遠藤誉

2015年10月13日

スクープ!毛沢東は「南京大虐殺」を避けてきた(遠藤誉氏)

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 ユネスコが「南京大虐殺」資料を世界記憶遺産に登録することを決めた。
 中国の歴史問題への逆走が止まらない。

 実は建国の父、毛沢東は「南京大虐殺」を教科書で教えることも、口にすることも嫌がった。
 なぜか―?

◆なぜ毛沢東は「南京大虐殺」に触れたくなかったのか?

 毛沢東は生きている間、「南京大虐殺」に触れることを嫌がったし、教科書にも載せようとしなかった。(日本語では「南京事件」と称するが、ここではユネスコで登録されたことと、毛沢東の「南京大虐殺」に関する見方を考察するので、中国流の「南京大虐殺」という文言を用いる。)

 なぜなら、「南京大虐殺」が起きた1937年12月13日前後、毛沢東ら中国共産党軍は、国民党軍も日本軍も攻撃にこれらないほどの山奥に逃げていたからだ。そこは陝西省延安の山岳地帯。南京の最前線で戦っていたのは蒋介石率いる国民党軍だった。

 毛沢東らはそもそも、1937年7月7日に起きた盧溝橋事件(日中戦争が本格化した事件)の第一報を受けると「これで国民党軍の力が弱まる」と喜んだと、1938年年4月4日まで延安にいた(共産党軍の)紅第四方面軍の軍事委員会主席・張国トウ(トウ:壽の下に点4つ)が『我的回憶(我が回想)』で記録している。

 中共中央文献研究室が編纂した『毛沢東年譜』を見ても、この日付の欄には、ただひとこと「南京失陥」(南京陥落)という4文字があるだけだ。その前後は1ページを割いて1937年12月9日から12月14日まで開催していた中共中央政治局拡大会議のことが書いてあり、13日に4文字あったあと、14日からはまた雑務がたくさん書いてある。

「南京大虐殺」に関しては「ひとことも!」触れていない

『毛沢東年譜』は毛沢東の全生涯にわたって全巻で9冊あり、各冊およそ700頁ほどなので、合計では6000頁以上にわたる膨大な資料だが、この全体を通して、「南京大虐殺」という文字は出てこない。1937年12月13日の欄に、わずか「南京失陥」という4文字があるのみである。

 翌年も、翌翌年も、そして他界するまで、ただの一度も「1937年12月13日」の出来事に触れたことはなく、この「南京陥落」という4文字さえ、その後、二度と出て来ない。

 毛沢東は完全に「南京大虐殺」を無視したのだ。

 そこに触れれば、中国共産党軍が日本軍とは、まともには戦わなかった事実がばれてしまうことを、恐れたからだろう。そして国民党軍の奮闘と犠牲が強調されるのを避けたかったからにちがいない。

◆中国大陸のネット空間では

 いまごろになって、中国大陸のネット空間には、「なぜ毛沢東は南京大虐殺を教えたがらなかったのだろうか?」とか「なぜ毛沢東は南京大虐殺を隠したがったのだろうか?」といった項目が数多く出てくるようになった。

 たとえば大陸の百度(baidu)で検索した場合、「毛沢東 南京大虐殺」と入れると、日によって異なるが200万項目ほどヒットする。そのほとんどは、この疑問への投げかけだ。

 中にはきちんと中国建国以来、いつまで南京大虐殺を隠し続けたかを調べた人もいる。この種の記事は多いが、信じていただくために一つだけ具体例を挙げよう。

 2014年12月31日付の西陸網(www.xilu.com)(中国軍事第一ポータルサイト)で「毛沢東時代はなぜ南京大虐殺に触れなかったのか――恐るべき真相)」というタイトルで陳中禹(う)という人がブログを書いている。 

 彼は1958年版の『中学歴史教師指導要領』の中の「中学歴史大事年表」の1937年の欄には、ただ単に「日本軍が南京を占領し、国民政府が重慶に遷都した」とあるのみで、一文字たりとも「南京大虐殺」の文字はないと書いている。この状況は1975年版の教科書『新編中国史』の「歴史年表」まで続くという。

 ちなみに、毛沢東が逝去したのは1976年。陳氏によれば、1979年になって、ようやく中学の歴史教科書に「南京大虐殺」という文字が初めて出てくるとのことだ。

 他の情報によれば「1957年の中学教科書にはあったが、60年版では削除されていた」とのこと。実際、確認してみたが、たしかにその時期、南京大虐殺を書いた教科書が江蘇人民出版社から出たことがある。しかし、その後消えてしまっている。

 200万項目ほどヒットする関連情報の中に、「1980年代に入ると日本の歴史教科書改ざん(美化)問題があったため、中国の一般人民は初めて南京で日本人による大虐殺があったことを広く認識し始めた」というのが多い。それによれば人民日報が初めて「南京大虐殺」に関して詳細に解説したのは1982年8月で、その書き出しは「日本の文部省の歴史教科書改ざん問題」から始まっているとのこと。

 そのため大陸の多くのネットユーザーは、「中国人民は日本の右翼に感謝しないとねぇ。なんたって、彼らがこうやって歴史歪曲を始めようとしなかったら、中国人民は永遠に南京大虐殺のことを知らないまま、生きていたのかもしれないんだから」と、皮肉を込めて書いている。

 ちなみに、「南京大虐殺記念館(中国名:侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館)」は、日中戦争勝利40周年記念に当たる1985年8月15日になって、ようやく建立された。

 なお、靖国神社参拝批判が80年代半ばから盛んになった背景にも、こういった毛沢東の「抗日戦争(日中戦争)観」が関わっている。

◆習近平政権になってから異常に加速する「歴史カード」

 今年8月25日付けの本コラムで「毛沢東は抗日戦勝記念を祝ったことがない」と書いたが、習近平国家主席は、9月3日の抗日戦争勝利70周年記念日に中国建国後初めて軍事パレードを挙行しただけでなく、「南京大虐殺」に関してもユネスコが世界記憶遺産に登録認定するところまで漕ぎ着けた。

 習近平政権になってから、中国共産党による日中戦争時の歴史改ざんは加速するばかりである。言葉では「世界平和のため」と言っているが、その実、「日本の戦争犯罪を世界共通の認識」へと持っていき、反日意識を全世界に広げる効果をもくろんでいる。

 なぜなら日米が中心となってTPPなどの手段で「普遍的価値観」を世界的に普及させ中国包囲網が思想的に出来上がっていくのを切り崩したいからだ。そのためには「日本の歴史認識カード」は都合の良い切り札になるのである。

