2012年06月
2012年06月07日
谷垣総裁記者会見より(社会保障と税の一体改革への対応)

『日本の防衛法制 第2版』(内外出版)を出版しました。防衛政策を語る上での必読書です。
ブログランキングに参加しています。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓
こちらをクリック
先週の谷垣総裁記者会見より
社会保障の違いそのままに賛成はできない
社会保障と税の一体改革への対応
今国会の会期末を控え、わが党の社会保障と税の一体改革への対応が一段と注目されている。しかし、わが党の姿勢は極めてシンプルで一貫している。
つまるところ、
(1)マニフェストのけじめをつけよ
(2)政府・与党の社会保障に対する政策をあらためよ
――の2点だ。谷垣禎一総裁の最近の記者会見からわが党の同法案に対する姿勢をまとめた。
法案への基本的な姿勢 解散に代わる「けじめ」あるのか
「問題は二つある。一つは国民との契約としたマニフェストで消費税というものは書かれていない。むしろ『消費税は必要ない』と明言して選挙を戦った。そのけじめをどうつけるのかという問題。
もう一つは中身の問題だ。消費税については細部に違う部分もあるが大きな方向は違わない。しかし、社会保障の内容については極めて大きな開きがある」
「(社会保障に関する自民党と民主党の考えの違いを)そのままにして賛成はできない」
「(解散が条件かどうかについて)私はけじめをきちっとつけなければならないと言っている。私の立場からけじめとは何かといえば、一番明瞭なものは解散だと考える。解散に代わるけじめがあるのかどうか。それは総理がお考えになることだ」
「(『小沢切り』が条件かとの質問に対して)それが私の主眼ではなくて、政府・与党というのは一体で行動すべきもの。総理が自分の党をしっかりまとめられるのかどうか。これが判断する基本条件だ」
与野党協議への対応 野田総理の与党掌握度見る
「野党の協力を求めて政治課題を解決していこうというのであれば、問責を受けた2閣僚に対するお答えはあるのか。まず、そこから始めなくてはならない。また、1票の格差問題もきちっと解決してくるのか。そういうことがなければ、なかなか進まない」
「結局、総理および与党の、この問題に対する真剣度を測りながらすすまなければならない」
「小沢一郎氏(元民主党代表)との間では、まとめられないことがほぼ明らかだが、与野党で協議をするなら、(野田総理が)どう党を掌握するのかを見ていかなくてはならない。また、議論を延々と先延ばししようとするなら、協力できない。会期中にきちっと採決まで進むというような具体的な意思を示してもらう必要がある」
総理の責任について 決断見えなければあらゆる手段
「総理の地位は特別なものだ。その方が責任もって発言されたことに対しては、責任をもって対応していただかなくてはならない。総理の発言や行動が全く信頼するに値しないということになれば、当然、そういうこと(内閣不信任案や総理大臣問責決議案)を考えなくてはならない」
「会期末までに総理が政治生命をかけるという言葉にふさわしい決断が見えなければ、あらゆる手段を講じて責任を追及していく」
「(5月30日の野田総理と小沢元代表の会談について)このような仰々しい会談をしなくてはならないことが、決まらない政治に対する総理大臣としての毅然(きぜん)たる態度を疑わしめるものだと危惧する」
「『決まらない政治』ということが言われるが、衆院480議席のうち300議席を超える与党がどっちの方向に向かっているのかよくわからず迷走を続けているということが、物事が決まらない政治の根本原因だ」
『自由民主』より
民主党内の動向

『日本の防衛法制 第2版』(内外出版)を出版しました。防衛政策を語る上での必読書です。
ブログランキングに参加しています。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓
こちらをクリック
産経新聞より「消費増税法案 焦る首相、小沢氏は倒閣に自信」「開き直った岡田副総理 民主中間派を逆なで」の記事を掲載します。
消費増税法案 焦る首相、小沢氏は倒閣に自信
(産経新聞 6月7日(木)7時55分配信)
消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案をめぐる民主、自民両党の修正協議がようやく始まる見通しとなったが、会期末(21日)まで残り15日間で協議がまとまる保証はない。焦る野田佳彦首相を横目に民主党の小沢一郎元代表は衆院採決で法案を否決し、内閣総辞職を迫る構え。大飯原発再稼働をめぐっても民主党は分裂の様相を帯びており、首相の不安は尽きない。
「会期末が迫っている。一日も早く修正協議に入るように努力してほしい」
首相は6日午前、官邸で民主党の城島光力国対委員長にこう厳命した。輿石東幹事長にも電話した。5日夜に党幹部が「21日までに採決できるわけがない」と発言したことに強い危機感を抱いたようだ。
この念押しが効いたのか、6日の民主、自民、公明3党幹事長会談で輿石氏は急に軟化。最後は自民党の石原伸晃幹事長らと握手を交わした。
とはいえ、輿石氏がなお21日での閉会を狙っているとの疑念は消えない。参院民主党は参院議員会長選の選挙管理委員会を立ち上げた。輿石氏の参院議員会長の任期は今国会で切れるが、法案を衆院採決するならば会期延長は必然となり慌てる必要はないはずだ。
また、修正協議で自民党が対案の丸のみを求めたりマニフェスト(政権公約)撤回を迫れば、民主党の亀裂はさらに広がる。さっそく民主党の前原誠司政調会長はBS番組で、最低保障年金制度について「白紙に戻せと言われれば戻せない」と修正協議での安易な妥協を牽制(けんせい)した。
そんな中、小沢氏は、造反をためらっている若手議員との個別面談を始めた。
「今採決すれば法案は否決され、内閣総辞職だ…」
こうささやくと効果は抜群。ある議員は吹っ切れたように語った。「小沢さんの言葉に納得した。もう腹はくくった…」
鳩山由紀夫元首相も足並みをそろえる。6日夜は都内の中国料理店で自らのグループの所属議員約20人と会食し、こう呼びかけた。
「とにかく同じ心構えで行動しよう!」
小沢氏は非小沢反増税の中間派勢力にも触手を伸ばし、面談の調整を急ぐ。6日夕、都内で開かれた小沢系のパーティーでは自信たっぷりにこう語った。
「国民の心がどこにあり、何を望んでいるか。これを正確にすばやくとらえ行動に移す感覚が大事だ」(坂井広志)
開き直った岡田副総理 民主中間派を逆なで
(産経新聞 6月7日(木)7時55分配信)
■「マニフェスト選挙勝因でない」「子ども手当2万6000円過大」
岡田克也副総理は6日の衆院社会保障・税一体改革特別委員会で、政権交代を実現した平成21年衆院選について「マニフェスト(政権公約)というよりは、政権交代を望む国民の大きな流れで勝った」と述べた。消費税増税を含む一体改革関連法案の修正協議に向け、自民党が撤回を求めるマニフェスト施策にこだわらない姿勢を強調したかったようだが、民主党の「マニフェスト原理主義者」の感情をまたも逆なでしてしまった。(桑原雄尚)
特別委では、先の衆院選で初当選した民主党の石井登志郎氏が子ども手当をめぐるマニフェスト違反について岡田氏をただした。
「マニフェストは方向性を示す羅針盤のようなものではないか。子ども手当2万6千円支給というように(詳細に)分かりやすくしてこうなってしまったことに大いに反省すべきだ」
すると岡田氏は「2万6千円が過大でなかったかといえば、過大であったというふうに思います」とあっさり認めた。さらに「国民の多くは政権交代を一度行うべきだという思いの中で投票した」と述べ、マニフェストが政権交代の原動力となったとの見方を否定した。
すっかり開き直ったかのような発言だが、かつては岡田氏こそが「マニフェスト原理主義者」だった。
