2009年03月

2009年03月25日

弾道ミサイル等に対する破壊措置への対処について

 弾道ミサイル等に対する破壊措置への対処については、自衛隊法の第82条の2に根拠規定があります。
 今回の北朝鮮の弾道ミサイル対処について、次の2つが考えられます。

(1)弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれがあると認められる場合
・意図は不明であるが、我が国に向けた弾道ミサイルの発射の具体的な兆候がある場合
・諸外国が弾道ミサイルの発射を具体的に示唆した場合など

(2)弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれがあるとまでは認められない場合
・事前に発射に係る情報が断片的にしか得られない場合
・事故によって制御を失った人工衛星や衛星打上げ用ロケットが予定の軌道を外れて我が国を含む地上に落下する可能性が生じた場合など

(1)の場合は、第82条の2の第1項、(2)の場合は第3項となります。

以下、条文を掲載します。

第八十二条の二 防衛大臣は、弾道ミサイル等(弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であって航空機以外のものをいう。以下同じ。)が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。

2 防衛大臣は、前項に規定するおそれがなくなったと認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、速やかに、同項の命令を解除しなければならない。

3 防衛大臣は、第一項の場合のほか、事態が急変し同項の内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため、防衛大臣が作成し、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、同項の命令をすることができる。この場合において、防衛大臣は、その命令に係る措置をとるべき期間を定めるものとする。

4 前項の緊急対処要領の作成及び内閣総理大臣の承認に関し必要な事項は、政令で定める。

5 内閣総理大臣は、第一項又は第三項の規定による措置がとられたときは、その結果を、速やかに、国会に報告しなければならない。

北朝鮮ミサイル問題対策本部からの政府への申し入れ

 昨日、与党 北朝鮮ミサイル問題対策本部が開催され、官房長官に北朝鮮ミサイル問題に関する「申し入れ」が行われました。
 以下が全文です。

平成21年3月24日
与党 北朝鮮ミサイル問題対策本部

与党として、政府に対し、北朝鮮のミサイル発射問題に関し、以下のとおり申し入れる。

一、政府は、北朝鮮が地域の平和と安定を損なうような行動をとらないよう、米・韓を始めとする関係国と協議を行うなど、最大限の努力をすること。

二、ミサイルが現実に発射された場合、政府は米韓両国との緊密な連携のもと、国連安保理において本問題が正式に協議されるよう、直ちに行動すること。

三、ミサイル発射が行われた場合、政府は対北朝鮮制裁(追加・延長等)の内容について直ちに検討し、速やかに公表すること。

四、政府は、ミサイルが発射された場合に生じうる不測の事態に万   全の備えをすること。このため、直ちに各省間、地方自治体および関係機関等との連絡・連携、対処方針の策定、国民に対する情報伝達等について態勢を整えること。また、弾道ミサイル防衛の整備強化を急ぐこと。

五、政府は、六者協議参加各国との連携のもと、北朝鮮に早期協議 
開催を働きかけ、拉致、核、ミサイルの早期包括的解決に引き続き粘り強く努力すること。

北朝鮮ミサイル問題と安保理決議との関係

 北朝鮮ミサイル問題が大きくクローズアップされています。
 その際、国連安保理決議との関係が大事です。
 以下、関連部分(平成21年3月外務省作成)を掲載します。

国連安保理決議関連部分(抜粋)

〇北朝鮮のミサイル発射に関する安保理決議第1695号
(2006年7月15日、全会一致で採択)

「北朝鮮が、弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止し、かつ、この文脈において、ミサイル発射モラトリアムに係る既存の約束を再度確認することを要求する。」
(主文段落2)


〇北朝鮮の核実験表明に関する安保理決議第1718号
(2006年10月14日、全会一致で採択)

「北朝鮮に対し、いかなる核実験又は弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求する。」(主文段落2)
「北朝鮮が、弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止し、かつ、この文脈において、ミサイル発射モラトリアムに係る既存の約束を再度確認することを決定する。」
(主文段落5)
「また、北朝鮮が、その他の既存の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄することを決定する。」(主文段落7)