 その証拠に10月10日、中国外交部の華春瑩・副報道局長は「南京大虐殺は国際社会が公認する歴史事実となった」と述べたことに注目しなければならない。

◆中国に関する日本人の「歴史認識」の危なさ

 問題はわれわれ日本人が、どれだけ正しい中国に関する「歴史認識」を持っているかだ。

 今年8月10日付の本コラム「戦後70年有識者報告書、中国関係部分は認識不足」に書いたように、日本の「有識者」は「1950年代半ばに共産党一党独裁が確立され、共産党は日本に厳しい歴史教育、いわゆる抗日教育を行うようになった」と書いている。

 日本の政治を動かす、安倍総理のための「有識者」は、こんな程度の「中国に関する歴史認識」しか持っていない。これが日本国民にどれだけの不利をもたらしていることか――。このような状態では日本を守る外交戦略さえ立てることができない。

 中国のこの、政治利用とも言える「歴史認識カード」を跳ねのけることができる唯一の道は、日中戦争時代および中国建国後の毛沢東を徹底して研究することである。それ以外に道はない。

 それにより中国共産党の真相を正しく客観的に見抜く視点を養えば、ユネスコを説得する力をも持ち得ると固く信じる。

 札束と、中共に都合よく歪曲された歴史を世界の共通認識とさせてはならない。

 日本の「有識者」が潜在的に中共のプロパガンダに洗脳されていることに気づかない日本政府の怠慢でもある。

 なお、本日のコラムに書いた内容は、来月半ばに出版する『毛沢東――日本軍と共謀した男』(新潮新書)で詳述している。出版前に企業秘密のような内容を開示してしまうのはルール違反だが、ユネスコの世界記憶遺産発表を受け、真実を明らかにせずにはいられなく、出版社の許可を得て一部を事前に公開した次第である。


 遠藤誉 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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2015年05月19日

龍と象の「一帯一路」――中印蜜月、「紅い皇帝」のもう一つの狙い(遠藤誉氏)

田村 紀伊国屋書店、新宿本店週間ベストセラー
(新書)5月4日〜5月10日
第6位になりました。
改正・日本国憲法(講談社+α新書 ) 


 インドのモディ首相を「紅い皇帝」習近平が西安で迎えたのは、西安が新シルクロード経済圏の起点だからだ。龍と象の争いを抱える中印両国だが、「紅い皇帝」は中露と中印の蜜月により日米同盟強化に抵抗している。

◆「紅い皇帝」自ら西安まで行った深いわけ

「紅い皇帝」習近平が自ら西安に赴き、訪中したインドのモディ首相を歓待したのは、昨年9月に彼がインドを訪問したとき、モディ首相が自分の故郷であるグジャラートで習近平を歓待したお返しだと言われている。

 だが、習近平が生まれたのは北京であって、西安ではない。

 習近平が生まれるとき、父親の習仲勲(しゅう・ちゅうくん)は北京に入城したので、北京(当時の呼称は北平、ベイピン)に近づいたとして「近平」という名をつけたのである。しかし国家主席になる前から「紅い皇帝」になることをイメージしてきた習近平は、自らを「延安の人」として位置づけ、中国建国の父、毛沢東が革命の聖地とした「延安」をあたかも自分の故郷のように位置づけてきた。

 たしかに習仲勲は陝西省の生まれであり、また習近平は文化大革命時代に延安に下放されて青春を送った。

 正確に言えば、習近平が下放先として自ら延安を選んだのだが、中国では「習近平国家主席の故郷は陝西省」ということになってしまっており、延安も西安も陝西省であることから、「モディ首相の故郷・グジャラート」vs「習近平国家主席の故郷・陝西省(西安)」ということになっている。

 しかしそれは表面上の説明であって、実際の目的は「一帯一路」(陸の新シルクロード経済ベルトと21世紀の新シルクロード海路)にインドをしっかり引き込むことにあるのは、いうまでもない。

 習近平国家主席は、5月9日にロシアを訪問してプーチン大統領との間で中露蜜月を演じて見せたばかりだ(詳細は5月11日付の本コラム新たな冷戦構造か、モスクワの「赤の広場」式典――「紅い皇帝」習近平が存在感)。

 アメリカのオバマ大統領が、自国における人気取りと外交業績を残すためにロシアに対する経済制裁の大号令を出した。ロシアとの貿易関係が深いヨーロッパはしぶしぶアメリカに同調したが、「紅い皇帝」習近平は違った。

 堂々とモスクワで開催された反ファシスト戦勝70周年記念式典に国家主席として参加しただけでなく、プーチン大統領と緊密度を、これまでになく深めた。

 そこにはもちろん「一帯一路」とアジアインフラ投資銀行AIIB成功のための布石があった。

 今般またインドのモディ首相を西安まで自ら出向いて歓待したのは、ここが新シルクロード経済ベルトの起点であるだけでなく、かつてインドと中国が古代文明発祥の地として、西安を中心に交流していたからである。

 そのため、このたびのモディ首相訪中では、やたら「文化」と「伝統」という言葉が飛び交い、仏教経典の経路を辿るだけでなく、インドのヨガと中国の太極拳が共通のルーツを持つことにも深く触れ、「精神性」が強調された。

◆アメリカ発の「価値観同盟」対に対する抵抗

 それは5月14日付の本コラム日米有識者、共通の価値観を提言――中国には不似合いで触れたように、アメリカが日本との間に「共通の価値観」という精神性で「社会主義的価値観」あるいは「共産主義的価値観」で固まっている中国を「異なる存在」として包囲しようとしていると、中国が見ているからだ。

 AIIBや一帯一路に加盟しながら、日米と精神性において共通点を見出し、同一の「価値観同盟」に近づこうとする国は少なくない。オーストラリアやフィリピンなどは、安全保障の上でも(軍事的に?)日米と結びついておこうとしている。これは一種の「保険」のようなものだ。

 そこで「紅い皇帝」は歴代王朝の「文化」に目を付けた。

 仏教など信じてもないし、また社会主義以外の信仰を奨励していないのに、インドを惹きつけるために「古代文明発祥の地」という共通項に目を付けたのである。

 それが「西安」を選び、「紅い皇帝」の脚を西安まで運ばせた最大の理由だ。

 社会主義という、インドでは受け入れられない精神性を避けて、「文化」「伝統」に光を当て、中印は「同一の価値観」を持ち、古代文明発祥の地の王座を共有していると、モディ首相に印象づけようとした。

