2013年05月
2013年05月24日
私の主張・自民党千葉県参議院選挙区第6支部長 豊田 としろう


『日本の防衛政策』(田村重信編著、内外出版)『日本の防衛法制』(田村重信他編著、内外出版)を出版。この二冊とも増刷となりました。
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参院選 ―私の主張―
今こそ日本再生の正念場
大胆に。果敢に。実行する強い覚悟を
自民党千葉県参議院選挙区第6支部長 豊田 としろう(60)
私は、3期11年の間、市長という地方行政の現場指揮官として、市民生活の安心・安全、地域の活性化、福祉の向上などの大きなテーマのもとでさまざまな課題に取り組んできました。
市長就任の平成15年当時は、まだまだ景気は低迷した状況にありました。多くの地方自治体が財政難におちいり、やらなければならないと思っていても、なかなかできないというジレンマを抱えていたのではないかと思います。
八千代市も同様の状況でありました。何を優先して実行に移すかは重要な決断であり、将来を見通して今何ができるのか、何をやるべきなのかを判断基準として進めてきました。
市民の要望は様々です。すべてに応えるのは難しい。何が欲しいのかではなく、何が必要なのかを基本に優先順位を決め実行してきました。
例えば医療の中核施設としての東京女子医大附属八千代医療センターの誘致、使用済みのゴミ最終処分場に事故が生じた時に、全体を大規模改修することで問題の解決と、さらには処分量の増大、施設の延命化が実現できました。それぞれ反対もあり、大きな負担も伴うものでしたが、今でも決断してよかったと信じています。
地方にとって必要なことは、自らが必要とする施策を自らの決断と責任で実行に移せる体制です。そのため今、地方自治体からは分権型社会への移行を求める声が大きくなっています。
地方の自主性において、その地域がその地域らしくあり続けられるよう国が政策として後押しすることが必要だと考えます。
全国一律の街づくりは必要ありません。国の支援がなければやっていけない状況から脱し、地方の力強い繁栄が国全体を潤すような社会を築いていければと願うものです。全国をみても、地域の独自性を発揮している所が生き生きとしています。分権型社会の構築は日本再生の大きな起点となるでしょう。
今、これまで長く続いた停滞の機運に、ようやく新たな展開の光明が差してきたように感じています。行き過ぎた円高や、経済を重くしてきた株価の低迷にも改善の兆しが見え始め、人々の心にも期待感が芽生えてきました。
今こそ大きく踏み出すことのできる機会が到来したと考えます。大胆な政策を果敢に実行する強い覚悟が、今ほど求められている時はありません。
多くの人の生の声を肌で感じ、体で学んできた私の経験と知見が大きく役に立つのではないか。
そう強く感じた私は、不退転の覚悟で新たなステージで人々のお役に立つべく決意を固めています。
今、日本は再生に向けた正念場を迎えようとしています。
豊田 俊郎 (とよだ・としろう)
昭和27年8月21日千葉県八千代市生まれ。47年中央工学校卒業。49年豊田俊郎土地家屋調査士事務所設立。平成6年八千代市社会教育委員。8年千葉県立八千代高校PTA会長。11年千葉県議会議員。15年八千代市長、3期。22年全国市長会関東支部監事。23年千葉県市長会理事。25年3月、党千葉県参議院選挙区第6支部長に就任。趣味:ランニング、スキューバダイビング
豊田 としろう事務所
〒276-0046 千葉県八千代市大和田新田310
TEL:047-480-7777 Fax:047-480-7377
E-mail:toyodatoshiro@jcom.home.ne.jp
豊田 としろうホームページ
http://www.toyodatoshiro.jp/
2013年05月23日
大好評!高村正彦副総裁 記者懇談 冒頭発言


『日本の防衛政策』(田村重信編著、内外出版)『日本の防衛法制』(田村重信他編著、内外出版)を出版。この二冊とも増刷となりました。
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アベノミクスの第三の矢、成長戦略について各大臣から相次いで発信されています。
この成長戦略というのは、国のかたちにも関係するものなので、党と十分話し合ってやる必要があると思いますが、一方で、党の対応が、間違ってもスピード感を阻害するようなことはあってはならない。
このスピード感こそが、まさに安倍内閣の支持率を支えていることだと思っています。
次の参議院選挙の公約について、党本部と地方と色々議論があるところですが、自民党は地域を大切にする政党ですから、それぞれの地域の人達の民意というものは十分くみ取らなければいけない。
一方で、「党本部と地方がバラバラだ」「これでは民主党と同じではないか」「これでは鳩山さんと同じではないか」など、間違ってもそうならないように、政調会長はじめ政調幹部はしっかりと調整して頂きたい。
現実の政治において、政調の最も重要な仕事は調整であると思っています。
2013年05月22日
私の主張・自民党宮崎県参議院選挙区第2支部長 ながみね 誠


『日本の防衛政策』(田村重信編著、内外出版)『日本の防衛法制』(田村重信他編著、内外出版)を出版。この二冊とも増刷となりました。
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危機管理体制の構築 「自助・共助・公助」の役割分担の取り組み
自民党宮崎県参議院選挙区第2支部長 ながみね 誠(43)
私は市長として新燃岳噴火、口蹄疫、そして数々の風水害の危機管理を経験してきました。
災害や危機事象への対応は、災害対策基本法第5条に則り、最前線である市町村が責任を持って対応します。地理・資源・人脈に精通した市町村が第一義的に動くということは大変合理性のあることです。
しかし、私の経験上、いくつかの問題点もあります。
まず、低頻度の災害については知識や経験が不足しがちであることが挙げられます。例えば新燃岳は300年ぶりの大噴火でした。都城市はもちろん、宮崎県の職員にも火山の噴火や火山砂防の経験を持つ職員は皆無です。これは、大地震や津波、ゲリラ豪雨などにもいえることでしょう。
このような低頻度災害については、国が全国の事例を基にした網羅的な知見を持って対応していく必要があります。その意味では、国の出先機関の果たす役割も大きく、出先機関改革の議論には危機管理の視点も必要です。
また、国の災害対策のヘッドクオーターは内閣府に置かれています。しかし、各省庁の連絡調整機関であり、人数も十分ではありません。新燃岳対策の際、各省庁から一人ずつ職員が派遣された対策チームに常駐してもらいました。この程度の規模の災害であれば十分に機能しましたが、東日本大震災のような大規模な災害にはとても対応できないと思われます。
米国のFEMA(連邦緊急事態管理庁)がよく引き合いに出されますが、FEMAの長所欠点をよく吟味した上で、わが国独自の危機管理体制を構築すべきでしょう。各省庁への指揮監督権を付与した常設の機関を設け、中長期的に専門性の高い人材育成を行えるような仕組みが必要です。
今後、東海から南海トラフまでの広域巨大地震への対策が急がれます。
ハード面では国土強靱化計画により、防災インフラの整備や老朽化施設の更新が着実に実施される必要があります。また、ソフト面の取り組みも「自助・共助・公助」の役割分担を国民に理解していただき、対策を充実させていかねばなりません。
口蹄疫の発生後、民主党政権の農林水産大臣は外遊に出かけました。当初の危機意識の薄弱さが大きな被害を生んだと言えます。その10年前に口蹄疫が発生した時、私は県議会の担当委員長でした。
自民党国会議員の方々が必死の形相で東奔西走して国と地方・官と民が一体となって被害を最小限に食い止めることができました。
危機管理はリーダーの判断で大きく結果が異なります。経験と実績を誇る自民党政権の中で、国民に信頼される危機管理体制を構築していきたいと思います。
長峯 誠(ながみね・まこと)
昭和44年8月2日、宮崎県都城市生まれ。早稲田大学政経学部卒業。早大雄弁会幹事長。参議院議員秘書を経て、平成9年、県議会議員選で初当選。連続3期。16年、都城市長選で初当選、当時全国最年少の35歳。連続3期。22年、口蹄疫、23年、新燃岳噴火に対処し被害を最小限に食い止めた。防災士、防災危機管理士
ながみね 誠事務所
【宮崎】
〒880-0805 宮崎市橘通東2 睦屋第11ビル5階
TEL:0985-27-7677 Fax:0985-27-7633
【都城】
〒885-0033 都城市妻ヶ丘町48-12
TEL:0986-46-2707 Fax:0986-26-3328
E-mail:gen-sei@amber.plala.or.jp
ながみね 誠ホームページ
http://www9.plala.or.jp/nmakoto/
『自由民主』より
2013年05月21日
自民党・治安・テロ対策調査会提言全文(その1)


『日本の防衛政策』(田村重信編著、内外出版)『日本の防衛法制』(田村重信他編著、内外出版)を出版。この二冊とも増刷となりました。
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今朝、自民党・治安・テロ対策調査会提言「世界一の安全を取り戻すために 〜 緊急に取り組むべき3つの課題」が治安・テロ対策調査会で了承されました。
今日中に、政調審議会、総務会を経て、政府に申し入れが行われる予定です。
今回の提言は、林幹雄調査会長のもと事務局長の葉梨康弘衆院議員が中心に取りまとめたものです。
以下、全文を2回に分けて掲載します。
序 はじめに〜本提言の位置づけ
〈経緯〉
「良好な治安」の存在は、社会の健全な発展のために欠かすことのできない重要なインフラである。
この治安水準の重要な指標である刑法犯認知件数は、平成8年から14年まで、戦後最悪を更新し続け、平成14年には285万件を突破するに至った。
このためわが党は、政務調査会に設置された治安対策特別委員会において必要な検討を行い、平成15年7月に「治安強化に関する緊急提言」、平成16年6月に「治安強化のための7つの宣言」、平成20年4月に「地域の絆を再生し、世界一安全な国へ〜世界一安全な国をつくる8つの宣言」を、それぞれ発表し、治安対策に真摯に取り組んできた。
政府においても、責任与党であるわが党の提言を受け、平成15年12月に「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」、平成20年12月には「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」という、それぞれ計画期間を5カ年とする行動計画を策定し、わが党との連携の下、治安対策が推進されてきた。
この結果、平成15年から20年までの5カ年の計画期間で、刑法犯認知件数が約280万件から180万件と大幅に減少し、さらに、平成20年以降の計画期間においても、刑法犯認知件数が毎年約10万件の減少をみるなど、刑法犯認知件数自体は、統計的には安定的に推移するに至っている。
これは、わが党の誇るべき成果ということができる。
しかしながら、その後の民主党政権においては、与党が主導する治安強化のための議論は、ほとんど行われてこなかった。
そして、例えば平成24年7月に公表された内閣府の「治安に関する特別世論調査」によれば、「最近の治安は悪くなった」と感じる国民が8割以上に上るなど、なお国民の不安感が払拭されているとは言い難い現状にある。
