2014年12月22日

習近平、マカオへ――香港とマカオの民主への温度差はどこから?(遠藤誉氏)

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 習近平はなぜ独裁色を強めているのか?
 それは、そうでもしなければ一党支配体制が崩壊するのを知っているからだ。
 ソ連を崩壊させたゴルバチョフになりたくない。

 しかし「皇帝」と呼ばれる習近平は「ラスト・エンペラー」になるかもしれない。 次期国家主席候補の胡春華時代に入れば、そこで中国は終わる可能性が大きい。

 習近平国家主席がマカオの中国返還15周年記念祝賀式典のためにマカオ入りした。 返還後最も厳しい警備の中での訪問だったが、同じ中国の特別行政区なのに、なぜ香港とマカオでは民主化要求への度合いが異なるのか?
 その温度差の原因と現状を考察する。

◆厳戒態勢の中のマカオ入り

 11月19日、習近平夫妻は専用機でマカオに到着した。
 花束と五星紅旗を掲げて「熱烈歓迎!」と声を張り上げて繰り返す少年少女に迎えられながらタラップを降りると、習近平は「一国二制度」と「マカオ特別行政区基本法」があってこそ、マカオはますます発展していくのだと、その場で短いスピーチをした。

 その間の警護が凄い。

 さながら映画のシーンかと思われるほどの鋭い目つきをしたSP(Security Police)たちが、習近平の周りを囲み、360度、あらゆる方角からの万一の攻撃に備えて警護している。

「この基本法があれば、マカオはますます安定し良くなっていく…」というショート・スピーチの内容と、なんと裏腹な雰囲気だろう。

 習近平が乗った車が走り出すときも、十名ほどのSPが車を背中にしてグルリと車を囲み、何かあれば瞬時にピストルで撃てる腕の構えと鋭い眼光が印象的だった。

 それもそのはず、香港デモに参加した学生や香港の民主派政党の党員たちが、この日に合わせてフェリーでマカオに行き、習近平主席に「民主的な普通選挙の実施」を直訴すると言っていたからだ。

 彼らはもちろん、水際で入境を阻止された。

 20日は盛大な式典とともに、「ぜいたく禁止令」に反するのではないかと思われるような派手な花火の打ち上げがいつまでも夜空を染め、まさに「チャイナ・マネーがマカオを買っている」のを象徴しているように見えた。

 マカオでも抗議デモがないわけではないが、それは香港が要求する「民主への渇望」と微妙に異なり、どちらかというと、5月1日のメーデーの日に労働者(工人)が賃上げ要求をする性格のものが多い。

 そのため中国中央は、マカオ政府を通して「派銭(パイ・チェン)」(金を直接渡す。ばらまき)という行動に出て、まさにストレートに「チャイナ・マネーで人心を買い」、不満を解消させようとしてきた。

 その金の出所は、カジノで儲けたあぶく銭から来ている。

 マカオ財政の70%ほどは、賭博による収入だ。特に中国大陸から、おびただしい人数が賭博をするためにマカオにやってくる。


◆マカオのカジノ文化とチャイナ・マネー

 かつて海洋大国として覇権を誇っていたポルトガルは、1513年にマカオに進出し明王朝と交易を始めた。1842年、アヘン戦争でイギリスが清王朝に圧勝して香港を植民地化すると、ポルトガルもマカオを植民地化したのだが、そのころ繁栄を極めた「大英帝国」には勝てず、ポルトガルは凋落していった。

 特に清王朝が欧米諸国に広州を開放して広東(カントン)貿易を始めると、マカオ貿易の価値は急落。むしろマカオは、広東貿易に従事する欧米人の「娯楽の地」としての役割を果たすようになり、カジノ化していったのである。
 イタリアから発生したカジノは、当時ヨーロッパ諸国が好む娯楽となっていた。

 清王朝が終焉を迎え「中華民国」になっても、ポルトガルは中華民国と国交を結んで中立の立場を続け、娯楽の地としてのビジネスを維持した。

 第二次世界大戦後、国民党と共産党の内戦である国共内戦が始まると、戦乱を逃れるために大陸からの難民がマカオに殺到したが、何といっても決定的だったのは、共産党軍が勝利して中華人民共和国(現在の中国)が誕生したあとに起きた文化大革命(1966年〜76年)時に起きた「一二・三事件」だろう。

 マカオに流れ込んでいた中共系市民が、中共系の小学校を創設すべく、マカオの歴史上最大の暴動を起こしたのである。66年12月3日のことだ。このとき国力がすでに衰退していたポルトガル政府は、中国の人民解放軍に威嚇されて中国に全面的に譲歩している。