◆チャイナ・マネー100億ドルで「象(=インド)」を買う

 鉄道に関して日本の新幹線を選ぶのか、あるいは中国の高速鉄道を選ぶか決めかねていたインドは、中国の高速鉄道を選ぶ決定をしたのだろう。

 インドの鉄道事情はあまりに立ち遅れており、毎日400人ものインド人が鉄道事故に遭っているという。インドにとって鉄道は、インフラの中でも喫緊の課題だ。9大路線のうち、すでに一路線は中国の高速鉄道と決めてしまったインドは、レールの幅や他路線との共有上、すべて中国の高速鉄道を選ぶしかない。細部の技術は日本の新管制技術を使う可能性は残しているが、中国の鉄道に関する「抗日戦争」は、どうやら勝利を迎えつつあるようだ。

 このたびの中印交渉で、中国はインドに100億ドルの投資を行う事業契約を締結した。経済、貿易、インフラ建設はもとより、ITや宇宙・航空開発など、24項目のプロジェクトにわたっている。

 アメリカ・カリフォルニアにあるシリコンバレーではICチップを“Indian Chinese”のICに置き換えているくらい、IT関係は実はインド人と中国人によって占められている。リモートコントロールの武器も、IT技術に依るところが大きい。

 モディ首相と会見した習近平首相は、中印両国で約26億人(中国13.9億人、インド12.5億人)の人口を有し、全人類の36%を占めるとして「中印新時代」の出現を強調した。

 「紅い皇帝」習近平は、44億人(全人口の61%)を含んでいるとされている一帯一路を、中国を中心として、「北にロシア、南にインド」という形で中心軸を形成しようと計算している。

◆このたびの「象」は三面相?

 ただ、必ずしも計算通りにはいかないのは、モディ首相に代表される「象」の多面相だ。中国、アメリカ、日本のどの国に対しても「貴国こそは!」と、にこやかに握手している。

 しかし、文明発祥の地として西安を選んだ「紅い皇帝」は、今のところ象の三面相を一面に塗り替えたかに見える。

 龍(=中国)と象(=インド)が手を携えて「新しいアジア」を形成しようとしているのである。

 インド自身は、どうだろうか?

 本当に多面相を放棄して一面相になっているのだろうか?

 アメリカの強いニーズと期待によって安保法制を閣議決定した日本と、アジアを放棄しきれないアメリカにも、にこやかに頬笑むモディ首相は、やはり三面相を保つことによって「保険」をかけているように思われる。

 これまで龍と象は隣接する領土をめぐって長い争いを抱えてきた。

 一帯一路とAIIBは、アメリカ主導のTPPや日米同盟強化などに対抗するため、龍と象の争いには触れずに、新しいアジアへの道を歩ませようとしている。

 アクションとリアクションという「せめぎ合い」が新しい世界の秩序を形成するのか。目が離せない。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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2015年04月27日

歴史認識、米高官要請の背景――中韓ロビー花盛りの米政界(遠藤誉氏)

「朝まで生テレビ」(テレビ朝日)4月24日(金)深夜1:25〜4:25
「激論!憲法9条と日本の平和」出演しました。
 なんとか、眠気に打ち勝ち、討論できました。
 「朝生」で発言するのって、結構、大変です。

 多くの方からご支援いただきありがとうございました。

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 4月23日、マイク・ホンダを中心とした超党派議員25人が安倍首相訪米に際し歴史認識に関する書簡を出し、翌24日にはローズ大統領副補佐官までが同様の主旨の要請を安倍首相に対して表明した。その背景には何があるのか?

◆政界に食い込む中韓ロビー

 今ではチャイナ・ロビーの牙城となっている「世界抗日戦争史実維護聯合会」(抗日戦争の史実を守り伝えていく世界聯合会。略称:史維会。拠点:カリフォルニア)は、もともと1989年6月4日の天安門事件を糾弾する反中反共の民主活動家がコアメンバーとなっていた。
 誕生当時は、創始者たちは中国大陸の土を踏むことさえ許されず、訪中ビザが下りなかったほどだ。

 それが一気に「反日」のみで意思統一された裏には、台湾問題がある。

 2000年に国民党政権が破れて台湾独立を唱える民進党が政権を握ると、慌てた中国は「世界華僑華人中国平和統一促進会」(略称:和統会)を設立。海外の華僑華人が積極的に創設したとしているが、実際は中国政府(国務院台湾弁公室)が音頭を取ったものと思われる。

 史維会のメンバーのほとんどは、アメリカに来て初めて日中戦争時の史実を知った台湾人が多く、いかに台湾では反日教育をしていなかったかをうかがわせるのだが、それはともかく、まるでいま目の前で日中戦争が行われているようなショックを受けている者が多い。
 だから反日感情が尋常ではない。

 自分たちの子供がこのまま日中戦争における史実を知らないまま大人になったのでは大変だと、独自の教科書を作成したりしている。

 その在米台湾人たちは、和統会の誕生によって「祖国」への復帰を唱えるようになり、台湾と大陸の両岸統一に関しても燃え上がるようになった。

 こうして反共反中が親中になり、当然、中国政府からも歓迎されるように至ったわけである。

 江沢民政権時代の終わりに駐米中国大使だった李肇星(り・ちょうせい)などは、この史維会を「反日チャイナ・ロビー」に育て上げた「功労者」のひとりだ。

 在米中国人の数は数百万人を越え、そのほとんどはカリフォルニアかニューヨークにいる。

 アジア系アメリカ人というくくりで言うならば、2010年統計で1800万人もおり、中国系の次に多いのが韓国系である。

 世界各地にチャイナ・タウンやコリアン・タウンがあることからご想像いただけると思うが、中国系や韓国系は、ひと塊になって居住する傾向を持つ。やがて市民権を得たアジア系住民は、特定の選挙区において票田となり得るので、非常に大きな政治的力を発揮するようになった。

 それをうまく利用したのが、日系三世で知られる民主党下院議員のマイク・ホンダだ。

 票田や政治資金源となっている中国系および韓国系アメリカ人に迎合するため、2007年1月、米下院議員との共同署名で下院に慰安婦問題に対する日本政府の謝罪要求決議案を提出。2007年6月26日、米下院外交委員会は決議案を可決し、同年7月30日に下院本会議で決議案が採決された。