いうまでもなく、国民が安全で安心して生活できる「良好な治安」を実現することは、政治に課せられた最も大きな使命の一つである。
加えて、政権与党が、世界一の安全を実現する強い姿勢をアピールすることは、政治への信頼の回復に大きな力となるのは勿論のこと、2020年オリンピック・パラリンピックの東京への招致活動を援護することとなることも期待されよう。
このため、わが党は、政権復帰2カ月後の本年1月、政務調査会に治安・テロ対策調査会(林幹雄調査会長)を設置し、関係省庁からの報告聴取や有識者からのヒアリング等を通じ、現状の問題点の分析と「世界一の安全」を実現する方策について検討を進めてきた。そして、本日、これまでの議論を集約し、「世界一の安全を取り戻すために」を取りまとめた。
〈問題の所在〉
○民間の安全形成システムや「地域の絆」の問題
先述の「治安に関する特別世論調査」によれば、「治安が悪くなったと思う原因」として、「地域社会の連帯意識が希薄となったから」を挙げた人が最も多く、約55%に上っている。
このような問題意識から、平成20年の「地域の絆を再生し、世界一安全な国へ〜世界一安全な国をつくる8つの宣言」においても、「地域の絆」の再生を最重要課題と位置づけ、防犯ボランティア支援などの施策等を強力に推進することとしたところである。
しかしながら、民主党政権下、残念ながら、防犯ボランティアの方々の総数の伸び悩みがみられたり、保護司の定員割れの問題も深刻化するなど、「地域の絆」の再生は、若干頓挫してしまった感が否めない。
加えて、少子高齢化の急速な進展と、本格的人口減少社会の到来の中で、防犯ボランティアや保護司の方々等の高齢化も顕著になってきており、このような「民間の安全形成システム」を、将来にわたり、どのようにして維持強化していくかが、現下の重要な課題となっている。
このためわが党は、わが国が誇るべき文化とも言うべき、「民間の安全形成システム」を、持続可能な形で強化することを、本提言の第一の命題として提示すべきと判断した。
○新たな対応を必要とする犯罪の問題
現在のところ、刑法犯認知件数の総数こそ減少傾向で推移しているとはいえ、犯罪類型ごとに分析してみると、サイバー犯罪の問題など、犯罪に対処するための法制面の整備が必ずしも十分でなかったり、関係機関や官民連携による対応体制が確立されていないなどの問題も大きい。
しかしながら、民主党政権は、このような危機管理に関する法制的な検討にはどちらかというと無頓着で、新たな対応を必要とする犯罪への対処が後手に回ってしまった印象はぬぐえない。
このため、わが党は、複雑化、組織化、国際化する新たな犯罪に対し、必要な法的検討、対処体制の検討を行うべきことを、本提言の第二の命題として提示すべきと判断した。
○治安インフラは国民の信頼に応えているかという問題
平成24年版警察白書には、「地方警察官については、平成13年度から23年度までの間に合計27,640人の増員を行ってきたところ、刑法犯認知件数が15年以降9年連続して減少するなど、地方警察官の増員は他の諸施策と併せ、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安の回復に効果をもたらしていると考えられる。」との記述がある。
しかしながら、このような増員が果たされたとはいえ、近年、警察に対してストーカー被害の申告があったにもかかわらず、ストーカーによる殺人事件の発生を防止できなかった事案がみられたり、治安機関の職員の不祥事も後を絶たないなど、わが国の治安インフラが、真に国民に親近感と信頼感を勝ち得たものとなっているのかどうか、しっかりとした点検が必要と思われる。
このため、わが党は、単に治安関係職員の増員を図れば問題が解決するという視点でなく、スキルアップや運用の効率化とあわせた体制の強化を図ることにより、国民にとって頼りがいのある治安インフラを確立すべきことを、本提言の第三の命題として提示すべきと判断した。
〈本提言の位置づけ〉
以上の考え方の下、わが党は、責任与党として、政府・与党が一丸となって、緊急、かつ、集中的に取り組むべき3つの課題を提示した。
本提言を踏まえ、政府においては、新たな行動計画を策定し、わが党と一体となって、国民の安全と安心を確保するための取り組みを進めるべきである。
第一 持続可能な民間の安全形成システムの強化
防犯ボランティアや保護司の方々などの献身的な活動が、これまでわが国の良好な治安を支えてきた。このように地域に根ざした民間の安全形成システムの存在は、わが国が世界に誇るべき文化ということができる。
わが党は、これまでもこのような問題意識から、例えば平成20年の「地域の絆を再生し、世界一安全な国へ〜世界一安全な国をつくる8つの宣言」においても、「地域の絆」の再生を最重要課題と位置づけ、第一の宣言として、「防犯ボランティアを支援し、世界一安全な地域社会を作る」ことを掲げ、これに基づく施策を推進してきた。
その結果、例えば防犯ボランティアの総数は、平成15年の約18万人が平成20年末には約250万人に達するなど、大幅な増加が図られた。
このような民間の防犯体制の充実は、地方警察官の増員などとあいまって、刑法犯の認知件数の減少等に寄与してきた。
しかしながら、近年、防犯ボランティアの団体数や総数に伸び悩みの傾向がみられるほか、少年非行の防止に当たる少年警察ボランティアの総数が減少傾向に示すとともに、民間の立場から再犯防止に当たる保護司の方々の定員割れ傾向が常態化するなど、新たな担い手の確保の問題が顕在化している。
さらに、防犯ボランティア、少年警察ボランティア、保護司のいずれの方々についても、高齢化の進展が顕著になるなど、民間の安全形成システムの劣化が懸念されている。
その理由としては、民主党政権下、このような民間の安全形成システムの強化について、政治が必ずしも熱心でなかったことも挙げられるが、それだけでなく、地域コミュニティの脆弱化、人口構成の高齢化、人口減少社会の到来などの要因が絡み合っていることは否めない。
民間の安全形成システムは、一旦機能しなくなってしまえば、その回復は容易ではない。
だからこそ今、民間の安全形成システムを、持続可能な形で強化するため、総合的な施策を展開することが必要である。
1 自主的防犯活動の支援強化による犯罪を起こさせない社会づくりの推進
(1)自主的防犯活動・少年非行防止活動のネットワークの構築・活用
防犯ボランティアや少年警察ボランティアの総数の伸び悩みなどの現状にかんがみ、社会の各層の方々の参加を促進することができるよう、幅広いネットワークを構築し、その活用を図るべきである。
○ボランティアの裾野拡大のための広報啓発を充実する。
○負担を感じず、自発的に参加できる活動形態を創出する。
○自治体等と連携した総合的まちづくりにおける防犯活動を推進する。
○リーダー育成等のための研修会やフォーラムを開催し、表彰を実施する。
○ 地域の犯罪情報を的確に収集、分析し、ボランティアに提供する。
(2)住民の安全・安心を確保するための生活空間の整備
住民の安全・安心を確保するための生活空間の整備のためには、例えば、地域コミュニティが主体的に、街灯や防犯カメラを設置するなどの取り組みが有効であるが、地域によっては、その維持すらも難しくなっているとの指摘もある。このため、地域コミュニティの自主性を尊重しつつ、安全・安心を確保するための生活空間の整備を進める。
○商店街など地域が自主的に設置する街灯・防犯カメラ等について、その維持更新も含め、助成措置を拡充するとともに、効率的整備促進のための調査研究を行う。
○最近相次いだ痛ましい事件事故を踏まえ、地域、学校、警察が連携し、通学路の安全性を定期的に点検するなどその安全確保を図る。
(3)人口減少社会の到来に対応した犯罪に強いまちづくりの検討
本格的人口減少社会が到来する中、現在750万件と言われる「空き家」の増加が、治安の面でも懸念材料となっている。各地で適切なその管理を促す条例も制定されているが、このような状況が治安を悪化させる要因となることがないよう、的確な実態把握に努めるとともに、犯罪に強いコンパクトなまちづくりのあり方について、中長期的視野から検討を進めるべきである。
2 保護司等への支援強化による再び犯罪を起こさせない環境づくり
(1)保護司を将来にわたって安定的に確保し、活動を充実させるための基盤整備
先述のように、現在、保護司の定員割れが常態化しており、最近は、平成21年以降本年まで、4年連続してその充足率が減少するなど、危機的状況が深刻化しつつある。
これに加えて、刑の一部執行猶予制度が発足することとなると、長期の保護観察を行わなければならない対象者の数が増加することが予想され、保護司を将来にわたって安定的に確保し、その活動を充実させていくことが急務と言うことができる。
○保護司希望者の裾野拡大のための広報啓発を充実する。
○保護司の複数担当制(必要に応じ、複数の保護司が1人の対象を担当する)などの活動形態モデルを確立する。これにより、保護司の増員が必要な場合には、保護司の定員増についても検討する。
○保護司の負担軽減を図るため、更生保護サポートセンターの充実、保護司の活動等に伴う負担の軽減(円滑な実費弁償等)、保護司をサポートする保護観察官の体制整備を図る。
○保護司の方々が自主的に結成する組織への支援を強化する
○保護司のスキルアップのため、研修会やフォーラムの開催等を充実するとともに、関係機関との連携を強化する。
(2)協力事業主、更生保護施設への支援強化等による社会復帰支援の充実
受刑者が刑務所を出所した後の社会復帰は、就労への協力事業者や更生保護施設などの民間の支援によって支えられている。しかしながら、近年、刑法犯検挙者に占める再犯者の割合、さらに、刑務所入所者に占める再入所者の割合はいずれも増加しており、後述の施設内矯正施策の充実とあいまって、刑務所出所後の社会復帰支援の充実が急務となっている。
○適切な帰宅先がない、または自立した生活が困難な刑務所出所者等について、更生保護施設を始めとする多様な住居を確保するなど、個々の問題に応じ、支援を充実する。
○刑務所出所者の雇用や就労に協力する事業主に対する支援を充実する。
○高齢者や障がいを抱える刑務所出所者等について、司法当局と福祉関係の機関が連携し、その社会的受け皿を拡大する。(続く)
自民党・治安・テロ対策調査会提言(その2、終わり)
第二 サイバー犯罪等新たな対応を必要とする犯罪対策の強化
近年、サイバー犯罪・サイバー攻撃の脅威が深刻化するとともに、一般市民を巻き添えにするような暴力団の抗争事件の発生が大きな社会問題となっている。
また、本年は、在外邦人を巻き込んだ痛ましい海外テロ事件の発生をみたほか、福島第1原発事故に伴い、原発テロに対処する必要性も叫ばれている。さらに、最近では、海外の事例とはいえ、スポーツイベントにおける痛ましいテロ事件の発生もみた。
これらの犯罪は、サイバー犯罪にせよ、暴力団の抗争事件にせよ、テロ事件にせよ、市民の誰もが被害者となり得、国民が治安に対し不安感を抱く要因となっている。
しかも、これらの犯罪は、従来型の犯罪と比べ、証拠や情報の収集に困難を伴うため、抜本的な対策の確立が急務であり、必要に応じ、新たな法整備も必要と考えられる。
具体的には、例えば、一定の行為を犯罪等の類型に加えたり、一定の証拠保全行為を一般的に義務づけたり、一定の要件の下に、現在は行使できないこととされている方法により証拠を収集することを認めることなどが挙げられるが、他の手段によっては対処することができないことについて国民の理解が得られた場合には、人権の問題や関係先の負担に十分に配慮しつつ、積極的な検討を進めるべきである。
さらに、これらの犯罪については、単に治安機関ばかりでなく、必要に応じ、企業、研究者などと、ときには捜査上の秘密にわたる情報も共有しつつ、一体となった対処体制をとっていく必要がある。
