務にあたる自衛隊員の姿は、私の誇りであります。
南西の海では主権に対する挑発も相次いでいます。北朝鮮による大量破壊兵器や弾道ミサイルの脅威も深刻さを増しています。
日本近海の公海上において、ミサイル防衛のため警戒にあたる、米国のイージス艦が攻撃を受けるかもしれない。
これは、机上の空論ではありません。現実に起こり得る事態です。その時に、日本は何もできない、ということで、本当によいのか。
戦後68年間にわたる、我が国の平和国家としての歩みは、これからも決して変わることはありません。現実から乖離した観念論を振りかざして、これまでの歩みを踏み外すようなことは、絶対にない。我が国の立場は、明確です。
しかし、平和国家という言葉を口で唱えるだけで、平和が得られるわけでもありません。もはや、現実から目を背け、建前論に終始している余裕もありません。
必要なことは、現実に即した具体的な行動論と、そのための法的基盤の整備。それだけです。私は、現実を踏まえた、安全保障政策の立て直しを進めてまいります。
全ては国民と主権を守るため。諸君におかれても、その高い意識をもって、いかなる現場でも、現状に満足することなく、常に高みを目指して、能動的に任務にあたってもらいたいと思います。
「唯 至誠を以て 御奉公申上ぐる一事に至りては 人後に落ちまいと 堅き決意を 有している。」
日露戦争のあと学習院長に親任された乃木希典・陸軍大将は、軍人に教育などできるのか、との批判に、こう答えたと言います。
どんな任務が与えられても、誠実に、真心を持って、全力を尽くす。その一点では、誰にも絶対に負けない。
その覚悟をもって、諸君には、これからの幹部自衛官としての歩みを、進めていってもらいたいと思います。
その第一は、何よりも、諸君を支えてくれる人たちへの感謝の気持ちです。
乃木大将は、常に、第一線にあって、兵士たちと苦楽を共にすることを、信条としていたと言います。諸君にも、部下となる自衛隊員たちの気持ちに寄り添える幹部自衛官となってほしい。
同時に、諸君を育んでくださった御家族への感謝の気持ちを、忘れないでほしいと思います。
今日も、本当に数多くの御家族の皆さんが、諸君の晴れ舞台を見るために御参列くださっています。
私も、最高指揮官として、大切なお子さんを自衛隊に送り出してくださった皆さんに、この場を借りて、心から感謝申し上げたいと思います。
お預かりする以上、しっかりと任務が遂行できるよう万全を期し、皆さんが誇れるような自衛官に育てあげることをお約束いたします。
最後となりましたが、諸君の今後の御活躍と、防衛大学校の益々の発展を祈念し、私の訓示といたします。
平成二十六年三月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
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平成25年度 防衛大学校卒業式 内閣総理大臣訓示
本日、伝統ある防衛大学校の卒業式に当たり、これからの我が国の防衛を担うこととなる諸君に、心からお祝いを申し上げます。
卒業、おめでとう。
諸君の、誠に凛々しく、希望に満ち溢れた勇姿に接し、自衛隊の最高指揮官として、心強く、頼もしく思います。
また、学生の教育に尽力されてこられた、國分学校長をはじめ、教職員の方々に敬意を表します。日頃から防衛大学校に御理解と御協力を頂いている御来賓・御家族の皆様には、心より感謝申し上げます。
本日は、諸君がそれぞれの現場へと巣立つ、良い機会ですので、内閣総理大臣、そして自衛隊の最高指揮官として、一言申し上げさせていただきます。
今日は、22日。15年前の11月、中川尋史空将補と、門屋義廣一等空佐が殉職したのは、22日でありました。まずは、諸君と共に、お二人の御冥福を心よりお祈りしたいと思います。
突然のトラブルにより、急速に高度を下げるT33A。この自衛隊機から、緊急脱出を告げる声が、入間タワーに届きました。
「ベール・アウト」
しかし、そこから20秒間。事故の直前まで、二人は脱出せず、機中に残りました。
眼下に広がる、狭山市の住宅街。何としてでも、住宅街への墜落を避け、入間川の河川敷へ事故機を操縦する。5000時間を超える飛行経験、それまでの自衛官人生の全てを懸けて、最後の瞬間まで、国民の命を守ろうとしました。
二人は、まさに、命を懸けて、自衛隊員としての強い使命感と責任感を、私たちに示してくれたと思います。
「雪中の松柏、いよいよ青々たり」という言葉があります。
雪が降り積もる中でも、青々と葉をつけ、凛とした松の木のたたずまい。そこに重ねて、いかなる困難に直面しても、強い信念を持って立ち向かう人を、たたえる言葉です。
もちろん、このような事故は二度とあってはならない。我々は、そのために全力を尽くさねばなりません。
しかし、国家の存立にかかわる困難な任務に就く諸君は、万が一の事態に直面するかもしれない。
その時には、全身全霊を捧げて、国民の生命と財産、日本の領土・領海・領空は、断固として守り抜く。その信念を、堅く持ち続けてほしいと思います。
そのために、どんな風雪にもビクともしない、あの松の木のごとく、諸君には、いかなる厳しい訓練や任務にも、耐えていってもらいたいと思います。
厳しい冬の中で、松の木の青々とした姿は、周囲の見る人たちを、大いに励ましてくれるものであります。
2月の大雪災害において、雪で閉ざされ孤立した集落の人たちが、昼夜を分かたず救助活動にあたる自衛隊員の姿に、どれほど勇気づけられたことか。
昨年、豪雨被害を受けた伊豆大島でも、行方不明者の捜索を懸命に続ける自衛隊員の姿は、国民に大きな勇気を与えてくれました。
今ほど、自衛隊が、国民から信頼され、頼りにされている時代は、かつてなかったのではないでしょうか。
諸君には、その自信と誇りを胸に、どんなに困難な現場にあっても、国民を守るという崇高な任務を全うしてほしい。そして、国民に安心を与える存在であってほしいと願います。
常に国民のそばにあって、気高く存在する、「雪中の松柏」たれ。諸君には、こう申し上げたいと思います。
自衛隊を頼りにするのは、今や、日本だけではありません。
マレーシアでは、行方不明となった航空機の捜索に協力しています。フィリピンの台風被害では、1200人規模の自衛隊員が緊急支援にあたり、世界中から感謝の声が寄せられました。
ジブチや南スーダンでも、摂氏50度にも及ぶ過酷な環境のもと、高い士気を保つ自衛隊の姿は、国際的に高い評価を受けています。
冷戦後の地域紛争の増加、テロによる脅威。変わりゆく世界の現実を常に見つめながら、自衛隊は、PKOやテロ対策など、その役割を大きく広げてきました。
自衛隊の高い能力をもってすれば、もっと世界の平和と安定に貢献できるはず。世界は、諸君に、大きく期待しています。
今日、この場には、カンボジア、インドネシア、モンゴル、フィリピン、大韓民国、タイ、そしてベトナムからの留学生諸君がいます。
日本は、諸君の母国とも手を携えて、世界の平和と安定に貢献していきたい。ここでの学びの日々で育まれた深い絆をもとに、諸君には、母国と我が国との友情の架け橋になってほしいと願います。
日本を取り巻く現実は、一層、厳しさを増しています。
緊張感の高い現場で、今この瞬間も、士気高く任務にあたる自衛隊員の姿は、私の誇りであります。
南西の海では主権に対する挑発も相次いでいます。北朝鮮による大量破壊兵器や弾道ミサイルの脅威も深刻さを増しています。
日本近海の公海上において、ミサイル防衛のため警戒にあたる、米国のイージス艦が攻撃を受けるかもしれない。
これは、机上の空論ではありません。現実に起こり得る事態です。その時に、日本は何もできない、ということで、本当によいのか。
戦後68年間にわたる、我が国の平和国家としての歩みは、これからも決して変わることはありません。現実から乖離した観念論を振りかざして、これまでの歩みを踏み外すようなことは、絶対にない。我が国の立場は、明確です。
しかし、平和国家という言葉を口で唱えるだけで、平和が得られるわけでもありません。もはや、現実から目を背け、建前論に終始している余裕もありません。