 韓国系アメリカ人が結束し始めたのは、むしろこの頃からで、慰安婦問題をコアにして中韓系アメリカ人の票田を固めることに力を注ぐ議員が多くなり始めた。

 史維会は主として南京事件をテーマにしていたのだが、2007年以降は慰安婦問題にも焦点を当てるようになり、中韓ロビーが強くなる結果を招いている。

 筆者が2000年初頭に日中韓の若者の意識調査を実行した時には、中国側教育機関担当者は、韓国側から提案された「慰安婦問題」に関して、「慰安婦なんて、中国の若者は知らないし、説明するのも何だから、この項目は削除してほしい」と言っていたほどなのだが、今では中国もこの問題に焦点の一つを当てるようになった。


◆2013年に変化が

 実は2013年にカリフォルニアの選挙区で、ロー・カンナというインド系アメリカ人(37歳)が立候補し、マイク・ホンダの対抗馬となった。ロー・カンナはスタンフォード大学で教鞭を執ったこともある弁護士で、シリコンバレーに食い込んでいた。
 その彼が立候補に当たって、選挙運動の焦点に絞ったのは尖閣問題。このころは尖閣の領有権問題が大きな関心になっていたからだ。そこに絞って中国系アメリカ人の票を得ようとした。

 ところが2014年11月の地方選挙で、ロー・カンナはマイク・ホンダに僅差で敗北。

「慰安婦問題が尖閣領有権問題を上回った」ということになろうか。

 それ以降、マイク・ホンダは、いっそう政治家としての公約を慰安婦問題に絞って、中韓両系列の有権者の票を集めるようになった。

 今年4月23日に、マイク・ホンダは、エド・ロイス外交委員長(共和党)らを含む超党派議員25人の署名を集めて安倍首相が訪米中に歴史問題に言及することを要求する書簡を佐々江賢一郎駐米大使に送付した。
 慰安婦問題に関する河野洋平官房長官談話、過去の「植民地支配」や「侵略」 を謝罪した村山富市首相談話を尊重するよう、安倍首相に促している。

 闘争の焦点をここに当てておけば、中韓両系列の有権者の心をつかむことができるという計算だ。


◆大統領副補佐官までが

 翌4月24日、ベン・ローズ大統領副補佐官(戦略広報担当)が電話で記者会見をした。この中でローズ氏は、歴史認識問題について「われわれは安倍首相に過去の談話と合致する形で建設的に対処し、緊張を和らげるよう働きかけている」と述べ、安倍首相は村山談話や河野談話など、過去の内閣の立場を引き継ぐべきだとの立場を明確にした。

 一方、メデイロス国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長も「歴史問題は最終解決に達するようなやり方で対処することが重要だ」と強調している。 

 中国国営の中央テレビ局CCTVは、まるで呼応しているかのように、「アメリカ各界は安倍に歴史を正視するよう促している」というタイトルで特集番組を組み、中国共産党系列および中国政府系列の新聞やウェブサイトも、一斉に同じテーマで報道した。

 アメリカ政府としては、未だ首脳会談が進んでいない日韓関係への懸念を表したものと思われる。

 安倍首相は4月29日にアメリカ議会で演説するとされている。

 この演説の内容が、「歴史認識」に関して中韓を刺激することがないように、大統領府は心配しているのだろう。アメリカのアジア回帰(リバランス)を、より困難にされるのは困るという、アメリカ側の計算がある。


◆安倍首相訪米に合わせて反日デモを計画

 4月17日、史維会の賀英明会長は、安倍首相訪米に合わせ、全米各地で反日デモを行う計画をしていることを明らかにした。

 また、安倍首相の米議会演説当日には、全米各地にある日本在外公館前で抗議活動も行うと宣言している。

 理事の李競芬女史(台湾系)は、筆者がサンフランシスコでインタビューした2000年初頭では和統会に燃えていたが、最近では対日抗議活動に燃えている。彼女は全米の華僑華人に安倍首相訪米に合わせた抗議活動への参加を呼びかけており、「軍国主義の復活をもたらす安倍の訪米を歓迎しない」と、サンフランシスコからのCCメールに明記している。


◆チャイナ・ロビーの土壌を強化させる在米留学生

 2014年の在米留学生の総数は88万6千人(正確には886,052人)に達しているが、その31%は、中国人によって占められている。それも多くが博士課程に在籍しており、日本人留学生の多くが語学研修に留まっているのと大きな違いだ(中国人留学生の次に多いのが韓国人留学生)。

 中国人留学生は博士学位を取得すると、アメリカで創業したり大企業に就職したりして、やがて市民権を得る者が多い。

 最近では「投資移民」の数が急増し、渡米した中国人富豪が豪邸を購入したり起業したりして、アメリカ国籍を得ているケースが増えている。住宅購入だけでも、年間で220億ドルもの金をアメリカ市場に落としているのだから、アメリカにとって中国人は良い「お得意さん」だ。

 中韓ロビーがアメリカの政界に食い込んでいるだけでなく、市場にも大きな影響を与えている現状がある。それはある意味、チャイナ・マネーが形を変えながら、アメリカでも人心を買っていることを物語ってはいないだろうか?

 日米同盟を強化し、日米ガイドラインを見直す一方で、否定しがたい現実が横たわっている。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士






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2015年04月23日

習近平はなぜ日中首脳会談に応じたのか?――中国の建前と本音(遠藤誉氏)

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 22日午後7時、日中首脳が会談した。
 安倍首相の演説には「謝罪」はなかったが、中国メディアにさんざん批判させながら、習近平国家主席は会談に応じた。
 本当は彼こそ逆に、首脳会談を望んでいたのではないのか? 

◆安倍首相の演説を中国はどう見たか

 安倍首相が22日にインドネシアのジャカルタで開催されたバンドン会議で行った演説に関しては、日本の各メディアが報じているので、くり返しを避ける。ここでは中国がどう見ているかに関して、考察してみよう。

 本コラムでもすでに書いたように、中国の関心は「侵略」「反省」「謝罪=お詫び」のキーワードが演説に入っているか否かだった。

 安倍首相はバンドン会議の平和10原則の中の第二条を例に挙げながら一般的な事象として「侵略」を使い、「反省」に関しては「日本は、先の戦争の深い反省とともに」と言っただけで、やはり「謝罪」の言葉は入っていなかったと、中国メディアは一斉に批判報道。

 バンドン会議50周年記念の時は、(靖国神社参拝をやめなかった、あの)小泉首相さえ、きちんと1995年の村山談話を踏襲して「植民地統治と侵略」に対して「痛切な反省と心からのお詫び」と言っているのに、安倍政権は歴史認識に対して後退していると、中国メディアは軒並み批判的だ。

 特に「安倍は、謝罪を省いた談話を90ヶ国の前で発表することにより、国際社会の反応を観測して、それに基づいて戦後70年の安倍談話の内容を決めるつもりでいるのだ」と、深く掘り下げている分析も目立つ。

◆それでも日中首脳会談に応じたのは、なぜか?