2009年03月24日

防衛大学校卒業式における浜田防衛大臣訓示

浜田 本日、ここに、麻生太郎内閣総理大臣のご臨席のもと、防衛大学校卒業式を挙行するに当たり、御挨拶申し上げます。晴れて卒業式の日を迎えられた卒業生諸君、卒業おめでとう。そして、今日のこの日を心待ちにされていた御家族の皆様方に、心からお祝いを申し上げます。

 諸君は、ここ小原台の地において、入校以来、勉学、訓練等に励み、本校での教育の伝統である「広い視野、科学的思考力、豊かな人間性」の涵養に努められたことと思います。そして、本日、ここに全教育課程を修了した諸君の規律正しく、凛々しい勇姿に接し、防衛大臣として心強く、頼もしく思います。

 さて、今日の安全保障環境は、伝統的な国家間の関係から新たな脅威や多様な事態に至るまで、様々な課題に直面しております。また、北朝鮮の核やミサイルの問題など、我が国周辺の安全保障環境は引き続き厳しいものがあります。

 このような中、我が国は、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応すべく、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を着実に整備しなくてはなりません。
 また、日米安全保障体制を基盤とする日米同盟は、我が国のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎をなすものであり、日米同盟の実効性の更なる向上に努めていかなければなりません。

 さらに、国際社会の平和と安定に向けた取組に対し、国際社会の責任ある一員として、我が国も人的貢献を行っていく必要があります。
 現在、自衛隊は、インド洋における補給支援活動、ゴラン高原、ネパール及びスーダンにおける国際協力業務を実施し、国際社会から高い評価を得ています。また、先日、ソマリア沖・アデン湾における海賊への対応として海上自衛隊の護衛艦を派遣したところです。

 本科の卒業生諸君は、本日をもって、自衛官としての記念すべき第一歩を踏み出すわけであります。諸君がこれから歩んでいく道には、多くの課題があり、多くの困難が待ち受けているかもしれません。しかし、その道は、我が国の安全と国民の安心のための崇高なものであり、世界の平和に貢献するものでもあります。
 諸君は、本校において教養科目の他に、防衛学や訓練といった幹部自衛官として必要な教育訓練をやり遂げ、本日ここに晴れて卒業の日を迎えたことは、感無量であろうと思います。諸君は、指揮官あるいは幕僚となって任務遂行の重責を担うこととなるわけですが、本校において学んだことを基礎として、今後も不断の精進を重ね、様々な課題に取り組み、いかなる難局をも克服し得る、国民に信頼される精強な自衛隊を作り上げていただきたいと思います。

 研究科を卒業される諸君は、本校において習得した知識と能力を活かし、自衛隊の技術分野の近代化と質的な向上や、近年、益々多様化、国際化する自衛隊の任務に活かしていただきたいと思います。
 諸外国からの留学生諸君には、言語や習慣等の違いを克服し、立派な成績で本日、卒業の日を迎えられたことに敬意を表し、心からお祝い申し上げます。諸君が、本校で学ばれたことを糧として母国において大成され、また、本校で培った友情と信頼を大切にし、貴国と我が国との友好関係をより一層促進するための架け橋となられることを希望します。

 最後に、日頃から防衛省、自衛隊、防衛大学校に対して多大なる御支援・御協力を賜っております来賓各位に対し、深く感謝申し上げ、私の訓示といたします。

 平成二十一年三月二十二日  防衛大臣 浜田 靖一

防衛大学校卒業式来賓代表祝辞 岡本行夫氏

ぼう大 本日、防衛大学校を卒業し国家の防衛と国際平和の確保という最も重要な任務に就かれようとしている皆さん、おめでとうございます。さきほど五百旗頭校長から卒業証書を受け取られた皆さん一人一人の顔を見ながら、私も熱い思いにかられていました。崇高な任務への出発の瞬間に立ち会わせてもらって大変に光栄です。

 我が国の防衛政策の基本は「抑止」ということです。抑止とは、仮にも外国が我が国を侵略しようとの誘惑に駆られても、第一に侵略に対する自衛隊の高い即応力、第二に日米安保条約の下での米国の報復意思、その二つを見てどの国も侵略行動をした場合の自国への損害の大きさを思い知り、どの国であっても我が国への攻撃を思いとどまるという仕組みです。

