遠藤誉

2015年04月13日

AIIB、紅い皇帝の裏事情(遠藤誉氏)

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 中国がアジアインフラ投資銀行AIIBを主導する主たる動機は、アジアにはインフラ建設の高いニーズがあるからだが、紅い皇帝は実はインフラ関連国有企業の生産能力過剰による「在庫処理」をしないと危ない裏事情を抱えている。

◆インフラ建設関連国有企業の生産能力過剰問題

 中国がAIIBを主導する大義名分は、アジアにおけるインフラ建設のスケールの大きさと要求されているスピードだ。
 スケールとしては2010年〜2020年の11年間で8兆ドル(約970兆円)のニーズがあり、それらは開発途上国であるため迅速な投資を必要としている。
 しかしこれまでの日米主導のアジア開発銀行は、それだけの資金量がなく、また融資審査の際のハードルが高く(だからこそ信用性が高いのだが)、アジアの巨大なニーズのスケールとスピードを満たすことができない。

 ビッグなビジネスチャンスを他の国に先を越されたくないという心理作戦を駆使し、「紅い皇帝」習近平は、したたかに独り勝ちを決めているように見える。

 ところが、「紅い皇帝」にも、実はお家の事情があった。

 それがインフラ関連国有企業の生産能力過剰問題である。

 リーマン・ショック以降、中国ではインフラ、設備投資を次々と押し進めるなど、大規模な景気刺激策を行ったため、関連の大型国有企業は大儲けし、また天井知らずの投資が続いた。

 90年代から始まっていた高速鉄道建設だけでなく、高速道路やマンション建設にも拍車をかけ、鉄鋼、セメントの生産能力を高めていった。その結果、激しい投資競争を招いている一方で、実は今では中国国内市場が供給過多に陥ってしまっているのである。

 たとえば鋼鉄関係の「生産能力利用率」は72%、セメントは73.7%、電解アルミニウムは71.9%など、いずれも需要が国際的な通常の需要供給率ラインより低くなっている。
 このまま放置すると、市場のメカニズムにより淘汰され、生産能力過剰の国有企業は倒産の憂き目に遭うであろうことが国家の大きなリスクとして横たわっていた。

 これらの業界を担う国有企業には、中国交通建設、中国建設、中国電建(中国電力建設集団)、中国中鉄、中国鉄建などがあるが、これらが関連市場の利益のほとんどを独占しているので、もし倒産すれば、中国経済に与える打撃は計り知れない。

 それは改革開放後の80年代に、当時の「国営企業」が相次いで倒産した時のような、巨大なドミノ倒し的連鎖反応をもたらす危険性を孕んでいる。

 すぐにも手を打たなければ、社会構造を崩壊させるほど危ない、喫緊の課題を抱えているのだ。

 そこで、2013年10月6日、国務院(中国人民政府)は「生産能力過剰問題を解決するための指導的意見」(国発「2013」41号文書)を発布した。

 その文書には、このままいけば倒産して「大量の失業者を出す危険性」や「倒産による巨額の不良債権発生の危険性」などがあるといったことが正直に書いてあり、社会の不安定(崩壊)を招くリスクに関しても注意を喚起している。

 景気刺激が行き過ぎて、さらに投資して儲けようとする地方政府やその傘下にある国有企業、銀行、土地開発業者など利権集団として固まっており、反腐敗運動などを激しく進めて威嚇しているが、なかなか中央政府の思い通りにならないところもある。そこでこの国務院文書は、「盲目的な投資を慎め」と、全国の「各省・各自治区・各直轄市人民政府およびその直属機構」に向けて警告しているのである。

◆国務院文書と同時にAIIB設立を宣言

「紅い皇帝」習近平は、国務院に国発「2013」41号指令を発布させると同時に、自分自身は同じ月の10月2日に、東南アジア歴訪中にAIIB設立構想を発表した。
 このタイミングから見ても、AIIB設立の切羽詰まった動機が、中国のインフラ関連国有企業の生産能力過剰にあることが如実に見て取れる。

 今年、4月3日には、李克強・国務院総理が「中国設備の海外進出と生産力の国際協力の推進に関する座談会」を主催し談話を発表した。

 李克強は談話の中で、「中国の設備の海外進出を加速させ、生産力の国際協力を推進せよ」と呼びかけている。

 早い話が、中国の生産能力過剰となっている国有企業の「在庫処理を早くしてしまいましょう」ということなのである。

 その意味の「在庫処理」は近隣アジア開発途上国の高速鉄道建設、高速道路建設、都市化建設などの領域を主たるものとしているが、それにとどまらず原子力発電に関する売り出しも含まれている(これもまた大変なプッシュ・ファクターを秘めているが、今回はインフラ圧力だけに、一応、話を絞ろう)。

 李克強の談話の中で最も注目されるのは「金融サービスも歩調を合わせるべきだ」という言葉である。

 これらの動きから、AIIB設立の裏には、中国の「待ったなし」の課題があったことが、ご理解いただけるだろう。

◆2.7億の流動人口解決のための都市化計画

 中国は2014年3月、「新型国家城鎮化計画」(2014年〜2020年)を発表した。「城」は「都市」という意味で「鎮」は日本で言うなら「町」程度のまとまった行政区分である。「城鎮化計画」とは、日本語的に分かりやすく言えば「都市化計画」と訳した方がいいだろう。

 中国には2.7億人に上る流動人口がおり、その定住先を決めて戸籍を与え、社会サービスを受けられるようにしなければならないという課題がある。そのために習近平政権は2020年までに3600万棟の低価格高層アパートを建てると宣言している。そこにもAIIBとはスケールが違うが、一定の「はけ口効果」はある。