 日中首脳会談の話に入る前に、まず開幕に当たり各国代表が記念撮影をした時の日中首脳の対応を見てみよう。

 インドネシアのジョコ大統領と先に並んだ安倍首相の前を、習近平国家主席が通ったとき、安倍首相が手を差し出し、二人は握手した。このとき安倍首相はジョコ大統領の向かって右側に並んでいた。習近平主席は右側から進んできたので、握手する以外になかっただろうが、顔をそらして、(にこやかに習近平主席の顔をのぞきこむ)安倍首相を見ていない。そのあとジョコ大統領の左側に立つと、安倍首相はジョコ大統領と直接言葉を交わした(英語を使ったものと推測される)。すると習近平主席はそれを無視するように不愉快な表情を露わにした。

 それでも日中首脳会談に応じたのは、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)の問題があるからだ。

 おまけに昨年の日中首脳会談のときの、あの非礼極まりない表情ではなく、習近平主席の顔には心なしか笑顔さえ浮かんでいる。記念撮影のときは昨年と同じ「あの非礼な」表情に近かったのに、表情まで変えたのだ。

 それくらい彼は日中首脳会談を望んでいたのではないのか――?

 中国はAIIB創設に当たって、つねに「どの国に対しても開放的だ」と言ってきた。 その中国が、安倍演説に「謝罪」の言葉がなかったからと言って、首脳会談を行わないというわけにはいかないにちがいない。

 それに中国は実は、国際金融運営に関して経験があるわけではないし、また資金も多ければ多いほどありがたい。

 日本はAIIBと全く同じ目的を持つアジア開発銀行の歴代の総裁を担ってきた。ノウハウもあれば、2010年に中国に追い越されたとはいえ、世界3番目の経済大国だ。

 日本がアメリカと緊密に連携し合って、アジア開発銀行の方により多く投資し、融資の基準を少し緩めるなどのことをすれば、AIIBと対抗する存在にならないとも限らない。

 だから中国としては「どうかアジア開発銀行に注ぐ資金があるのなら、どうかAIIBに加盟して、AIIBに投資してくれ」と思っているのが本音だ。環境保護のための技術だって、日本は際立って高い。国際金融センターになるには環境保護は欠かせない。

 21日夜、王毅外相は「日本がどうしても会ってくれと希望している」という趣旨のことを言っている。「会いたかったら正しい歴史認識を持て」と言わんばかりに上から目線だ。

 今年は戦後70周年記念。中国は「反ファシズム戦勝70周年記念式典」と「抗日戦争戦勝70周年記念式典」を大々的に開催することに変わりはない。その意味での対日強硬路線が変わることはあり得ないと断言できる。

 しかしその一方で、本当は日本のノウハウと資金、そして技術を欲しがっているのではないのか。

 中国の中央テレビ局CCTVは長い時間を割いてバンドン会議における習近平国家主席の行動を大々的に報道した。その中で目立ったのは「AIIBと一帯一路」に関する話で、安倍首相にも「AIIBと一帯一路は、世界の多くの国に歓迎されている」と強調し、その流れの中で、日本がアジアの平和と安定に貢献するように言ったとしている。

 日本の報道からは出て来ないが、日中首脳会談で「AIIBと一帯一路」に触れたのは確かだろう。

 CCTVの報道は、習近平国家主席が安倍首相に「互いに脅威にならないように」と「歴史認識が根幹だ」とクギを刺したという、強い語調の導入で始まったが、最後は「AIIBと一帯一路」で締め括っている。

 ここに中国の建前と本音がにじみ出ていると、筆者には見えた。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士



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2015年04月21日

バンドン会議、日中首脳会談のゆくえ――李克強首相が河野代表らに会った理由(遠藤誉氏)

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 22日から始まるバンドン会議で日中首脳会談の有無が注目されている。
 14日に李克強首相が河野代表ら訪中団と会った裏には、同会議における安倍首相の講演内容を牽制し、首脳会談の可否を決める中国側の腹がある。

◆中国にとってのバンドン会議の大きさ

 4月22日〜23日、インドネシアのジャカルタでアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年を記念する首脳会議が開かれる。

 バンドン会議は1954年に中華人民共和国(中国)の周恩来首相とインドのネール首相が中印会議を開いたことに端を発し、1955年に「中国、インド、エジプト、インドネシア、パキスタン、スリランカ、ビルマ」を中心に開かれた「アジア・アフリカ会議」で、最初にインドネシアのバンドンで開催されたことからバンドン会議という。

 当時、国連に加盟しておらず、国際社会から国家として承認されていなかった中国としては、何としても国際社会における横のつながりが欲しかった。だから中国にとって、バンドン会議は唯一の拠り所であったと言っても過言ではない。

 そのため中国は早くから「アジア・アフリカ研究所」や「アジア・アフリカ局」を至る所に設立し、大学の中にも各政府部門の中にも深く根を下ろしていた。筆者はしばらくの間、北京大学アジア・アフリカ研究所にいたことがあるので、その重きの置き方を実感している。

 習近平政権が、今年、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立に向けて急激に動き始めたのも、時期としてはバンドン会議60周年記念という節目に合わせている側面もある。

 4月16日付本コラム「中国金融大動脈――AIIBと一帯一路」でも記したように、中国の一帯一路構想をAIIBに結び付けて紹介するときに、中国ではよくインドネシアが例に挙げられることからも、そのことが窺(うかが)われる。

◆日中首脳会談に対する中国の姿勢

 河野洋平元衆議院議長が会長を務める国際貿易促進会一行が、4月14日、李克強首相と会談した。ここのところ汪洋副首相(中共中央政治局委員)が対応していたのに、今年はランクが上がって、李克強というチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員会委員)の党内序列ナンバー2が会談したということは、日中関係緩和の兆しかという憶測もあった。

 しかし、そういうことではない。

 中国としては、今年戦後70周年に当たり安倍首相が新たに談話を出すことに関して、「歴史認識を忘れるなよ」、ということを警告し、牽制することが目的であった。

 なぜなら河野氏は、いわゆる「河野談話」を出しており、「村山談話」に関しても否定する考えを持っていないことを中国は知り尽くしているからだ。だから河野氏を「政治家として素晴らしい勇気と覚悟を持っている」と持ち上げて安倍政権および安倍首相が出すであろう戦後70年談話を牽制したのである。