 第一の自衛隊の即応力について申し上げます。現在のように平和が長く続いている世界の中で、外国からの万一の侵略行為に備える緊張感を保ち続けることは簡単ではありません。しかしそれが皆さんの職業上の使命です。全国民の安全がそれにかかっています。

 第二の米国の報復行動について申し上げます。重要なことは、実際に米国が日本のために報復行動をとるということよりも、「アメリカは必ず日本のために報復するだろう」と周辺諸国が判断し続けるような日米関係を作っておくことです。つまり、実体以上に「印象」が重要なのです。経済や社会面まで含めた緊密な日米関係の維持が継続的に必要なのはそのためです。

 2001年9.11テロの1週間後、横須賀から一時的に退避することになった米第7艦隊を海上自衛隊の護衛艦が警戒しながら並走し、東京湾を南下していきました。その映像は米国内で繰り返し放送され、米国民の大きな感動を呼びました。そのような緊密な日米同盟の姿を世界中に見せることが、日本を防衛するとの米国の意思について周辺諸国に一片の疑念も抱かせない根拠になるのです。

 以上のことは、皆さんにとって自明のことかもしれません。
 その上で本日申し上げたいことは、世界に通ずる平衡感覚を持ってほしいということです。自分と周囲しか見ずに独り善がりになってはならないということです。日本がどのような環境の中に置かれ、どのような立ち位置にあるかを大きな視野から見つめていただきたい。

 そのためには、まず教養が必要になります。防衛大学ですでに十分な研鑽を受けた皆さんですが、幅広い知的好奇心をもって仕事に直接に関わりのない知識や思想も吸収し、深い教養を身につけて初めて自分の仕事についても平衡感覚を持つことができるのです。

 世界に通ずる平衡感覚というものは、特に日本のような国にあっては意識的に努力をしないと形成できません。現在の世界の特徴は、「多様性」ということです。この点、日本は、ごく一部の少数民族を除けば基本的に単一民族、単一文化、類似思考の国家です。このような国で、世界のダイナミズムと波長を合わせることは自動的には起こりません。

 世界は大きく変化しました。様々な国家体制や人的背景や価値観がひとつの方向に収斂しつつあります。グローバリゼーションと呼ばれる現象です。これまでは、自由と民主主義を旗印に掲げた国家群とその他の世界との対立軸がありました。富める先進的な国々と貧しい国々の対立軸もありました。

 しかし、いま世界は、各国が、それぞれの独自性を保持しながらも、ひとつの大きな塊りに融合しつつあります。世界の多くの国々が、自由、民主主義、人権、経済的豊かさを既に共有し始めているのです。

 つまり、日本が自由、民主主義という価値と、世界第2位の経済規模という理由だけで重要な地位を占めることができた時代は終わったのです。かっこいい言葉ではなく、具体的な国家の生きざまと構想力が問われているのです。皆さんの役割がこれから重要になる理由はそこにあります。日本は多様な世界と多様な関わりをもっていかなければならない。米国を中心点に置き、そこからの同心円として全ての世界との関係を考えていればそれでいい、という時代ではなくなりました。日本独自の平和構築努力ということについて、皆さんにぜひ考えてもらいたいのです。

 新しい世界の中で、残念ながら日本の姿と役割は縮んでいます。
 これは日本の中にいてもわかりません。この2、3年、国際会議では日本の名前が出ることがめっきり減りました。つい10日前も、ベルリンで世界の専門家を集めてグローバル化時代の安全保障と経済体制を議論する会議が開かれましたが、ついに日本の名前は一度も言及されませんでした。

 中国やインドなどの存在感が急速に大きくなっていることもありますが、日本自身の姿勢にも問題があります。財政事情が悪化するなか、日本の政府開発援助予算は頂点であった1997年に比べて、42%も減りました。残念ながら、国連平和維持部隊への参加も、諸般の制約から数十人のレベルにとどまっています。わずかに皆さんの先輩たちがインド洋とアデン湾での国際共同行動に貴重な貢献をしてくれていますが、我々は国際平和のためにもっともっと多くのことをなさねばなりません。

