安保・防衛政策

2017年09月12日

第51回自衛隊高級幹部会同 安倍内閣総理大臣訓示(平成29年9月11日)

本日、我が国の防衛の中枢を担う幹部諸君と一堂に会するに当たり、自衛隊の最高指揮官たる内閣総理大臣として、一言申し上げたいと思います。
 九州北部豪雨の現場で、濁流に漬かりながら、人命救助や行方不明者の捜索に当たる諸君。豪雨が続く被災地では、避難される方々に寄り添い、心の支えとなりました。
 灼熱(しゃくねつ)のアデン湾、南スーダンで世界の平和と安全のため、黙々と汗を流す諸君。自衛隊の諸君の、高い使命感に裏打ちされた懸命な姿が、私だけでなく、多くの国民の瞼(まぶた)に浮かびます。

 北朝鮮による、我が国上空を飛び越えるミサイル発射や核実験という暴挙。
 自衛隊は、発射直後から落下まで、ミサイルの動きを、切れ目なく完全に探知・追尾していました。速やかな放射能調査により、国民の安全を確認しました。北朝鮮がミサイル発射の検討を表明した時には、即座にPAC−3部隊とイージス艦を展開させました。県民の安心につながった。迅速な対応に感謝する。島根、広島、愛媛、高知の知事からの言葉です。
 国民の負託に全力で応え、与えられた任務を全力で全うする隊員諸君。国民から信頼を勝ち得ている自衛隊員は、私の誇りであります。

 同時に、我々は、信頼に応える責任の重みを、噛(か)み締めなければならない。南スーダンの日報問題をめぐっては、国民の皆様から大きな不信を招く結果となりました。最高指揮官として、国民の皆様に、おわびを申し上げたいと思います。

 真に国民のための自衛隊たれ。自衛隊創設以来のこのすばらしい理念を、今一度、しっかりと胸に刻み、国民の負託に応えていく。最高指揮官たる私自身が、先頭に立って、皆さんと共に全力を傾けたいと思います。

 かつて、東西冷戦構造の下では、脱脅威論、すなわち、目の前の脅威に直接対抗しない、という考え方が、我が国の防衛政策の中核でありました。しかし、厳しさを増す我が国の安全保障環境を前に、我々は、目の前の現実に、真正面から向き合わねばなりません。
 安全保障政策を立て直す。この信念から、10年前、国の防衛という国家の最も基本的な権能を担う組織の、在るべき姿として、防衛省を設置しました。二次政権発足後、国益を長期的視点から見定め、我が国の安全を確保していくため、我が国初となる国家安全保障戦略を策定し、その司令塔として国家安全保障会議を設置しました。積極的平和主義の下、防衛装備移転三原則を策定し、さらに、限定的な集団的自衛権の行使を含む平和安全法制を制定、及び、新たな防衛協力ガイドラインを日米で合意しました。
 我が国を取り巻く安全保障環境の現実を直視するとき、これらの政策は、全く間違っていなかった。私はそう確信します。

 北朝鮮による、我が国上空を飛び越えるミサイル発射や核実験という暴挙。相次ぐ国籍不明機による領空接近。真正面から向き合い、こうした枠組みの下で、万全の対応をとらなければなりません。
 安全保障政策の根幹となるのは、自らが行う努力であります。自らの手で、自らを守る気概なき国を、誰も守ってくれるはずがありません。同時に、地域の平和と安定なくして、我が国の平和もあり得ません。

 我が国自身の防衛力を強化し、自らが果たし得る役割の拡大を図っていく。小野寺大臣には、防衛大綱の見直しと、次期中期防衛力整備計画の検討を指示しました。これまでの考え方を、所与のものとすることはできません。将来の在るべき防衛力の姿に思いを致し、これからの時代にも妥当性があるのかどうか、不断の検討を行っていくことが必要です。自衛隊が向き合う現実を、一番よく知るのは、今日、この場にいる諸君であります。
 現場からの忌憚(きたん)のない意見を積極的に提示してもらいたい。諸君の貢献に期待しています。

 国民の安全を守り、地域の安定を維持するためには、日米同盟の強化が不可欠です。助け合うことのできる同盟は、その絆を強くする。平和安全法制と新ガイドラインの下、日米の絆は、かつてない強固なものとなっています。北朝鮮が挑発行為を繰り返す中、その脅威を抑止しなければならない。
 今年、日本海で米空母2隻と史上初となる日米共同訓練を行いました。戦略爆撃機との共同訓練も重ねています。我々は、米国と共に防衛態勢と能力の向上を図るべく、具体的な行動をとっていかなければなりません。

 普遍的価値と戦略的利益を共有する国々との協力の強化も極めて重要です。今年、史上初めて、日本、米国、英国、フランスの4か国による共同訓練を行いました。インドと米国との3か国の共同訓練「マラバール」も、今後、恒常的に実施していきます。
 連携強化のインフラであるACSA(物品役務相互提供協定)についても、今年、豪州、英国との協定を締結し、フランスと締結交渉を開始しました。今後とも、戦略的な国際防衛協力を積極的に推進してもらいたいと思います。

 昨年、この場で、適者生存という言葉を紹介しました。生存競争において、勝ち残ることができるのは、最も力がある者ではありません。その環境に最も適応した者。すなわち、環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できた者であります。

 その一例として、自衛隊が新たな時代に適応できるかどうかの試金石は、女性活躍であると申し上げました。残念ながら、昨年、この場に女性の将官の姿はありませんでした。
今年は、近藤奈津枝さんが列席している。大変、うれしく思います。
 男性中心の働き方文化の改革。改革は、これで終わりではありません。
 新たな時代に適応する。自衛隊は、ここ数年、大きな組織改革、制度改革を積み重ねてきました。これらの真価を発揮させるには、より一層、一体的かつ機動的な組織文化へと、変革を遂げていく必要がある。

 国民目線を忘れず、全体を俯瞰(ふかん)しながら、柔軟に事に当たる。諸君の行動の一つ一つが、変革につながります。新たな組織と制度に、しっかりと魂を入れていってほしいと思います。