このような場合の秘密の保護については、一般的な機密保護法制とは別の文脈で、個別の問題として、積極的な法制上の検討(個別的機密保護法制)を進めるべきであろう。
これらの犯罪への対応が遅きに失した場合、例えばサイバー犯罪については、わが国が集中的にその標的となったり、わが国を経由した犯罪が他国に迷惑を及ぼすことなども懸念されるところである。
だからこそ今、これら新たな対応を必要とする犯罪について、抜本的な対策の確立を加速化させることが必要である。
1 サイバー犯罪・サイバー攻撃への対策の強化
インターネットが社会経済活動に必要不可欠なツールとなる中、安全なサイバー空間の構築は、従来に増して喫緊の課題である。しかも、我々のコンピュータシステムをダウンさせたり、改変させたりするサイバー攻撃は、極めて大きな脅威となりつつある。このような脅威に対処するため、例えば米国では、「National Cyber-Forensics & Training Alliance」(直訳すれば、「産学官同盟による国家的サイバー対策の法廷証拠収集・養成機関」、意訳すれば「総合的サイバー犯罪対策のための産学官連合」)と称する組織が設けられているが、残念ながらわが国にはないなど、わが国の対応体制の後進性が指摘されている。
このため、わが国としても、抜本的な対処能力の強化を図るべきである。
(1)日本版NCFTA(総合的サイバー犯罪対策のための産学官連合)の創設等
サイバー犯罪・サイバー攻撃に対する対処体制は、抜本的な見直しと強化を図ることが必要である。そして、その際、民間と治安機関の垣根を越え、情報収集・解析と人材育成を一元化することが重要と考える。このため、わが党は、日本版NCFTA(総合的サイバー犯罪対策のための産学官連合)の創設とともに、その創設に必要な法整備を促進するなど、サイバー犯罪対策のための抜本的な体制強化を提言する。
○新組織の創設のために体制面の整備を推進する
・ 警察とアンチウイルスベンダー等との情報共有枠組みの構築等
・ ウイルス等に係るデータベースの構築
・ 犯罪捜査への民間の知見の導入
○新組織創設のための法制(機密保護)、予算措置等の整備を検討する
○民間企業等の持つ知見の活用等により捜査力及び解析力を強化する
・ 技術的に高度な民間資格取得のためのトレーニング
・ 民間企業等への講義委託
・ 海外を含む大学、研修機関等への派遣・研修
・ 捜査・解析体制の充実
・ 電磁的記録等の解析・分析等に適切に対処し、事実関係を的確に解明するために必要な科学的検証能力の充実
・ 「不正プログラム解析センター」の充実
・ アンチウイルスベンダー、デジタルフォレンジック(デジタル鑑識)産業等高度情報セキュリティ産業の育成支援
・ ビッグデータの分析能力の向上
・ 外国捜査機関との連携の強化
○サイバー攻撃分析センター、サイバー攻撃特別捜査隊の拡充等により、サイバー攻撃の未然防止と実態解明を強化する
(2)サイバー犯罪・サイバー攻撃の横行を防ぎ、サイバー空間から違法情報・有害情報を排除するための取り組みの強化
安全で安心なサイバー空間を確立するためには、匿名性を悪用したサイバー犯罪・サイバー攻撃の横行を防ぐため、犯罪の事後追跡可能性を確保したり、サイバー空間からの違法・有害情報を排除するため、違法化すべき有害情報について検討を進めるとともに、政府と民間との情報共有の枠組みを確立することなどが重要である。
このため、わが党は、必要な法制の検討に加え、政府と民間との情報共有の枠組みの構築等によるサイバー犯罪・サイバー攻撃の未然防止を図ることを提言する。
○ 通信履歴(ログ)の保存の義務化(法制化)について検討を進めるとともに、次の施策を進めることにより、サイバー犯罪の事後追跡可能性を確保する。
・ データ通信カード契約時の本人確認の徹底
・ 無線LANの無権限利用を防止するための広報啓発
・ Tor(トーア)等高度匿名化技術に関する調査研究
○違法・有害情報の排除のため、その規制のあり方について法制面の検討を進める。
・ 児童ポルノの単純所持の罰則規定の創設に向けた取り組みの強化
・ ストーカーによる迷惑メールを「つきまとい行為」の類型に追加
・ 違法情報に分類すべき情報の類型化についての検討の推進
○安全で安心なサイバー空間を確立するため、政府と民間との情報共有の枠組みの構築等に取り組む
・ サイト管理者の責任を明確化し、違法情報・有害情報の削除等の義務付け、インターネット・ホットラインセンターの充実、サイバーパトロールの強化などに取り組むとともに、必要に応じ法制上の措置を検討する。
・ スマートフォンの安全利用のための環境整備のため、アプリチェックの要請の徹底、民間事業者と連携した違法アプリに係るデータベースの構築、スマートフォンに係る児童被害防止対策の検討を進める。
・ サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク、サイバーテロ対策協議会等の拡充など、サイバー攻撃に関する民間事業者等との情報共有を充実強化するとともに、治安機関におけるサイバーインテリジェンスを強化する。
2 市民生活を脅かす組織犯罪(暴力団、薬物等)への対策の強化
これまでのわが党の提言等を踏まえ、政府は良好な治安を確保するための最重点の課題として、暴力団対策を始めとする組織犯罪対策を推進してきた。
この取り組みは一定の成果を上げ、暴力団の構成員数は、平成16年以降減少傾向を示すに至っている。
しかしながら、最近の情勢を見ると、次のように、新たな対応を必要とする問題が顕在化しつつあることは否定できない。
○暴力団の組織防衛の傾向が顕著になり、証拠の収集が困難化していること。
○一般市民の生活に直接の脅威となる対立抗争事件などが見られること。
○いわゆる「準暴力団」により敢行される犯罪が相次いでいること。
○脱法ドラッグの問題や薬物押収量の増加等の問題が深刻化していること。
このような新たな問題に対応し、法制面・体制面の整備を行うことが必要である。
(1)暴力団の組織防衛強化に即応した法制面の検討の推進
最近の暴力団犯罪は、犯行現場にほとんど証拠を残さず、組織的な証拠隠滅が行われるとともに、暴力団関係者も、組織からの報復を恐れ、事件や組織の内情についての供述を行わない傾向がある。
このため、わが党は、一定の要件の下で次のような捜査を可能にするような捜査手法の選択肢の拡大について、必要な法制上の検討を進めることを提言する。
・ 通信傍受・会話傍受
・ 仮装身分捜査
・ 携帯電話等のGPS位置情報の取得要件の緩和
(2)市民と協働の暴力団対策の推進
暴力団による抗争事件等が一般市民生活の脅威となる中、市民と協働の暴力団対策の推進が急務である。
このため、わが党は、次のような施策を推進することにより、市民と協働の暴力団対策を推進すべきことを提言する。
・ 各種業等からの暴力団の排除を徹底するため、許認可要件や公売・競売の入札に関する暴力団排除方策を検討する。
・ 市民と協働し、警戒・保護活動を強化する。
・ 防犯カメラの設置促進等への支援を強化する。
(3)準暴力団の実態解明等の強化
最近、暴走族の元構成員等を中心とする集団で、暴力団ほどの明確な組織性を有しないものの、所属メンバーが集団的又は常習的に暴力的不法行為を行う事件が相次いでいる。
このため、わが党は、このような準暴力団について、そのメンバー、活動実態や資金源等についての実態解明を徹底するとともに、違法行為の取り締まりの強化を提言する。
(4)脱法ドラッグ等薬物問題への対処の強化
薬物については、その押収量が増加傾向にあるなど、これまで以上に、一般市民への拡大が懸念されるとともに、脱法ドラッグなど、新たな形態の薬物の出現も大きな課題となっている。
このため、わが党は、次のように、捜査の徹底と迅速な制度面での対処を行うことにより、深刻化する薬物問題への対処を強化すべきことを提言する。
・ コントロールドデリバリー捜査等の効果的活用による薬物犯罪組織中枢の検挙
・ 指定薬物の迅速な指定
・ 犯罪収益対策の強化
・ 指定薬物の規制に関する法制上の検討
3 テロの脅威に対する対策の強化
国際テロ情勢は、アルジェリアにおける邦人へのテロ事件、ボストンマラソンにおけるテロ事件等深刻化の度を増しているが、これに加えて、わが国の位置する東アジアの情勢の緊迫化も顕著になっている。
さらに、福島第1原発の事故により、原発が破壊された場合のダメージの大きさが目のあたりになる中、核セキュリティの問題も、大きな課題となっている。
このように、テロの脅威や対日有害活動への対策を強化することは現下の急務であり、わが国としても、情報収集体制を充実強化するとともに、テロ封じ込めのための必要な法規制の検討を進めるなどの対策を進めるべきである。
(1)情報収集・分析体制の抜本的強化
わが国の情報収集・分析体制については、従来からその脆弱さが指摘されているが、国際テロ情勢が深刻化する中、その体制強化について、抜本的な見直しを進めていくことが必要である。
また、海外テロに係る邦人保護の万全を期するためには、機密にわたる情報についても、必要に応じ、在外邦人との共有を図らなければならない場面も生じるため、そのための法制面の検討も急務である。
このため、わが党は、次の施策を展開することなどにより、テロ等に関する情報収集・分析体制を抜本的に強化すべきことを提言する。
・ 在外公館における警察アタッシェ、防衛駐在官等の体制強化
・ 国際テロリズム緊急展開班(TRT−2)の充実強化
・ 外国治安・テロ対策機関との連携強化
・ 拉致問題その他諸外国による対日有害活動の未然防止・解決に向けたカウンターインテリジェンス機能の充実
・ 在外邦人保護のための情報共有体制の整備と必要に応じた法制上の措置の検討
(機密の保全等)
・ 大量破壊兵器及び関連物資・技術の拡散防止に向けた情報収集・分析能力の充実
(2)テロ封じ込めのための諸対策の強化
テロ行為の封じ込めのためには、法制上の措置を含め、テロ行為のリソースとなる爆発物や資金源の封じ込めを図るほか、基本に立ち帰り、警戒警備を充実させることが重要である。
このため、わが党は、次のように、テロ封じ込めのための諸対策を強化することを提言する。
○テロ行為のリソースとなる爆発物や資金源封じ込めの強化
・ 爆発物原料に係る疑わしい取引の届出の義務付けを検討するなど爆発物原料対策を強化する。
・ テロリストに関する貨物輸出規制の創設を検討する。
・ FATF(金融活動作業部会)勧告を踏まえ、テロリストに係る財産凍結に関する規定を整備するなど、テロ資金対策を強化する。
○スポーツイベント等多くの人が集まる場所における警戒警備体制を強化する。
(3)原子力関連施設の安全の確保
福島第1原発の事故以来、原子力関連施設の安全の確保がしっかりとなされているのかということについて、国民の不安感が高まっている。
このため、わが党は、次の措置に万全を期することにより、原子力関連施設の安全の確保を図ることを提言する。
・ 個人の信頼性確認制度の導入・推進など内部脅威対策を含めたセキュリティ体制の強化
・ 警察と海上保安庁・自衛隊等との連携強化
・ 銃器対策部隊・SAT(特殊急襲部隊)等の充実
・ 部隊指揮官に対する専門的教育訓練の実施
・ 対処要領、警戒要領の見直しを含めた警戒警備体制の強化
4 その他
外国人犯罪は、平成20年の宣言を踏まえた対策が推進された結果、減少傾向を示すに至ったが、最近でも、外国人犯罪グループによる自動車盗などの問題が、地域によって大きな問題となっている。
また、振り込め詐欺などの特殊詐欺についても、その被害額が最近再び増勢を示すなどの問題が指摘されている。