 我々の目の前には今までと全く変わった景色があります。世界はグローバリゼーションが進む一方で、百年に一度という経済危機に襲われています。破綻国家も出ています。世界の統合と、一部国家の落ちこぼれが同時に起こっているのです。新興国の目覚ましい発展の裏では、人々の貧富の格差が拡大しています。テロも減りません。そうした中で、どのような日本の姿や役割を将来に向かって描くか。

 不断に国際情勢に目を向けてください。不断に日本のあり方に思いを馳せ、時代の戦略を考えてください。

 新しい世界の中で、国を守る皆さんの任務は圧倒的に重要です。自衛隊が国の安全を確保することによって、初めて国民は自信と安心感をもって国際競争の中を生き抜いていくことができるのです。勇気を持って新しい時代に立ち向かってください。
皆さんの任務に敬意を表して、私の祝辞とします。

2009年03月23日

防衛大学校平成二十年度防衛大学校長 五百籏頭 眞 式辞

ぼう大防衛大学校平成二十年度卒業式 式辞

 防衛大学校本科第五十三期生四百四十五名、理工学研究科前期課程六十二名、後期課程第十名、並びに総合安全保障研究科二十名の諸君が、本日それぞれの課程を修め、ここ小原台の生活に別れを告げ飛び立つ時を迎えました。

 本校の全教職員・学生とともに、心より祝いたいと思います。おめでとう。
 諸君をこれまで育て、支え、励ましてこられた御家族の皆様には、とりわけ感慨深いものがあることと拝察し、心からなる祝意を表します。
 本日、この式典に、国務多端の中、麻生内閣総理大臣、浜田防衛大臣のご臨席を賜りましたこと、さらには小泉元内閣総理大臣、元総理大臣補佐官であり本日祝辞を賜ります岡本行夫氏をはじめ、内外多数の来賓各位にご参列いただきましたことは、誠に光栄であり、厚く御礼申し上げます。

 また、本日は、防大を昭和四十一(一九六六)年に卒業し長い任務を全うされた十期生の大先輩たち約二百三十名がご婦人を伴って、ホームカミングデーの良きしきたりにより御参集下さいました。防大十期生ご夫妻の永年の功に敬意を表するとともに、これから新たな任務につく後輩の卒業生を励まして下さることに感謝したいと思います。

 防大は創設の時より学術を重じ、今日では理系・文系双方の大学院を持つ、世界にめずらしい士官学校であります。本日九十二名の研究科生を送り出し、一人ひとりに修了証書を手渡せたことは、私どもにとって大きな喜びであります。ここで手にした知識の力が、諸君の生涯にわたる立派な行軍、航海、もしくは飛行を支えるものと期待しています。

 本日の卒業生には、世界各国からの留学生二十三名が含まれています。言葉と文化のハンディを越え、ここ小原台での勉学と訓練を全うしたことを祝いたいと思います。とりわけ、二人の留学生、タイのプラウィット・トンプーン学生とベトナムのファン・フィ・ズン学生が日本人にとっても難しい学科褒賞の栄誉に輝いたことに敬意を表します。今後の母国での御活躍とともに、ここで培った友情を大切に、母国と日本との架け橋として働くことを祈念致します。

 本日卒業を迎えた本科五十三期生は、昭和の終り、冷戦末期に生を享け、多くが9・11テロを中学時代に、イラク戦争を高校の時に目撃したことでしょう。諸君が防大に入った時、陸と空の自衛隊はイラク特措法によってイラクに派遣されており、海上自衛隊はテロ特措法によってすでに四年にわたりインド洋での給油活動を続けていました。そして卒業を迎える今日、内閣の決定により海自の艦艇がアデン湾に向かっています。諸君がもの心ついた時から、自衛隊は海外でのPKO活動を重ねており、内外での災害救助活動に自衛隊が赴くのは日常的事実となっていました。

 冷戦後の動乱と危機が相次ぐ中で、自衛隊はさまざまな危険から国と国民を守るために多様な活動を求められる時代となりました。そして陸海空の自衛隊は、命ぜられた新たな任務を立派にやり遂げて参りました。平成十九(二〇〇七)年一月の省移行と国際平和協力活動の本来任務化は、国が防衛省・自衛隊にそうした役割をしっかり担うよう求めたものといえましょう。