 そして、最高指揮官たる内閣総理大臣と、防衛省、自衛隊が、一体となって、事に当たることができるよう、常に心を砕いてほしい。そう思っています。

「只今がその時、その時が只今なり」

 江戸時代の武士、山本常朝(じょうちょう)の「葉隠(はがくれ)」に記された言葉です。常日頃から、備えを万全とするために、不断に自己を磨く。

 国際情勢は、一層複雑化し、私たちが望むと望まざるとに関わらず、激変を続けています。昨日までの平和は、明日からの平和を保障するものではありません。

 こうした状況の変化を、しっかりと見定めながら、あらゆる事態に備え、国民の命と平和な暮らしを守る。この崇高な任務に対し、いかなる困難にもひるまず、強い使命感を持って、たゆまぬ努力を続けていただきたい。

 国民の生命・財産、領土・領海・領空を断固として守り抜く。最高指揮官である私を含め、一人一人が、国民の負託に応えるため、全力を尽くしていかねばなりません。諸君と共に改めてそのことを誓いたいと思います。

 私と日本国民は、常に、諸君を始め全国25万人の自衛隊と共にあります。その自信と誇りを胸に、日本と世界の平和と安定のため、ますます精励されることを切に望み、私の訓示といたします。


平成29年9月11日
自衛隊最高指揮官
内閣総理大臣   安倍 晋三


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2017年06月29日

自衛隊に関するよくある間違い――「自衛隊は捕虜にならない」はウソ

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<文・自民党政務調査会審議役・田村重信>

 自衛隊の国際法上の位置づけ

 前回、「安倍首相の改憲発言を議論する前に押さえておきたい憲法と自衛隊の基礎知識」で、「自衛隊は憲法上、軍隊ではない」と申し上げました。

 では、「自衛隊の国際法上の位置づけ」はどうなっているのでしょうか。

 自衛隊は、憲法上、必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の厳しい制約を課せられております。通常の観念で考えられます軍隊ではありませんが、国際法上は軍隊として取り扱われておりまして、自衛官は軍隊の構成員に該当いたします。〈中山太郎外務大臣答弁・衆議院本会議・平成2(1990)年10月18日〉

 この答弁にあるように国際法上は、自衛隊は軍隊として取り扱われているわけです。つまり、自衛隊は国際法上、軍隊として扱われる一方で、日本国内では、軍隊ではなく、「自衛隊」と呼称するというように、二重の扱いがなされているのです。

 だから、この自衛隊の位置付けは、憲法と安全保障政策上の問題として、憲法改正をめぐる議論のポイントになっているのです。


 国際法上、自衛隊は捕虜になれない?

 この点をみなさん、よく誤解しています。例えば、月刊『文藝春秋』(2015年11月号)の「保守は『SEALDs』に完敗です」という対談で、元SEALDsの奥田愛基氏が、「現状、自衛隊は軍隊ではありませんから、自衛官は、万が一拘束された時に国際法上の捕虜にもなれません」と発言しました。

 ジュネーブ諸条約の一つである「捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーブ条約(第3条約)」には、第4条Aで次のように書かれています。

 この条約において捕虜とは、次の部類の(1)に属する者で敵の権力内に陥ったものをいう。
(1)紛争当事国の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員

 自衛官は国際法上は軍隊として扱われますから、戦争で捕まれば捕虜になります。これについては次のような政府見解があります。

「自衛隊は、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、自衛権行使の要件が満たされる場合には武力を行使して我が国を防衛する組織であることから、一般にはジュネーブ諸条約上の軍隊に該当すると解される」

 以上のことから、自衛官が捕虜になった場合は、ジュネーブ諸条約上の捕虜として扱われるという結論になるわけです。


 自衛隊は「捕虜になれない」という誤解はなぜ起ったのか

 ではなぜ、奥田氏は「捕虜になれない」などと発言したのでしょうか。それはきっと、平和安全法制が国会で議論されている際に、PKOの時に自衛隊が捕まった場合にはどうなるのかとの質問に対し、外務大臣が「捕虜になりません」と答えたのを文字通り受け取ってしまったからでしょう。

 しかし、これはそもそも前提が全く違います。自衛隊は、戦争でPKOに行くわけではないので、ほとんどそのようなことは想定されておらず、捕虜にならないのは当然です。だから、外務大臣はそう言ったわけです。

 もっと詳しく言えばこういうことです。重要影響事態法及び国際平和支援法によって自衛隊が他国軍隊に対して後方支援を行う場合、我が国がそのこと自体によって紛争当事国になることはないことから、そのような場合に自衛隊員が国際人道法上の捕虜となることはない。ただしその場合であっても、国際法上、適正な活動を行っている自衛隊員の身柄が少なくとも普遍的に認められている人権に関する基準並びに国際人道法上の原則及び精神に則って取り扱われるべきことは当然である、というわけです。


 マスコミは憲法と自衛隊の関係を正しく理解して報道すべき

 このような初歩的な誤りに気付かず掲載してしまうマスコミ編集者にも問題があります。どうしてこうした誤りが生まれるのでしょうか。それは、奥田氏も編集者も、憲法と自衛隊に関する政府の公式な見解をキチンと踏まえていないからです。憲法と自衛隊の関係についての基本中の基本がみんなわかっていません。

 日本は憲法9条の建前から言えば戦力は持てない。だから日本には通常の観念で考えられる軍隊がないということになる。では日本の独立はどうやって守るのだ。自衛隊である。自衛隊は必要最小限度の実力組織だからよしとなる。

 では国際法上の評価は? 国際法上は自衛隊は軍隊として扱われる。それはすなわち捕虜としても扱われるということ。ただし、外国に行ったら軍隊だから外国の軍隊と同じように活動し、武器の使用ができるかというと、これはまた違う。「武力行使と一体化しない」というようにする等、日本国憲法の制約の中で法律を作っていくから非常に厄介な仕組みになっている。

 日本の安全保障法制を論じる場合、このような基礎知識をキチンと理解していない誤った議論が非常に多いのです。マスコミ関係者も、必要最小限度の安保法制を正しく理解しないと読者をミスリードすることになります。
 