必要なことは、現実に即した具体的な行動論と、そのための法的基盤の整備。それだけです。私は、現実を踏まえた、安全保障政策の立て直しを進めてまいります。
全ては国民と主権を守るため。諸君におかれても、その高い意識をもって、いかなる現場でも、現状に満足することなく、常に高みを目指して、能動的に任務にあたってもらいたいと思います。
「唯 至誠を以て 御奉公申上ぐる一事に至りては 人後に落ちまいと 堅き決意を 有している。」
日露戦争のあと学習院長に親任された乃木希典・陸軍大将は、軍人に教育などできるのか、との批判に、こう答えたと言います。
どんな任務が与えられても、誠実に、真心を持って、全力を尽くす。その一点では、誰にも絶対に負けない。
その覚悟をもって、諸君には、これからの幹部自衛官としての歩みを、進めていってもらいたいと思います。
その第一は、何よりも、諸君を支えてくれる人たちへの感謝の気持ちです。
乃木大将は、常に、第一線にあって、兵士たちと苦楽を共にすることを、信条としていたと言います。諸君にも、部下となる自衛隊員たちの気持ちに寄り添える幹部自衛官となってほしい。
同時に、諸君を育んでくださった御家族への感謝の気持ちを、忘れないでほしいと思います。
今日も、本当に数多くの御家族の皆さんが、諸君の晴れ舞台を見るために御参列くださっています。
私も、最高指揮官として、大切なお子さんを自衛隊に送り出してくださった皆さんに、この場を借りて、心から感謝申し上げたいと思います。
お預かりする以上、しっかりと任務が遂行できるよう万全を期し、皆さんが誇れるような自衛官に育てあげることをお約束いたします。
最後となりましたが、諸君の今後の御活躍と、防衛大学校の益々の発展を祈念し、私の訓示といたします。
平成二十六年三月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三
2014年03月25日
<遠藤誉が斬る>日米韓会談と北朝鮮――北朝鮮は「中韓蜜月」に激怒している
『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
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<遠藤誉が斬る>日米韓会談と北朝鮮――北朝鮮は「中韓蜜月」に激怒している
(2014年3月25日、レコードチャイナより)
アメリカから強い要求を受けて、日本では安倍首相が「河野談話(従軍慰安婦問題に関する河野洋平官房長官談話)を見直さない方針」であると国会答弁し、また韓国ではアメリカから「二股外交をするな」「これ以上日本と歴史問題で争うなら米韓同盟に大きなマイナス」と最後通牒を渡されて、ようやく米日韓3か国の首脳会談が可能となった。
日米同盟と米韓同盟の絆を強くすることにより、中ロ、特にロシアに脅威を与えたいアメリカとしては、少しだけアジアにおける存在力を取り戻せたかもしれない。
しかし日韓が「より」を戻すことが果たして日本にとって非常にいいことかというと、必ずしもそうとは言えない複雑に絡む北東アジア情勢がある。
◆北東アジアに存在するねじれた関係
というのは、北朝鮮は中国が韓国に良い顔をするのが腹立たしくてならない。
韓国とはまだ戦争状態にあると位置づけている北朝鮮は、1992年に中韓国交正常化が成立すると激怒した。同盟国の中国が最大の「敵国」(韓国)と国交正常化したことになるからだ。
そのため北挑戦を裏切った中国への報復として、1950年に起きた朝鮮戦争で北朝鮮のために戦った中国人民志願軍の北朝鮮にある慰霊碑を破壊したほどである。
これに激怒したのは中国のトウ小平。「歯向かえるものなら、さあ、向かって来い!」と一喝した。そこで北朝鮮は少しはおとなしくなったものの、それでも中国に対する怒りと不信感はぬぐえていない。
中国とすれば北朝鮮が滅べば、朝鮮半島は西側諸国陣営として南北統一され、陸続きのすぐ隣りにアメリカ軍が駐留することになる。それを嫌っているのを見透かしている北朝鮮は態度を変えなかった。そこでやむなく中国は北朝鮮をなだめるべく多くの経済援助を申し出ている。こういう経緯の中での中朝関係なので、北朝鮮は中国に対して「態度がでかい」のである。
朴槿恵(パククネ)が大統領になって以来、韓国はまるで中国の属国にでもなったかのごとく、ひたすら習近平に媚びてきた。自ら「歴史カード」を持ち出して「歴史同盟」を形成し、中国の対日批判路線に便乗した。習近平も朴槿恵の切なる要望を快く受け容れて、伊藤博文を暗殺した朝鮮独立運動家、安重根(アンジュングン)の記念館を、暗殺現場の黒竜江省ハルビンに開館したほどだ。自国に建てずに、わざわざ「中国」に建てるという朴槿恵のおもねりは、北朝鮮をさらに刺激した。おもねりを受け止める習近平の計算が、米韓共同軍事演習以上に腹立たしくてならない。
中韓の蜜月に北朝鮮は再び激怒。
昨年12月には中国に近かった張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長を処刑しただけでなく、「それならお前らが最も嫌っている日本に近づいてやるわ」とばかりに日本に急接近。今月19日から日朝赤十字会談が中国の瀋陽で行われた。
日本には日米同盟がある。
米国との会談を実現させてくれるのは中国ではなく日本である可能性が高いかと北朝鮮は期待しているだろう。六カ国協議への呼びかけも、議長国の中国ではなく、日本の呼びかけなら応じる可能性があるほど、いま中朝関係は冷えているのだ。
◆それでも加速化する「中韓歴史同盟」
一方、ウクライナ情勢で一つでも多くの国を自国側に引き寄せたいロシアは、北朝鮮にも色目を使っている。すでに今年2月に、朝ロ両政府は、北朝鮮がソ連時代から抱えてきた総額約110億ドルの対ロシア累積債務を解消することに合意した。
今後は両政府による共同事業も想定しているようだ。
このような中、日米韓3カ国首脳会談を通して日韓が「より」を戻し、万一にも韓国がアメリカに怒られて中国から離れるようなことでもあれば、北朝鮮にとって日本接近の意義は小さくなる。
韓国内には38度線で朝鮮半島を分断させたのはアメリカだという「恨み」の痕跡があり、北のミサイルから韓国を直接に守ってくれるのは中国かもしれないという期待感もある。だからと言って韓国がアメリカに見離された場合、中国にとっての韓国の価値は低くなる。
その意味で韓国が媚中外交を続けていてこそ、日本には別のチャンスが待っているとも言えなくはない。
折しも3月23日夜(日本時間24日未明)、オランダのハーグで中韓首脳会談がいち早く開かれ、習近平と朴槿恵は「中韓歴史同盟」で一致した。ハルビンに安重根記念館を建てただけでなく、西安にも「光復軍」という朝鮮の抗日部隊の石碑を建設中だと習近平は明かした。
日中戦争およびその後の革命戦争(中国の国共内戦)においても、朝鮮部隊は中国人民軍の前身である八路軍(はちろぐん)に協力している。その朝鮮部隊のほとんどは現在の北朝鮮所属だったのだが、この記念碑を習近平は韓国へのプレゼントとして建て、中国国内の愛国主義教育基地の一つに加えていくつもりだ。
北東アジアには、こういったねじれた関係がある。
日韓首脳会談を待つよりは、むしろ北朝鮮が中韓に激怒している間に、拉致問題解決に向けて一気に努力した方が良いという日本の課題も見逃せない。
<遠藤誉が斬る>第27回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。
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<遠藤誉が斬る>日米韓会談と北朝鮮――北朝鮮は「中韓蜜月」に激怒している
(2014年3月25日、レコードチャイナより)
アメリカから強い要求を受けて、日本では安倍首相が「河野談話(従軍慰安婦問題に関する河野洋平官房長官談話)を見直さない方針」であると国会答弁し、また韓国ではアメリカから「二股外交をするな」「これ以上日本と歴史問題で争うなら米韓同盟に大きなマイナス」と最後通牒を渡されて、ようやく米日韓3か国の首脳会談が可能となった。