このため、わが党は、これらの犯罪についても、法制度の検討を含め、万全の対応をとることを提言する。
○効果的な入国審査のための情報収集・分析能力の充実による入管のインテ リジェンス機能の強化
○新しい在留管理制度の効果的な運用と関係機関の連携・情報の共有化
○外国人犯罪グループに関する情報収集の強化
○自動車盗防止のための法制度の検討(イモビライザー破りの防止等)
○振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺にかかる犯行ツールの遮断対策の推進
第三 頼りがいのある治安インフラの確立
世界一の安全を取り戻すためには、民間の安全形成システムの強化を図ることや、新たな対応を必要とする犯罪に対応した法制面・体制面の整備を図ることに加え、あわせて、国民にとって頼りがいのある治安インフラを確立することが必要である。
ところが、昨今、警察への事前の相談があったにもかかわらず、痛ましい事件の発生を防ぐことができなかったケースや、刑務所等の出所者が再び犯罪にかかわる事件が相次いでいる。
また、治安機関の職員による不祥事も後を絶たないなど、わが国の治安インフラが、国民の親近感と信頼感を勝ち得、真に頼りがいのあるものとなっているのかどうか、しっかりと点検していく必要がある。
国民が治安への不安を感じる要因としては、これまで述べてきたように、「地域の絆が薄れ、民間の安全形成システムが劣化していること」や「今まで経験したことのない、新たな形態の犯罪の脅威にさらされていること」に加え、「身近な犯罪の被害に遭い、又は遭いそうになったときに、警察を始めとした治安機関が、親身になって対応してくれるのかどうか」という疑念があることも否めない。
いわゆる「空き交番」こそ、統計的には解消されたとされているものの、わが党は、このような疑念を払拭し、国民が世界一の安全を実感できるようにするため、引き続き、頼りがいのある治安インフラの確立を目指すべきと考える。
1 ストーカー・DV・性犯罪・児童虐待・いじめ等へのきめ細かで迅速な対応
ストーカー・DV・性犯罪・児童虐待・いじめ等に係る相談や被害申告は、被害者がその申告を躊躇しがちであることや、警察への申告をためらうなどの事情もあり、断片的なものであることも多い。
しかしながら、警察を始めとした関係機関は、関係者が、藁をもすがる気持ちで相談に訪れたことを十分に理解し、その背後にある事情を斟酌し、さらには、学校や児童相談所などの関係機関で情報を共有化し、事案の全体像を解明する努力を怠ってはならない。
これらの事案について、関係機関の縦割りを排し、かつ、都道府県警察の垣根を越えた広域的対応体制の確立を求めるとともに、市民の立場に立った相談従事者のスキルアップ、女性警察官の採用・登用などを推進し、市民の立場に立ったきめ細かで迅速な対応を確立すべきである。
この場合において、65歳まで働くことができる制度の導入に伴い、再任用されることとなる警察職員等の効果的活用に配慮すべきである。
2 犯罪被害者への支援強化
犯罪被害者に対する支援については、基本法の制定の後、裁判手続きへの被害者の関与がルール化されるなど、ようやくその充実が図られてきた。
今後さらに、新たな刑事司法制度の検討の中で、犯罪被害者の視点を的確に反映していく必要がある。
また、特にストーカー被害に関しては、被疑者側に対し、医療の観点からの対応を検討するなど、被害者が再び犯罪の被害に遭うことがないよう、きめ細かな対応をとるべきである。
3 きめ細かな再犯防止対策の推進
先述のように、検挙者のうちで再犯者の占める割合や、刑務所入所者に占める再入所者の割合は、年々増加傾向にある。
このため、刑務所・少年院などの矯正・更生施設におけるよりきめ細かな対応を徹底するほか、その他の再犯防止対策についても、引き続き積極的な検討を進めるべきである。
○刑務所・少年院などにおいては、個々の受刑者・在院者の特性に応じた指導・支援を強化するとともに、職員のスキルアップを図るべきである。
・ 薬物依存者、性犯罪者、女性受刑者等個々の特性に応じた指導の充実
・ アルコール依存を含む問題飲酒、対人暴力、暴力団への所属等再犯に結びつきやすい様々な問題性に対応した指導・支援の充実
・ 高齢者や障がいを抱える受刑者等の個々のニーズに応じた指導・支援の充実
・ 少年院在院者等個々の課題や生活環境等に応じた指導・支援の充実
・ 警察等の関係機関や民間ボランティア、医療・教育の専門家等との連携強化
○矯正施設・更生施設の組織のあり方についても、見直しを進めるべきである。
・ 具体的には、刑務所が、例えば、特色ある製品づくりによる受刑者の矯正を行ったり、出所者の再雇用の受け皿となるなど、特色ある事業展開と独立性の高い事業の実施を可能とすることができるよう、公務としての規律を維持しつつ、独立行政法人化なども含めた組織形態の検討を行うべきである。
・ また、このような組織のあり方の検討に当たっては、必要な社会実験の実施を検討し、丁寧な評価と検証に基づく議論を、スピード感をもって行うべきである。
○性犯罪者等の出所後のGPS発信装置の装着、効果的な出所者情報の活用など、平成20年の宣言において提言されたその他の再犯防止対策についても、引き続き検討を進めるべきである。
4 市民のニーズに応じた治安の人的・物的基盤の強化
世界一の安全を取り戻すためには、引き続き、治安の人的・物的基盤の強化に取り組む必要がある。
この場合において、まずは部内的なパワーシフト、広域的な応援派遣制度の活用、警察等のOBの活用など、人的基盤・物的基盤の運用の効率化を徹底することが必要である。さらに、規律の徹底や取り調べ技術などを含む教育訓練の充実による職員の質の向上も、あわせて行わなければならない。
そして、このような部内的な改革努力を徹底した上で、真に必要と認められた場合には、地方警察官、警察庁職員、検察官・検察事務官、入管・税関・刑務所職員、保護観察官、公安調査官、海上保安官、麻薬取締官、港湾保安調査官等の治安関係職員について、所要の増員を図ることを躊躇すべきではない。
また、あわせて、環境の変化に対応し、客観的な証拠収集方法の整備強化を図るため、DNA型鑑定等の体制の充実、DNA型データベースの充実、防犯カメラ画像の捜査への効果的な活用方策の確立、各種捜査支援システムの開発研究などの施策を推進すべきである。
近年、サイバー犯罪・サイバー攻撃の脅威が深刻化するとともに、一般市民を巻き添えにするような暴力団の抗争事件の発生が大きな社会問題となっている。
また、本年は、在外邦人を巻き込んだ痛ましい海外テロ事件の発生をみたほか、福島第1原発事故に伴い、原発テロに対処する必要性も叫ばれている。さらに、最近では、海外の事例とはいえ、スポーツイベントにおける痛ましいテロ事件の発生もみた。
これらの犯罪は、サイバー犯罪にせよ、暴力団の抗争事件にせよ、テロ事件にせよ、市民の誰もが被害者となり得、国民が治安に対し不安感を抱く要因となっている。
しかも、これらの犯罪は、従来型の犯罪と比べ、証拠や情報の収集に困難を伴うため、抜本的な対策の確立が急務であり、必要に応じ、新たな法整備も必要と考えられる。
具体的には、例えば、一定の行為を犯罪等の類型に加えたり、一定の証拠保全行為を一般的に義務づけたり、一定の要件の下に、現在は行使できないこととされている方法により証拠を収集することを認めることなどが挙げられるが、他の手段によっては対処することができないことについて国民の理解が得られた場合には、人権の問題や関係先の負担に十分に配慮しつつ、積極的な検討を進めるべきである。
さらに、これらの犯罪については、単に治安機関ばかりでなく、必要に応じ、企業、研究者などと、ときには捜査上の秘密にわたる情報も共有しつつ、一体となった対処体制をとっていく必要がある。
このような場合の秘密の保護については、一般的な機密保護法制とは別の文脈で、個別の問題として、積極的な法制上の検討(個別的機密保護法制)を進めるべきであろう。
これらの犯罪への対応が遅きに失した場合、例えばサイバー犯罪については、わが国が集中的にその標的となったり、わが国を経由した犯罪が他国に迷惑を及ぼすことなども懸念されるところである。
だからこそ今、これら新たな対応を必要とする犯罪について、抜本的な対策の確立を加速化させることが必要である。
1 サイバー犯罪・サイバー攻撃への対策の強化
インターネットが社会経済活動に必要不可欠なツールとなる中、安全なサイバー空間の構築は、従来に増して喫緊の課題である。しかも、我々のコンピュータシステムをダウンさせたり、改変させたりするサイバー攻撃は、極めて大きな脅威となりつつある。このような脅威に対処するため、例えば米国では、「National Cyber-Forensics & Training Alliance」(直訳すれば、「産学官同盟による国家的サイバー対策の法廷証拠収集・養成機関」、意訳すれば「総合的サイバー犯罪対策のための産学官連合」)と称する組織が設けられているが、残念ながらわが国にはないなど、わが国の対応体制の後進性が指摘されている。
このため、わが国としても、抜本的な対処能力の強化を図るべきである。
(1)日本版NCFTA(総合的サイバー犯罪対策のための産学官連合)の創設等
サイバー犯罪・サイバー攻撃に対する対処体制は、抜本的な見直しと強化を図ることが必要である。そして、その際、民間と治安機関の垣根を越え、情報収集・解析と人材育成を一元化することが重要と考える。このため、わが党は、日本版NCFTA(総合的サイバー犯罪対策のための産学官連合)の創設とともに、その創設に必要な法整備を促進するなど、サイバー犯罪対策のための抜本的な体制強化を提言する。
○新組織の創設のために体制面の整備を推進する
・ 警察とアンチウイルスベンダー等との情報共有枠組みの構築等
・ ウイルス等に係るデータベースの構築
・ 犯罪捜査への民間の知見の導入
○新組織創設のための法制(機密保護)、予算措置等の整備を検討する
○民間企業等の持つ知見の活用等により捜査力及び解析力を強化する
・ 技術的に高度な民間資格取得のためのトレーニング
・ 民間企業等への講義委託
・ 海外を含む大学、研修機関等への派遣・研修
・ 捜査・解析体制の充実
・ 電磁的記録等の解析・分析等に適切に対処し、事実関係を的確に解明するために必要な科学的検証能力の充実
・ 「不正プログラム解析センター」の充実
・ アンチウイルスベンダー、デジタルフォレンジック(デジタル鑑識)産業等高度情報セキュリティ産業の育成支援
・ ビッグデータの分析能力の向上
・ 外国捜査機関との連携の強化
○サイバー攻撃分析センター、サイバー攻撃特別捜査隊の拡充等により、サイバー攻撃の未然防止と実態解明を強化する
(2)サイバー犯罪・サイバー攻撃の横行を防ぎ、サイバー空間から違法情報・有害情報を排除するための取り組みの強化
安全で安心なサイバー空間を確立するためには、匿名性を悪用したサイバー犯罪・サイバー攻撃の横行を防ぐため、犯罪の事後追跡可能性を確保したり、サイバー空間からの違法・有害情報を排除するため、違法化すべき有害情報について検討を進めるとともに、政府と民間との情報共有の枠組みを確立することなどが重要である。
このため、わが党は、必要な法制の検討に加え、政府と民間との情報共有の枠組みの構築等によるサイバー犯罪・サイバー攻撃の未然防止を図ることを提言する。
○ 通信履歴(ログ)の保存の義務化(法制化)について検討を進めるとともに、次の施策を進めることにより、サイバー犯罪の事後追跡可能性を確保する。
・ データ通信カード契約時の本人確認の徹底
・ 無線LANの無権限利用を防止するための広報啓発
・ Tor(トーア)等高度匿名化技術に関する調査研究