 しかし、一番の問題は、当のマスコミ関係者や憲法学者などがこうした安全保障法制に関して、正しい政府見解を理解しようとすらしないことなのです。


【田村重信(たむら・しげのぶ)】
自由民主党政務調査会審議役(外交・国防・インテリジェンス等担当)。拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー。昭和28(1953)年新潟県長岡市(旧栃尾市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会(大平正芳事務所)勤務を経て、自由民主党本部勤務。政調会長室長、総裁担当(橋本龍太郎)などを歴任。湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案等に関わる。慶應義塾大学大学院で15年間、日本の安保政策及び法制に関する講師も務めた。防衛法学会理事、国家基本問題研究所客員研究員。著書に『改正・日本国憲法』(講談社+α新書)、『平和安全法制の真実』(内外出版)他多数。最新刊は『知らなきゃヤバい! 防衛政策の真実』(育鵬社)

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安倍首相の改憲発言について議論する前に押さえておきたい「憲法と自衛隊」の基礎知識

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<文・自由民主党政務調査会審議役・田村重信>

 自衛隊と憲法について論じる時の大事なポイント

 憲法改正について、安倍首相が9条1、2項を維持して「自衛隊を明記」する案について発言後、改憲議論が加速しています。これについて、与野党の政治家や憲法学者、評論家、マスコミが賛否を述べています。議論することは悪いことではありません。安倍首相はいい問題提起をされたと思います。

 私は、湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案等に関わってきましたが、自衛隊と憲法の関係について議論する上で大事なポイントがあります。私は慶應義塾大学大学院法学研究科で安全保障講座の講師も15年間務め、日本の大学院生だけでなく、中国・韓国などからの留学生にも教えていました。そこでは、最初にそのポイントを学生たちに伝えていました。

「主義信条や考え方の違いはあるだろうが、好き嫌いを別にして政府の公式な考え方、解釈がどういうものなのかをきちんと押さえることが大事だ。それを勉強しないで、俺はこう思うと言ったって、それは学問ではない。まずそれぞれの事実関係と経緯を押さえておくことが必要だ」

 特に憲法と自衛隊の関係については、歴史的経緯も含め、まず政府の考え方をきちんと押さえた上で、多方面からの議論をしましょうと心がけておりました。

 中国や韓国からの留学生らも、「自分の本国で聞いている話と、田村先生がおっしゃっている話、違うよ。でも、田村先生のお話が正しいね」という具合に、だんだんと理解してくれるようになりました。事実を正しく伝えることがいかに大事なことなのか、私も教えられました。


 自衛隊は軍隊か?

 まずは自衛隊の位置付けですが、これすら国民に正しく理解されていません。日本の大学には安全保障の講座がほとんどなく、良質な専門書も少ない。だから政治家や新聞記者、テレビのコメンテーターなどもよく間違えています。

 自衛隊は軍隊かどうかという疑問を投げかけると、回答者の半数くらいは「軍隊」と答えます。しかしこれは間違いです。自衛隊は軍隊ではありません。

 憲法と自衛権の関係について考える基本は、憲法第9条がいかに解釈されているかを理解することです。日本国憲法は第9条に、「戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認に関する規定」を置いている。つまり、憲法第9条第2項によれば、我が国は「陸海空軍その他の戦力」を持つことができないとされているわけです。

 政府も、「自衛隊が軍隊であるか否かは、軍隊の定義如何の問題」としながらも、「自衛隊は、憲法上自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課されており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものであって、憲法第9条第2項で保持することが禁止されている『陸海空軍その他の戦力』には当たらない」としています。


 自衛隊は「必要最小限度の実力組織」

 では、自衛隊は一体何なのか。何に基づいて存在する組織なのか。このことに関する政府解釈は以下になります。

 憲法第9条第1項は、独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められているところであると解している。
〈森清議員提出質問主意書に対する答弁書、昭和55(1980)年12月5日〉

 第9条はもとより、「我が国が独立国である以上、この規定は主権国家としての固有の自衛権を否定するものではない」というのが政府の見解です。そして、「我が国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏付ける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上禁止されているものではない」としています。

 したがって、自衛のためには、「必要最小限度の武力を行使することは認められている」ということになります。


 独立国には自衛権がある

 そうした議論の前提として、そもそも日本は独立国である――サンフランシスコ講和条約の発効によって、1952年に独立を回復した――という厳然たる事実があるわけです。

【 サンフランシスコ講和条約第5条】
連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第51条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。

 この事実を踏まえると、日本は独立国で固有の自衛権を持っている、つまり自分の国を守るという権利はあるのだという理路に行き着きます。だから、自分の国を守るための必要最小限度の実力組織を持つことは、憲法に何ら反してはいない、その組織が自衛隊です、というのが先の政府解釈です。


 キーワードは「必要最小限度」

 重要なのは「必要最小限度」という言葉です。これがキーワードと言っていいでしょう。先述の森清議員提出質問主意書に対する政府の答弁書では憲法第9条第2項について、

「憲法第9条第2項は、『戦力』の保持を禁止しているが、このことは、自衛のための必要最小限度の実力を保持することまで禁止する趣旨のものではなく、これを超える実力を保持することを禁止する趣旨のものであると解している。」

 としており、これは「必要最小限度」以下の実力であれば保有が認められ、それを超えると憲法違反となるということを意味しているのです。

 つまり、自衛隊は我が国を防衛するための「必要最小限度」の実力組織であるから、憲法に違反しないというロジックなのですね。ただし、必要最小限度という範囲を超えると、憲法第9条第2項で禁止する戦力になってしまいます。

「政府は従来から、自衛のための必要最小限度を超えない実力を保持することは、憲法第9条第2項によって禁じられていないと解しているが、性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器については、これを保持することが許されないと考えており、たとえば、ICBM(大陸間弾道ミサイル)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母みたいなものは保有することは許されない」と解されています。


 現実を学び、それを踏まえて活発な議論を

 その他にも、自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力行使を超える行為はことごとく禁じられており、その中には「いわゆる海外派兵(武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣すること)の禁止」などがあります。

 ですから、政府解釈も自衛隊が通常の観念で考えられる「軍隊になる」ことを当然ながら認めてはいません。

 この議論は古くから行われてきたものですが、佐藤栄作首相が昭和42(1967)年3月31日に「自衛隊を、今後とも軍隊と呼称することはいたしません。はっきり申しておきます」と答弁して以来、定着してきたものと言えます。