日米同盟と米韓同盟の絆を強くすることにより、中ロ、特にロシアに脅威を与えたいアメリカとしては、少しだけアジアにおける存在力を取り戻せたかもしれない。
しかし日韓が「より」を戻すことが果たして日本にとって非常にいいことかというと、必ずしもそうとは言えない複雑に絡む北東アジア情勢がある。
◆北東アジアに存在するねじれた関係
というのは、北朝鮮は中国が韓国に良い顔をするのが腹立たしくてならない。
韓国とはまだ戦争状態にあると位置づけている北朝鮮は、1992年に中韓国交正常化が成立すると激怒した。同盟国の中国が最大の「敵国」(韓国)と国交正常化したことになるからだ。
そのため北挑戦を裏切った中国への報復として、1950年に起きた朝鮮戦争で北朝鮮のために戦った中国人民志願軍の北朝鮮にある慰霊碑を破壊したほどである。
これに激怒したのは中国のトウ小平。「歯向かえるものなら、さあ、向かって来い!」と一喝した。そこで北朝鮮は少しはおとなしくなったものの、それでも中国に対する怒りと不信感はぬぐえていない。
中国とすれば北朝鮮が滅べば、朝鮮半島は西側諸国陣営として南北統一され、陸続きのすぐ隣りにアメリカ軍が駐留することになる。それを嫌っているのを見透かしている北朝鮮は態度を変えなかった。そこでやむなく中国は北朝鮮をなだめるべく多くの経済援助を申し出ている。こういう経緯の中での中朝関係なので、北朝鮮は中国に対して「態度がでかい」のである。
朴槿恵(パククネ)が大統領になって以来、韓国はまるで中国の属国にでもなったかのごとく、ひたすら習近平に媚びてきた。自ら「歴史カード」を持ち出して「歴史同盟」を形成し、中国の対日批判路線に便乗した。習近平も朴槿恵の切なる要望を快く受け容れて、伊藤博文を暗殺した朝鮮独立運動家、安重根(アンジュングン)の記念館を、暗殺現場の黒竜江省ハルビンに開館したほどだ。自国に建てずに、わざわざ「中国」に建てるという朴槿恵のおもねりは、北朝鮮をさらに刺激した。おもねりを受け止める習近平の計算が、米韓共同軍事演習以上に腹立たしくてならない。
中韓の蜜月に北朝鮮は再び激怒。
昨年12月には中国に近かった張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長を処刑しただけでなく、「それならお前らが最も嫌っている日本に近づいてやるわ」とばかりに日本に急接近。今月19日から日朝赤十字会談が中国の瀋陽で行われた。
日本には日米同盟がある。
米国との会談を実現させてくれるのは中国ではなく日本である可能性が高いかと北朝鮮は期待しているだろう。六カ国協議への呼びかけも、議長国の中国ではなく、日本の呼びかけなら応じる可能性があるほど、いま中朝関係は冷えているのだ。
◆それでも加速化する「中韓歴史同盟」
一方、ウクライナ情勢で一つでも多くの国を自国側に引き寄せたいロシアは、北朝鮮にも色目を使っている。すでに今年2月に、朝ロ両政府は、北朝鮮がソ連時代から抱えてきた総額約110億ドルの対ロシア累積債務を解消することに合意した。
今後は両政府による共同事業も想定しているようだ。
このような中、日米韓3カ国首脳会談を通して日韓が「より」を戻し、万一にも韓国がアメリカに怒られて中国から離れるようなことでもあれば、北朝鮮にとって日本接近の意義は小さくなる。
韓国内には38度線で朝鮮半島を分断させたのはアメリカだという「恨み」の痕跡があり、北のミサイルから韓国を直接に守ってくれるのは中国かもしれないという期待感もある。だからと言って韓国がアメリカに見離された場合、中国にとっての韓国の価値は低くなる。
その意味で韓国が媚中外交を続けていてこそ、日本には別のチャンスが待っているとも言えなくはない。
折しも3月23日夜(日本時間24日未明)、オランダのハーグで中韓首脳会談がいち早く開かれ、習近平と朴槿恵は「中韓歴史同盟」で一致した。ハルビンに安重根記念館を建てただけでなく、西安にも「光復軍」という朝鮮の抗日部隊の石碑を建設中だと習近平は明かした。
日中戦争およびその後の革命戦争(中国の国共内戦)においても、朝鮮部隊は中国人民軍の前身である八路軍(はちろぐん)に協力している。その朝鮮部隊のほとんどは現在の北朝鮮所属だったのだが、この記念碑を習近平は韓国へのプレゼントとして建て、中国国内の愛国主義教育基地の一つに加えていくつもりだ。
北東アジアには、こういったねじれた関係がある。
日韓首脳会談を待つよりは、むしろ北朝鮮が中韓に激怒している間に、拉致問題解決に向けて一気に努力した方が良いという日本の課題も見逃せない。
<遠藤誉が斬る>第27回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。
2014年03月24日
高村自民副総裁「集団的自衛権、最小限度の解釈変更できる」
『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
ついに「第1位」になりました。
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高村自民副総裁「集団的自衛権、最小限度の解釈変更できる」
(産経新聞 3月22日(土)より)
自民党の高村正彦副総裁が産経新聞の取材に応じ、安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認について、国の存立を守るため最高裁が認める必要最小限度の自衛権の範囲内であれば憲法解釈の変更で行えるとの考えを表明した。党幹部が具体的な解釈変更基準を示したのは初めて。高村氏はまた、5月に訪中を検討していることも明らかにした。(比護義則)
■法制局の判断は行き過ぎだった
憲法に権力を縛る側面があることは、時代が変わっても変わることはない。その立憲主義を守るため、日本国憲法には三権分立という制度がある。最高裁判所を最終的な憲法判断の場としたわけなんです。最高裁は自衛権について、個別的・集団的の区別をすることなく「わが国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」(昭和34年の砂川事件の判決)としている。
別の言い方をすれば、存立を全うするために必要でない自衛権の行使はできないわけだ。だから、政府が最高裁の認める限度を超えて解釈変更はできないのです。つまり限度を超えない範囲であればいいわけです。
ただ、内閣法制局は「集団的自衛権の行使は一切できませんよ」と言ってきた。内閣法制局が否定すべきだったのは“典型的な”集団的自衛権の行使なんです。例えば、日本の同盟国の米国が、他国に攻撃されたら自衛隊が米国まで行って米国を守る−。これについては「国の存立を全うするために必要」と言えないから「それはできない」と法制局が言うのは正しい。だが、「あらゆる態様の集団的自衛権の行使ができない」と言ってしまったのは、行き過ぎだった。
■現状での破綻、間違いない
国際情勢は現実に変化している。日本の平和と安全、国の存立を守るために、必要最小限度のものには集団的自衛権に分類されるものもあるのではないかというのが、現在の論点なんです。
例えば、A国が日本を侵略してくるかもしれないという状況があり、米国の船が日米安全保障条約に基づき、日本のために近海で警戒行動を行っている様子を想像してみてください。そして、A国が米国の船を襲います。このとき、日本は米国の船を守りたくても、守れば集団的自衛権の行使を禁じる憲法解釈に抵触することになり、傍観するしかありません。
結果、米国の船が大損害を受け、その後、A国が日本に侵略してくると仮定します。このとき、米国民は日本を守る大義を見いだすことはできるでしょうか。米国は世論の国です。米国の船を守らなかった日本を守るために、米国の青年の血を流すことに批判が強まるのは必至です。だから、米国の船を守ることが、日本の平和と安全、国の存立を全うするための必要最小限の自衛権の行使といえるのではないでしょうか。
「集団的自衛権は一切合切認められない」という理論は、今の国際情勢を踏まえれば破綻しているのは間違いありません。十把一からげに一切認めない憲法解釈が問題なのです。