自ら先頭に立って「マニフェスト選挙」を主導してきた。平成16年7月の参院選では党代表として「年金一元化」などを掲げ、民主党は小泉純一郎政権の自民党に初めて勝利した。「マニフェストと違う行動を取る無責任な議員は党内にいない」(16年1月)と言い切ったこともある。
ところが、政権交代後の菅直人政権末期では、幹事長として自民、公明両党と子ども手当などの見直し協議を主導。野田佳彦内閣でも一体改革を進めるため、「バラマキ」政策見直しの急先鋒(せんぽう)となった。
だが、岡田氏の答弁には、民主党中間派もさっそく反発。ある中堅は「『マニフェストが衆院選の勝因でない』というのは言い過ぎだ」と憤りを隠さない。会期末(21日)までの衆院採決に向け、首相が自民党との修正協議を急ぐ中、岡田氏の言動は造反者を増殖させかねない。
2012年06月06日
新聞各紙社説で小川敏夫前法相の指揮権発動発言批判。

『日本の防衛法制 第2版』(内外出版)を出版しました。防衛政策を語る上での必読書です。
ブログランキングに参加しています。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓
こちらをクリック
今朝の新聞各紙社説は、小川敏夫前法相の指揮権発動発言を取り上げている。
朝日、毎日、日経、東京などだ。
今回は、毎日社説を掲載する。
社説:指揮権発動発言 あまりにも軽すぎる
発言の背景や経緯を振り返ると、あまりにも軽すぎないか。
小川敏夫前法相が、陸山会事件の捜査報告書に検事が虚偽の記載をしていた問題に絡み「指揮権の発動を決意したが、総理の了承を得られなかった」と退任会見で述べたのだ。
野田佳彦首相との詳しいやり取りや具体的な指揮内容については明言していないが、会見での発言に照らすと、担当した検事の起訴を促す狙いがあったとみられる。
法相の指揮権は検察庁法に規定され、「個々の事件の取り調べや処分については検事総長のみを指揮することができる」と定められる。
検察の暴走や行き過ぎに歯止めをかける一方で、捜査現場への不当な政治介入を防ぐのが目的だ。
過去の発動は、1954年の造船疑獄事件の1例だけだ。この際、強い批判を浴びて、当時の犬養健法相は辞任した。内閣を揺るがしかねないほどの強い副作用があるだけに、歴代の法相は極めて抑制的に指揮権の行使と向き合ってきたのだ。
もちろん、法律に定められた法相の権利であり、検討するのは自由だ。前法相が会見で主張した「国民の検察への信頼が損なわれている時に、検察が身内に甘い形で幕引きすると信頼は回復できない」「検察が内部の事件で消極的なら、積極ならしめるのが法相の本来の姿だ」との考え方も理解できないではない。
では、それだけの準備をし、覚悟を持って臨んだのか。
捜査報告書の虚偽記載問題は、告発を受けて検察が捜査中だ。検察幹部によると、刑事処分やそれに伴う関係者の懲戒処分について、これまでのところ前法相に報告は上がっていなかったようだ。ならば、検察当局の報告を待つなり、自ら説明を求めるのが筋だろう。「不起訴の方針」といった報道が先行したのは確かだが、証拠の内容も精査せずに捜査が不十分だとは決めつけられまい。
さらに、国益や国家の安全に関わる重大事件ならばともかく、検事の捜査報告書虚偽記載という事案が、指揮権を発動するのに妥当なのか。
国民が参加する検察審査会には、強制起訴の権限が加わった。証拠があるのに身内に甘い処分をすれば、審査会が厳しく検察をチェックする。大仰に「伝家の宝刀」を抜かずに、そうした制度上の役割に期待することは考慮しなかったのだろうか。
前法相は、退任会見で突然、発動しなかった指揮権について発言し、首相が拒んだ経緯も明かした。こうした姿勢も一方的で、後味の悪さを残した。民主党政権では法相交代が続き、滝実法相で7人目だ。検察との緊張感を持ちつつも、まず腰を据えて政策に取り組んでほしい。
2012年06月04日
小川法相が指揮権発動だと!?