 なんかややこしいですけれど、これが政府の解釈なのです。

 でも、決して詭弁などではない。いうなれば、「必要最小限度」という言葉によって、時の政府はいわく言い難い「生の現実」を、何とか表現しようとしたのではないでしょうか。

 私に言わせれば、自分の国と自国民の命と財産を守るという議論において、観念論は不要です。あくまで現実に即し、現実に立脚した考え方で国と国民の安全を確保しなければなりません。その意味で政府解釈は、自国にとって常に有形無形の脅威が存在するという、リアルな現実を反映したものになっている。そう評価していいでしょう。

 誤解しないでもらいたいのですが、私は理想を語ることを否定しているわけではありません。ただ、現前の風景を直視することなく、単に「俺はこう思う」と言ってもしょうがないでしょう。現実を学び、そのことをきちんと踏まえて議論する必要があるということです。

【田村重信(たむら・しげのぶ)】
自由民主党政務調査会審議役(外交・国防・インテリジェンス等担当)。拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー。昭和28(1953)年新潟県長岡市(旧栃尾市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会(大平正芳事務所)勤務を経て、自由民主党本部勤務。政調会長室長、総裁担当(橋本龍太郎)などを歴任。湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案等に関わる。慶應義塾大学大学院で15年間、日本の安保政策及び法制に関する講師も務めた。防衛法学会理事、国家基本問題研究所客員研究員。著書に『改正・日本国憲法』(講談社+α新書)、『平和安全法制の真実』(内外出版)他多数。最新刊は『知らなきゃヤバい! 防衛政策の真実』(育鵬社)

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2017年06月28日

小学校で教えられていなかった「自衛隊の本当の役割」

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  ヤフーニュースに僕の記事が出ました。好評です。

小学校で教えられていなかった「自衛隊の本当の役割」――永田町の安全保障のエキスパートが解説


 6月20日、平成32年度以降に導入される小中学校の学習指導要領解説書の全容が判明したが、自衛隊の本来の任務について、小学校では今まで教えられていなかったという事実が明らかになった。

 解説書とは指導要領の内容を具体的に説明するもので、教科書会社の編集方針や教師が授業を行う際の手引きになる。

 実は、今まで小学校の学習指導要領と解説書には、役割どころか「自衛隊」という言葉自体どこにも出てこなかった。それでも教科書では、例えば6年生の社会科の教科書には自衛隊が登場しているが、自衛隊の任務については災害派遣やPKO活動だけしか取り上げられていなかった。

 今度の指導要領の改定で、「自衛隊」については、小学校4年生の社会で登場することになったが、災害派遣の活動にしか触れられていない。そのため解説書で、自衛隊について「わが国の平和と安全を守ることを任務とする」と本来の活動について明記することになったのである。

 この自衛隊の任務について、湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案などに関わった、永田町きっての安全保障のエキスパートである自民党政務調査会審議役の田村重信氏に話をうかがった。

◆自衛隊の「主たる任務」とは

 私はかつて慶應義塾大学大学院の安全保障講座で教えていましたが、PKOの講義をする時に、大学院生に、「君たち、PKOって分かるか?」と質問したら、誰も分かりませんでした。事実です。法学部政治学科の学生でも習っていないのは恐るべき話です。

 また、東日本大震災が起こったとき、「自衛隊は災害派遣で一生懸命やってくれて、非常に素晴らしいと思うし、感謝もしています。だけれどこれからは憲法を改正して、戦争できるようになるんですか? そのことについては反対です」という人がいました。

 しかし、災害派遣は自衛隊の「主たる任務」ではありません。では、自衛隊の主たる任務とは何か? 自衛隊の任務は、自衛隊法第3条に明記されています。

<自衛隊法 第3条第1項>

 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。

 自衛隊の主たる任務は「我が国を防衛すること」です。その下に、「防衛出動」(第76条)、「防御施設構築の措置」(第77条の2)、「防衛出動下令前の行動関連措置」(第77条の3)等の規定が置かれています。これらの内容は、まさに国を守る措置ということにほかなりません。

 つまり、自衛隊の一番大事な任務はまさに国を守ること、端的にいえば武力の行使(いわゆる国家・国民のために戦うこと)なのです。

 きれいごとや言葉での脚色を抜きにして語れば、武力を行使して我が国を守ることこそ自衛隊の一番大事な任務だということを忘れてはなりません。

 もちろん戦争が起こらなければ一番いいわけですけれども、他の国から明らかな侵略行為を受けた場合は、自国を守るために武力によって対抗しなければなりません。その武力を行使することが、自衛隊の一番大事な任務なのだということです。

◆災害派遣は「従たる任務」

 その後に書かれている「必要に応じ、公共の秩序維持に当たる」ことは「従たる任務」です。その中に「災害派遣」「国民保護等派遣」「治安出動」「治安出動下令前に行う情報収集」「警護出動」「海上における警備行動」「海賊対処行動」「弾道ミサイル等に対する破壊措置」「地震防災派遣」「原子力災害派遣」「領空侵犯に対する措置」「機雷等の除去」「在外邦人等の保護措置」等があります。

 次に同条第2項です。

<自衛隊法 第3条第2項>

 自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。

1 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動。

2 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動。

 第2項で示される「従たる任務」についてですが、これは「主たる任務の遂行に支障を生じない限度」で、「別の法律の定めるところにより自衛隊が実施することとされるもの」です。その中には「後方地域支援等」「国際緊急援助活動等」「国際平和協力業務等」があります。「後方地域支援」というのが、「重要影響事態安全確保法」に関わるものです。そして、「国際平和協力活動」が国連のPKO活動などです。

 その他にも、自衛隊にはさまざまな役割が課せられています。たとえば「土木工事等の受託」「教育訓練の受託」「運動競技会に対する協力」「南極地域観測に対する協力」「国賓等の輸送」といった付随的業務は、自衛隊法第8章(雑則)で規定され、また、「不発弾等の処理」については、自衛隊法の附則に規定されています。