○違法・有害情報の排除のため、その規制のあり方について法制面の検討を進める。
・ 児童ポルノの単純所持の罰則規定の創設に向けた取り組みの強化
・ ストーカーによる迷惑メールを「つきまとい行為」の類型に追加
・ 違法情報に分類すべき情報の類型化についての検討の推進
○安全で安心なサイバー空間を確立するため、政府と民間との情報共有の枠組みの構築等に取り組む
・ サイト管理者の責任を明確化し、違法情報・有害情報の削除等の義務付け、インターネット・ホットラインセンターの充実、サイバーパトロールの強化などに取り組むとともに、必要に応じ法制上の措置を検討する。
・ スマートフォンの安全利用のための環境整備のため、アプリチェックの要請の徹底、民間事業者と連携した違法アプリに係るデータベースの構築、スマートフォンに係る児童被害防止対策の検討を進める。
・ サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク、サイバーテロ対策協議会等の拡充など、サイバー攻撃に関する民間事業者等との情報共有を充実強化するとともに、治安機関におけるサイバーインテリジェンスを強化する。
2 市民生活を脅かす組織犯罪(暴力団、薬物等)への対策の強化
これまでのわが党の提言等を踏まえ、政府は良好な治安を確保するための最重点の課題として、暴力団対策を始めとする組織犯罪対策を推進してきた。
この取り組みは一定の成果を上げ、暴力団の構成員数は、平成16年以降減少傾向を示すに至っている。
しかしながら、最近の情勢を見ると、次のように、新たな対応を必要とする問題が顕在化しつつあることは否定できない。
○暴力団の組織防衛の傾向が顕著になり、証拠の収集が困難化していること。
○一般市民の生活に直接の脅威となる対立抗争事件などが見られること。
○いわゆる「準暴力団」により敢行される犯罪が相次いでいること。
○脱法ドラッグの問題や薬物押収量の増加等の問題が深刻化していること。
このような新たな問題に対応し、法制面・体制面の整備を行うことが必要である。
(1)暴力団の組織防衛強化に即応した法制面の検討の推進
最近の暴力団犯罪は、犯行現場にほとんど証拠を残さず、組織的な証拠隠滅が行われるとともに、暴力団関係者も、組織からの報復を恐れ、事件や組織の内情についての供述を行わない傾向がある。
このため、わが党は、一定の要件の下で次のような捜査を可能にするような捜査手法の選択肢の拡大について、必要な法制上の検討を進めることを提言する。
・ 通信傍受・会話傍受
・ 仮装身分捜査
・ 携帯電話等のGPS位置情報の取得要件の緩和
(2)市民と協働の暴力団対策の推進
暴力団による抗争事件等が一般市民生活の脅威となる中、市民と協働の暴力団対策の推進が急務である。
このため、わが党は、次のような施策を推進することにより、市民と協働の暴力団対策を推進すべきことを提言する。
・ 各種業等からの暴力団の排除を徹底するため、許認可要件や公売・競売の入札に関する暴力団排除方策を検討する。
・ 市民と協働し、警戒・保護活動を強化する。
・ 防犯カメラの設置促進等への支援を強化する。
(3)準暴力団の実態解明等の強化
最近、暴走族の元構成員等を中心とする集団で、暴力団ほどの明確な組織性を有しないものの、所属メンバーが集団的又は常習的に暴力的不法行為を行う事件が相次いでいる。
このため、わが党は、このような準暴力団について、そのメンバー、活動実態や資金源等についての実態解明を徹底するとともに、違法行為の取り締まりの強化を提言する。
(4)脱法ドラッグ等薬物問題への対処の強化
薬物については、その押収量が増加傾向にあるなど、これまで以上に、一般市民への拡大が懸念されるとともに、脱法ドラッグなど、新たな形態の薬物の出現も大きな課題となっている。
このため、わが党は、次のように、捜査の徹底と迅速な制度面での対処を行うことにより、深刻化する薬物問題への対処を強化すべきことを提言する。
・ コントロールドデリバリー捜査等の効果的活用による薬物犯罪組織中枢の検挙
・ 指定薬物の迅速な指定
・ 犯罪収益対策の強化
・ 指定薬物の規制に関する法制上の検討
3 テロの脅威に対する対策の強化
国際テロ情勢は、アルジェリアにおける邦人へのテロ事件、ボストンマラソンにおけるテロ事件等深刻化の度を増しているが、これに加えて、わが国の位置する東アジアの情勢の緊迫化も顕著になっている。
さらに、福島第1原発の事故により、原発が破壊された場合のダメージの大きさが目のあたりになる中、核セキュリティの問題も、大きな課題となっている。
このように、テロの脅威や対日有害活動への対策を強化することは現下の急務であり、わが国としても、情報収集体制を充実強化するとともに、テロ封じ込めのための必要な法規制の検討を進めるなどの対策を進めるべきである。
(1)情報収集・分析体制の抜本的強化
わが国の情報収集・分析体制については、従来からその脆弱さが指摘されているが、国際テロ情勢が深刻化する中、その体制強化について、抜本的な見直しを進めていくことが必要である。
また、海外テロに係る邦人保護の万全を期するためには、機密にわたる情報についても、必要に応じ、在外邦人との共有を図らなければならない場面も生じるため、そのための法制面の検討も急務である。
このため、わが党は、次の施策を展開することなどにより、テロ等に関する情報収集・分析体制を抜本的に強化すべきことを提言する。
・ 在外公館における警察アタッシェ、防衛駐在官等の体制強化
・ 国際テロリズム緊急展開班(TRT−2)の充実強化
・ 外国治安・テロ対策機関との連携強化
・ 拉致問題その他諸外国による対日有害活動の未然防止・解決に向けたカウンターインテリジェンス機能の充実
・ 在外邦人保護のための情報共有体制の整備と必要に応じた法制上の措置の検討
(機密の保全等)
・ 大量破壊兵器及び関連物資・技術の拡散防止に向けた情報収集・分析能力の充実
(2)テロ封じ込めのための諸対策の強化
テロ行為の封じ込めのためには、法制上の措置を含め、テロ行為のリソースとなる爆発物や資金源の封じ込めを図るほか、基本に立ち帰り、警戒警備を充実させることが重要である。
このため、わが党は、次のように、テロ封じ込めのための諸対策を強化することを提言する。
○テロ行為のリソースとなる爆発物や資金源封じ込めの強化
・ 爆発物原料に係る疑わしい取引の届出の義務付けを検討するなど爆発物原料対策を強化する。
・ テロリストに関する貨物輸出規制の創設を検討する。
・ FATF(金融活動作業部会)勧告を踏まえ、テロリストに係る財産凍結に関する規定を整備するなど、テロ資金対策を強化する。
○スポーツイベント等多くの人が集まる場所における警戒警備体制を強化する。
(3)原子力関連施設の安全の確保
福島第1原発の事故以来、原子力関連施設の安全の確保がしっかりとなされているのかということについて、国民の不安感が高まっている。
このため、わが党は、次の措置に万全を期することにより、原子力関連施設の安全の確保を図ることを提言する。
・ 個人の信頼性確認制度の導入・推進など内部脅威対策を含めたセキュリティ体制の強化
・ 警察と海上保安庁・自衛隊等との連携強化
・ 銃器対策部隊・SAT(特殊急襲部隊)等の充実
・ 部隊指揮官に対する専門的教育訓練の実施
・ 対処要領、警戒要領の見直しを含めた警戒警備体制の強化
4 その他
外国人犯罪は、平成20年の宣言を踏まえた対策が推進された結果、減少傾向を示すに至ったが、最近でも、外国人犯罪グループによる自動車盗などの問題が、地域によって大きな問題となっている。
また、振り込め詐欺などの特殊詐欺についても、その被害額が最近再び増勢を示すなどの問題が指摘されている。
このため、わが党は、これらの犯罪についても、法制度の検討を含め、万全の対応をとることを提言する。
○効果的な入国審査のための情報収集・分析能力の充実による入管のインテ リジェンス機能の強化
○新しい在留管理制度の効果的な運用と関係機関の連携・情報の共有化
○外国人犯罪グループに関する情報収集の強化
○自動車盗防止のための法制度の検討(イモビライザー破りの防止等)
○振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺にかかる犯行ツールの遮断対策の推進
第三 頼りがいのある治安インフラの確立
世界一の安全を取り戻すためには、民間の安全形成システムの強化を図ることや、新たな対応を必要とする犯罪に対応した法制面・体制面の整備を図ることに加え、あわせて、国民にとって頼りがいのある治安インフラを確立することが必要である。
ところが、昨今、警察への事前の相談があったにもかかわらず、痛ましい事件の発生を防ぐことができなかったケースや、刑務所等の出所者が再び犯罪にかかわる事件が相次いでいる。
また、治安機関の職員による不祥事も後を絶たないなど、わが国の治安インフラが、国民の親近感と信頼感を勝ち得、真に頼りがいのあるものとなっているのかどうか、しっかりと点検していく必要がある。
国民が治安への不安を感じる要因としては、これまで述べてきたように、「地域の絆が薄れ、民間の安全形成システムが劣化していること」や「今まで経験したことのない、新たな形態の犯罪の脅威にさらされていること」に加え、「身近な犯罪の被害に遭い、又は遭いそうになったときに、警察を始めとした治安機関が、親身になって対応してくれるのかどうか」という疑念があることも否めない。
いわゆる「空き交番」こそ、統計的には解消されたとされているものの、わが党は、このような疑念を払拭し、国民が世界一の安全を実感できるようにするため、引き続き、頼りがいのある治安インフラの確立を目指すべきと考える。
1 ストーカー・DV・性犯罪・児童虐待・いじめ等へのきめ細かで迅速な対応
ストーカー・DV・性犯罪・児童虐待・いじめ等に係る相談や被害申告は、被害者がその申告を躊躇しがちであることや、警察への申告をためらうなどの事情もあり、断片的なものであることも多い。
しかしながら、警察を始めとした関係機関は、関係者が、藁をもすがる気持ちで相談に訪れたことを十分に理解し、その背後にある事情を斟酌し、さらには、学校や児童相談所などの関係機関で情報を共有化し、事案の全体像を解明する努力を怠ってはならない。
これらの事案について、関係機関の縦割りを排し、かつ、都道府県警察の垣根を越えた広域的対応体制の確立を求めるとともに、市民の立場に立った相談従事者のスキルアップ、女性警察官の採用・登用などを推進し、市民の立場に立ったきめ細かで迅速な対応を確立すべきである。
この場合において、65歳まで働くことができる制度の導入に伴い、再任用されることとなる警察職員等の効果的活用に配慮すべきである。
2 犯罪被害者への支援強化
犯罪被害者に対する支援については、基本法の制定の後、裁判手続きへの被害者の関与がルール化されるなど、ようやくその充実が図られてきた。
今後さらに、新たな刑事司法制度の検討の中で、犯罪被害者の視点を的確に反映していく必要がある。
また、特にストーカー被害に関しては、被疑者側に対し、医療の観点からの対応を検討するなど、被害者が再び犯罪の被害に遭うことがないよう、きめ細かな対応をとるべきである。
3 きめ細かな再犯防止対策の推進
先述のように、検挙者のうちで再犯者の占める割合や、刑務所入所者に占める再入所者の割合は、年々増加傾向にある。
このため、刑務所・少年院などの矯正・更生施設におけるよりきめ細かな対応を徹底するほか、その他の再犯防止対策についても、引き続き積極的な検討を進めるべきである。
○刑務所・少年院などにおいては、個々の受刑者・在院者の特性に応じた指導・支援を強化するとともに、職員のスキルアップを図るべきである。