『日本の防衛法制 第2版』(内外出版)を出版しました。防衛政策を語る上での必読書です。
ブログランキングに参加しています。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓
こちらをクリック
辞めさせられた小川法相の退任会見にはビックリした。
小川法相が指揮権発動しようと。
以下、産経新聞の記事を掲載します。
指揮権発動を首相に相談 陸山会事件をめぐり小川法相 内閣改造
(産経新聞 6月4日(月)16時53分配信)
小川敏夫法相は4日の退任会見で、陸山会事件をめぐる虚偽捜査報告書問題について、検察の捜査に対する指揮権発動を野田佳彦首相に相談していたことを明らかにした。野田首相は了承しなかったという。
捜査報告書問題は、小沢一郎民主党元代表(70)の公判で発覚。元秘書、石川知裕衆院議員(38)を取り調べた元東京地検特捜部の田代政弘検事(45)が、実在しないやりとりを捜査報告書に記載したとして、市民団体からの告発を受けた検察当局が捜査しており、不起訴の方針を固めている。
小川氏は、指揮権発動を考えた経緯を「検察が身内に甘く、適当な形で幕引きとなれば、国民の信頼回復は得られないと心配した。そうした中で指揮権発動を決意したが、総理の了承を得られなかった。大変残念です」と説明。首相に相談した時期を「5月下旬」としたが、具体的な内容については「(指揮権発動を)しなかったことなので、控えたい」と述べるにとどめた。
ただ、検察当局が、田代検事について不起訴の方針を固めているとされることについては、「捜査報告書の中身と(石川議員の隠し録音の)録音内容を詳細に見れば、『記憶違いではない』という風に誰しもが思う」と否定的な見方を示した。
指揮権の発動は法相が検事総長に対して個別捜査や起訴、不起訴の判断に具体的な指示をすること。司法への政治介入につながるとされ、これまで発動されたのは、犬養健法相が行った昭和29年の造船疑獄の一度しかない。
小川氏は指揮権のあり方について、「検察が検察内部のことについて消極的である場合に、それを積極的にならしめることは、国民から選ばれた法務大臣の本来の姿ではないかと思う。そういう意味で今回は非常にふさわしいケースだった」と述べた
2012年06月01日
ワシントン情報「スペースXとイノベーション」(横江公美氏)
ブログランキングに参加しています。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓
こちらをクリック
ヘリテージ ワシントン ニュースレター No.43、横江公美・アジア研究センター 2012年5月31日
をお送りします。
スペースXとイノベーション
アメリカは、新しいイノベーションを手中に収めたようだ。
スペース・エクスプロレーション・テクノロジー社(スペースX)が5月22日無人ロケットの打ち上げ、そして、無事、25日国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功し、31日に計画されたとおりメキシコ沖にパラシュートで無事に帰還した。
民間が打ち上げた宇宙船がISSとのドッキングを果たしたのは世界初であり、アメリカのマスコミは連日、その意義を取り上げ、盛り上がっている。マスコミは「新しい歴史の始まり」とその功績を称えた。
というのも、政府が開発した技術を民間に開放することが、アメリカでは最大のイノベーションだからである。
最近の例でいえば、インターネットである。
軍が開発したアーパネットが民間に開放され、民間のプロバイダーが参入し、あっという間に世界中に広がった。GPS産業もしかりである。1990年代クリントン政権が衛星から届くGPS情報を一般公開したことからGPS産業が生まれた。
今回のスペースXの成功は、今までNASAが独占して開発してきた宇宙という空間に民間が参入し、宇宙開発は新しい時代に入ったことを意味する。
今回のスペースXのロケット打ち上げは、NASAからの委託で、Commercial Orbital Transportation Serviceというプログラムの一環である。NASAは、スペースXに4億ドルを前金として支払い、今後総額16億ドル支払われるとロサンゼルス・タイムズは報道する。
スペースX社は、さらに12件の契約をNASAと結んでいると言われている。
民間が宇宙に参入することは、政府にとっては最大のコスト削減を意味し、一方、産業界にとってはイノベーションを手に入れるチャンスとなる。