 そのため地方政府によっては市場に楽観的な期待を寄せて、インフラ関係に対してさらに投資していこうとする傾向(欲求)がある。しかし、それはさらなるインフラ関係国有企業の悪性市場競争を生むので、投資をひかえ、「投資するなら国際金融と歩調を合わせて」と、投資のプッシュ・ファクターをAIIBに向けようとさえしているのである。

「紅い皇帝」習近平は、2015年内にAIIBは動き始めると宣言しているが、参加申請期限を設けて心理的に煽り、ここまで勢いをつけて急ぐ理由は、このような「火がそこまで来ている」ほどの、お家の裏事業があるからなのである。

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士



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2015年04月10日

なぜこのタイミングで中越共産党首脳会談?(遠藤誉氏)

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 ベトナム共産党のグエン・フーチョン総書記は7日、習近平総書記と会談した。カーター米国防長官訪日とフィリピンのTPP不参加宣言を受けて、AIIBを中心とした中国主導経済圏への抱え込みを図る紅い皇帝の権謀術数を読み解く。

◆人民大会堂で熱烈歓迎されたベトナム共産党総書記

 習近平国家主席は7日、中国共産党総書記として人民大会堂でベトナム共産党の阮富仲(グエン・フーチョン)総書記と会談した。会談会場には一つ星のベトナム国旗と五つ星の中国国旗(五星紅旗)が真っ赤に並べられ、熱気にあふれていた。

 ベトナム側はベトナム共産党政治局委員の3分の1の高級党幹部を従え、中国側は習近平総書記・国家主席、李克強・国務院総理、張徳江・全人代常務委員会委員長、兪正声・全国協商会議主席などのチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員会委員)を始め、20名ほどの関係党幹部が顔をそろえた。

 その様子は中央テレビ局CCTVでくり返し報道され、中国がいかに南シナ海に関わる係争を超越して、経済的に南シナ海沿岸諸国と緊密に連携し平和裏に発展しようとしているかを、これでもかとばかりにアピールした。

 この熱気に満ちた会談場面報道のあとに、カーター米国防長官が訪日し、東シナ海および南シナ海における中国の脅威に対する日米安全保障問題を語っている様子を批判的に報道するという、実に計算し尽くされた報道効果は、紅い皇帝の思惑を存分に映し出している。

 中越両共産党総書記は、この会談において以下の文書に署名した。

<ベトナム共産党と中国共産党の協力計画(2016-2020年>

<ベトナム社会主義共和国と中華人民共和国引き渡し協力協定>

<ベトナム国防部と中国国防部の間の『国連平和維持領域協力に関する備忘録』>

<ベトナム計画投資部(省)と中国国家飯店改革委員会の間の『陸路インフラ設備協力工作組に関する備忘録』>

<ベトナム国家銀行と中国人民銀行の間の『貨幣金融協力工作組職権範囲』について>

……などなど、数多くの協力関係が締結された。

 結果的にひとことで言うならば、「昨年の南シナ海における掘削問題に関する紛争はあったものの、互いに平和的に解決し、経済を通して友好関係を発展させていこうとしている」ことをアピールしようというもので、ベトナム側はさらに中国が提唱する「海の新シルクロード構想」に協力することを誓った。

 つまり、中国側としては、「カーター米国防長官が訪日して南シナ海の安全保障に関して中国を牽制し、日米同盟を強化しても、こちらは平和裏に互いの国が話し合っているのだから、日米の主張は適切でない」と言いたいわけだ。

 紅い皇帝の権謀術数は、ベトナムに留まらない。

◆フィリピンのTPP不参加表明に時期を合わせたタイミング

 中国がAIIB参加国申請締め切りを3月31日と区切ったその前日(3月30日)、フィリピンは米国が提唱するTPPに関して「不参加」の意思を表明した。AIIBに参加して、米国との関係より中国との関係を重視すると宣言したのだ。

 このタイミングを見て、中国はベトナム共産党総書記の訪中を受け入れた。

 実は昨年、ベトナムでは激しい反中デモが繰り広げられたこともあり、中国は当初、必ずしもグエン・フーチョン総書記の訪中を熱烈歓迎するムードではなかったのだが、ベトナムもなかなかにやる。

 なぜなら、ベトナム戦争で米国と対立していたベトナムは、今年で米越国交正常化20周年記念を迎えるに当たって、グエン・フーチョン総書記が訪米を検討していることをほのめかしたのだ。

 米越が先に会談したのでは困る。

 ここは何としてもAIIBの勢いに乗って、ベトナムを中国側に惹きつけておきたい。

 フィリピンがTPP不参加を表明したことは、つまり、アメリカよりも中国主導の経済圏に乗っかった方が得だとフィリピンが判断したということになる。

 だとすれば、イギリスがAIIB参加を表明したことにより、一気にG7先進国を切り崩したように、ここでベトナムをしっかりつないでおけば、南シナ海問題に関しても、フィリピンを中国側に引き寄せることができる。

 領土問題なので、そう簡単に運ぶはずもないが、しかし、ふだんは米軍とフィリピン軍との共同軍事演習を激しく非難しているCCTVが、中越共産党首脳会談報道の前後は、その批難が心なしか抑えられ、むしろフィリピンのTPP不参加がクローズアップされて報道されていた。 そこに、「紅い皇帝」習近平のニンマリとした権謀術数が透けて見えるのである。

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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カーター米国防長官訪日で日米を非難する中国(遠藤誉氏)