日本の安全保障の議論を振り返ると、必ず反対論が先行するんです。まず戦後に自衛隊が発足したとき。「非武装中立論」が一世を風靡(ふうび)した。「教え子を再び戦場に送るな」などアジテーションが巻き起こった。ところが、今では、多くの国民が自衛隊を理解し、支持してくれている。日米安全保障条約、国連平和維持活動(PKO)の議論をめぐっても同様です。
結局、先行するアジテーションは事実でなかったということを歴史が証明しているわけですね。集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更も同じ結果になるだろうと思うんです。
■5月の訪中、要請された
ただ、日米安保等の抑止力とともに平和外交努力が必要なことは言うまでもありません。特に近隣諸国とは、膝を交え理解を深め合うという努力は絶対に必要なんです。13日に国会内で中日友好協会の王秀雲副会長と会談しました。王氏は5月の訪中を要請し、こちらはしかるべき人との会談を申し入れました。環境が整うかどうかは分かりませんが、こうした平和外交努力を積み重ねることはとても大切です。
安倍首相も習近平国家主席も日中関係が冷え込む中、両国のあり方を「戦略的互恵関係」に戻したいと思っているに違いない。そこに、みじんの疑いも持っていない。私は民主党政権下における、いわゆる「中国漁船衝突事件」のときに「戦術的互損関係に陥っている」と言いましたが、いまだ脱し切れていないのは残念です。
安倍首相というのは飛び抜けた発信力を持ったリーダーなんです。それ故に誤解を受けやすい面もある。リーダーが誤解を受けると国民が損をするという結果になる。そういう誤解を解消するための努力が私に課せられた使命の一つだと思っています。
【砂川事件】 昭和32年7月、東京都砂川町(現立川市)の米軍立川基地拡張に反対し基地内に侵入したデモ隊への刑事罰をめぐり、日米安全保障条約と米軍駐留の合憲性が争われた裁判。34年12月、最高裁大法廷は判決で、日本国憲法について「主権国として持つ固有の自衛権を何ら否定されたものではない」と判断。「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」とした。
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
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高村自民副総裁「集団的自衛権、最小限度の解釈変更できる」
(産経新聞 3月22日(土)より)
自民党の高村正彦副総裁が産経新聞の取材に応じ、安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認について、国の存立を守るため最高裁が認める必要最小限度の自衛権の範囲内であれば憲法解釈の変更で行えるとの考えを表明した。党幹部が具体的な解釈変更基準を示したのは初めて。高村氏はまた、5月に訪中を検討していることも明らかにした。(比護義則)
■法制局の判断は行き過ぎだった
憲法に権力を縛る側面があることは、時代が変わっても変わることはない。その立憲主義を守るため、日本国憲法には三権分立という制度がある。最高裁判所を最終的な憲法判断の場としたわけなんです。最高裁は自衛権について、個別的・集団的の区別をすることなく「わが国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」(昭和34年の砂川事件の判決)としている。
別の言い方をすれば、存立を全うするために必要でない自衛権の行使はできないわけだ。だから、政府が最高裁の認める限度を超えて解釈変更はできないのです。つまり限度を超えない範囲であればいいわけです。
ただ、内閣法制局は「集団的自衛権の行使は一切できませんよ」と言ってきた。内閣法制局が否定すべきだったのは“典型的な”集団的自衛権の行使なんです。例えば、日本の同盟国の米国が、他国に攻撃されたら自衛隊が米国まで行って米国を守る−。これについては「国の存立を全うするために必要」と言えないから「それはできない」と法制局が言うのは正しい。だが、「あらゆる態様の集団的自衛権の行使ができない」と言ってしまったのは、行き過ぎだった。
■現状での破綻、間違いない
国際情勢は現実に変化している。日本の平和と安全、国の存立を守るために、必要最小限度のものには集団的自衛権に分類されるものもあるのではないかというのが、現在の論点なんです。
例えば、A国が日本を侵略してくるかもしれないという状況があり、米国の船が日米安全保障条約に基づき、日本のために近海で警戒行動を行っている様子を想像してみてください。そして、A国が米国の船を襲います。このとき、日本は米国の船を守りたくても、守れば集団的自衛権の行使を禁じる憲法解釈に抵触することになり、傍観するしかありません。
結果、米国の船が大損害を受け、その後、A国が日本に侵略してくると仮定します。このとき、米国民は日本を守る大義を見いだすことはできるでしょうか。米国は世論の国です。米国の船を守らなかった日本を守るために、米国の青年の血を流すことに批判が強まるのは必至です。だから、米国の船を守ることが、日本の平和と安全、国の存立を全うするための必要最小限の自衛権の行使といえるのではないでしょうか。
「集団的自衛権は一切合切認められない」という理論は、今の国際情勢を踏まえれば破綻しているのは間違いありません。十把一からげに一切認めない憲法解釈が問題なのです。
日本の安全保障の議論を振り返ると、必ず反対論が先行するんです。まず戦後に自衛隊が発足したとき。「非武装中立論」が一世を風靡(ふうび)した。「教え子を再び戦場に送るな」などアジテーションが巻き起こった。ところが、今では、多くの国民が自衛隊を理解し、支持してくれている。日米安全保障条約、国連平和維持活動(PKO)の議論をめぐっても同様です。
結局、先行するアジテーションは事実でなかったということを歴史が証明しているわけですね。集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更も同じ結果になるだろうと思うんです。
■5月の訪中、要請された
ただ、日米安保等の抑止力とともに平和外交努力が必要なことは言うまでもありません。特に近隣諸国とは、膝を交え理解を深め合うという努力は絶対に必要なんです。13日に国会内で中日友好協会の王秀雲副会長と会談しました。王氏は5月の訪中を要請し、こちらはしかるべき人との会談を申し入れました。環境が整うかどうかは分かりませんが、こうした平和外交努力を積み重ねることはとても大切です。
安倍首相も習近平国家主席も日中関係が冷え込む中、両国のあり方を「戦略的互恵関係」に戻したいと思っているに違いない。そこに、みじんの疑いも持っていない。私は民主党政権下における、いわゆる「中国漁船衝突事件」のときに「戦術的互損関係に陥っている」と言いましたが、いまだ脱し切れていないのは残念です。
安倍首相というのは飛び抜けた発信力を持ったリーダーなんです。それ故に誤解を受けやすい面もある。リーダーが誤解を受けると国民が損をするという結果になる。そういう誤解を解消するための努力が私に課せられた使命の一つだと思っています。
【砂川事件】 昭和32年7月、東京都砂川町(現立川市)の米軍立川基地拡張に反対し基地内に侵入したデモ隊への刑事罰をめぐり、日米安全保障条約と米軍駐留の合憲性が争われた裁判。34年12月、最高裁大法廷は判決で、日本国憲法について「主権国として持つ固有の自衛権を何ら否定されたものではない」と判断。「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」とした。
2014年03月19日
<遠藤誉が斬る>クリミアの「民族自決」は習近平には脅威
『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
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<遠藤誉が斬る>クリミアの「民族自決」は習近平には脅威――国内の少数民族独立と親ロとの板挟み