ヘリテージ財団の経済学者デレク・シザーズは「イノベーションの鍵は、民間の参入だ」と語る。というのも、米ソは軍拡と宇宙戦争を繰り広げてきたが、その技術の使用が国の経済につながるかどうかは、そういった技術をいかにビジネスに転用できるかどうかに関わってきた。この部分はまさに資本主義対共産主義の構図である。
この視点で見ると、アメリカにとって、スペースXのロケット打ち上げとISSとのドッキングの成功がいかに意味があることなのか、わかるであろう。
宇宙産業が次のイノベーション市場とにらみ、資金提供してきた人の存在も見逃せない。
スペースX社は、ペイパルの共同創設者イーロン・マスクである。他にもアマゾン社のポール・ベゾスが始めたブルーオリジン、マイクロソフトの共同創設者ポール・アレンのストラト・ラウンチ・システム、そしてグーグル社のラリー・ページとエリック・シュミッドがプラネタリー・リソースに投資する。
IT長者以外には、バージングループのリチャード・ブランソンが作ったバージン・ギャラクティック、元NASAのデビッド・トンプソンが作ったオービタル・サイエンス、ボーイング、アリアント・テックシステムズ社なども宇宙産業を睨んでいる。
アメリカでは、中小企業がイノベーションを起こすと言われるが、今回の宇宙産業イノベーションは、IT長者たちがベンチャーマネーを提供したベンチャー企業が主役である。
スペースXの打ち上げを支える背景を見ると、まさに、アメリカ型イノベーションの典型的な例といえよう。
宇宙のイノベーションは大成功を収めるのか、それとも経費の折り合いがつかず民間部門は縮小するのか。宇宙産業は、どのように発展していくのか目が離せない。
________________________________________
________________________________________
キャピトルの丘
5月18日、日本でもJAXAと三菱重工が協力し、韓国の衛星を打ち上げた。日本も偉業を成し遂げ、宇宙産業競争に入る足がかりを築いている。
この分野にも日米の違いが出ていて興味深い。
アメリカではベンチャー企業が「歴史を作った」のに対し、日本は大企業が先導する。
この違いは、NASAとJAXAの役割の違いやベンチャーマネーの環境、顧客の相違などが要因と考えられるが、最初の要因は、宇宙と軍開発で先端にいるアメリカと先端になれない日本との立場の差異にあるのではないかと思われる。この差は、成功についてのリアクションにも現れている。スペースXにプライドを持つアメリカと、ニュースの一つとして流れる日本。
日本が「もの作りの国」と自らを呼ぶのは、日本の環境が、アメリカ的イノベーションの環境とは異なっているからなのだろうか。
日米宇宙産業界の問題はコストであることは共通する。今回の日本のロケットは、アメリカのスペースXの2倍のコストがかかっていると言う。
スペースX社のコスト削減の最大の成功要因は、エンジニアを雇い、自前開発に拘ったことにあると言われている。
日本のロケット打ち上げの強みは、失敗の少なさだという。やはり、「もの作り」的強みである。
総額43億ドルと言われる宇宙産業を、ロシア、フランス、インドも狙っている。
宇宙開発を先駆けるアメリカと「もの作り」では定評のある日本がタッグを組めば、強力だ。
先端技術が重なり合う宇宙産業の国際競争とコラボレーションの今後も興味深い。
横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て2011年7月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓
こちらをクリック
ヘリテージ ワシントン ニュースレター No.43、横江公美・アジア研究センター 2012年5月31日
をお送りします。
スペースXとイノベーション
アメリカは、新しいイノベーションを手中に収めたようだ。
スペース・エクスプロレーション・テクノロジー社(スペースX)が5月22日無人ロケットの打ち上げ、そして、無事、25日国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功し、31日に計画されたとおりメキシコ沖にパラシュートで無事に帰還した。
民間が打ち上げた宇宙船がISSとのドッキングを果たしたのは世界初であり、アメリカのマスコミは連日、その意義を取り上げ、盛り上がっている。マスコミは「新しい歴史の始まり」とその功績を称えた。
というのも、政府が開発した技術を民間に開放することが、アメリカでは最大のイノベーションだからである。
最近の例でいえば、インターネットである。