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 カーター米国防長官の訪日を受けて、中国は日米批判を強めている。
 米国の軍事予算削減と中東問題という弱みを日本に肩代わりさせて、日本の軍国主義への道を助長し、米国のアジア回帰を果そうとしていると。

◆中国中央テレビ局CCTVが「メディアの焦点」で特集番組

 中国の華春瑩(かしゅんえい)外交部報道官は8日、カーター米国防長官の訪日と発言を受けて、厳しく日米を批判している。というのも、カーター長官がアジアにおける領土問題が軍事化することへの懸念を表明し、中国が南沙諸島で行っている岩礁の埋め立てに関して軍事化する可能性があると懸念しているからだ。

 華報道官は定例の記者会見で「米国は、中国が関係国と対話を通して問題解決に当たろうとしている努力を尊重すべきだ。責任ある話をし、責任ある行動を取るべきである」と非難した。

 中国の国営テレビ局である中央テレビ局CCTVは、「メディアの焦点」で、カーター長官訪日に関する特集番組を組み、各国の専門家の意見や報道を紹介した。

 それによれば、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」は、おおむね以下のように解説しているとのこと。

――米国はアジア回帰(リバランス)を狙っている。
 しかし近年来の米国の景気低迷と美国民の戦争への嫌悪感から、米国は軍事予算を削減し、その肩代わりを日本にさせようとしている。米国自身の軍事力を高める代わりに日本に集団的自衛権を解禁させ、新たな日米防衛協力ガイドラインを見直そうとしている。それは安倍政権が渇望してやまない軍事力拡大にゴーサインを出すことにつながる。米国は中東問題からも抜け出せずにいるので、日本は喜んで米国の猟犬になろうとしている。これは日米両国にとって互いに都合のいいことだ。


 一方、日本の共同通信の報道によれば、7日に公開された日米世論調査では「日本がもっと積極的に軍事拡張に参加すべきだと主張した日本国民の割合は23%」で、「同様の主張を示した米国民の割合は47%だった」と、中国メディアは報道している。

 カーター長官の訪日分析に関しては、日本のメディアよりも関心が高く、また詳しい。

◆尖閣諸島に関して

 日本の外務省のホームページによれば、日米双方は「尖閣諸島への日米安保条約の適用を含む米国の我が国(日本)に対する防衛コミットメント(公約、約束)を再確認した」とのこと。

 しかしその米国、「尖閣諸島の領有権に関しては係争国のどちらの側にも立たない」と宣言している。2012年9月に発表された米議会調査局(CRS)リポート「尖閣諸島の領有権係争」も、2013年1月に発表された同じタイトルのリポートも、「米国政府は、ニクソン政権が『尖閣諸島の領有権問題に関しては係争国のどちらの側にも立たない』と宣言して以来、その立場を変えたことはない」と高らかに謳っている。

 これは1971年の沖縄返還交渉の際に、ニクソン(大統領)やキッシンジャー(国務長官)らが中華人民共和国に接近して、中華人民共和国を「中国の代表」として国連加盟させ、当時の「中華民国」が国連を脱退せざるを得ない状況を作る中で、「中華民国」の蒋介石(総統)に対して弁明するために出した結論だ(ニクソン・キッシンジャー・ピーターソン密談。米公文書館ドキュメント115&134等。詳細は『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』第7章)。                            

 日本は日米防衛ガイドラインの見直しをする前に、尖閣諸島の領有権に対する米国のこの「立場」を見直させるべきだ。中国が強気に出るのは、米国のこの宣言と立場があるからであって、オバマ大統領は2013年6月の習近平国家主席訪米の際の共同記者会見で、強い語調で「アメリカは尖閣諸島の領有権問題に関しては、(係争国の)どちらの側にも立たない」と宣言した。こうして中国を喜ばせておきながら、一方では東シナ海で領有権争いがあることを理由の一つとして日米防衛ガイドラインの見直しをする米国は、筆者から見れば二面相だ。

 もし日米間に真の信頼関係があるのなら、日本ももっと毅然として米国を説得すべきである。尖閣諸島が日本の領土であることは、歴史的にも国際法的にも歴然としているのだから。

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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2015年03月30日

香港デモ、背後にAIIBの米中暗闘――占領中環と全米民主主義基金NED(遠藤誉氏)

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 昨年起きた「雨傘革命」には複数の流れがあり、その内の占領中環(オキュパイ・セントラル)運動の背後にはアジアインフラ投資銀行AIIBをめぐる米中の暗闘があった。その動かぬ証拠(動画)をご紹介する。

 昨年9月末、香港特別行政区長官の民主的な普通選挙をめぐって、香港の若者たちが中心となって抗議運動が起き、警察側の催涙スプレー攻撃を雨傘で避ける姿から「雨傘革命」と呼ばれるようになった。

 この雨傘革命に関して、筆者は学生たちの授業ボイコットという下から自主的に立ちあがった運動要素と、占領中環(オキュパイ・セントラル)運動の間には、微妙な温度差があると、2014年12月8日付本コラム「香港デモ学生とオキュパイ派(占領中環)との温度差」 で書いたが、その証拠を見つけてしまった。


 中環というのは香港の金融街がある街路の名前で、占領中環は「金融街を占拠せよ」という意味を指す。

 これは2011年9月17日、アメリカ、ニューヨーク市マンハッタン区にある金融街ウォールストリートで起きた「オキュパイ・ウォールストリート(Occupy Wall Street)」(金融街を占拠せよ)という抗議運動の流れを引くものだ。このことから筆者は『香港バリケード  若者はなぜ立ち上がったのか』を執筆する時点(昨年末)で、ある動画を見つけたのである。