 しかしながら歴史は逆説に満ちています。省移行の前後から衝撃的な自衛隊関係の不祥事が頻発し、防衛省・自衛隊は厳しい社会的批判にさらされました。一方で自衛隊が有効に機能することを求められながら、他方でそのあり方に疑念がつきつけられる二律背反的な事態の中で、諸君は防大時代を送ってきました。諸君のうちにもこの状況へのとまどいがあるかもしれません。

 とまどう必要はありません。事態が錯綜すればする程、重要なことは基本を大切にすることです。失敗を糾明しそこから学びつつも、原点に立ち帰って基本的姿勢を確かにすることです。幸いにも、防大には初代校長槇先生の時代より築かれたすばらしい伝統があります。軍事専門家としての技量を築くに先立って、人としての共通の土台「広い視野、科学的思考、豊かな人間性」を培うことを槇先生は重視されました。

 学生諸君自身が作りあげた「廉恥、真勇、礼節」の綱領もまた基本姿勢を明らかにするものです。名誉を重んじ、身を高く持して国防の任務を全うする姿勢を語っています。槇先生の時代から自衛隊の変らぬ責務は、つまるところ二つです。自衛隊が安全保障を全うするため有効に機能する組織であること、そして民主主義社会の原則であるシビリアン・コントロールを自らの信念において進んで受け入れ内面化した規律正しい組織であること、の二点に集約されます。この基本を踏まえつつ、諸君は胸を張って自らの道を歩んで下さい。

 卒業後の諸君は、陸海空の幹部候補生学校に進み、そこで一般大学からの同級生とともに、それぞれ各要員の訓練を開始することになります。大切なことは、どんな職種であれ、その職種なしに日本の安全が成り立たないことを認識し、一つの場、一つの任務に全力をあげて取り組む姿勢です。「一所懸命」という言葉があります。一つの所に命を懸け、自分の持ち場を守り抜く。それへの没頭が若い士官時代を支える精神と言えましょう。

 長ずるとともに任務は拡がりを持つに至りますが、諸君がここ小原台で培った正面から立ち向かって行く「持ち場を捨てるな」の精神をもって、試練を一つひとつ超えて行くことを期待します。

 五十三期生の諸君は、防大史上はじめて百一キロ行軍をやり遂げた学年です。諸君の健闘を祈ります。

 本日ここにお集まり下さり、励まして下さる多数の方々に改めて御礼を申し上げるとともに、本日、新たな出発の途につく諸君が、二十一世紀の困難な安全保障をその全身をもって立派に担うことを確信し、式辞といたします。

平成二十一年三月二十二日    防衛大学校長  五百籏頭 眞

防衛大学校卒業式における麻生総理大臣訓示

ぼう大防衛大学校卒業式における内閣総理大臣訓示

 本日、防衛大学校卒業式が挙行されるに当たり、自衛隊の最高指揮官として、一言申し上げます。
 卒業される諸君、おめでとう。
 諸君のきりりと引き締まった表情、キビキビした立ち居ふるまいに接し、誠に心強く、頼もしく思います。
 五百旗頭学校長をはじめ、教職員の方々に敬意を表します。あわせて、日頃から防衛大学校に、ご理解とご協力をいただいている、ご来賓の皆様に、心より感謝申し上げる次第です。

 今日の国際社会は、伝統的な国家間の課題から、テロなどの新たな脅威や、多様な事態に至るまで、様々な課題に直面しています。
 特に、アジア太平洋地域においては、北朝鮮の核開発・弾道ミサイルの問題などの、諸課題が存在しています。
 このような環境の中、日本の平和と安定を確保するためには、日米同盟のさらなる強化とともに、日本自身の防衛努力が極めて重要であり、自衛隊への期待は、ますます高まっています。
 こうした国民の期待を担う自衛隊。本日、その第一線に、勇躍しておもむこうとしている諸君に、はなむけの言葉を贈りたいと思います。

 その第一は、この防衛大学校で学んだ人間教育を糧として、優れた指揮官になってほしいということです。
 指揮統率の基本は、指揮官が、上官の信頼を得るとともに、部下の尊敬を受けるに足る、豊かな人間性を有していることにある。私はそう考えています。
 こうした人間性を有する指揮官が率いる部隊が、いかに大きな成果をあげてきたかは、諸君の先輩が率いる部隊の活躍ぶりをみれば分かります。