・ 薬物依存者、性犯罪者、女性受刑者等個々の特性に応じた指導の充実
・ アルコール依存を含む問題飲酒、対人暴力、暴力団への所属等再犯に結びつきやすい様々な問題性に対応した指導・支援の充実
・ 高齢者や障がいを抱える受刑者等の個々のニーズに応じた指導・支援の充実
・ 少年院在院者等個々の課題や生活環境等に応じた指導・支援の充実
・ 警察等の関係機関や民間ボランティア、医療・教育の専門家等との連携強化
○矯正施設・更生施設の組織のあり方についても、見直しを進めるべきである。
・ 具体的には、刑務所が、例えば、特色ある製品づくりによる受刑者の矯正を行ったり、出所者の再雇用の受け皿となるなど、特色ある事業展開と独立性の高い事業の実施を可能とすることができるよう、公務としての規律を維持しつつ、独立行政法人化なども含めた組織形態の検討を行うべきである。
・ また、このような組織のあり方の検討に当たっては、必要な社会実験の実施を検討し、丁寧な評価と検証に基づく議論を、スピード感をもって行うべきである。
○性犯罪者等の出所後のGPS発信装置の装着、効果的な出所者情報の活用など、平成20年の宣言において提言されたその他の再犯防止対策についても、引き続き検討を進めるべきである。
4 市民のニーズに応じた治安の人的・物的基盤の強化
世界一の安全を取り戻すためには、引き続き、治安の人的・物的基盤の強化に取り組む必要がある。
この場合において、まずは部内的なパワーシフト、広域的な応援派遣制度の活用、警察等のOBの活用など、人的基盤・物的基盤の運用の効率化を徹底することが必要である。さらに、規律の徹底や取り調べ技術などを含む教育訓練の充実による職員の質の向上も、あわせて行わなければならない。
そして、このような部内的な改革努力を徹底した上で、真に必要と認められた場合には、地方警察官、警察庁職員、検察官・検察事務官、入管・税関・刑務所職員、保護観察官、公安調査官、海上保安官、麻薬取締官、港湾保安調査官等の治安関係職員について、所要の増員を図ることを躊躇すべきではない。
また、あわせて、環境の変化に対応し、客観的な証拠収集方法の整備強化を図るため、DNA型鑑定等の体制の充実、DNA型データベースの充実、防犯カメラ画像の捜査への効果的な活用方策の確立、各種捜査支援システムの開発研究などの施策を推進すべきである。
2013年05月20日
新「防衛計画の大綱」策定に係る提言(骨子案・全文)(自由民主党)


『日本の防衛政策』(田村重信編著、内外出版)『日本の防衛法制』(田村重信他編著、内外出版)を出版。この二冊とも増刷となりました。
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5月17日、自民党安全保障・国防部会合同会議で発表された
新「防衛計画の大綱」策定に係る提言(骨子案)
(「防衛を取り戻す」)の全文です。
今後、数回の議論を経て正式な提言になります。
はじめに
わが党は先の政権公約において、防衛費を増額して防衛力を「質」「量」ともに充実強化させていくと同時に、現下の安全保障環境に即応できる強固な防衛態勢を構築していくため、現行の「防衛大綱」の抜本的見直しを行うことを国民に約束した。
昨年暮れの総選挙の結果を受けて誕生した安倍政権は、目下、新たな大綱策定へ向けての検討を開始しているところであり、廃止した「中期防」も含め本年中に結論を得ると承知している。わが党においても、新大綱策定に向けて必要な提言を行うために、これまで精力的に検討と議論を重ねてきたところである。
<大綱見直しの考え方>
近年、北朝鮮の弾道ミサイル発射や核実験、中国によるわが国周辺海空域における活動の活発化など、わが国周辺情勢は次第に悪化しつつある。
一方、米国は、財政難に直面しつつもアジア太平洋地域への軍事リバランスを指向し、同盟国等との連携の強化を図ろうとしている。
一方、わが国においては一昨年の「東日本大震災」に際しての自衛隊の大規模な出動経験を通じて、今後に活かすべき貴重な教訓を得たところである。
このような状況を踏まえ、我々は日米同盟を一層強固なものにしていくと同時に、わが国の防衛力を今後に想定される内外のあらゆる事態に迅速かつ機動的に対応することができるものにするため、防衛力整備の方針を抜本的に見直し、「質」「量」ともに充実強化していく必要がある。
わが国を取り巻く安全保障環境
●国際情勢
中国やインドなどの新たに台頭してきた国々は年々国力を増大させ、それに伴って急速に軍事力の増強と装備の近代化を図っている。一方、米国や欧州諸国では財政事情の悪化から国防費の削減を迫られており、結果としてグローバルな軍事バランスに大きな変化が生じつつある。
経済面を中心とする国家間の相互依存関係が進展した結果、主要国間の本格的武力紛争が生起する可能性は低下しているものの、グレーゾーンの紛争は増加しつつあり、国際テロの脅威も継続している。また、海洋、宇宙、サイバー空間など、新たな領域におけるリスクが年々顕在化しつつある。
●わが国周辺の情勢
北朝鮮の弾道ミサイル・核開発や様々な挑発行為が継続しており、中国の不透明な形での国防予算の増大や急速な装備の近代化、周辺海空域での活動の活発化が顕著である。また、極東方面でのロシアの軍事活動も引き続き活発化しているなど、東アジア地域には重大な不安定要因が継続して存在しており、わが国を取り巻く安全保障環境は以前に比べ、むしろ悪化しつつある。
こうした状況下、国内における大規模震災を含め、複数の事態が同時に生起するいわゆる複合事態発生の可能性についても十分認識しなければならない。
●国内における状況
国家財政は依然として厳しい状況にあるが、「国防」はわが国の平和と独立の基盤をなすものであり、防衛関係費については所要額を継続的に確保する必要がある。
●安全保障政策の基盤となる重要課題
今後のわが国の安全保障政策策定の基盤となる重要課題には、憲法改正、国家安全保障基本法の制定、「国家安全保障会議」(日本版NSC)の設置、集団的自衛権等をめぐる法的基盤の整備、日米ガイドライン見直しなどがあり、極めて広範多岐にわたっている。防衛力の構築に際しては、現下の周辺安全保障環境への対応だけではなく、さらに中長期的視点に立脚した本質的かつ総合的な施策の検討が必要とされている。
具体的な提言
基本的安全保障政策
●自主憲法制定と「国防軍」の設置
わが党は既に策定した憲法改正草案において、第9条の第一項を基本的に維持するとともに、第二項において「前項の規定は自衛権の発動を妨げない」としたところである。その意味するところは、今後とも「国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇ならびに武力の行使を行わない」ことを明確にした上で、「国連憲章に認める個別的ならびに集団的自衛権についてはわが国防衛のためにその発動を妨げない」とした点にある。
また、「草案」では新たに「国防軍」の条項を設け、内閣総理大臣を最高指揮官として定めることとした。その理由は、今や世界有数の規模と実力を有するに至った自衛隊が最高法規の上に明確に規定されていない異常な状態を解消するためであり、「シビリアンコントロール」の原則を最高法規の上に明確に規定するためである。
国民の幅広い理解と支持を得てできるだけ早期に憲法改正が行われることが望ましく、我々としてもその環境を醸成していくために不断の努力を行っていく決意である。
●国家安全保障基本法の制定
当面、安全保障政策を具体的かつ総合的に推進するため、わが国の安全を確保するに足る必要最小限度の自衛権行使(集団的自衛権を含む)の範囲を明確化し、国家安全保障の基本方針、文民統制のルール、防衛産業の維持育成の指針、武器輸出に係る基本方針等を規定した「国家安全保障基本法」を制定する。
●国家安全保障会議(日本版NSC)の設立
外交と安全保障に関する官邸の司令塔機能を強化するため、官邸に国家安全保障会議(日本版NSC)を設置する。国家安全保障会議はわが国の安全保障戦略ならびにそのための基本計画を策定すると同時に、より強化された情報集約機能ならびに分析能力を有する組織とする。そのためにNSCの事務局体制を充実させるとともに、総理大臣の軍事面における補佐機能を強化するため、官邸に防衛政策・軍事に関する専門家を配置する。
●政府としての情報機能の強化
NSC設置に伴い、政府全体の情報収集機能を強化するとともに、各省の情報を迅速に官邸に一元化し、総理大臣へ適宜適切に報告を行うことのできる体制を確立する。また、政府内での情報共有の促進ならびに情報保全のために「秘密保護法」を制定する。更に、現在の情報収集衛星体制を「質」「量」ともに拡充し、その能力の一層の向上を図る。
●国防の基本方針の見直し
昭和32年に決定された現在の「国防の基本方針」については、現在の周辺安全保障環境や近年の軍事技術の進展状況なども踏まえ、国家安全保障会議において検討を加え、より現実的かつ適切なものに見直す。
●防衛省改革
不祥事の再発防止と、全体最適に向けた業務態勢の構築のため、防衛省改革を推進する。具体的には、隊員の意識改革を進め、「U(制服)」と「C(内局)」がより一体的に機能するものとしつつ、監察体制の強化を含む公正・効率的な調達業務態勢を構築するとともに、統合運用の強化とそれを踏まえた統合的な防衛力整備等を実現する。その後、これらの実施状況を踏まえ、不断の見直しを行う。
防衛大綱の基本的考え方
●新たな防衛力の構築
「強靱な機動的防衛力」
機動運用性、総合指揮運用能力、輸送力等の機能拡充を図りつつ、防衛力の強靱性・柔軟性・持続性や基地の抗堪性の確保、戦力の維持・回復力の強化などを重視する。高烈度下においても、着実にわが国防衛の任務を全うする能力を確保するとともに、国民保護の貫徹を目指すものであり、こうした防衛力構築のコンセプトを端的に表現するもの。
国民の生命・財産・領土・領海・領空を断固として守り抜く態勢の強化
●隙間のない(シームレスな)事態対応
あらゆる脅威に対して隙間のない事態対応を行うため、防衛省・自衛隊、警察及び海保等の関係省庁間の連携を強化し、政府全体として、わが国の領土・領海・領空をシームレスな体制で守り抜く。また、関係機関相互の連携によって、緊張感を伴った実戦的な訓練を実施するとともに、不足事項を真摯に検証して改善を加える。
その上で、「領域警備」など、わが国の領域を確実に警備するために必要な法的課題について不断の検討を行い、実効的な措置を講じる。
●統合運用の強化
複雑化する運用業務に適切に対応するため、指揮統制や統合運用を支える基盤的機能である情報通信や後方補給について、装備の充実を含むより実戦的なネットワークシステムを構築するとともに、中央における統幕の機能と権限を強化する。また、統合運用に適した人材の育成を促進するための自衛官の教育システム及びキャリアパスを確立する。
更に統合運用の観点から、陸上総隊を設置することを含め、各自衛隊の主要部隊等の在り方について総合的に検討し、必要な改編を行う。
●警戒監視・情報収集分析機能の強化
統合運用をより効果的に支えるため、警戒監視・情報収集分析態勢を強化する。事態の兆候を早期に察知し、迅速かつ隙間のない対応を確保するため、広域における総合的かつ常時継続的な警戒監視・情報収集に適した無人機等の新たな装備品を導入するとともに、そのために必要な質の高い情報分析要員を確保・育成するなど情報収集分析機能の拡充強化を図る。また、海外における情報収集に資する「防衛駐在官」の人員・態勢の増強を図る。
●島嶼防衛の強化
南西地域の島嶼部における隙間の無い警戒監視・初動対処能力を強化する。また、航空優勢の確保、事態対処時に増援部隊が当該地域へ展開する際の補給拠点の設置など、作戦遂行のための基盤を強化する。