 それはオキュパイ・セントラル運動の発起人の一人である香港大学法律学系准教授・戴耀廷(1964年〜)(ベニー・タイ)の元上司・李柱銘がアメリカの全米民主主義基金(National Endowment for Democracy(以下、NEDと略称)の地域副理事長であるルイサ・グレーブ(Louisa Greve)とともにオキュパイ・セントラルに関して開いているトークショーの動画だ。

 李柱銘(1938年〜)(マーチン・リー)は香港の民主党の創設者で、オキュパイ・セントラル運動の発起人・戴耀廷は、かつて李柱銘が率いる民主党本部で秘書として働いていた。香港大学の先輩後輩にあたる中でもある。

 NEDは1982年にレーガン政権により「アメリカ政治財団」の研究による提案という形で設立が決定された組織で、それまでCIA(Central Intelligence Agency、アメリカ中央情報局)が非公然でやってきたことを公然とやる目的をもったものである。

 アメリカ国務省から資金を受け、国際共和協会(International Republican Institute:IRI)、全米民主国際研究院(National Democratic Institute for International Affairs:NDI)、国際民間企業センター(Center for International Private Enterprise :CIPE)、米国国際労働連帯センター(American Center for International Labor Solidarity :ACILS) の4つの組織の内のいずれかを通して資金を分配している。

 NED は毎年米国家予算から資金提供を受けている。そのうちには国務省の米国国際開発局(United States Agency for International Development:USAID) 向けの予算も含まれているが、非政府組織の扱いを受けている。2004年9月の会計年度における NED の歳入は8,010万米ドルであり、そのうち7,925万米ドルが米国政府部局から、60万米ドルが他の寄付収入などであった。

 2014年4月2日、李柱銘と陳方安生(アジソン・チャン)(香港政府の元政務司司長、女性)はワシントンでNEDの地域理事長ルイサ・グレーブ(Louisa Greve)とともに、1時間にわたるトークを行っている。

 トークのタイトルはWhy Democracy in Hong Kong Matters(なぜ香港の民主主義が重要なのか?)である。

 香港側の二人は、NEDにオキュパイ・セントラル運動の性格、狙いや要求などを説明している。

 このトークショーで、李柱銘氏は「中国本土を、香港にもともとあった欧米流の機構や法律あるいは権益で染めること」が香港の役割だと強調している。

 香港側の二人は、「中国が香港をどのように統治していくかに関して、中国は世界の目を気にしているので、いまオキュパイ・セントラル運動を展開することは、北京から譲歩を引き出すチャンスになる」という趣旨のことを述べている。

 これほど決定的な映像はまたとないほど、大きな衝撃を与える。

 もう、問答無用だろう。

 中国中央はよくスパイを使って「やらせ」をやり、金で買った「敵」に「中国に有利な真実」を吐かせるという手法を取るので用心しなければならないが、しかし、「肉声と映像」は、否定のしようがない。

 この動画をスクープしたのは、Land Destroyerというウェブサイトのトニー・カルタルッチ(Tony Cartalucci )で、そのスクープ映像のURLはhttp://landdestroyer.blogspot.jp/2014/10/entire-occupy-central-protest-scripted.html で、公開された日時は2014年10月5日である。

 問題は、なぜNEDがこのようなことをしたのかということだ。

 実はアジアインフラ投資銀行の覚書が2014年10月24日に、北京で開催されるAPEC首脳会談を前に交わされようとしていた。

 習近平政権は国際金融のセンターをアメリカ(ワシントンとニューヨーク)から中国(北京と上海)に移そうと、2013年から動いていた。

 しかし民主と自由のないところに国際金融センターは成立しない。

 そのことをアメリカは「香港」という、中国の管轄下にある国際金融都市の現状をアピールすることによって世界に見せつけたかったのだろう。

 1997年に香港がイギリスから中国に返還されて以来、香港では民主と自由を求めて中国中央政府への抗議運動が絶えたことがない。一国二制度で香港の自治を約束しながら、実際は香港特別行政区基本法の改正権と解釈権が全人代(全国人民代表大会)常務委員会にあるという法的事実を行使して、香港の自治は年々蝕まれている。

 このように中国の傘のもとにある限り、香港でさえ国際金融都市としての機能を失ってしまうのだということを立証し、アメリカとしては何としてもAIIBが成功するのを阻止したかったものと思われる。

 明日3月31日、このAIIB創設国の申請申し込みの期限が締め切られる。

 現時点で40カ国が参加しているようだ。G7を構成する西側諸国もロシアも韓国も陥落してしまった。

 日米だけはまだ踏み止まっており、運用の透明性を理由に参加を見合している。

 どこまで頑張ることができるのか。日米の動向に目が離せない。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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2015年03月26日

江沢民の実父は売国奴? ――認めるのか、習近平(遠藤誉氏)

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 江沢民元国家主席の実父が売国奴(日本傀儡政権の役人)だったことは知る人ぞ知る事実。それを暴いた者は投獄されてきたが、その中の一人、呂加平氏を習近平は釈放した。習近平はタブーを破るのか?その思惑は?