 村山談話には「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」、「痛切な反省」と「心からのお詫びの気持ちを表明」などの言葉がある。

 このうちの「植民地支配と侵略」「反省」「お詫び」といったキーワードが安倍談話にあるか否かが、中国の関心事だ。それを踏まえて、李克強首相は会談の冒頭、「歴史問題を正しく認識する原則精神」を強調し釘を刺した。

 見落としてならないのは、それはただ単に戦後70年談話に対する牽制だけでなく、実は近くはバンドン会議で話す機会を得るであろう安倍総理のスピーチ内容に対する牽制でもあった、ということである。

 だからこそ、汪洋副首相ではなく、李克強首相という、党内序列の高い人物を当ててきた。牽制する力が、汪洋よりは大きくなるだろうとの、中国側の計算があったからだ。

 バンドン会議における安倍首相のスピーチを戦後70年談話の原型と、中国はみなしている。だからそこに中国が「歴史問題を正しく認識する原則精神」とみなすキーワードがあるか否かが、大きな関心事なのである。

 安倍首相はあくまでも戦後70年談話を「未来志向」のものとしたい考えを貫いており、過去の言葉をそのまま踏襲するとは限らないと言明している。

 中国では安倍首相のスピーチには「謝罪」の言葉がないのではないかと危惧している。つまり、「反省」はあっても、「戦後平和を守り、国際貢献をしてきた」という、安倍晋三型「未来志向」に留まるのではないかという憶測が中国では飛んでいる。

 となれば、バンドン会議における日中首脳会談の可能性も危うくなってくると、中国メディアは報道している。

 習近平国家主席は、安倍首相のスピーチの内容によって、会談を行うか否か、また行うとしても、どのような接触の仕方になるかを決める可能性は大きい。

 ただ思うに、このような「踏み絵」のような外交は本来あってはならない。

 日本の代表が、訪中した際に中国のどの序列の人物と「会ったか」という事実を、「誰が会ってくれたか」という形でとらえる(自慢する?)日本側関係者がいることも、逆にその傾向を増幅させてはいないか。朝貢外交ではないのだから、日本の成すべきことを堂々と成したうえで、「誰と会った」という対等の立場でなければならないはずだ。
(ヤフーより)

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

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2015年04月20日

G7会談でなぜ海洋安全問題共同声明?――中国、日本を批判(遠藤誉氏)

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 4月16日、ドイツで開かれたG7外相会談で、東シナ海や南シナ海に関する共同声明を出した事に対して、中国が「経済金融を討議するG7が海洋安全に関する共同声明を出したのは40年来の歴史で初めてだ。日本の秘かな策略」と非難。

◆G7外相会談共同声明

 4月16日(現地時間15日)、ドイツのリューベックでG7先進7カ国の外相会談が開かれた。日本からは岸田外務大臣が出席し、東シナ海や南シナ海で中国が海洋進出の動きを活発化させていることなどを踏まえ、「現状変更や緊張を高める一方的な行動を懸念し、力などによるいかなる試みにも強く反対する」などとした共同声明を発表した。

 それによれば、「大規模な埋め立てを含め、現状を変更し、緊張を高める、あらゆる一方的な行動を懸念し、力などによるいかなる試みにも強く反対する」としている。

 AIIB(アジアインフラ投資銀行)に関しては共同声明には盛り込まず、「公正な統治の確保が重要」「情報の共有などで連携」といった共通認識を持つことに留めている。

 会談に参加した岸田外務大臣は、厳しさを増すアジアの安全保障環境について自ら議論をリードしたとして、「存在感を示すことができた」と記者団に語っているが、中国はむしろこの点を取り上げて、激しく日本批判を展開している。

◆新華網が「日本の策略によりG7にゴリ押し声明」

 中国政府の通信社である新華社のウェブサイト「新華網」は、4月17日、強推七国集団声明 日本暗蔵心機(日本の秘かな策略により、G7にごり押し声明を出させる)という見出しで、日本を批判する記事を出している。その内容に沿って、中央テレビ局CCTVでも、全く同じタイトルの番組を特集し、17日に報道した。

 その概要をご紹介する(用語は中国の報道に準じる)。

――周知のように、G7は主として経済問題を討議するクラブである。だというのにドイツのリューベックで開催されたG7外相会議は、なんと東シナ海や南シナ海に触れた「海洋安全問題」に関する共同声明を出したのだ。これは40年来の歴史の中でも、初めてのことである。

 これを言い出したのは日本で、そのために日本は大量の裏工作をしていることを、新華社の記者は発見した。日本はなぜ、そのようなことをする必要があるのか?その政治的外交的手段の裏に隠れている狙いを見てみよう。

 日本の某外務省高官が明かしたところによれば、「日本はG7の中の唯一のアジアのメンバーだ。もし日本が言い出さなかったら、いったいどの国が海洋安全問題に関して文書を出すことを、G7国に対して説得できるだろうか?」とのこと。

 なぜG7が海洋安全問題を議題として討論しなければならなかったかに関して、議長国ドイツのシュタインマイヤー外相は記者会見で「来年のG7サミットの議長国として、日本は今後数年内の議事日程にこの議題を出すことに対して非常な関心を持っているからだろう」と述べた。

 なぜ日本がこんなにまで海洋安全問題を気にしているかに関する解答を見つけるには、まずは「海洋安全に関する声明」を読んでみなければならない。

 すると海上通商とか密輸密入国あるいは海賊、生物多様性などという、わざわざ声明を出すには及ばない内容以外に、「われわれは継続して東シナ海や南シナ海の情勢、特に大規模な埋め立てなどによる緊張の増加や一方的な現状変更の試みに注意を払う。威嚇や脅迫、および武力による領土あるいは海洋の拡張に対しては、断固として反対する」とある。

 そして今年の終わりごろに海洋安全問題に関するG7ハイレベル会議を開くと謳っている。

 これは明らかに日本がG7を引きずり込んで中国に圧力を加えようとしていることが見て取れる。G7の力を使えば、中国にかける圧力が大きくなると、日本は思っているのだ。

 しかし残念ながら、G7の影響力は近年ますます下がっており、特に最近では、G7はすでに一枚岩ではない。同盟国としてのメンツを配慮し、海賊退治などの内容があるので日本に同調する形を取りバランスを考慮しているが、(日米以外は)日本のために東シナ海や南シナ界における立場を鮮明にしたくないのがG7諸国の本音だ。どの国も日本の権威を認めてはいない。