(レコードチャイナより)
ウクライナのクリミヤ自治共和国における住民投票は、96.77%という圧倒的多数で「ロシアに帰属する」方に軍配が上がった。
ロシアは「これは住民の意思決定だ」として、クリミヤ自治共和国を独立国家と認めただけでなく、ロシア編入に関しても同意した。
欧米諸国は、そもそもこの住民投票自体がウクライナ憲法や国際法に違反するとしていた。
プーチンがロシア編入にまで踏み込んだことにより、ロシアに対する制裁を強化する方向で欧米諸国は「概ね」一致している。
日米同盟がある日本にとっては、アメリカと歩みをともにしなければならないが、北方領土解決のために安倍政権が取っている親ロ姿勢との間で板挟みになっている。
しかし習近平が置かれている板挟みは、さらに深刻だ。
なぜならクリミヤの住民投票による「民族自決」は、そのまま中国国内の新疆ウィグル自治区やチベット自治区の「民族自決」と相似形を成すからだ。
ロシアの側に立ってクリミヤ住民の「民族自決」を容認するなら、自国のウィグル民族やチベット民族による「民族自決」すなわち「独立」を認めるという論理につながってしまう。だから中国としてはクリミヤの住民投票を「無効」とする欧米側に立ちたかったが、何と言っても「合法」と主張しているのは戦略的パートナーとして最も親密な関係にあるロシアだ。
その結果、3月15日に国連安保理事会で出された住民投票を「無効」とする採決案に対して中国は棄権した。
周知のようにロシアが拒否権を行使したので、この採決案は否決されたが、中国が「棄権」という選択肢を選んだところに、習近平の苦渋が滲んでいる。
◆矛盾する民主主義の原則
中国には漢民族以外に55の少数民族があり、特に中国の全面積の16.7%を占める新疆ウィグル自治区と12.7%を占める西蔵(チベット)自治区の場合は独立傾向が強く、暴動が絶えない。
その暴動を武力で抑えている中国としては、自らの運命を各民族が決めていいなどという「民族自決」行動は、絶対に許されないのである。
新疆ウィグル自治区やチベット自治区はウクライナに組み込まれていたクリミヤ自治共和国と同じで、より強大な力によって民族の尊厳を踏みにじられ、より大きな力を持っている国(中国)に組み込まれてしまった。
組み込まれるときから「民族の独立」を叫んで抵抗してきたが、鎮圧された状態になっているのが現状だ。
クリミヤ同様、もしウィグル族やチベット族が民族自決という手段で独立を勝ち取ろうとしたら、どうだろう。欧米西側諸国は、それは「中国の憲法に違反する」とか「国際法に違反する」として少数民族の独立を非難して中国政府側に付き、中国政府側を守ろうとするだろうか。
決してしないだろう。
このたびのクリミヤの住民投票は、たとえロシア軍の影がちらついていたとしても、住民が命がけで守った「民主的な投票行動」という、まさに民主主義の原則に則って住民が自ら選んだ意思表示だ。
それを「違法」と断罪する欧米の非難は、中国にとって、実は大変ありがたいことで、是非とも、その同じ非難をウィグル族やチベット族の独立運動に対しても言ってほしいと思っているだろう。
しかし実際は、アメリカにはウィグル族の亡命政府があるし、インドにはチベット族の亡命政府があり、オバマはその長であるダライラマと会談もしている。
◆「民族自決」におののく習近平
もしその国の憲法と国際法に基づいて、当該国に編入された区域あるいは民族を、住民投票によって独立させてはならないとするならば、この亡命政府も受け入れてはならないし、ましていわんやオバマがダライラマと会談するなどということもあってはならないはずだ。
しかし会談するだけでなく、西側の価値観は中国の少数民族弾圧を非難し、中国の民主化を望んでいるのではないのか。
中国から見ればこれは「内政干渉」で、今般の住民投票を「無効」と主張する欧米側の論理とは相容れない。
欧米も矛盾していれば、中国もまた矛盾しているのである。
プーチンは、欧米の非難は「これまで欧米が主張してきた民主主義の原則に反している」と反撃。
東西ドイツが一つになった例を引いて、「民が選んだ結果」を重んじるべきで、軍事クーデターや反政府テロで政権を奪還したウクライナ暫定政権こそ非合法と断罪した。
選挙による民主主義の原則に対する主張の立場が、ロシアと欧米で逆転した格好だ。
中国は日米に対抗するためにもロシアとの親密度を常にアピールし、親ロ路線を取ってきた。
しかしクリミヤの「民族自決」には断固反対したい。
だというのに中ロ関係を重視して「反対」を叫べないでいる。
まさか、ここで欧米側に付くなどということは絶対にできることではない。そのようなことをしたら共産主義の統治理論を破壊する。
しかし、ひとたび住民投票による民族自決の方法を認めてしまえば、中国は一瞬で内部崩壊するし、また悲願の台湾統一も不可能となり、台湾の独立派を認めることにつながってしまう。
ウクライナ問題は決して中国が高みの見物をして「にんまり」しているわけではない。
たしかにロシアもアメリカも中国を味方につけたいと思っているだろうが、しかし習近平自身は「民族自決」におののいている。
国家崩壊につながりかねない爆弾を内包しているからだ。
<遠藤誉が斬る>第25回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。
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<遠藤誉が斬る>クリミアの「民族自決」は習近平には脅威――国内の少数民族独立と親ロとの板挟み
(レコードチャイナより)
ウクライナのクリミヤ自治共和国における住民投票は、96.77%という圧倒的多数で「ロシアに帰属する」方に軍配が上がった。
ロシアは「これは住民の意思決定だ」として、クリミヤ自治共和国を独立国家と認めただけでなく、ロシア編入に関しても同意した。
欧米諸国は、そもそもこの住民投票自体がウクライナ憲法や国際法に違反するとしていた。
プーチンがロシア編入にまで踏み込んだことにより、ロシアに対する制裁を強化する方向で欧米諸国は「概ね」一致している。
日米同盟がある日本にとっては、アメリカと歩みをともにしなければならないが、北方領土解決のために安倍政権が取っている親ロ姿勢との間で板挟みになっている。
しかし習近平が置かれている板挟みは、さらに深刻だ。
なぜならクリミヤの住民投票による「民族自決」は、そのまま中国国内の新疆ウィグル自治区やチベット自治区の「民族自決」と相似形を成すからだ。
ロシアの側に立ってクリミヤ住民の「民族自決」を容認するなら、自国のウィグル民族やチベット民族による「民族自決」すなわち「独立」を認めるという論理につながってしまう。だから中国としてはクリミヤの住民投票を「無効」とする欧米側に立ちたかったが、何と言っても「合法」と主張しているのは戦略的パートナーとして最も親密な関係にあるロシアだ。
その結果、3月15日に国連安保理事会で出された住民投票を「無効」とする採決案に対して中国は棄権した。
周知のようにロシアが拒否権を行使したので、この採決案は否決されたが、中国が「棄権」という選択肢を選んだところに、習近平の苦渋が滲んでいる。
◆矛盾する民主主義の原則
中国には漢民族以外に55の少数民族があり、特に中国の全面積の16.7%を占める新疆ウィグル自治区と12.7%を占める西蔵(チベット)自治区の場合は独立傾向が強く、暴動が絶えない。
その暴動を武力で抑えている中国としては、自らの運命を各民族が決めていいなどという「民族自決」行動は、絶対に許されないのである。
新疆ウィグル自治区やチベット自治区はウクライナに組み込まれていたクリミヤ自治共和国と同じで、より強大な力によって民族の尊厳を踏みにじられ、より大きな力を持っている国(中国)に組み込まれてしまった。
組み込まれるときから「民族の独立」を叫んで抵抗してきたが、鎮圧された状態になっているのが現状だ。
クリミヤ同様、もしウィグル族やチベット族が民族自決という手段で独立を勝ち取ろうとしたら、どうだろう。欧米西側諸国は、それは「中国の憲法に違反する」とか「国際法に違反する」として少数民族の独立を非難して中国政府側に付き、中国政府側を守ろうとするだろうか。