◆江沢民が隠してきた事実

 江沢民の実父・江世俊が(大日本帝国時代の)日本の傀儡政権であった汪兆銘率いる南京政府のスパイ機関に勤務していたことは、中国大陸以外ではよく知られた事実だ。江沢民は父親のお蔭で、1943年には汪兆銘傀儡政権下の南京中央大学に入学し、贅沢三昧の日々を送っていた。
 だから江沢民はピアノやダンスなどの芸事に長(た)けている。そのときの写真も名簿もある。

 ところが日本が敗戦すると、漢奸(かんかん)=売国奴と罵倒されるのを逃れるため、江沢民は慌てて、叔父の江世候(またの名を江上青)の養子になったと偽装。江世候は中国共産党の幹部で、1939年に戦死している。江世候は江沢民の父親の弟に当たるが、祖父が妾に産ませた子供とされ、その家族は極貧の中にあり、江沢民が養子になってピアノやダンスを習えるような状況とは無縁。

 このことを最初に暴いたのは元北京市書記(1992年〜1995年)だった陳希同(1930年〜2013年)(ちん・きどう)で、陳希同はその告発状をトウ小平に渡した。ところがトウ小平はそれを江沢民を推薦した薄一波(薄熙来の父親)に見せたため、陳希同は投獄され獄死している(最後は獄外病院で死去)。

◆江沢民の出自を暴き、国家転覆罪で投獄されていた呂加平

 中国のネットには「嘘も百回言えば真実になる」という諺だけが削除されずに残っているが、江沢民の出自に関する真実を書くことは「死」を意味するので、あまり書こうとしないし、また書いても削除されるか逮捕される。

 呂加平(1941年〜)は2004年2月21日に自分のブログで「江沢民が出自をごまかして中国共産党に入党していた事実」を書いてしまった。

 2004年3月の全人代では、江沢民が中華人民共和国中央軍事委員会(国家中央軍事委員会)主席から、いよいよ身を引かねばならないタイミングだった。

 胡錦濤・元国家主席にとって、実は呂加平の「暴露」は、非常にありがたいことだったにちがいない。

 しかし江沢民は、もちろん激怒。

 当時、腹心の周永康は中共中央政治局委員ではあったが、まだ国家公安部長の身分。江沢民は周永康に命じて直ちに呂加平を拘束。同年2月23日深夜には、呂加平の家宅捜索を行い、パソコンや彼が書いた文章など、全ての資料を持ち去っていった。その後、自宅軟禁の形を取り、警察やパトカーあるいはサーチライトなどに囲まれた日々を送るようになる。呂加平の息子夫妻も連座して拘束された。

 それでも呂加平が自宅軟禁の状態にありながら、2009年12月1日に、さらに江沢民の出自を告発する「二奸二假(偽)」という文章をネット上で公開できた裏には、いわゆる「江胡闘(ジャン・フー・ドウ)(江沢民・胡錦濤の闘い)」があったからだろう。

 しかし、2007年からチャイナ・ナイン(胡錦濤時代の中共中央政治局常務委員)入りして中共中央政法委員会書記になっていた周永康の力は、2004年の公安部長のときとは比較にならないほど大きくなっていた。周永康は「公安、検察、司法」を牛耳る政法委員会の力を発揮して、ただちに呂加平を逮捕。2011年5月13日に「国家転覆罪」として10年の懲役刑を科している。

◆じきじきの恩赦で呂加平を釈放した習近平の思惑は?

 だというのに、習近平国家主席と李克強国務院総理によるじきじきの恩赦で、2015年2月17日午後6時、呂加平は釈放され、警察の車で湖南省の実家に連れ戻されたという。

 これはまた、いかなるシグナルと読めばいいのだろうか?

 もちろん、江沢民の息子・江綿恒といえども容赦はしないというシグナルの一つではあろう。

 また江沢民の大番頭・曽慶紅(2015年3月4日付けの本コラム「次の大虎は江沢民の大番頭、曽慶紅!――全国政協の記者会見で暗示」参照)逮捕への準備ということもあろう。

 しかしなんと言っても江沢民はかつて国家のトップに立っていた中共中央総書記であり、国家主席、中央軍事委員会主席でもあった人物だ。その江沢民を逮捕することになれば、いくらなんでも中国共産党の権威に傷がつき、統治の正当性を失うだろう。したがって、江沢民そのものを(本人を)逮捕するところにまでは行きにくい。

 しかしそれでもなお、もし江沢民にそもそも「中国共産党員になる資格さえなかった!」という事実が明るみに出れば、この「逮捕しにくいバリヤー」は下がる。正当な理由が付くからだ。

 少なくとも江沢民の腐敗の巣窟に斬りこむことに対して、人民を納得させる材料にはなろう。

 それは同時に、「それなら中国共産党の何を信じればいいのか?」という疑念を人民に惹起させる。「習近平政権よ、それなら、お前は大丈夫なのか?」と誰もが思い始めるかもしれない。

 いや、誰でもがすでに思っているだろうが、この分岐点を習近平がどう乗り切るのか、見ものだ。

(ただ、自らの出自をごまかすために反日を叫び、反日へと大きく舵を切った江沢民の「日帝」売国奴の事実を、この「抗日戦争勝利70周年記念」の年に明るみに出すのか、という疑問は残る。呂加平を釈放したのは、その事実を明るみにすることを許したことにつながるのだから。)
(ヤフーより)

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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2015年03月24日

「紅い皇帝」反腐敗の狙い――その先には国際金融界の覇者(遠藤誉氏)

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 習近平政権が激しい勢いで反腐敗運動を進めている先には、国際金融界の覇者となる狙いがある。そのため、腐敗、環境汚染、不透明性などで反撃を強めるアメリカに対抗し、環境汚染をもたらす腐敗構造を変ようとしている。