◆AIIBに加盟しているのだから、とまでは言わないが…

「なぜなら、G7諸国の多くは中国が主導するAIIBに加盟しているのだから」とまでは、さすがに書いてないが、行間を読めば明らかに「G7という虎の威を借りようたって、そうはいかない。今はもう通用しないんだよ。日本の味方をする国は(アメリカ以外)、もういない」と中国は言いたいのだということが伝わってくる。

 記事もテレビも、「日本の安倍首相は至るところで中国を悪しざまに言って、あたかも日本が被害者であるようなことを言い、日本は国際法と国際規則を守っている国であるかのように宣伝している」としている。まるで、「もうどの国も、日本ではなく、中国を高く買っている」と言わんばかりだ。

 AIIB加盟国の多さを盾に、今後もこの手の視点からの日本批判が続くことが予測される。日本はそれを踏まえて、国益を損なわない外交戦略を練っていくことが求められる。
(ヤフーより)

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士



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中国への主導権移行防げず――G20でアメリカの弱体化顕著(遠藤誉氏)

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 ワシントンで開かれていたG20財務相・中央銀行総裁会議は、世界の主導権が米国から中国に移りつつあることを否応(いやおう)なく示した。
 中国主導のAIIB参加国が多勢を占める中、IMFの改革を進めない米国への批判が高まった。

◆AIIB秘書長の記者発表と朱光耀財政次官の講演

 4月15日、アジアインフラ投資銀行AIIBの総裁と目されている金立群・現AIIB秘書長は、この日を以てAIIB参加国が57ヶ国になったことを宣言した。
 同氏によれば、アジア域内参加国の出資比率を75%とし、西側先進国などの域外参加国の出資比率を25%に抑えるとのこと。また各域内外の参加国の出資額は、当該国のGDP比率によって決めるとした。

となれば、おのずと最大出資国は中国となる。

 その上で「発言権は出資額に比例する」としたのである。

 中国は、初期投資は1000億ドルではあるものの、いずれアジアインフラ建設の10年間のニーズに当たる8兆ドルのうちの30%〜40%に相当する、約4兆ドルは中国が出すことになるだろうとしている。

 6月までには理事会や取締役会などの定款を作成し、あくまでも新興国の発言権を保障しながら各国の利益を図るもようだ。今後参加する国は「創設国」ではなく、「一般国」扱いとなる。本部を北京に置くことも、すでに参加国の間で承認された。

 ここまでの準備をした上で、中国は財務相・中央銀行総裁関連の人物を、G20に参加するためワシントンに送った。

 日米を除き、G20参加国のほとんどはAIIB参加国である。

 それだけですでに圧巻だが、アメリカの影の薄さが際立っている。
 というのも、中国がAIIBを設立せざるを得ない背景の一つに、アメリカ主導のIMF(国際通貨基金)や世界銀行の硬直性があるからだ。

 4月17日、中国の朱光耀・財政部副部長(日本の財務次官に相当)は、ワシントンにあるアメリカのシンクタンク大西洋理事会の招聘を受けて講演を行った。

 演題は「中国から見たアジア太平洋の繁栄」で、話のテーマは「アジアインフラ投資銀行(AIIB)と世界銀行は補てん関係にある」と「米議会が一刻も早くIMFの出資比率に関する改革案を通すことを促す」だ。以下、中国大陸のメディアから、朱光耀財務次官の講演概要を記す。

――70年の歳月が過ぎた。しかしブレトン・ウッズ体制(1944年7月に第二次世界大戦以降の国際金融を考えて決められた国際通貨体制。金ドル本位制)は今もなお、IMFと世界銀行という二大国際金融機関を通して作用を発揮している。
 1980年代に中国はIMFと世界銀行に加入したが、中国はいまやこの二大金融機構の非常に重要なメンバー国となっている。
 中国はIMFや世界銀行の能力を高めようと惜しみない努力をしてきた。同時に(中国を含めた)発展途上国の出資比率を増加させ発言権を強める方向での機構改革を求めてきた。

 その結果アメリカは2010年に改善することを約束しながら、5年経った今もなお実行していない。

 だから中国はAIIB創設を提案せざるを得ないのであり、アジア諸国の「要想富、先修路(富みたいと思えば、まずはインフラを整えよ)」という思いを一つにしようとしているのである。

 われわれは決して既存の金融機構を壊そうというものではない。あくまでも補てんするだけである。AIIB創設に当たっては、提案する前からアメリカに話をして協力を求めた。アメリカ議会がIMFの出資比率に関して改善を決議することを期待する。

◆IMFのラガルト専務理事もアメリカに不満

 現在IMFの専務理事であるフランスのクリスティーヌ・ラガルド女士は、2014年6月6日、「なんなら、IMFの本部を、たとえば北京に移すことだってあり得る」と言ったことがある。
 ブルームバーグの“Beijing-Based IMF? Lagarde Ponders China Gaining on U.S. Economy”が伝えている。

 IMFは歴代専務理事を主としてヨーロッパ諸国から出しており、本来ヨーロッパ主導で管理運営されてきたが、出資比率に関してアメリカがダントツに多く(17%)、単独で拒否権を発動できる権限を持っている。
 そのことにヨーロッパも面白くないと思っているのだ。
 中国はここをしっかりつかんでいて、フランスやドイツと蜜月を続けてきた。

 今般のG20が開幕する前の4月16日、アジア、アフリカおよび中南米の24の開発途上国の金融・財務関係者から成るG24がワシントンで会合を開き、AIIBを支持する共同声明を発表している。
 それは明らかにアメリカ主導型の既存の国際金融機構への不満の表れだ。

◆焦る米国にIMF委員会が追い打ち声明

 これらの動きを受けて、オバマ大統領は日本にTPP(環太平洋経済連携協定)締結を急がせている。「われわれがルールを作れない場合、中国が自国に有利なルールを作るだろう」と、4月17日、危機感をあらわにしている。  

 前回の本コラムで中国金融大動脈――AIIBと一帯一路という、中国の世界戦略を述べた。「紅い皇帝」習近平のしたたかな世界戦略が現実味を帯び、アジア回帰しようとするアメリカを追いこんでいる。この趨勢をとめられるのか? 