決してしないだろう。
このたびのクリミヤの住民投票は、たとえロシア軍の影がちらついていたとしても、住民が命がけで守った「民主的な投票行動」という、まさに民主主義の原則に則って住民が自ら選んだ意思表示だ。
それを「違法」と断罪する欧米の非難は、中国にとって、実は大変ありがたいことで、是非とも、その同じ非難をウィグル族やチベット族の独立運動に対しても言ってほしいと思っているだろう。
しかし実際は、アメリカにはウィグル族の亡命政府があるし、インドにはチベット族の亡命政府があり、オバマはその長であるダライラマと会談もしている。
◆「民族自決」におののく習近平
もしその国の憲法と国際法に基づいて、当該国に編入された区域あるいは民族を、住民投票によって独立させてはならないとするならば、この亡命政府も受け入れてはならないし、ましていわんやオバマがダライラマと会談するなどということもあってはならないはずだ。
しかし会談するだけでなく、西側の価値観は中国の少数民族弾圧を非難し、中国の民主化を望んでいるのではないのか。
中国から見ればこれは「内政干渉」で、今般の住民投票を「無効」と主張する欧米側の論理とは相容れない。
欧米も矛盾していれば、中国もまた矛盾しているのである。
プーチンは、欧米の非難は「これまで欧米が主張してきた民主主義の原則に反している」と反撃。
東西ドイツが一つになった例を引いて、「民が選んだ結果」を重んじるべきで、軍事クーデターや反政府テロで政権を奪還したウクライナ暫定政権こそ非合法と断罪した。
選挙による民主主義の原則に対する主張の立場が、ロシアと欧米で逆転した格好だ。
中国は日米に対抗するためにもロシアとの親密度を常にアピールし、親ロ路線を取ってきた。
しかしクリミヤの「民族自決」には断固反対したい。
だというのに中ロ関係を重視して「反対」を叫べないでいる。
まさか、ここで欧米側に付くなどということは絶対にできることではない。そのようなことをしたら共産主義の統治理論を破壊する。
しかし、ひとたび住民投票による民族自決の方法を認めてしまえば、中国は一瞬で内部崩壊するし、また悲願の台湾統一も不可能となり、台湾の独立派を認めることにつながってしまう。
ウクライナ問題は決して中国が高みの見物をして「にんまり」しているわけではない。
たしかにロシアもアメリカも中国を味方につけたいと思っているだろうが、しかし習近平自身は「民族自決」におののいている。
国家崩壊につながりかねない爆弾を内包しているからだ。
<遠藤誉が斬る>第25回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。
2014年03月18日
衆議院本会議における安倍内閣総理大臣発言
『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
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衆議院本会議における安倍内閣総理大臣発言
「国家安全保障戦略」、「平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画(平成二十六年度〜平成三十年度)」に関する報告について
(平成二十六年三月十八日)
政府は、昨年十二月十七日、国家安全保障会議及び閣議において、「国家安全保障戦略」、「平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱」及び平成二十六年度から平成三十年度までの「中期防衛力整備計画」を決定いたしました。以下、これらについて御報告申し上げます。
「国家安全保障戦略」は、我が国で初めて策定した、国家安全保障に関する基本方針であります。我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、脅威は容易に国境を越えてきます。
どの国も一国のみでは自国の平和と安全を守ることはできず、国際社会と協力して平和を確保していくことが不可欠です。
このような認識の下、本戦略においては、国際協調主義に基づく積極的平和主義を基本理念として掲げております。我が国の安全と地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定、そして繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していくとの考えであります。
この基本理念の下、我が国の国益を明確にした上で、国家安全保障の目標として、次の三点を示しています。
第一に、必要な抑止力を強化し、万が一我が国に直接脅威が及ぶ場合には、これを排除し、被害を最小化すること、
第二に、日米同盟や域内外のパートナーとの信頼・協力関係の強化等により、地域の安全保障環境を改善すること、
第三に、普遍的価値やルールに基づく国際秩序の強化、紛争の解決に主導的な役割を果たし、グローバルな安全保障環境を改善すること、であります。
その上で、国家安全保障上の課題を特定しつつ、それらを克服し、目標を達成するため、我が国自身の外交力、防衛力等の強化を始めとする戦略的アプローチを示しております。本戦略は、エネルギー等国家安全保障に関連する分野の政策に指針を与えるものでもあります。
政府としては、国家安全保障会議の司令塔機能の下、本戦略に従って、国家安全保障に関する政策を一層戦略的かつ体系的に実施し、国家安全保障に万全を期す考えです。
次に、いわゆる「新防衛大綱」について御報告申し上げます。
「新防衛大綱」は、「国家安全保障戦略」を踏まえ、今後の我が国の防衛の在り方について、新たな指針を示すものであります。
我が国の防衛力については、多様な活動を統合運用によりシームレスかつ状況に臨機に対応して機動的に行い得る実効的なものとしていくため、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、高度な技術力と情報・指揮通信能力に支えられ、ハード及びソフト両面における即応性、持続性、強靭性及び連接性も重視した「統合機動防衛力」を構築することとしております。
この考え方の下での体制の整備に当たっては、統合運用の観点からの能力評価を踏まえ、各種事態における実効的な抑止及び対処を実現するため、その前提となる海上優勢及び航空優勢の確実な維持に向けた防衛力整備を優先し、機動展開能力の整備も重視することとしております。
最後に、いわゆる「新中期防」について御報告申し上げます。
「新中期防」は、「新防衛大綱」に定める我が国が保有すべき防衛力の水準を見据え、当初五年間に達成すべき計画であります。
「統合機動防衛力」を構築するための主要事業を掲げており、その実施に必要な金額は、平成二十五年度価格でおおむね二十四兆六千七百億円程度を目途としております。
その上で、調達改革等を通じて、一層の効率化・合理化を徹底した防衛力整備に努め、各年度の予算編成に伴う防衛関係費は、おおむね二十三兆九千七百億円程度の枠内とすることとしております。
以上の「国家安全保障戦略」、「新防衛大綱」及び「新中期防」の下、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国民の生命と財産、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとともに、地域と国際社会の平和・安定・繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与してまいります。
皆様の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
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衆議院本会議における安倍内閣総理大臣発言