 中国が主導権を握るアジアインフラ投資銀行(AIIB)に関しては、3月14日付本コラム国際金融センターをアメリカから中国に――習近平政権のもう一つの狙いおよび3月18日付本コラムイギリスのアジア投資銀参加で日本孤立化?――キッシンジャー訪中は如何なるシグナルか?で書いたが、今回は、習近平政権の反腐敗運動そのものの最終的な狙いが、実は国際金融界の覇者となることにあるという点に焦点を絞って、ひとこと述べたい。

 AIIBの創始国メンバーとなるための申請期限が3月末と迫っているのを前に、イギリスに加えて、その後ドイツ、フランス、イタリヤなどが参加を表明した。G7が雪崩を打ったように中国主導の投資銀行に参画を表明したことは、どの国も「中国発の経済特急列車に乗り遅れまい」としている証しだ。

 実は筆者は3月16日に民放のあるテレビ番組にナマ出演していたのだが、番組内で放映された麻生財務大臣のコメントは「AIIBは透明性が保証されていないので、どうも……」といった趣旨の、かなり否定的なものだった。

 しかし3月20日には「(AIIBに参加して、その中で)協議の可能性」を示唆した。

 日本が指摘している融資の審査などの意思決定の透明性や、返済能力を考慮した融資姿勢が確保されれば「少なくともこの(AIIBの)中に入って協議していくことになる可能性はある」という考えを示したのである。

 このままいけば、G7は総崩れで、日米までが揃ってAIIBに入れば中国の思う壺だ。

 そのきっかけを作ったのが、3月18日のコラムに書いたように、元をただせば実はダライ・ラマ14世であったことを考えれば、なんとも皮肉なことである。

 イギリスのチャールズ皇子やキャメロン首相がダライ・ラマ14世に会っていなければ、中国から「イギリス外し」の憂き目に遭うことはなかっただろうし、それ故にイギリスが中国にひれ伏すことにもならなかっただろう。

 こういった敵の弱点を自らの勝利につなげていく中国の戦略は、長い歴史から培われてきたものであり、一党支配体制がもたらしたものではない。

 しかし強権的な一党支配を逃れたダライ・ラマ14世が、結果的には、一党支配の中国に救いの手を差し伸べたことになる。

 これまで国際取引の主軸だったドルに代わって人民元が基軸通貨となれば、中国は資本送金の自由化や人民元の変動相場制への移行を強めていくしかない。

 すでに資金の 50%以上である500億ドルを越える出資をして圧倒的主導権を握る中国が、参加国に対してどれだけ譲歩するのか見ものだ。

 2010年〜2020年のアジアにおけるインフラ整備には8兆ドル(約1000兆円)以上の資金が必要とされている。中国はそのため、すでに鉄道を中心としたインフラ建設に関して関係各国に中国資本の投入を約束した。

 インフラは主として高速鉄道や高速道路の開発を対象とする。

 資金だけでなく、中国はこれまで蓄積してきた高速鉄道技術をも投資するとしている。しかしその技術、実は日本やドイツなど数カ国の技術を部分的に頂いて創った「寄せ集め技術」に過ぎない。そのため何度も大きな鉄道事故を起こしている(たとえば2111年7月に浙江省温州市で衝突脱線事故が起き、証拠を隠ぺいするため脱線車両を事故後すぐに埋めようとしたことで有名)。

 インドでは高速鉄道開発に当たり、日本の(価格もレベルも高い)新幹線技術を導入するか、(安価だがレベルが低い)中国の「寄せ集め技術」を導入するかで最終的決断を迫られているが、中国はこれを新たな「抗日戦争」と称して、何としても「日本」(の新幹線)を打ち負かし、「中国」(の寄せ集め技術)を勝利に導こうとしている。そのためにもAIIBのゆくえは重要だ。

 このような中、日米が懸念する透明性がどれほど確保されるかは疑問だが、万一にも日米までが加入することになれば、「紅い皇帝」習近平は高笑いだ。

 習近平政権の反腐敗運動を、権力闘争などと位置付けて日本人を喜ばせていた一部のチャイナ・ウォッチャーやメディアは罪作りなことだ。

「紅い皇帝」習近平の力は、政権スタート時から毛沢東を越えている。

 彼は「中国の夢」から始まり、「アジアの夢」を語り、今は「アジア太平洋の夢」を語っている。

 それが夢物語で終わればいいが、AIIBに群がる先進国の動きを見ていると、チャイナ・マネーが「世界の夢」を買いそうな勢いである感を否めない。

 アメリカが中国の「腐敗」や「環境汚染」を取り上げて、国際金融センターとしての資格を欠くとAIIB成長の可能性を否定したため、「紅い皇帝」はそれをクリヤーしようと腐敗撲滅に躍起になっていた。

 腐敗撲滅は党幹部の汚職により「紅い王朝」が崩壊するのを防ぐことが第一義的な目標だったが、聖域にまで斬りこんだいま、「紅い皇帝」は国際金融の覇者としての条件を整えようと、最後の一手を打とうとしているのである。

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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2015年03月18日

イギリスのアジア投資銀参加で日本孤立化?――キッシンジャー訪中は如何なるシグナルか?(遠藤誉氏)

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 中国が主導するアジア投資銀にイギリスが参加を表明し、フランスも続く見込みで日米は厳しい状況に。ウィリアム王子訪中はチャールズ皇太子と英首相のダライラマ会見の尻拭い。さらにキッシンジャー訪中が続く。

◆イギリスが中国に対して持つ弱み――ダライ・ラマをめぐる中英間相克

 3月14日付本コラム国際金融センターをアメリカから中国――習近平政権のもう一つの狙いの内容と多少重なるが、イギリスが「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に参加表明せざるを得ないところに追い込まれた理由を、もう一度明確に位置付けたい。