 自衛隊について教育現場では、今まで冷静かつ客観的な立場から教えられてきたとは残念ながらいえません。これは戦後教育の弊害でした。今回の指導要領と解説書の改定によって、自衛隊の「主たる任務」「従たる任務」について、小学校から適切に教えられるようになればよいと思います。


【田村重信(たむら・しげのぶ)】

自由民主党政務調査会審議役(外交・国防・インテリジェンス等担当)。拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー。昭和28(1953)年新潟県長岡市(旧栃尾市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会(大平正芳事務所)勤務を経て、自由民主党本部勤務。政調会長室長、総裁担当(橋本龍太郎)などを歴任。湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案等に関わる。慶應義塾大学大学院で15年間、日本の安保政策及び法制に関する講師も務めた。防衛法学会理事、国家基本問題研究所客員研究員。著書に『改正・日本国憲法』(講談社+α新書)、『平和安全法制の真実』(内外出版)他多数。最新刊は『知らなきゃヤバい! 防衛政策の真実』(育鵬社)


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2017年06月27日

加速する憲法改正論議――党本部重鎮が語る自民党の青写真

憲法施行70年の節目を迎えた5月に、安倍首相が憲法改正について「2020年の改正憲法の施行」「自衛隊の憲法明記」を発言したことで、今、にわかに憲法改正論議が加速している。

 自民党憲法改正推進本部は6月6日に会合を開き、改憲項目として「自衛隊の明記」「教育の無償化」「緊急事態条項(大災害時を念頭に衆院議員の任期を延長する緊急事態条項の創設)」「参議院選挙区の合区解消」の4つを例示した。自民党は9月にも憲法改正案をまとめ、公明党などと調整の上、最終案を決定し、来年1月の通常国会で憲法審査会に提案するという。

 今後の改正論議をリードしていくと思われる自民党の真意と改正スケジュールについて、湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案などに関わった永田町きっての安全保障のエキスパートである自民党政務調査会審議役の田村重信氏に話をうかがった。


 まったく進まなかった憲法改正論議

 安倍首相はその発言の2日前、5月1日に開催された超党派の議員たちの会合でも、憲法改正について、「機は熟した。今求められているのは具体的な提案だ。理想の憲法の具体的な姿を、自信を持って国民に示すときで、しっかりと結果を出さなければならない」と述べ、「憲法改正を党是に掲げてきた自民党の歴史的な使命ではないか」と訴えています。

 今まで国会の憲法審査会では、野党の意見も聴きながら進めようとしてきましたが、まったく議論が進みませんでした。特に憲法9条の改正については、各政党の間ではどうしても賛否が分かれてしまいます。そこで、9条についてはいったん横に置いて、多くの議員の賛同を得やすいと思われる緊急事態条項などから議論していこうとしていました。

 しかし、よく考えてみれば、民進党はいまだ独自の憲法改正草案を提案できていません。また、日本国憲法の制定当時は天皇条項と9条に反対していた、かつての改憲政党の共産党は、今では憲法を一言一句変えてはいけないという姿勢であり、これではお話になりません。最初から野党の意見を聞いていたら無理です。

 「自衛隊は違憲」議論が生まれる余地をなくすべきだ

 平和安全法制が成立しましたが、最近の北朝鮮のミサイル問題や中国の動向なども考えると、「自衛隊は違憲」などと言っている場合ではなくなるでしょう。自衛隊は国内では軍隊ではありませんが、海外へ出れば国際法上、軍隊とみなされます。また、海外でPKO活動を行い、国内外で災害が起きれば活動する自衛隊を、国民の多くが評価しています。それにもかかわらず、多くの憲法学者や政党の中には、「自衛隊は違憲」とする議論が今なお存在しています。「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任に思います。

 安倍首相は、特に憲法9条に関して、「『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきだ」と述べています。国家と国民のために時には命がけで活動する自衛隊に応え、憲法に「自衛隊を明記すること」は、政治の責任ではないでしょうか。憲法改正で一番大事なのは「自衛隊を明記すること」であることを明確にしたかったから、安倍首相はこの発言をされたのでしょう。


 9条2項改正ではなく自衛隊を憲法に「明記」する意味

 憲法改正は国民投票で過半数の賛成を得なければできませんが、その前にまず衆参各院で総議員の3分の2以上の賛成がないと発議できません。そうすると、もちろん自民党単独では発議できず、連立与党の公明党、そして憲法改正に熱心な日本維新の会にも憲法改正論議に乗ってもらいたい。そういうことを政治的に考えれば、安倍首相のあのような発言は「アリ」だと思います。

 なぜか。それは今回の安倍首相の発言内容は、「加憲」を主張する公明党の考え方とやや似ているからです。また、安倍首相は5月3日のメッセージでもう一つ、「高等教育についてもすべての国民に真に開かれたものとしなければならない」と述べ、日本維新の会などが提案している教育無償化を盛り込むことにも前向きな考えを示しました。まずは、国会で憲法改正に賛成する勢力をきちんと固めることが大事だと考えたのではないでしょうか。

 そもそも自由民主党は昭和30(1955)年11月15日の結党以来、「憲法の自主的改正」を「党の使命」に掲げてきた政党です。しかし、今までは自民党の中でも、憲法改正を進める勢力は大きくありませんでした。その中で、第一次安倍政権下で憲法改正のための詳細なルールを定めた国民投票法が成立しました。そして、再び自民党総裁に返り咲いた安倍首相は、旗印の一つに憲法改正を掲げています。自民党は党の使命を果たすために、安倍首相が中心になって憲法改正を進めていくことになるでしょう。

 安倍首相は、自民党が2012年に公表した憲法改正草案について、「そのまま憲法審査会に提案するつもりはない。柔軟性を持って現実的な議論を行う必要がある」と述べています。今までは「9条2項改正」だったので、今回の安倍首相の「9条1項、2項を残して、自衛隊を明記する」という改正案は、自民党内からも異論が出ています。でも、別に変えてもいいのです。それについて議論すればいいのですから、安倍首相はいい問題提起をされたと思います。憲法改正を進める上で、自民党の中でまず議論し、公明党、維新の会とでコンセンサスを得るというのは、当然のことでしょう。