「国家安全保障戦略」、「平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画(平成二十六年度〜平成三十年度)」に関する報告について
(平成二十六年三月十八日)
政府は、昨年十二月十七日、国家安全保障会議及び閣議において、「国家安全保障戦略」、「平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱」及び平成二十六年度から平成三十年度までの「中期防衛力整備計画」を決定いたしました。以下、これらについて御報告申し上げます。
「国家安全保障戦略」は、我が国で初めて策定した、国家安全保障に関する基本方針であります。我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、脅威は容易に国境を越えてきます。
どの国も一国のみでは自国の平和と安全を守ることはできず、国際社会と協力して平和を確保していくことが不可欠です。
このような認識の下、本戦略においては、国際協調主義に基づく積極的平和主義を基本理念として掲げております。我が国の安全と地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定、そして繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していくとの考えであります。
この基本理念の下、我が国の国益を明確にした上で、国家安全保障の目標として、次の三点を示しています。
第一に、必要な抑止力を強化し、万が一我が国に直接脅威が及ぶ場合には、これを排除し、被害を最小化すること、
第二に、日米同盟や域内外のパートナーとの信頼・協力関係の強化等により、地域の安全保障環境を改善すること、
第三に、普遍的価値やルールに基づく国際秩序の強化、紛争の解決に主導的な役割を果たし、グローバルな安全保障環境を改善すること、であります。
その上で、国家安全保障上の課題を特定しつつ、それらを克服し、目標を達成するため、我が国自身の外交力、防衛力等の強化を始めとする戦略的アプローチを示しております。本戦略は、エネルギー等国家安全保障に関連する分野の政策に指針を与えるものでもあります。
政府としては、国家安全保障会議の司令塔機能の下、本戦略に従って、国家安全保障に関する政策を一層戦略的かつ体系的に実施し、国家安全保障に万全を期す考えです。
次に、いわゆる「新防衛大綱」について御報告申し上げます。
「新防衛大綱」は、「国家安全保障戦略」を踏まえ、今後の我が国の防衛の在り方について、新たな指針を示すものであります。
我が国の防衛力については、多様な活動を統合運用によりシームレスかつ状況に臨機に対応して機動的に行い得る実効的なものとしていくため、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、高度な技術力と情報・指揮通信能力に支えられ、ハード及びソフト両面における即応性、持続性、強靭性及び連接性も重視した「統合機動防衛力」を構築することとしております。
この考え方の下での体制の整備に当たっては、統合運用の観点からの能力評価を踏まえ、各種事態における実効的な抑止及び対処を実現するため、その前提となる海上優勢及び航空優勢の確実な維持に向けた防衛力整備を優先し、機動展開能力の整備も重視することとしております。
最後に、いわゆる「新中期防」について御報告申し上げます。
「新中期防」は、「新防衛大綱」に定める我が国が保有すべき防衛力の水準を見据え、当初五年間に達成すべき計画であります。
「統合機動防衛力」を構築するための主要事業を掲げており、その実施に必要な金額は、平成二十五年度価格でおおむね二十四兆六千七百億円程度を目途としております。
その上で、調達改革等を通じて、一層の効率化・合理化を徹底した防衛力整備に努め、各年度の予算編成に伴う防衛関係費は、おおむね二十三兆九千七百億円程度の枠内とすることとしております。
以上の「国家安全保障戦略」、「新防衛大綱」及び「新中期防」の下、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国民の生命と財産、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとともに、地域と国際社会の平和・安定・繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与してまいります。
皆様の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
2014年03月17日
<遠藤誉が斬る>韓国への日本技術不正流出
『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
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<遠藤誉が斬る>韓国への日本技術不正流出――90年代初期からあった「土日の韓国通い」による裏切り
(『レコード・チャイナ』より)
2014年年3月13日、東芝の主力製品であるフラッシュメモリーの研究データを不正に持ち出し、韓国企業に渡した疑いで、業務提携していた半導体メーカーの元技術者が逮捕された。
これに関連して、筆者が90年代初期に遭遇した「事実」に関してご紹介したい。
ある日、教鞭を執っていた大学の(日本人)学生が退学し、引っ越しのアルバイトで生計を立てていることを知った。
彼の父親はバブル崩壊でリストラされ、それを苦に自殺し、学生は学費を払えないだけでなく生活費も断たれ、一家の面倒を見なければならないところに追い込まれたという。
別の学生の父親は高い半導体技術を持っていたが、同じくリストラされたため、その学生はアルバイトを求めて、筆者の研究室に相談に来ていた。
それをきっかけにリストラされた日本人技術者の相談を受けるようになり、筆者の研究室はまるで元技術者の相談室のようになっていった時期がある。
彼らは当然、自分をリストラした会社に恨みを抱いている。
だから、「今なら、もう真実を話してもいいだろう」という人が多く、うまく立ち回った同僚の秘密を教えてくれたのである。
◆とんでもない「事実」
そこで筆者はとんでもない「事実」を知るに至る。
それは東芝や日立など、日本の企業で半導体関係の技術開発に従事していた元技術者が、90年代初期から韓国と日本を往復し、韓国の企業に自社の技術を渡していたという事実だ。
彼らは日本企業に在職しながら、金曜日の夜に韓国に行き、土曜と日曜日に技術指導をしたあと、日曜の夜には日本に戻り、月曜の朝は何事もなかったかのように自社に出勤するという生活形態を取っていた。
土日だけで日本企業の一カ月分以上の謝金をくれる。
現金で渡すので、日本ではばれない。
それが一か月に4回もあれば、一カ月で5カ月分くらいの収入があることになる。
味をしめて土日の技術指導だけでなく、当時開発されていた「NAND(ナンド)型フラッシュメモリー」の核心部分となる技術のノウハウに関して持ち出した者もいたという。
NANDとは“Not AND”の略で、デジタル信号を扱う論理回路の一つで、東芝が発明したものだ。
このコア技術を流した時には特別に高額の見返りが支払われた。
たしかに日本がバブル崩壊すると、韓国企業はリストラされた日本人技術者のうちの特にハイレベルの者をヘッドハンティングして高給で雇用していた。
この雇用には違法性はない。
しかし、筆者が知るに至った「土日」の韓国通いは、どう見ても違法行為だろう。
その日本人技術者は、まだ日本企業に在職していたからこそ、「土日」のみの「通勤」になったわけだから。
この現象は、東芝だけではなかった。
日立やシャープ、NECなどの日本人元技術者もいた。
筆者の印象では東芝の元技術者にこのケースが多く、驚きを禁じ得なかったものだ。
その後、韓国のいくつかの電子製品メーカーが突然飛躍的に成長し、日本を凌ぐようになったのを見るにつけ、筆者の脳裏には、この「土日の韓国通い」という背後の事実が浮かぶ。
◆モラルダウンはどこに起因するか?