 イギリスのチャールズ皇太子はチベット仏教のダライ・ラマ14世を「法王」と位置づけて尊重し、2008年3月に起きたチベット騒乱を受けて、同年8月に開催された北京オリンピックには出席しない旨、「フリー・チベット運動」に書簡を送付したことさえある。

 フリー・チベット運動は、中国のチベット自治区における人権弾圧などに抗議して中国政府を非難している団体だが、チャールズ皇太子はこの団体の支援者だった。

 2012年5月〜6月、中国政府の猛反対を押し切ってイギリスのキャメロン首相とダライ・ラマ14世が会談し、チャールズ皇太子もダライラマを自宅に招待して歓待した。

 これにより英中関係は最悪の事態になる。

 まだ胡錦濤政権だった中国政府は、内政干渉だと激しくイギリスを非難して抗議した。そのため中英間の経済交流にも悪影響が及び、キャメロン首相は人権問題と経済の間で苦しんだ。それでも謝罪を求める中国政府側に対して、イギリスは「誰が誰とどこで会うかは、自分で決める権利がある」として、突っぱねてはみたものの、中国からの投資は急減していった。リーマン・ショック以降、貧富の格差が増大して経済破綻の危機に喘(あえ)いでいたイギリスにとっては、チャイナ・マネーは魅力的だったにちがいない。  

 そこで2013年12月2日、キャメロン首相はついに折れて中国訪問に漕ぎ着けた。

 「イギリスは西側世界における最強の中国支持国になるだろう」

「イギリスは中国の主権と領土保全を尊重し、チベットが中国の一部であることを承認しており、これまで通りチベット独立は認めない」

 など、キャメロン首相は中国を礼賛し屈服。


◆イギリスをジリジリと追い込む習近平の戦略

 しかしそれでもなお、習近平はイギリスを追い込む戦略の手を緩めなかった。

 2014年3月、オランダのハーグで開かれた核セキュリティ・サミット(NSS)閉幕後、フランスやドイツ、ベルギーなどを歴訪した習近平国家主席は、このヨーロッパ歴訪の旅から「イギリスを外した!」のである。

 目標はAIIBにイギリスを参加させて、G7の切り崩しを図ることになる。そして日本が主導している「アジア開発銀行」を骨抜きにして中国がアジアの覇者になることだ。中国は早くから、G7(G8)などは虚構だと鼻であしらっていた。

 李克強首相の姿がウインザー城に現れ、優雅なエリザベス女王と握手したのは、その3カ月後の2014年6月18日のことである。

 中国の「上から目線」対英外交が始まった。

 エリザベス女王に会わせないのなら、「何なら訪英を取り消しましょうか?」と言ったとされている。

 こうして英中経済交流に関する数々の協定が結ばれた。

 だから2014年の9月末から香港デモ「雨傘革命」が起きると、英上院(元王室系貴族院)のパウウェル卿(薄熙来の息子の下後見人。2014年12月6日本コラム英上院パウウェル卿、香港デモで中国擁護参照)を使って中国政府を擁護させることなど、中国にとってはたやすいわざだったのである。パウウェル卿は香港デモが不当であることとともに、英中貿易交流の重要性を強調した。

 そして極めつけは今年3月1日の、ウィリアム王子訪中だ。

 その背後には、このたびのイギリスのAIIB参加を取り付ける、中国の権謀術数があった。 

 G7の大国の一つであるイギリスがAIIB創設メンバーになれば、G7は実態を持たない虚構と化す。アメリカがロシアを外させたところで、イギリスが中国主導型のAIIBに参画すれば、フランスも続くにちがいない。

◆キッシンジャー・習近平会談――日米主導型の金融界に激震か?

 G7諸国が相次いでAIIBの宗主国になることは、日米にとっては手痛い話だ。特にAIIBと拮抗するアジア開発銀行の歴代総裁を輩出してきた日本にとっては、孤立化を招きかねない事態が待っている可能性がある。

 なぜならあの「忍者外交」(1971年)で日本の頭越しに中国に接近したことのあるキッシンジャー元国務長官が、3月17日、人民大会堂で習近平と会談した。

 キッシンジャーは当時の周恩来首相と機密会談を行い、日米同盟は日本の軍事暴走を食い止めることになり、米軍が日本に駐在していないと日本がいつ暴走するか分からないためだと、周恩来に行っているような人物だ。習近平が国家主席だった時代(2007年〜2012年)から、習近平とは非常に緊密な仲だ。

 よもや、あの忍者外交のときのようにアメリカが掌を返すようなことはあるまいが、しかし油断は禁物。

 麻生外務大臣はAIIBには透明性がないので(世界はついていかないだろう)という趣旨の発言をし、筆者も言論の自由のないところに国際金融センターは似合わないと書いたが、しかし「チャイナ・マネーが民主を買った」香港の例を考えると、楽観視はできない。

 AIIB創設メンバー参加申請の締め切りは、今月一杯だ。

 中国の戦略とチャイナ・マネーが勝つのか、「自由と民主」が勝つのか、人類の「試験」が始まっている。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士



shige_tamura at 13:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!