 例えば、災害派遣の現場で、指揮官の統率の下、危険を顧みず、救援活動にあたる自衛隊。被災地の住民のみならず、報道などを通じてその活躍を目にする、多くの国民から高い信頼を得ています。
 イラクにおいても、自衛隊は、ただ一人の犠牲者も出さず、公共施設の改修、輸送支援など、多岐にわたる復興支援活動を成し遂げ、イラクの、そして各国の人々から称賛を受け、無事帰国しました。

 諸君の前途には、幾多のけわしい困難と、難しい任務が、待ちかまえているでしょう。
 諸君には、こうした先輩の経験に学びつつ、不断に人格を陶冶してもらいたい。そして、いざというときに、ここ防衛大学校で、そしてその後の経験を通じて、培った力を、いかんなく発揮してもらいたい。
 そうした、諸君ひとりひとりの力が、日本の防衛と国際社会の平和と安定にとって、必要不可欠なものであると、私は信じています。

 その第二は、「国際社会の平和と安定は、日本の平和につながっている、ということを強く認識してほしい」ということです。
 私の祖父、吉田茂は、この防衛大学校設立に、深いかかわりを持っております。昭和三十二年、第一回卒業式に、元内閣総理大臣として招かれた際の祝辞の中で、吉田は、大意、次のように述べております。

「諸君は、単に自国や自国民の利益を守るというような狭い考え方」ではなく、「人間として、世界の、人類の自由までも守るという広い視野に立って、任務を遂行されたい。」
 あれから五十年余りを経て、グローバル化の進んだ現代では、国際社会の平和と安定が、日本の平和と安全の確保に、より密接にかかわっていることは、言うまでもありません。
 私は、国際社会の平和と安定のため、生き生きと活動する、諸君の先輩たちに接する貴重な機会を、幾度か得たことがあります。
 イラクでの復興支援活動を終え、まっ黒に日焼けした顔で帰国した陸上自衛官。
砂塵舞うクウェートの地で、黙々と輸送任務に励む航空自衛官。
 灼熱のインド洋における補給支援活動に献身した後、自信に満ちた顔で帰還した海上自衛官。
 そして、去る十四日、海賊対策のため、遠く一万二千キロ離れた、ソマリア沖に向けて出航した海上自衛官。
 自衛隊の諸官が各方面で活動する成果は、世界の人々の日本に対する意識を高め、確実に日本の国益につながっています。

 まさに、自衛官は、我が国外交の重要な部分を担う「外交官」であると言っても過言ではありません。
 諸君は、「日本の防衛」と「国際社会の平和と安定」は、表裏一体をなすという、グローバルな視点を常に忘れず、これからの任務に励んでもらいたいと思います。
 日本の独立と平和を守る上で、国民が最後のよりどころとするのは、防衛省・自衛隊です。
 諸君には、シビリアンコントロールという考えとともに、「常に国民とともにあり、国民を守り続けていく」という自衛隊の原点を忘れないでもらいたい。
 そして、困難を乗り越える勇気を持って、任務を遂行し、国民の信頼と期待に応えてもらいたいと思います。

 諸外国からの留学生の皆さん、防衛大学校での留学を通じて育まれた友情の絆を大切にし、祖国と国際社会のために活躍されんことを期待します。
 最後に、諸君の今後の活躍を祈念し、私の訓示とします。
 あらためて、諸君、卒業おめでとう。

 平成二十一年三月二十二日  内閣総理大臣 麻生 太郎


ソマリア沖海賊対策『月刊・自由民主』

自由民主 『月刊・自由民主』4月号は、ソマリア沖海賊対策の特集です。
 それには、与党海賊対策等に関する調査団報告があり、僕が撮った写真やジブチ訪問の際にゲレ大統領と中谷元調査団長他が会談を報じた現地新聞などが掲載されています。
 また、どうして海上保安庁がソマリア沖の海賊対策に行けないのか?といった点をわかりやすく解説した「海賊対策に関するQ&A」も掲載されています。
 是非ともご覧ください。

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