技術立国であったはずの日本は、グローバル化の波について行けず、マーケットを他国に奪われるようになった。
そこで筆者はアメリカのシリコンバレーを中心とした、全世界の「人材」の流れに関して実態を把握すべく、90年代半ばから世界中を飛び回って数年間にわたり調査した。
その結果わかったのは、半導体の基礎を成すIC(Integrated Circuit 、集積回路)は“Indian Chinese”のICと揶揄されるほど、シリコンバレーには中国人とインド人が満ち、現地のアメリカ人の割合を凌駕していたということだった。
そして中国政府はシリコンバレーを中心とした先進国で博士学位を取得し留学先で就職している中国人元留学生と巨大なネットワークを形成して、中国の技術革新に活用していた。
全ての中国人(元)留学生は当該国の中国大使館を通して掌握され、地球上を網の目のように覆っていた(この結果は拙著『中国がシリコンバレーとつながるとき』(日経BP社)にまとめた)。
それはバブル崩壊とともに在米の日本人留学生が激減し、中国や韓国からの留学生が激増し始めた時期とも一致している。
当時、アメリカ企業における中国人や韓国人の産業スパイも散見されたが、それらは全て「自国のためのスパイ行為」であり、日本のように「他国のために自国の技術を流出させる」例はない。
もちろん中国や韓国はまだ技術的後進国であったということはあろう。
しかし日本は元来、モラルの高い国であったはず。
金のために自社や自国を裏切るような技術者を出す国になぜなったのか。
このたびの事件には深い社会背景が潜んでおり、掘り下げていく必要があるだろう。
(<遠藤誉が斬る>第24回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。
紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
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<遠藤誉が斬る>韓国への日本技術不正流出――90年代初期からあった「土日の韓国通い」による裏切り
(『レコード・チャイナ』より)
2014年年3月13日、東芝の主力製品であるフラッシュメモリーの研究データを不正に持ち出し、韓国企業に渡した疑いで、業務提携していた半導体メーカーの元技術者が逮捕された。
これに関連して、筆者が90年代初期に遭遇した「事実」に関してご紹介したい。
ある日、教鞭を執っていた大学の(日本人)学生が退学し、引っ越しのアルバイトで生計を立てていることを知った。
彼の父親はバブル崩壊でリストラされ、それを苦に自殺し、学生は学費を払えないだけでなく生活費も断たれ、一家の面倒を見なければならないところに追い込まれたという。
別の学生の父親は高い半導体技術を持っていたが、同じくリストラされたため、その学生はアルバイトを求めて、筆者の研究室に相談に来ていた。
それをきっかけにリストラされた日本人技術者の相談を受けるようになり、筆者の研究室はまるで元技術者の相談室のようになっていった時期がある。
彼らは当然、自分をリストラした会社に恨みを抱いている。
だから、「今なら、もう真実を話してもいいだろう」という人が多く、うまく立ち回った同僚の秘密を教えてくれたのである。
◆とんでもない「事実」
そこで筆者はとんでもない「事実」を知るに至る。
それは東芝や日立など、日本の企業で半導体関係の技術開発に従事していた元技術者が、90年代初期から韓国と日本を往復し、韓国の企業に自社の技術を渡していたという事実だ。
彼らは日本企業に在職しながら、金曜日の夜に韓国に行き、土曜と日曜日に技術指導をしたあと、日曜の夜には日本に戻り、月曜の朝は何事もなかったかのように自社に出勤するという生活形態を取っていた。
土日だけで日本企業の一カ月分以上の謝金をくれる。
現金で渡すので、日本ではばれない。
それが一か月に4回もあれば、一カ月で5カ月分くらいの収入があることになる。
味をしめて土日の技術指導だけでなく、当時開発されていた「NAND(ナンド)型フラッシュメモリー」の核心部分となる技術のノウハウに関して持ち出した者もいたという。
NANDとは“Not AND”の略で、デジタル信号を扱う論理回路の一つで、東芝が発明したものだ。
このコア技術を流した時には特別に高額の見返りが支払われた。
たしかに日本がバブル崩壊すると、韓国企業はリストラされた日本人技術者のうちの特にハイレベルの者をヘッドハンティングして高給で雇用していた。
この雇用には違法性はない。
しかし、筆者が知るに至った「土日」の韓国通いは、どう見ても違法行為だろう。
その日本人技術者は、まだ日本企業に在職していたからこそ、「土日」のみの「通勤」になったわけだから。
この現象は、東芝だけではなかった。
日立やシャープ、NECなどの日本人元技術者もいた。
筆者の印象では東芝の元技術者にこのケースが多く、驚きを禁じ得なかったものだ。
その後、韓国のいくつかの電子製品メーカーが突然飛躍的に成長し、日本を凌ぐようになったのを見るにつけ、筆者の脳裏には、この「土日の韓国通い」という背後の事実が浮かぶ。
◆モラルダウンはどこに起因するか?
技術立国であったはずの日本は、グローバル化の波について行けず、マーケットを他国に奪われるようになった。
そこで筆者はアメリカのシリコンバレーを中心とした、全世界の「人材」の流れに関して実態を把握すべく、90年代半ばから世界中を飛び回って数年間にわたり調査した。
その結果わかったのは、半導体の基礎を成すIC(Integrated Circuit 、集積回路)は“Indian Chinese”のICと揶揄されるほど、シリコンバレーには中国人とインド人が満ち、現地のアメリカ人の割合を凌駕していたということだった。
そして中国政府はシリコンバレーを中心とした先進国で博士学位を取得し留学先で就職している中国人元留学生と巨大なネットワークを形成して、中国の技術革新に活用していた。
全ての中国人(元)留学生は当該国の中国大使館を通して掌握され、地球上を網の目のように覆っていた(この結果は拙著『中国がシリコンバレーとつながるとき』(日経BP社)にまとめた)。
それはバブル崩壊とともに在米の日本人留学生が激減し、中国や韓国からの留学生が激増し始めた時期とも一致している。
当時、アメリカ企業における中国人や韓国人の産業スパイも散見されたが、それらは全て「自国のためのスパイ行為」であり、日本のように「他国のために自国の技術を流出させる」例はない。
もちろん中国や韓国はまだ技術的後進国であったということはあろう。
しかし日本は元来、モラルの高い国であったはず。
金のために自社や自国を裏切るような技術者を出す国になぜなったのか。
このたびの事件には深い社会背景が潜んでおり、掘り下げていく必要があるだろう。
(<遠藤誉が斬る>第24回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。