2015年03月17日

江沢民の古巣「一汽」トップ落馬――自動車最大手の董事長(遠藤誉氏)

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 長春にある中国の自動車最大手国有企業「一汽」(イーチー)の董事長・徐健一が落馬した。一汽は江沢民元国家主席がスタートを切った古巣。WTO加盟の際に中国が最も力を入れた企業だ。その道筋と落馬の意味を考察する。

◆江沢民スタートの地――中国第一汽車集団(一汽)

 江沢民(1926年〜)の実父・江世俊は日本の傀儡政権であった汪兆銘政府の宣伝部副部長を務めていた。国民党特務機関の一員でもあった。だから家は裕福で、小さいころからピアノ、ダンスや書道などを学ぶ裕福な生活を送り、大学も日本軍関係の子弟が行く南京中央大学に通っている。専門は電機学。日本軍系列だったので、外国語として日本語も学び、多少の日本語を話す。

 酒が入って酔いがまわると、「月が出た出たぁ〜、月が出たぁ、ヨイヨイ。三池炭坑〜の、上に出たぁ〜」と、三池炭坑の「炭坑節(たんこうぶし)」が出てくることで有名だ。 

 ところが日本が敗戦すると、突然出自を偽り、実父の腹違いの(父親の妾の)弟で中国共産党の革命幹部であった江上青(江世候。1939年戦死)の養子であったと偽り出自を隠ぺいした。

 46年4月に江沢民はあわてて中国共産党に入党し、革命烈士の子息として何とか生き延びている。47年に上海市にあるアメリカ資本の「海寧洋行」傘下の食品工場で動力科学技術工程師として働き始めた。49年5月に上海市が中国人民解放軍によって解放されると、この工場は「上海益民食品一廠」と改名。

 本来なら、このまま一介の工場労働者として終わるはずの一生だったが、なんとこの工場の社長が、現在の習近平政権下で中共中央政治局委員を務めている汪洋(現在、国務院副総理)の母親だったのである。父親の汪道涵(1915年〜2005年)は当時、華東軍政委委員会工業部部長で、上海軍管会の重工業部門を担当していた。

 汪道涵は、江沢民が養子に行ったと偽っている江上青の戦友だった。

 中華人民共和国建国後、第一機械工業部の副部長(副大臣)になっていた汪道涵は、戦死した戦友を弔うために、まず江沢民を第一機械工業部の上海市直属機関である第二設計分局の電器科長に任ずる。53年のことである。江沢民、出世の第一歩が始まった。

 ソ連の協力により第一次五カ年計画がスタートし、54年には第一機械工業部が自動車工業振興の任を担うことになった。すると汪道涵は早速江沢民を五カ年計画の大きな柱の一つである長春の「一汽(第一自動車)」に派遣した。一汽に派遣しておけば、その後、中央政府に呼びやすくなると考えたからだ。

 こうして、こんにちの江沢民の地位がある。


◆WTO加盟のために必死になって力を入れた自動車産業

 中国がWTO(世界貿易機関)に加盟するに当たって、WTO側は自動車などの輸入の際の関税引き下げを絶対条件とした。当時、たとえば100万円の日本車だと、2倍近くの関税がかかり、中国では200万円以上出さないと買えない。その関税を引き下げ、安い価格で高性能の日本車を販売すれば、中国の国産車は壊滅的打撃を受ける。

 そこで中国は「東北大振興」という国家プロジェクトを掲げて、何とか国産車、特に乗用車(自家用車)の技術 を高めようと国を上げて邁進し始めた。それまでは軍用車や輸送トラックなどに力を入れていて、乗用車は外車に頼ることが多かった。

 筆者が取材した当時(21世紀初頭)、長春市の市長だった祝業精は、この乗用車技術導入のために、先進諸外国と交渉をしていた責任者だった。

 日中国交正常化以降は日野自動車をはじめ、スズキ、いすゞ、ダイハツなどが技術協力をしていてくれたが、90年代にWTO加盟のための技術協力を呼び掛けたとき、名乗りを上げたのはドイツのフォルクスワーゲンだった。「フォルクス」は大衆という意味で、「ワーゲン」は車という意味。まさに「大衆の車」の技術が欲しかった。こうしてフォルクスワーゲンは、中国では「大衆」という名で広くいきわたるようになる。

◆一汽は、江沢民にとって「別荘」のようなもの

 その一汽、初期のころは必死だった。

 しかし江沢民が上海閥として利権集団と化したころになると、一汽は江沢民の「北の別荘」のような位置づけになってしまう。

 それが大きく目立ち始めたのは、中国が14%台を越えるGDP成長率を示し始めた2007年あたりからだ。これはつまり、江沢民利権集団の腹心・周永康がチャイナ・ナイン(胡錦濤時代の中共中央政治局常務委員会委員9人)入りした年である。

 今般落馬した徐健一は、その周永康の親族がアウディ販売店を出すに当たって便宜を図っている。祝業精・元長春市長と会ったとき、筆者は実はこの徐健一・元董事長にも会っている。彼はそのとき、ドイツの高級車アウディの話ばかりしていた。

 今ではA6L、A4L、Q5、Q3の4車種を生産している。

 そのアウディ車販売などを通して、あの徐健一氏が周永康とつながり、江沢民の北の別荘地で腐敗にまみれていたとなると、なんとも言えぬ気持になる。

 一汽が建てられたその地は、まさに1948年9月に食糧封鎖された長春を脱出するために潜った二重の包囲網「チャーズ」があった場所だ。

 餓死体が敷き詰められていたあの荒野の高粱(こうりゃん)畑は、何という歴史を見てきたことだろう。革命のために犠牲になった数十万の中国の民の死体の山の上で、民を助けるために戦ったはずの共産党が、腐敗の温床と化している。

 そこは、江沢民がスタートした古巣であり、砦の一つだった。

 そこにメスが入ったことは、習近平政権の腐敗撲滅運動が新たな段階に入ったことを意味する。
(ヤフーより)

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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