 憲法改正に向けて議論をはじめよ

 野党は平成2016年7月10日の第24回参議院議員通常選挙で、改憲勢力が憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を取ることを阻止する方針を掲げました。しかし結果は、非改選も含め、改憲に前向きな自民党、維新の会、日本のこころを大切にする党の3党と無所属、「加憲」を掲げる公明党の合計議席が、憲法改正発議に必要な3分の2に達しました。

 私は湾岸戦争以来、すべての安保法制に関わってきましたが、安保法制はすべて公明党との協力で成立してきました。政治とはさまざまな意見をまとめることですから、それぞれの政党が妥協しなければなりません。にもかかわらず、憲法審査会はなかなか開かれませんでした。今回の安倍首相の発言は、憲法改正に向けた議論をしなければならないというメッセージにもなったのです。


 今後の憲法改正のタイムスケジュール

 憲法改正には政局の安定が必要です。現在、「安倍1強」と言われていますが、これはある意味、政局が安定しているということです。政治家は学者や評論家と違います。現実に政治を考えて、結果を出さなければなりません。

 今後の憲法改正のタイムスケジュールですが、以下が考えられます。

<2017年>
◎年内に改憲項目を絞り込み。
<2018年>
◎通常国会で憲法改正原案できる。衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成で発議。
◎国民投票は発議後60〜180日の実施が規定。
◎9月、自民党総裁選。
◎12月、衆議院議員任期満了。
<2019年>
◎国民投票が行われる可能性。
<2020年>
◎改正憲法施行。

 2018年9月に自民党総裁選がありますので、安倍総裁が再選されれば、内閣改造をするでしょう。12月に衆議院議員の任期満了ですから、その前に安倍総理が解散すれば、憲法の国民投票と衆議院総選挙が同時に行われる可能性が考えられます。憲法改正と総選挙を同時に行うことで、争点が明確になり、憲法改正の可能性が一気に高まると思われます。もちろん政治は生き物ですから、あくまでも現時点での私の予測です。

 国民投票は否決されたらそう簡単にやり直せませんが、それはルールだから仕方ありません。ですから、国民の多くが納得できる案を提案していく必要があるのです。


【田村重信(たむら・しげのぶ)】
自由民主党政務調査会審議役(外交・国防・インテリジェンス等担当)。拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー。昭和28(1953)年新潟県長岡市(旧栃尾市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会(大平正芳事務所)勤務を経て、自由民主党本部勤務。政調会長室長、総裁担当(橋本龍太郎)などを歴任。湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案等に関わる。慶應義塾大学大学院で15年間、日本の安保政策及び法制に関する講師も務めた。防衛法学会理事、国家基本問題研究所客員研究員。著書に『改正・日本国憲法』(講談社+α新書)、『平和安全法制の真実』(内外出版)他多数。最新刊は『知らなきゃヤバい! 防衛政策の真実』(育鵬社)


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2017年04月19日

対北朝鮮「敵基地反撃能力」を日本が保有しなければならない理由

対北朝鮮「敵基地反撃能力」を日本が保有しなければならない理由
『田村重信』

北朝鮮の金正恩委員長は、核兵器とミサイル開発を進めて抑止力を向上、通常兵器を削減し、その余力で経済建設を行うという「併進路線」を推進している。
 昨年の2度の核実験および23発の弾道ミサイル発射に加え、3月6日には石川県能登半島沖のわが国の排他的経済水域内に3発を着弾させ、「在日米軍攻撃担当部隊が参加」と発表するなど、北朝鮮の挑発行為はわが国が到底看過できないレベルに達している。

以下はiRONNAをご覧ください。http://ironna.jp/article/6323


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2017年03月29日

自民党の「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」(全文)

 小野寺五典元防衛大臣・弾道ミサイル防衛に関する検討チーム座長の「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」が、自民党安全保障調査会・国防部会合同会議で了承されました。

平成29年3月29日
自由民主党安全保障調査会
弾道ミサイル防衛に関する検討チーム

 北朝鮮による度重なる核実験及びミサイル発射は深刻な脅威であり、昨年の2度の核実験及び 23発の弾道ミサイル発射に加え、今月6日には石川県能登半島沖のわが国の排他的経済水域内に3発を着弾させ、「在日米軍攻撃担当部隊が参加」と発表する等、北朝鮮の挑発行為はわが国が到底看過できないレベルに達している。
 さらに、移動式発射台及び潜水艦からの発射、固体燃料を用いた弾道ミサイルの発射、高軌道に打ち上げ高速で落下するロフテッド軌道による発射等、北朝鮮はわが国及び同盟国にとって探知や迎撃が通常より困難となる技術を獲得しつつあると考えられ、北朝鮮の脅威が新たな段階の脅威に突入したとみなければならない。
 もはや、わが国の弾道ミサイル防衛の強化に一刻の猶予もなく、今般、党安全保障調査会の下に「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」を急遽発足させ、これまでとは異なる北朝鮮の新たな段階の脅威に対して有効に対処すべく、あらゆる実効性の高い方策を直ちに検討し、政府に対し予算措置を含め、その実現を求めることとした。
 ついては、以下三点に関し、政府において実現に向けた検討を迅速に開始し、さらなる抑止力の向上により、北朝鮮にこれ以上の暴挙を断念させるとともに、国民保護体制の充実を含めたより一層の対処力の強化により、万が一の際に国民の生命、わが国の領土・領海・領空を守り抜く万全の備えを構築することを求めるものである。

         記

1.弾道ミサイル防衛能力強化のための新規アセットの導入
 イージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(終末段階高高度地域防衛)の導入の可否について成案を得るべく政府は直ちに検討を開始し、常時即応体制の確立や、ロフテッド軌道の弾道ミサイル及び同時多発発射による飽和攻撃等からわが国全域を防衛するに足る十分な数量を検討し、早急に予算措置を行うこと。また、将来のわが国独自の早期警戒衛星の保有のため、関連する技術開発をはじめとする必要な措置を加速すること。
 あわせて、現大綱・中期防に基づく能力向上型迎撃ミサイルの配備(PAC−3MSE:平成32年度配備予定、SM−3ブロック僑繊平成33年度配備予定)、イージス艦の増勢(平成32年度完了予定)の着実な進捗、事業の充実・更なる前倒しを検討すること。