加えて島嶼防衛のために自衛隊に「海兵隊的機能」を付与するため、水陸両用車やティルトローター機(オスプレイ等)を装備する水陸両用部隊を新編し、洋上の拠点・司令部となり得る艦艇とともに運用が可能となる体制を整える。
更に、戦車・火砲を含む高練度部隊を大規模かつ迅速に展開させるため、既存部隊の編成・運用を機動性の観点から抜本的に見直す。
●輸送能力の強化
島嶼防衛や震災対処においては、必要な人員や装備の迅速な展開が活動の成否を決するため、陸海空路による輸送能力を大幅に拡充する。特に、訓練環境等に優れた北海道における部隊の練成を重視し、事態に応じて、それらの部隊を迅速に展開させる方策を確保する。また、膨大な輸送を短時間で確実に実行するため、陸海空の民間輸送力を有効に活用し得る仕組みを構築する。
●核・弾道ミサイル攻撃への対応能力の強化
日本全国の重要施設等の防護に対応が可能となるよう、BMD機能搭載イージス艦や地上配備のBMD部隊・装備の拡充を行い、効率的かつ効果的な部隊配備と運用態勢の構築を図る。また、弾道ミサイル等が実際に発射された場合に備え、政府・自治体・国民との間で迅速かつ確実に情報の共有が可能となるよう、Jアラート等の情報伝達体制を強化する。
更に、同盟国による「拡大抑止」の信頼性を一層強固にする観点から、従前から法理上は可能とされてきた自衛隊による「策源地攻撃能力」の保持について、周辺国の核兵器・弾道ミサイル等の開発・配備状況も踏まえ、検討を開始し、速やかに結論を得る。
●テロ・ゲリコマへの実効的な対処
ゲリラや特殊部隊による原子力発電所などの重要施設への攻撃に実効的に対応し得るよう、警察・海保等との間で情報共有を含む連携強化を図るとともに実戦的な共同訓練を定期的に行う。これら訓練の成果を踏まえつつ、重要施設の防護に必要な装備の充実を図るとともに、これら施設への防衛に必要な自衛隊の権限、部隊配置を適切に見直す。
●邦人保護・在外邦人輸送能力の強化
在外邦人に対する自衛隊による陸上輸送を可能とするための法改正を実現するとともに、そのために必要な機材・装備の充実を図る。また、陸上輸送中の邦人の安全を確実に担保しうるよう、任務遂行のための武器使用権限付与についての検討を加速し、検討結果を踏まえ必要な対応をとる。
●東日本大震災への対応を踏まえた災害対処能力の強化
大規模災害に際しては事態発生後72時間が人命救助の限界となるとされていることから、予測される南海トラフ巨大地震や首都直下型地震等に迅速に対応しうるよう、マンパワー(人員)を確保するとともに、ヘリなどの輸送力・機動力を充実強化する。
自衛隊の駐屯地・基地は、災害発生時に部隊の各種活動(指揮・運用・後方支援)のための重要な拠点になることを踏まえ、駐屯地・基地の津波対策や放射線防護対策ならびに庁舎、隊舎等施設の耐震化と自家発電能力整備を早急に進める。さらに、緊急時に自衛隊が展開する際の拠点の確保など、地方自治体や地域社会との連携強化を図る。
●サイバー攻撃に係る国際協力の推進・対処能力の強化、法的基盤の整備
サイバー攻撃とは、重要な情報通信ネットワークに障害を与えれば甚大な被害や影響を生じさせるものであり、安全保障上の重大な脅威である。こうしたサイバー攻撃への対処能力を強化するため、専門的技能を有する人材の登用を含め、高度な対処能力を備えた人材の育成を強化する。また、サイバー空間における脅威情報の収集体制及び対処能力の強化を図るとともに、サイバー攻撃に対処するための国際法・国内法上の法的基盤を急ぎ整備する。
●安全保障分野での宇宙開発利用の推進
増大する情報通信所要に対応するため通信衛星など指揮通信分野での宇宙利用を促進するとともに、情報収集・警戒監視分野における宇宙空間の利用を推進する。また、SSA(宇宙状況監視)等の宇宙分野における日米協力を積極的に進め、監視能力の強化を図る。
●無人機・ロボット等の研究開発の推進
最新技術に基づく高性能兵器及び大量破壊兵器等が使用される可能性が否定できない近年の安全保障環境や原子力災害を含む大規模災害に対応する有効な手段として、わが国が誇るものづくり技術を生かし、無人機・ロボット、関連するソフトウェア等の研究開発を推進する。
●装備品の高可動率の確保
あらゆる事態に即応できるよう、装備品の十分な維持修理費の確保や、新たな調達方式の導入により、装備品の可動率を平素から高める。
日米安保体制
●日米安保体制の強化
わが国周辺の厳しい安全保障環境を踏まえれば、日米安保体制の抑止力を一層向上させる必要がある。それと同時に、「日米安保体制」をアジア太平洋地域及びグローバルな平和と安全を確保するための「公共財」と位置づけ、幅広い分野での連携・協力を推進する。
●日米防衛協力強化のためのガイドラインの見直し
現行ガイドラインについて、今日の安全保障環境に適応したものに改め、日米間の役割・任務・能力の分担を包括的に再検討する。また、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」等における議論の成果を踏まえ、「集団的自衛権」に関する検討を加速させる。
●日米の適切な役割分担の下での策源地攻撃能力の保有
現在、打撃力については米国に依存している状態にあるが、ガイドライン協議を通じ日米間の新たな役割分担の考え方を整理し、とりわけ「ミサイルの脅威」に対する抑止力を強化する観点から、わが国独自の打撃力(策源地攻撃能力)の保持について検討を開始し、速やかに結論を得る。
●平素から緊急事態に至るまでの隙間のない協力の更なる強化
日米間において共同警戒監視、共同訓練、基地の共同使用、指揮統制機能の連携強化を推進する。
●在沖縄米軍基地に関する抑止力の維持と地元負担軽減
抑止力の維持と地元負担の軽減を両立させる観点から、普天間飛行場移設を「日米合意」に基づいて着実に前進させるとともに、既に合意された在日米軍基地の返還計画を含む在日米軍再編を着実に進展させる。
国際及び日本周辺の環境安定化活動の強化
●豪、韓、印、ASEAN諸国等との戦略的安保協力、国際協力活動の推進等
アジア太平洋地域の安定化を図るため、豪、韓、印、ASEAN諸国、との防衛協力を更に推進する。具体的には、「2プラス2」などの首脳間協議の定期開催やACSA(物品役務相互提供協定)、GSOMIA(情報保護協定)の締結、定期的な共同訓練の実施等を推進する。
●中国、ロシアとの安全保障関係の推進
中国とは「戦略的互恵関係」構築の一環として安全保障の面からも建設的な協力関係を構築して信頼醸成を図ることが重要であり、そのための防衛交流を推進する。また、近年の中国の東シナ海における活動の活発化を踏まえ、不測の事態を回避する観点から、日中防衛当局間の「海上連絡メカニズム」の構築を推進する。
ロシアは、アジア太平洋地域の安全保障に大きな影響力を持ち、かつわが国の隣国でもあることから、日露の防衛交流を深め、信頼・協力関係を増進させることが重要である。先の日露首脳会談で合意された外務・防衛閣僚による「2+2」会合の立ち上げを含め、積極的に各種レベルでの防衛交流を推進する。
●国際平和協力のための一般法の制定
派遣先での宿営地の共同防衛や緊急時の文民保護といった課題を解決するため、PKO法の改正を速やかに実現する。その上で、自衛隊の海外派遣をより迅速かつ効果的に行うことを可能とするため、一般法としての「国際平和協力法」を制定する。
●国際平和協力活動の取組の強化
国際平和協力活動への取組の強化の一環として、PKO司令部の上級ポストへの自衛官の派遣や国際連合のPKO局などの企画立案部門への要員派遣を推進する。また、PKO法の改正に際し、武器使用権限の拡充を検討し、必要な措置をとる。
●多様化する国際平和協力任務に対応できる人材育成、能力構築支援
多様化する国際平和協力任務に対応するため、語学はもとより、地域の再構築支援に必要な各種の能力を備えた人材の育成を推進する。また、アジア太平洋地域の途上国に対し、人道支援・災害救援等の非伝統的安全保障分野における人材育成や技術支援などの能力構築支援(キャパシティー・ビルディング)に積極的に取り組む。また、これまでの派遣実績と経験をもとに派遣要員の教育と訓練を行う機関としての「国際平和協力センター」を拡充し、自衛官その他の要員の育成を促進する。
●戦略的対応の強化
ODAと国際平和協力活動を連携させるなど、わが国の有する各種の政策手段を戦略的に組み合わせて効果的に対応する仕組みを確立する。
●国際平和協力活動の展開基盤の強化
中東・湾岸・北アフリカ地域はわが国のエネルギー供給源としてだけではなく、今後に経済連携の進展が望める重要な地域であり、これら地域における安定と平和の確保はわが国の繁栄と安全保障にとっても必要不可欠である。このため、現在、自衛隊がジブチに有する拠点を当該地域の国際平和協力活動等の拠点として今後とも引き続いて活用することを検討する。
大幅な防衛力の拡充
●自衛隊の人員・装備・予算の大幅な拡充
厳しさを増す安全保障環境に対応し得る防衛力の量的、質的増強を図るため、自衛隊の人員・装備・予算を大幅に拡充する。
持続的かつ安定的な自衛隊の活動を可能とするため、海上及び航空自衛隊における予備自衛官の増強を含め、「予備自衛官制度」を拡充する。
●中長期的な財源確保
防衛は国家存立の基盤であることから、「大綱」に定める防衛力整備を着実に実現するため、諸外国並の必要な防衛関係費を確保する。また、米軍再編経費など本来、政府全体でまかなうべき経費については、防衛関係費の枠外とすることにより、安定的な防衛力整備を実現する。
(参考)主要国の国防費対GDP比
米:4.5%、英:2.4%、仏:1.9%、独:1.2%(各2011年度)
●統合運用ニーズを踏まえた中長期的視点にたった防衛力整備
統合運用を基本とする防衛力を重視する。そのために各種の統合オペレーションの結果を精密に分析評価し、不断に統合運用体制の改善を図り、より実効的な防衛力整備を実現する。
防衛力の充実のための基盤の強化
●多様な任務に対応できる人材の確保・育成
現行の自衛隊の年齢構成を踏まえ、階級制度や早期退職募集制度等の各種人事施策を再検討し、精強性を確保するための制度改革を推進する。
幅広い層から人材を確保していくため、募集広報におけるインターネットや雑誌等の活用を進めるとともに、魅力ある自衛隊のブランドイメージを確立する。
任務の多様化、国際化をうけ、防衛法制の専門家の育成を含む各種の専門的な教育訓練プログラムを策定し実行する。
●人的資源の効果的な活用
制度上早期に退職しなければならない自衛官の再就職については、自治体の危機管理担当分野を含め、公的部門において積極的に活用するなど、国としての支援体制を確立する。また、民間就職支援会社の活用などを含む再就職支援の強化、受入企業に対する税制優遇等の施策を検討し、必要な措置をとる。例えば、第一線を退いた航空機操縦士等の高度な技能・知見を、航空会社等の民間企業において計画的に活用する方策を講じる。
●衛生機能の拡充
各種事態に際して真に機能する衛生、医療態勢の確立に向け、人材確保をはじめ自衛隊における衛生機能を充実させるための施策をとる。
●自衛官に対する名誉の付与
わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを主任務とする自衛隊における隊務の最高の専門的助言者である幕僚長の職務の重要性に鑑み、特命全権大使、検事総長等の他のいわゆる認証官との関係を整理し、統合及び陸海空各幕僚長の認証官化について検討し、速やかに結論を得る。また、自衛官の叙勲の対象者の拡大を図る。
●自衛隊員の処遇改善
隊舎・宿舎の整備、留守家族支援等を含めた自衛隊員の処遇の一層の改善を図り、各種任務に対する献身的な働きに報いるとともに、退職後の給付の拡充等の検討を推進し、速やかに結論を得る。また、即応態勢を求められる自衛隊員の職務の特性に鑑み、宿舎料については格別の配慮を行う。
