2014年10月29日

赤珊瑚密漁、日本は取締り強化を!――海上保安庁の位置づけと予算(遠藤誉氏)

安倍政権と安保法制
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 中国の密漁漁船100隻に対して、日本の海上保安庁の船は5隻ほどでしかない。それを知り尽くしている中国漁民は警戒が厳しい尖閣付近を避けて小笠原周辺を狙っている。海上保安庁の予算増強と取締り強化を日本は図るべきだ。

◆なぜ日本が狙われるのか――悪質な犯罪行為

 中国漁船が日本を狙っている理由は、世界で最も高い品質を持つ赤珊瑚が、日本と台湾および地中海の深海にしか棲息していないからだ。特に日本周辺(南側)海底の珊瑚は世界トップの極上品で、「AKA級(深紅)赤珊瑚」や「MOMO級(桃色)赤珊瑚」などと呼ばれて中国で取引されているという。

 中国の情報にも、「珊瑚は6センチ成長するのに500年もかかる貴重なもので、日本はその天然資源を大切にしてきたので、一番狙われやすい」と書いてある。

 だから盗みに来るという論理はない。

 これはどこから見ても非常に悪質な犯罪行為だ。

 中国のネットでさえ、「こんな恥さらしな犯罪行為を、なぜもっと厳しく取り締まらないのか」と中国政府への非難とともに、日本の軟弱(と彼らには映る)姿勢を不思議がっている書き込みが多い。

 日本は政府としてこの問題を国会で取り上げ、中国政府に正式な抗議を言い渡し、一方では海上保安庁の予算(人員と船艇)を何としても増強させ、徹底して取締りを強化し、悪質船長らを犯罪者として逮捕しなければならない。

 日中首脳会談の「対話のドアは、いつでも開けている」と待っているような宣伝をするのではなく、逆に「対話したければ赤珊瑚密漁問題を優先課題とせよ」というくらいの姿勢であってほしい。

 拉致被害者は北朝鮮に「人を奪われ」、何年間も政府が全力を投入して最優先事項として奪い返すということはして来なかった。「人さらい」という、あまりに人類のモラルに反した悪質な行為を、(いま努力はしているものの)どれだけ長く放置してきたことだろう。日本が低姿勢でいなければならない理由は、どこにもない。

 同様に、今度は世界遺産的存在の希少な日本の天然資源が根こそぎ奪われようとしている。

 小笠原諸島周辺を集中的に狙っているのは、尖閣諸島の防衛に海上保安庁が専念して、他に回す船艇も人員も不足していることとともに、そこならば中国の監視船の目が届かないことを中国の漁民が知っているからである。

 昨日書いた中国浙江省の取締り当局は、出航する前の密漁船を54隻拿捕して船長とその仲間を逮捕し、まだ改造中の船3隻の持ち主や関係者も逮捕しているという。

 しかし事前に察知できなかった数多くの船は「運搬船」の形を取って日本に押し寄せている。

 より深刻なのは、「日本の海上保安庁の取締り力はゆるい」という印象が中国漁民の中に浸透していることだ。

◆海上保安庁の役割の線引きと予算

 問題はその海上保安庁は国土交通省の外局として警察権を持っているだけで、おまけに規模も予算もあまりに小さく少ないということである。

 海上自衛隊は他国の軍艦に対処する権限を持ち、その年間予算は1兆1078億円(2012年度)であるのに対して、海上保安庁の総予算は1,834億円(2014年度)に過ぎない。人員も海上自衛隊4万5517人に対して海上保安庁は1万3208人だ。総船艇数は449隻。これだけの人数と船艇で全国11管区の海上保安と監視をするのは困難を極めるだろう。

 海上保安庁のホームページを見ると、平成27年(2015年)度予算要求の詳細と過去数年間の予算の推移が載っている。ここ数年の高い保安ニーズに比べて、実際には予算はむしろ減っていることに驚く。

 たとえば2010年:1,821億円、2011年:1,754億円、2012年:1,732億円、2013年:1,739億円となっている。

 2010年に中国と日本のGDP(国内総生産)は逆転し、中国はアメリカに次ぐ第二の経済大国となった。この年に尖閣諸島周辺における中国漁船衝突があり、中国は強硬な姿勢に出始めている。

 日本の海上保安庁の予算が減らされている間に、中国は「海洋強国」としての国策を打ち出し、海洋権益に関する組織を再編して強化し、予算配分も大幅に増強している。

「五龍治海」とか「九龍治海」と称されていたバラバラの命令指揮系統と組織を一つにまとめて多くの権限を持たせ、海洋強国とするための予算を集中的に注ぎ込んでいる。

 その一方で日本では、海上保安庁の予算が減らされていた2009年末から2012年までは民主党政権時代ではあったが、最も強化しなければならない海上保安に関して、ますます軽視するという事態はあり得ないのではないのか。

 その傾向は安倍内閣になってからも、そう大きく変わってはいない。

 国会は集団的自衛権や政治と金の問題に明け暮れるよりも、自国の権益と漁民を守るという基幹部分を論議しなければならないはずだ。小笠原諸島の漁民が中国密漁船を自分の船で追い散らすのではなく、日本政府が国家として中国に「泥棒行為はやめろ!」と声高に言わなければならないし、また漁民ではなく海上保安官が海上保安庁の船舶で密漁船を拿捕し、船長を逮捕しなければならないのである。

 そのためには海上自衛隊と海上保安庁の権限の線引きと制限に配慮し、せめて海上保安庁の予算を大幅に増やすべきだろう。何なら組織編成も含めて検討していかなければならない課題だ。

 2015年度の海上保安庁の予算概算要求を詳細に見ると、人員増も船艇増も、そしてまた総予算増も、実に微々たるものだ。こういうところにこそ大きな予算を付けて、日本国民と日本の資源を守るべきだろう。

◆甘く見られている日本

 くり返すが、赤珊瑚密漁は、どこから見ても犯罪行為である。

 だというのに、日本では(福岡地裁が)密漁により逮捕した船長を「GPS装置にここが日本領であることが明示されていなかった」主旨のことを理由として釈放したり、ここまでの明確な犯罪行為を国会で取り上げることもないために、中国のネットでは次のようなコメントが数多くみられる。

●日本はなぜ、こんなに取締りがゆるいのか? 

 それはきっと安倍が北京にいい顔をして日中首脳会談を実現させたいからだよ。

●なんと言っても、泥棒をした船長を釈放するんだぜ。不正行為をいくらでもやってくれと言っているようなもんじゃないか!

●韓国だったら銃殺してるのに、日本はなんで釈放までするの? これは罠かもしれない……。

 何万というコメントがあるので公平に選ぶのはむずかしいが、ともかく「犯罪行為なのに、日本はゆるすぎ」というのが、中国のネットユーザーの感想に見られる共通項だ。

 海上保安庁の予算を重厚にして日本国民と資源を守ることは、焦眉の急で、優先度の高い先決事項だ。裁判官の「ゆるい」判断は別として、そうしなければ、取締りの強化はできない。日本政府に確固たる姿勢を望む。



遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
(ヤフーより)


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