2.わが国独自の敵基地反撃能力の保有
 政府は、わが国に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのにやむをえない必要最小限度の措置として、他に手段がない場合に発射基地を叩くことについては、従来から憲法が認める自衛の範囲に含まれ可能と言明しているが、敵基地の位置情報の把握、それを守るレーダーサイトの無力化、精密誘導ミサイル等による攻撃といった必要な装備体系については、「現在は保有せず、計画もない」との立場をとっている。
 北朝鮮の脅威が新たな段階に突入した今、日米同盟全体の装備体系を駆使した総合力で対処する方針は維持するとともに、日米同盟の抑止力・対処力の一層の向上を図るため、巡航ミサイルをはじめ、わが国としての「敵基地反撃能力」を保有すべく、政府において直ちに検討を開始すること。

3.排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処
 昨年8月以降、北朝鮮は3度にわたりわが国の排他的経済水域内に弾道ミサイルを着弾させており、航行中の船舶への被害は生じなかったものの、操業漁船が多い海域でもあり、わが国船舶等の安全確保は喫緊の課題である。
 このため、弾道ミサイル等の脅威からわが国の排他的経済水域を航行しているわが国船舶等の安全を確保するため、政府は、当該船舶に対して、航行警報等を迅速に発出できるよう、直ちに検討すること。また、これらの船舶の位置情報の把握に関する技術的課題や当該船舶を守るための迎撃を可能とする法的課題について検討すること。
                                       以上


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2017年03月07日

全人代、党大会控え人心安定優先――習政権の苦渋にじむ(遠藤誉氏)

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 3月5日、全人代(全国人民代表大会)が開幕した。注目点は国防費と経済規模と民心。第19回党大会を控えた今年、安定を優先。随所に人民の不満への警戒が滲み出ており、トランプ政権を意識した場面もあったが、ほぼ窮地の裏返しだ。

◆初めて1兆元を超えた国防費

 全人代は中国時間の午前9時から北京の人民大会堂で開幕し、李克強国務院総理が政府活動報告を行なった。報告の中で「国防費」に関しては一言も触れなかった。言及したのは「国防」に関する中国政府の考え方のみで、それも報告が終わる数分前。「国家の主権と安全のために強軍目標は維持する」ことと「軍隊に対する党の指導は絶対である」と言ったくらいだ。

 国防費に関して最大の関心を示していた日本や西側諸国は肩透かしを食らっただろうが、予算案は5日午後以降から始まる会議で審議され、財政部案が決議された後に正式に公開される。

 おおむねの国防費に関しては、3月4日に内外記者向けに開催された「新聞発布会」で、全人代の傅瑩(ふえい)報道官がCNNの記者の質問に回答する形で発表している。

 それによれば、「2017年の国防予算案の伸び率は(前年比で)7%前後になり、GDPの1.3%を占める」とのこと。史上初めて1兆元(約16兆5千億円)の大台を超える。とは言え、「アメリカが先月、ミュンヘンにおける国防会議でNATO(北大西洋条約機構)加盟国に要求したGDP比2%の国防費に比べれば、中国の国防費のGDPに対する割合は非常に低い」と彼女は「にこやかに」切り返した。

 またCNN記者の「中国のGDP成長率が減少している中で、軍事費だけは成長を続けるのはなぜか」「アメリカのトランプ大統領が最近、軍事予算を大幅に増やすと言ったことと関係するか?」という質問に対して、傅瑩女史はおおむね以下のような主旨のことを答えている。

「世界で頻発している紛争あるいは戦争行為に関して、中国が主導しているものが一つでもあるだろうか?中国は対話を重んじており、ASEAN諸国とも対話で問題を解決している。アメリカは中国が軍事的にアメリカに追いつき追い越すのではないかと警戒しているようだが、中国の軍事力など、とてもアメリカには比べようもない。しかし中国は今後も、国家主権と安全を守るために、軍隊の発展を継続していくだろう」

◆「とても、アメリカには及ばない」と中国政府関係者

 たしかにトランプ大統領は2月27日、政権初の予算案で国防費を9%増額する方針を明らかにした。それによれば、2017年度のアメリカの国防費は約5500億ドル(約60兆円)になるだろうとのこと。

 中国政府関係者にこのたびの中国の国防費に関して聞いたところ、以下のような回答が戻ってきた。

1. アメリカの国防費は中国の3倍以上あるのに、なぜ中国の国防費だけを問題にするのか。GDP成長率が、アメリカや日本、あるいはヨーロッパ諸国に比べて非常に大きいことは全く無視している。
 軍事費は絶対額ではなく、GDP比で考えるべきだ。GDP比から言っても、アメリカは3.5%前後で、日本だって1%近い。GDP比で見なければおかしい。

2. それに、中国の軍事力なんて、とてもアメリカには遠く及ばない。日本にだって、陸軍はまだしも、海軍となると技術的には日本の方が遥かに上だ。アメリカの航空母艦に至っては10隻以上。中国はたった「遼寧」1隻しか持ってない。その中国に、何を脅威など感じてるんだい?アメリカに追いつきたいとは思っていたとしても、追い越すなんて、夢のまた夢だよ。

3. 1人当たりのGDPで計算すると、日本の国防費は、中国の4倍だってことに気づいているだろうか?中国の人口は約14億。日本は約1億。一人当たりのGDPが同じだとすれば、中国の国防費の絶対額が日本の14倍を超えたときに、初めて脅威を覚えればいい。今はその時じゃない。


 しかし、いま警戒していなければその時はいずれやってくるし、中国の膨張主義と領土問題に関する強引な主張を心配しない日本人はいないだろう。

 それに中国としては台湾問題と北朝鮮問題に関して軍事強国になっておかなければならない、せっぱ詰まった事情があるはずだ。前者は今年1月12日のコラム「中国、次は第二列島線!――遼寧の台湾一周もその一環」に書いたように、第二列島線までを照準に定めているだろうし、また2015年2月22日のコラム「いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかるTHAAD」に書いたように、「いざとなったら、北朝鮮を武力弾圧するために」備えておかなければならないだろう。(なお、1人当たりGDPに関する計算は確認していないし、そういう論理でもないだろうと思われるので、これに関する分析は、ここではしない。)