 まるで最後の追い打ちをかけるように、4月18日、ワシントンで開催されたIMF委員会は「アメリカの改革の遅れに失望している」という声明を出した。
 あの知的で美しいラガルド専務理事の銀髪と毅然とした目つきが、キラリと光った。

 時代が変わりつつあることだけは否めない。
(ヤフーより)

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士



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2015年04月16日

中国金融大動脈――AIIBと一帯一路(遠藤誉氏)

今日(16日)の読売新聞(都内版)に、ボクシング元太平洋王者・坂本博之さんの記事「福岡市・ハングリー精神の原点」が大きく載っていました。
是非、お読みください。

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 4月14日、中国中央テレビ局CCTVは、「中国金融大動脈」と題して、アジアインフラ投資銀行AIIBと中国の国家戦略「一帯一路」(陸と海の新シルクロード経済構想)が、いかに緊密に結びついているかを特集した。
 その真意を追う。

◆AIIBは「一帯一路」構想完遂のためにあるのか?

 14日のCCTVは「一帯一路建設は資金の融通性と切り離すことができない」として、「中国金融大動脈」というタイトルで、「一帯一路」という中国の国家戦略は、AIIBという国際金融融資組織があってこそ真の大動脈となり得ることを強調した。

 一帯一路というのは、前にも本コラムで解説したが、「陸と海の新シルクロード構想」という、中国の国家戦略を指している。

「一帯」は中国をスタート地点として、早くから経済協力していた新疆ウィグル自治区の西側を囲んでいる中央アジア五ヵ国との新シルクロード経済圏を、さらに西へ西へと延ばして、終点をEUとする「新シルクロード経済ベルト(帯)」を指す。

「一路」は中国の東海岸にある福建省や広西チワン族自治区をスタート地点として、東シナ海、南シナ海、インド洋を通って、中東やアフリカをかすめながら、やはり終点をEUに置く、新シルクロード海路のことである。

 この一帯一路沿線上の国々のインフラ建設に関して、中国の生産能力過剰となっているインフラ関係の企業を進出させ、それとともに中国の金融サービス機関も同時に海外進出させて、これをAIIB構想と連携していくというのが、中国の大戦略である。

 たとえば、中国のセメント工場が海外進出をする場合、中国銀行も共に海外進出して、これからの3年間で1000億ドルの融資をして一帯一路沿線上の国々の産業を支えていく。

 建設銀行も2000億元(現在、1元は19.26円)の「一帯一路資金」を投入して、「融資、信用貸付、資金導入」を実施していくという。

 また国家開発銀行は重点プロジェクトに対して資金をプールし、一帯一路沿線上の64ヶ国の約900項目の大プロジェクトに対して8000億ドルを投入する。工商銀行も協調して、一帯一路沿線国の131項目のプロジェクトに対して1588億ドルを投資する。

 大きなプロジェクトだけでなく、一帯一路沿線国の庶民の日常生活においても中国銀聯カード(チャイナ・ユニオン・ペイ)(中国を中心に拡大しているオンライン決済システムを運営する企業のクレジットカード)を使うことができ、アラブ首長国連邦ではすべての商店で使うことができ、パキスタンでもATMの70%、POSの90%をカバーしている。

 ただし、アジアインフラ整備のニーズにおいては、個別の銀行の対応ではこなしきれず、どうしてもAIIBのような国家間の国際金融サービスが不可欠となる。

 中国はシルクロード基金だけでも、すでに400億米ドルを投資しており、これからはAIIBが一帯一路のインフラ建設を支えていくことになるだろう。

 番組は、基本的にこのような位置づけをした上で、個別の国の例を挙げている。


◆たとえば、インドネシアの場合

 インドネシアのカリマンタン州では、中国の最初のセメント工場が進出した。それにより毎日6000トンのセメント生産が可能となり、地元最大のセメント工場となっている。

 企業責任者は、「これまでは、ここまで大きな資金需要が海外にあるとは思いもよらず、また地元の銀行は中国企業の生産能力がわからず、文化や言語の上でも交流が不便で融資を渋ってきた。だからインフラ関係の中国企業の海外進出を困難にしていた。しかし今はこうして中国国内の銀行が、われわれ企業と共に海外に進出してくれるので、どんなに助かるかしれない」と、金融サービス機関の海外同時進出を歓迎している。

 インドネシア側では大量のセメントを用いて橋や高層道路などのインフラ建設を急ぐ必要があり、セメント生産量を2500万トンまで高めていくことができると、目を輝かしていた。

 それに伴い、中国銀行は一帯一路沿線上で16の支店を建設し、必要資金の90%をカバーするとのこと。


◆ビッグデータが示すAIIBのニーズ

 一方、ビッグデータは、アジアインフラ建設の内、最も必要なのは「高速鉄道と高速道路と地下鉄」だということを示している。そして一帯一路沿線国家が最も望んでいるのは「人民元による国境をまたいだ決済」であり、「人民元の貸し出し」と「人民元の域外投資」であることも、ビッグデータは示しているとのこと。

 一帯一路沿線上の主要国のうち、人民元決済を望んでいる国の割合は60%で、中でもイギリスでは86%の企業が人民元取引を望んでいるという。

 さまざまな形における多くの金融機関の協力は、一帯一路の資金融通の橋梁となり、将来的にはAIIBの始動が、中国金融の大動脈となっていくであろうと、番組は結んでいる。


 以上からまず見えることは、アジアにはたしかに高いインフラニーズがあり、同時に資金の融通が伴っていないと困るということだ。しかしそれ以上に、アジア諸国のインフラ建設のために動き始めるAIIBは、決して「中国以外のアジア諸国のためのもの」ではなく、それもあろうが、結果的にはあくまでも「中国のための一帯一路」という構想をサポートするものであることが鮮明になってくる。

 紅い皇帝は弾薬一つを使うことなく、中国古来の権謀術数によりAIIB参加国を集めるプロセスでひとり勝ちしているが、逆にAIIBは、中国のための一帯一路構想達成においても、紅い皇帝のひとり勝ちを許すことになるという構図が見えてくる。
「したたか」を通り越して、よくぞここまでスケールの大きな計算を「中国」のために練ったものだと感心する。

 と同時に、よくぞここまで正直に「下心」を番組化したものだと、半ば感心し、半ば呆気(あっけ)に取られながら、「中国金融大動脈」を観た。

 AIIBに参加するか否かに関して、日本はまだ迷っているようだが、この側面も、よく見極めておく必要があるだろう。
(ヤフーより)

遠藤誉
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