●防衛生産・技術基盤の維持・強化
国内防衛産業基盤はわが国の防衛力の一環を成すものであるが、これまでの間の防衛予算の減少や装備品の調達数量の減少により、その基盤が揺らぎつつある。防衛生産・技術基盤の維持・強化についての戦略を策定するとともに、産学官の連携を図り、防衛装備品技術のスピンオンとオフ、民間転用の積極的な推進、そのための税制優遇等の各種施策を実施する。
●国際平和とわが国の安全保障強化に資する輸出管理政策の構築
装備品の開発・生産コストの高騰に対応すると同時に技術水準の維持向上のため、諸外国との共同開発・生産を積極的に進める。また、武器及び関連技術の輸出に関しては、わが国及び国際社会の平和と安全の確保に資するため、一定の制限の下に個別に輸出の可否を判断する新たな仕組みを構築するなど、改定された武器輸出三原則等に更に検討を加えつつ、近年の安全保障環境と戦略環境に適合する輸出管理政策を構築する。
●効率的・効果的かつ、厳正な調達制度の確立
厳しい国家財政事情を踏まえ、装備品のライフサイクル管理の強化、維持・整備方法の見直し、調達プロセスの更なる透明化、契約制度の適正化など効率的・効果的かつ、厳正な調達制度の確立を図る。
●中長期的な視点に立った最先端の防衛装備品の研究開発の推進
無人機・ロボット技術やサイバー・宇宙関連技術など、将来を見据えた最先端のわが国独自技術の研究開発を戦略的に推進する。
●地域の安全・安心の確保
災害出動などを通じて地域の安心安全に貢献している自衛隊の役割に着目し、地域コミュニティにおける自衛隊の役割についての重要性に十分配慮する。地元企業からの調達等を含め、地域社会経済の活性化に資する基地運営に努め、地方自治体や地域社会との連携を一層強化する。また、駐屯地・基地等に関する地元対策機能を拡充する観点から、広報体制を充実させるとともに、専従組織の在り方を再検討し、体制の強化を図る。
●広報等の情報発信機能の充実強化等
安全保障政策に対する国際社会や国民の広範な理解と支持を得る観点から、ソフトパワーの重要性を認識し、各種ツールを活用して積極的に情報発信を行う。また、国民の安全保障、危機管理に対する知識の普及促進のため、安全保障に関する大学講座、社会講座を設置するなどの施策を推進する。
おわりに
以上、記してきたようにわが国を取り巻く安全保障環境には依然として厳しいものがある。加えて、国際的なパワーバランスにも重大な変化が生じつつあり、テロ・サイバー攻撃などの新たな脅威も依然として継続している。わが国はかかる環境のもと、国民の生命・財産・領土・領海・領空を断固として守り抜き、さらに国際社会の平和と安定の構築へ向けてわが国にふさわしい役割を果たしていかねばならない。
政府はこれら安全保障上の諸課題を決して先送りすることなく、防衛力整備の達成目標とそのスケジュールを明確にした上で、単なる検討にとどまることなく、着実に実行に移していかなければならない。
政府に対し、本提言を参考にして、わが国国防の礎となる新たな「防衛大綱」ならびに「中期防」を策定することを強く要望するものである。
2013年05月17日
平成25年度防衛予算の解説


『日本の防衛政策』(田村重信編著、内外出版)『日本の防衛法制』(田村重信他編著、内外出版)を出版。この二冊とも増刷となりました。
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5月15日夜、平成25年度予算が成立しました。
防衛予算については、前年度と比べて400億円(0.8%)増額の4兆7538億円となっており、実質11年ぶりの増加となっています。
近年の我が国の防衛費は、毎年減少してきており、この10年で3千億円もの減少となっていました。
このようなことから、昨年12月の衆院選で自民党は、「減らし続けてきた自衛隊の人員・装備・予算を拡充」することを公約の一つに掲げ、政権を奪還することが出来ました。
我が国を取り巻く安全保障環境は、中国の海洋進出をはじめとする軍事活動の活発化や北朝鮮による核・ミサイル開発等、ますます厳しさを増しています。このような情勢を踏まえれば、衆院選での国民の方々の選択は至極妥当なものだったと思われます。
政権交代後の予算編成は、短期間での作業となりましたが、民主党政権時代の各省の概算要求を出し直してもらい、特に、防衛予算については、「平成25年度の防衛予算の編成の準拠となる方針」を閣議決定して、防衛力の充実・強化に向けた方針を明らかにし、1月29日に政府予算案を決定したところです。
25年度の防衛予算では、周辺国による我が国周辺海空域での活動活発化、大規模災害への備えの重要性を踏まえ、防衛省・自衛隊が国民から期待される役割を果たす上で必要な事業とこのための所要額を確保しています。
具体的には、民主党政権時代の昨年9月の概算要求に加え、南西地域の警戒監視等のための自衛官の充足、警戒監視を行うE−767・E−2Cといった航空機の運用拡大を支えるための燃料・部品等の確保、警戒監視態勢強化のための地上レーダ更新の追加、対処拠点となる駐屯地等の隊舎・庁舎の耐震改修等の事業を新たに計上しています。
自衛官の充足については、平素から南西地域で警戒監視を行っている自衛隊の航空機や艦艇部隊、離島侵攻を受けた場合に対応する陸自部隊の実員を287人増やすことにしています。
警戒監視を行う航空機の運用拡大では、燃料費や修理費といった航空機を長時間飛行させるための経費を十分に確保します。
更に、我が国の防空のため24時間態勢で警戒監視にあたるレーダーサイトの更新や隊員が居住・勤務する隊舎・庁舎のうち老朽化して耐震性に問題のある施設の改修を行います。
これらの事業をはじめとする25年度防衛予算では、我が国が直面する安全保障情勢に対応して緊急に措置する必要があるものを計上し、久しぶりの増額となりました。
最近の近隣諸国の動向は、将来にわたる我が国の安全に不安を感じさせるものです。
これを踏まえ、今後は、中長期的な将来の防衛力のあり方を検討し、防衛計画の大綱の見直しに向けた議論が加速していくこととなります。
アメリカにも農業補助金あり!(米国ヘリテージ財団、横江公美)


『日本の防衛政策』(田村重信編著、内外出版)『日本の防衛法制』(田村重信他編著、内外出版)を出版。この二冊とも増刷となりました。
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ヘリテージアジア研究センター(2013年5月16日)
アメリカにも農業補助金あり!
アメリカにも農業補助金は存在し、5年ごとに見直されることになっている。
「The Farm Bill」と呼ばれる法案が通ったのは2008年でちょうど今年は5年目にあたる。
来週には、下院も上院もそれぞれの法案を提出する予定になっている。
そこで、今週、ヘリテージ財団ではFarm Billについての招待客のみのフォーラムが開催された。
自由経済を良しとするヘリテージ財団は、農業に補助金を約束するこの法案に懐疑的だ。フォーラムでは、ヘリテージ財団のDaren Bakst研究員とR Street Instituteの Andrew Moylanがスピーカーとなり、Farm Billの問題点を整理した。
フォーラムに参加したところ、今回提出される予定の上院、下院の法案ともに、以下の3つの問題があるという。
1つは、今後10年間にだいたい1兆ドル必要とし、しかもそのうちの80%はフード・スタンプに当てられるという。フード・スタンプとは低所得層に配布される食べ物引換券だ。
2008年の農業法は2018年までに6040億ドルの農業への政府支出を約束しており、今回の法案では1兆ドルに跳ね上がり、2倍近くにまで増額している。
Daren Bakst は「農業の法案とフード・スタンプとははっきり切り離すべきである。80%がフード・スタンプにあてらると言うことになれば、それは、農業とは関係がない」と語った。
2つ目は、農業保険の部分である。
2000年から2006年には、毎年30億ドルの税金が農業保険に使われていた。それがこれからは1年に90億ドル必要になる、という。
Bakstは、農家が受け取る額は4万ドルまでと上限が決まっているように、農業保険の額の上限も設定すべきである、と語った。政府予算局は、もし農業保険の上限を4万ドルにできれば、1年間に10億ドル近くが節約できると見積もっている、と語る。
3つ目は、高額所得の農家ほど補助金を受け取っているという実態である。
25万ドルから99.9万ドルの収入がある農家の約80%が政府から補助金をもらっているのに対し、1万ドルから24.9万ドルの収入がある農家が政府から補助金をもらっているのは24%に過ぎない。つまり、大規模農家ほど補助金をもらっている、という実態があるという。
しかも、農家の所得は一般に比べて高く、借金は少ないといわれており、アメリカの農家の経営状況はそれほど悪いわけではない、という現実もある、とAndrew Moylanは語る。
さらにアメリカの農業はハイテク産業に変化しており、収穫は飛躍的に伸びている。より少ない土地でより多くの収穫を上げることが可能になっている。
2000年には、農業補助金の37%が税収からに当てられていた。それが現在は62%にも上る。しかも、農家の割合は62%から52%に減っている事実から、少なくとも1年に12億ドルは削減できるとMoylanは見積もった。
Farm Billは、フードスタンプに多く使われるなど、オバマケアの性質と似通っている。
下院は従来のプログラムから330億ドル削減し、上院は180億ドル削減すると語っているが、法案の総額は1兆ドルになることを考えると、意味がないとスピーカーは口を揃えていた。
ちなみに、1995年から2011年の間に上院Charles Grassleyは31600万ドルの補助金を受け取っている。それから、アメリカでは、砂糖農家を保護するため、砂糖に本来の2倍の料金を支払っている、という。
キャピトルの丘
5月15日のウォールストリートジャーナルに興味深い記事が掲載されていた。
メインの塊の一番後ろに日本の記事が2本乗っていた。
1つは大きな記事は「Anti-Korean Voices Grow in Japan」というタイトルで、最近日本に現れた偏狭とも言えるナショナリズムについてだ。韓国料理や韓国のグッズを売るお店が軒を連ねるコリアン・タウンの新大久保に集まり、「韓国人は死ね」「国へ帰れ」とデモが紹介され写真も掲載されていた。かなりショッキングな記事である。
2つ目は、上記の記事に比べると10分の1ほどのサイズの小さな囲み記事で、尖閣周辺の海に中国のものと思われる潜水艦が侵入しているという日本の領土問題についてだ。
この配置であると、日本の一部に最近現れたナショナリズムは排他的で、そういった風潮が日本の領土問題を引き起こしているという暗喩と、または尖閣への中国の侵入が日本の排他的なナショナリズムにつながっているという暗喩が想定できる。
いずれにしても、排他的な偏狭的なナショナリズムは、決して日本のためにならないと信じている。
現在、日本にとっては、尖閣周辺の海域に中国船が入っていることは、最大の問題だ。
尖閣の揉め事の原因が中国の拡張主義にあるのではなく、日本の排外的なナショナリズムにあると外国プレスの目に映ったとしたら、かなり問題だと思われる。
横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て2011年7月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。