◆GDP成長目標「6.5%前後」を想定――「穏中求進」

 李克強国務院総理は5日の政府活動報告の中で、中国の今年のGDP成長目標を「6.5%前後」にするとした。昨年の全人代では、「2016年の成長目標を6.5%〜7.0%とし、2016年から始まる第13次5カ年計画では年平均6.5%以上」と定めている。そのことから考えると、早くも「6.5%」という「年平均」の値に合わせたことになる(昨年は6.7%)。

 成長率を大きめに設定すると投資が盛んになってバブルが起きる可能性があり、不動産価格の高騰などを招く。低く見積もれば経済が減速したとして国際的な影響をもたらし、中国の国内に対しても不安定要素をもたらす。

 今年は秋に第19回党大会が待ち構えているため、不安定化しない程度に高揚感を保つ必要がある。

 それを中国語では「穏中求進」(穏やかな中にも前進をする)という言葉で表して、今年の政権スローガンの一つにしている。政府活動報告にも出てきたが、5日の午後、習近平国家主席が上海代表団と会談し、そこで何度も使っている。

◆人民の不満を警戒

 何よりも目立ったのは、李克強首相が報告の中で人民に不満があることを認めたことだ。そのため都市部における新規就業者数目標を1100万人としたり、農村部の1300万人以上を都市部に定住させたり、医療保険への財政補助を増やしたり、空気の汚染に代表される環境対策を強化するために「藍天保衛戦」(青空を保つ戦略)という言葉を繰り返した。

 さらに携帯電話料金やデータ通信に関しては、国内長距離の上乗せ料金を年内に廃止すると宣言し、慣例の間合いの決まった拍手ではなく、珍しく自発的拍手が起きた。さらに貧困脱却や格差の是正、医療、高齢化問題、食品安全、民工とその留守家族問題、若者が創業する際の法的保障など、民生向上のための対策を数多く打ち出している。

 民法総則に対する改正案を閉幕(3月15日)までに討議する。これは1986年に制定されたもので、30年間におよぶ社会の劇的な変化に適応していない。

◆「三去一降一補」――供給側構造改革に着手するスローガン

 中国では今、「三去一降一補」というスローガンが流行っている。3月5日の政府活動報告の中にも出てきた。これは「供給側(サプライ・サイド)の構造改革」を指し、「三去」は「生産過剰を解消(除去)する」「在庫過多を解消(除去)する」「テコ入れ(レバレッジ)を除去する(やめる)」で、「一降」は「コストを引き下げること」、「一補」は「弱点を補う(補足支援する)こと」である。

「三去」によって解雇される者が増えたり、倒産企業が増えたりするという「痛み」を伴うので、どんなに「一降一補」をしても追いつかず、そのさじ加減が難しい。やらなければ中国の経済は減速するだけだし、やれば人民の不満が増大する。

 経済が減速したのでは「中国共産党が統治しているからこそ、中国経済は成長し続けるのだ」という、中国共産党による統治の正当性を人民に示すことができない。すると人民の不満が噴出する可能性がある。となると一党支配体制は崩壊の危機に直面する。だから、「三去一降一補」を一定程度推進するしかない。

 しかし推進すれば必ず解雇された労働者からの不満が爆発し、これもまた一党支配体制を崩壊させるきっかけを導きかねない。

◆「長征」精神に学ぼう!――苦労に耐えるのだ!

 ならば、どうすればいいのか?

 苦労に耐えるのだ!

 1970年代末から一人っ子政策が始まっているので、辛抱ができない、わがままな若者が増えている。彼らには毛沢東が行なった「長征」の過酷な経験を知らせ、その過酷な経験にもめげずに耐え抜いた当時の中国共産党軍(紅軍)の精神を学ばせる。「偉大な革命のために――!」

 だからいま、習近平国家主席は毛沢東回帰をし、長征映画やテレビドラマを強制的に放映し、教育機関でも「長征精神」を叩きこんでいる。

 いかに毛沢東が偉大であったか、いかに勇敢に抗日戦争を戦ったか。だから、国民党軍から逃げるために徒歩で北西にある延安にたどり着いた長征を、中国では「北上抗日」と呼んでいる。(それがいかに偽りであるかは拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に、詳細に書いてある。中共軍が逃げた先の延安には、日本軍はいない)。

 習近平国家主席への個人崇拝と抗日神話は、このために必要なのである。

 習近平への「一強」を、権力闘争などと、現実離れしたことを言っている研究者やメディアは、中国の真実を見る目を日本人から奪っていると言っていいだろう。

 また、李克強が報告で何回「習近平を核心と言ったか」を数え上げて「一強」の証拠などと報道しているメディアは、日本人の中国観を誤導しているとしか言いようがない。 

 2016年19月28日のコラム<六中全会、集団指導体制堅持を再確認――「核心」は特別の言葉ではない>にも書いたように、胡錦濤元国家主席(総書記、中央軍事委員会主席)も、「核心」と定義づけられていた。しかし江沢民が大きく宣伝するのを許さなかっただけだ。胡錦濤政権時代の「チャイナ・ナイン」は胡錦濤は3人、江沢民派6人で激しい権力闘争があり、多数決議決で負けるので政治は「中南海を出ない」状況にあった。しかし習近平政権の「チャイナ・セブン」においては、ほとんど全員が習近平を支援していた。多数決議決は習近平の思うままだ。なぜ権力闘争をしなければならないのか。論理的整合性がない。

◆トランプ政権に代わってグローバル経済を牽引

 3月5日の政府活動報告で、李克強国務院総理は「反グローバル化、保護主義」に反対すると語気を強めて強調し、暗にトランプ政権の経済貿易政策を批難した。中国こそが世界経済成長の原動力の一つで、世界経済成長に対する貢献度は30%に達するとした。これは中国共産党機関紙「人民日報」の機関紙「人民網」も早くから報道していた。その意味でトランプ政権のTPP撤退などを受け、中国はより強く「一帯一路」やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)を主導することにより、中国こそはグローバル経済を牽引することをアピールした格好になる。

 とは言え、すべてが習近平政権が追い込まれた窮地の裏返しであることが見えた全人代開幕だった。


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