軍が開発したアーパネットが民間に開放され、民間のプロバイダーが参入し、あっという間に世界中に広がった。GPS産業もしかりである。1990年代クリントン政権が衛星から届くGPS情報を一般公開したことからGPS産業が生まれた。
今回のスペースXの成功は、今までNASAが独占して開発してきた宇宙という空間に民間が参入し、宇宙開発は新しい時代に入ったことを意味する。
今回のスペースXのロケット打ち上げは、NASAからの委託で、Commercial Orbital Transportation Serviceというプログラムの一環である。NASAは、スペースXに4億ドルを前金として支払い、今後総額16億ドル支払われるとロサンゼルス・タイムズは報道する。
スペースX社は、さらに12件の契約をNASAと結んでいると言われている。
民間が宇宙に参入することは、政府にとっては最大のコスト削減を意味し、一方、産業界にとってはイノベーションを手に入れるチャンスとなる。
ヘリテージ財団の経済学者デレク・シザーズは「イノベーションの鍵は、民間の参入だ」と語る。というのも、米ソは軍拡と宇宙戦争を繰り広げてきたが、その技術の使用が国の経済につながるかどうかは、そういった技術をいかにビジネスに転用できるかどうかに関わってきた。この部分はまさに資本主義対共産主義の構図である。
この視点で見ると、アメリカにとって、スペースXのロケット打ち上げとISSとのドッキングの成功がいかに意味があることなのか、わかるであろう。
宇宙産業が次のイノベーション市場とにらみ、資金提供してきた人の存在も見逃せない。
スペースX社は、ペイパルの共同創設者イーロン・マスクである。他にもアマゾン社のポール・ベゾスが始めたブルーオリジン、マイクロソフトの共同創設者ポール・アレンのストラト・ラウンチ・システム、そしてグーグル社のラリー・ページとエリック・シュミッドがプラネタリー・リソースに投資する。
IT長者以外には、バージングループのリチャード・ブランソンが作ったバージン・ギャラクティック、元NASAのデビッド・トンプソンが作ったオービタル・サイエンス、ボーイング、アリアント・テックシステムズ社なども宇宙産業を睨んでいる。
アメリカでは、中小企業がイノベーションを起こすと言われるが、今回の宇宙産業イノベーションは、IT長者たちがベンチャーマネーを提供したベンチャー企業が主役である。
スペースXの打ち上げを支える背景を見ると、まさに、アメリカ型イノベーションの典型的な例といえよう。
宇宙のイノベーションは大成功を収めるのか、それとも経費の折り合いがつかず民間部門は縮小するのか。宇宙産業は、どのように発展していくのか目が離せない。
________________________________________
________________________________________
キャピトルの丘
5月18日、日本でもJAXAと三菱重工が協力し、韓国の衛星を打ち上げた。日本も偉業を成し遂げ、宇宙産業競争に入る足がかりを築いている。
この分野にも日米の違いが出ていて興味深い。
アメリカではベンチャー企業が「歴史を作った」のに対し、日本は大企業が先導する。
この違いは、NASAとJAXAの役割の違いやベンチャーマネーの環境、顧客の相違などが要因と考えられるが、最初の要因は、宇宙と軍開発で先端にいるアメリカと先端になれない日本との立場の差異にあるのではないかと思われる。この差は、成功についてのリアクションにも現れている。スペースXにプライドを持つアメリカと、ニュースの一つとして流れる日本。
日本が「もの作りの国」と自らを呼ぶのは、日本の環境が、アメリカ的イノベーションの環境とは異なっているからなのだろうか。
日米宇宙産業界の問題はコストであることは共通する。今回の日本のロケットは、アメリカのスペースXの2倍のコストがかかっていると言う。
スペースX社のコスト削減の最大の成功要因は、エンジニアを雇い、自前開発に拘ったことにあると言われている。
日本のロケット打ち上げの強みは、失敗の少なさだという。やはり、「もの作り」的強みである。
総額43億ドルと言われる宇宙産業を、ロシア、フランス、インドも狙っている。
宇宙開発を先駆けるアメリカと「もの作り」では定評のある日本がタッグを組めば、強力だ。
先端技術が重なり合う宇宙産業の国際競争とコラボレーションの今後も興味深い。
横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て2011年7月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。