 以来、マカオの「中国化」は実際上進んでいたのである。

 中国が改革開放を始めると、ポルトガル政府は、既に国連に加盟していた中華人民共和国と国交を結び、台湾政府(中華民国)との国交を断絶した。

 そして、国力が弱り統治能力も失っていたポルトガル政府は、むしろ積極的にマカオの中国返還を申し出たのである。「ちょっと待ってくれ」と言ったのは中国の方だった。

 返還交渉はイギリスとほぼ同じ時期に始まり、イギリスよりも3年ほど遅く(1987年に)、中国とポルトガルとの共同声明を発表し、マカオは香港よりも2年遅く(1999年に)中国に返還された。

 66年の「一二・三事件」以降、実際上中国化が進んでいたマカオの場合は、香港と違って、中国返還への抵抗は少なかった。

 返還後もカジノとしての役割は変わらず、いやポルトガル植民地時代よりもいっそう盛んになり、中国共産党幹部(虎?)や、その周りを飛び交う悪徳商人(ハエ?)などの不正チャイナ・マネーの「取引場」と成り果て、今ではラスベガスを越える世界一のカジノ都市となっている。そのためマカオ市民の一人あたりの収入は高い。

 しかし、習近平政権の反腐敗運動(虎もハエも同時に叩け)により、マネーロンダリング(資金洗浄)の温床を潰そうという動きが今年から出て、逆にカジノ収入が低迷し始めているような現状だ。

 そうした中、中国政府はマカオ入りする中国大陸人の入境審査を厳しくしている。これは一つにはギャンブルを利用してマネーロンダリングを図る腐敗分子の取締りを強化することを目的としているが、もう一つには、雑多な人口が増えることにより、反中国政府的な動きが出ないようにする目的もある。

 この「雑多な人口」の中には、大陸における政府への不満分子がいるかもしれないし、何といっても中国がいま減らそうとしている出稼ぎ流動人口がある。マカオの流動人口(居住権を持たない出稼ぎ労働者)の60%は中国大陸から来ている。

 中国大陸で頻繁に起きる反日デモや年間20万件にも上る大小の暴動の主体は、こういった流動人口だ。反日デモでさえ大多数は中国政府に不満を持つ流動人口により構成されているので、マカオの人口が増えることは「群衆運動」を招く要素が大きくなり、中国政府にとっては好ましいことではない。マカオの不満層が増えず、不正蓄財の温床的要素を減らしていくというのが、中国中央の基本方針だ。


◆香港は、なぜ違うのか?

 香港の場合は、イギリスが返還を嫌がり、返還交渉が難航していた。

 イギリス統治時代の最後の香港総督クリストファー・パッテンは、1992年7月9日から返還前日の97年6月30日までの間、初めて植民地香港における政治の民主化に努めたため、香港には「民主の芽」が芽生えていた。

 当時の中国政府はパッテン元総督を激しく非難し、「千古の罪人」として断罪している。

 しかし5年間も、政治的民主を味わった香港市民は、中国返還を嫌い、社会主義体制による思想弾圧を恐れて、多くが海外に亡命した。亡命先は、かつてイギリス統治下にあったカナダやオーストラリア、ニュージーランドなどである。

 中国に返還される前の、ポルトガルとイギリスの国力の違いによって、マカオと香港の対中視点が異なると同時に、パッテン元総督の最後の民主政治の貢献は大きい。パッテン元総督は、今般の香港デモに関しても、「香港政府および中国中央は、若者の声に耳を傾け、話し合いに応じるべきだ」発言している。


◆香港とマカオの温度差

 香港で毎年市民が集まって中国中央政府に抗議の意思表明をするのは、6月4日の天安門事件の日と7月1日の中国返還の日である。

 それに比べてマカオで、わずかながらも市民の抗議運動が起きるのは、5月1日のメーデーの日(労働者の日)であることからも、その「民主への温度差」が見て取れる。

 ただ、カジノ経済にメスを入れ始め、マカオ経済の多元化を強調した今回の習近平主席によるマカオ返還式典での演説は、マカオにも逆に、中国中央が好まない微妙な変化をもたらす可能性は否めない。

 しかし中国政府にとって、「一国二制度」の最終目標は台湾統一である。

 香港における弾圧を知った台湾の国民は、統一を望まない民進党を選んだ。

 その上、マカオまでが香港のようなことになったら、中国政府の宿願である台湾統一は実現不可能となる。

 華やかな祝典における、あのSPの厳戒態勢は、追い詰められた習近平の苦悩を表しているように筆者には見えた。夜空を染め尽くしたあの花火が、なんとも虚しい。
(ヤフーより)

遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士



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