2014年08月18日

反日ドラマ娯楽化の裏に日本アニメ人気――許可制には腐敗の構造も(遠藤誉氏)

安倍政権と安保法制
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 前回は中国青年報が批判したのは反日ドラマの娯楽化であって、決して反日ドラマ自身の自粛ではないことを書いた。

 その原因の一つとして視聴率があるが、その視聴率問題には、なんと、われわれ「日本のアニメ」が深く絡み合っていることを知る人は少ないだろう。

 そこで今回は日本アニメと許可制の導入、および中国社会を蝕んでいる「許可制」に潜む腐敗の構造という視点から、反日ドラマが娯楽化へと傾倒していったプロセス考察する。


◆テレビドラマの許可制導入は日本アニメの人気が原因

 1980年代、鉄腕アトムを筆頭として、コナン、スラムダンク、クレヨンしんちゃん、セーラームーン、ドラえもん……などなど、日本のありとあらゆるアニメと漫画が怒涛のごとく中国に上陸し、全土を席巻した。

 海賊版の普及により、どんな家庭の子供でも日本のアニメ漫画に接することができ、若者の99.9%は日本のアニメ漫画(動漫)を見て育ったと言っても過言ではない。

 それは80年以降に生まれた若者(80后、バーリンホウ)の精神文化を形成するまでにおよび、中国政府を慌てさせた。

 この現象は2000年に入ってから顕在化し始めた(詳細は『中国動漫新人類――日本のアニメと漫画が中国を動かす』2008年、日経BP社)。

 そこで、中国政府は日本アニメの影響を軽減させるために中国国産アニメの制作を奨励。2005年1月には「国産テレビ動画発行許可証」制度を導入した。


 ところが政府の審査を経た国産アニメなど、おもしろくないものだから、視聴率が低い。ということはスポンサーが付かないので、制作者側は採算が合わないことになる。そこで中国政府はゴールデンタイムにおける日本アニメの放映を禁止したりなどしたが、パソコンの普及によりテレビで制限しても効果は薄かった。


 手軽に儲かるのは反日ドラマだ。


 ただし、日本アニメを追放するために制定された許可制は、ほぼ同じころテレビドラマにも導入されていた。

 2004年7月、広電総局(国家広播電影電視総局)は「広播電視節目(ラジオ・テレビ番組)制作経営許可証」制度を制定。

 この許可がなかなか下りないのだが、愛国主義教育を奨励しているので、「抗日戦争もの」なら、許可が下りやすい。中国政府としても、日本アニメに含まれている精神性で若者の精神が汚染されるよりは、反日ドラマの方が愛国主義教育に貢献するので都合がいい。最初のうちは双方の利害が一致し、許可はどんどん下りていった。 

 ただ許可は下りても、視聴率が低いと制作者側やテレビ局に広告費が入らないので、だんだんと若者の目を惹きつける要素を取り入れるようになる。

 日本アニメに魅了されている若者たちは、中国政府の思想教育には、本当は関心を持っていない。

 そんな若者たちの目を惹きつけるには、刺激的で過激な場面を多く盛り込むとか、妖術や仙術など中国伝統の奇想天外な「伝奇もの」で面白おかしくするしかない。若者でなくとも、視聴率が高まるなら子供でもかまわない。勢い「娯楽性」が勝るようになり、「お笑い」の領域にまで達し、かつては真剣に戦った中国人民自身を愚弄する結果となったわけだ。


◆許可制に潜む腐敗の構造

 それだけではない。

 娯楽番組と化した反日ドラマが氾濫した陰には、腐敗の構造がある。

 2004年7月19日に「国家広播電視総局令」第34号として発布された「広播電視節目経営管理規定」を注意深く見ると、テレビドラマの許可証を申請するときに、まず県レベル以上の地方広播電視行政部門が最初の窓口になるとことになっている。まるで「さあ、賄賂でたっぷり儲けて下さいね」と言わんばかりの規定だ。

 つまり、地方役人に賄賂を贈り、娯楽性などには目をつぶってもらって、許可を先ずはもらう。地方のテレビドラマに関する行政をつかさどる役人は、中央の広電総局には、娯楽性が目立たないサンプルと概要を報告して中央の許可をもらう。

 制作者側は、そのプロセスのためにも地方役人に賄賂を贈る。賄賂を二度三度払っても、視聴率が高ければスポンサーがついて広告料が入るので、そこで補えば儲けは一応ある。

 これを全国の地方テレビ局と地方役人の間で転がしていくうちに、たちまちにして反日ドラマの粗製乱造が全国を覆ってしまったわけだ。

 2013年5月に中央行政の広電総局が怒って、「娯楽性や伝奇ものの反日ドラマ」に警告を発し、民族の尊厳を毀損しない厳粛な反日ドラマ制作を命じた。

 その流れの中で今般の中国青年報の警告になっただけで、「共産党が初めて批判」したのでもなければ、反日ドラマ自身を自粛せよと言ったのでもない。


 8月15日の日本の某テレビ局の報道では、中国青年報は「事実を逸脱してまで反日感情をあおる現状を戒めた」と説明している。


 しかし中国青年報には、一言も「反日感情をあおる」などとは書いていない。日本人としては「反日感情をあおる現状を中国が戒めた」と報道されれば、「えっ?」と驚き、「ほら見ろ」と喜ぶ。


 つまり日本の視聴者を喜ばせるように「翻訳」を「少し」変えているのである。

 しかも、この「少し」は、日本にとっては大きな分岐点だ。それをわかっていて翻訳を変えたとすれば罪深い。

 これは「うっかりミス」なのか、それとも「視聴率を稼ぐための意図的な味付け」なのか?

 後者であるなら、報道人としてはあるまじき姿勢だろう。

 日本のテレビ局こそ、まさに「事実を逸脱」すべきではないということになる。

 日本に都合のいいように「事実を少し歪曲させて」、中国の報道の核心部分を覆い隠せば、日本の視聴者は驚き「視聴率が高くなる」。

 ミスなのか意図的なのかはわからないが、結果として事実と異なる報道のせいで、日本のメディアは「右へならえ」とばかりに、まちがった連鎖報道を膨らませている。

 中には、日本の経済を無視することができないので中国政府は軌道修正をしているのだなどという、とんでもない方向へと脱線している報道さえある。

 視聴率を稼ぐために「事実を逸脱」させているのは、この場合、日中両国ともに同じだ。

 事実を歪曲解釈せずに、客観的に正しく見ようではないか。


 中国が「反日感情をあおりすぎたと反省している」かのような偽情報を発信して日本国民を騙すべきではない。せめて日本の報道には、この連鎖反応を止める「良心」を持ってほしい。

 そうしなければ、いずれバカを見るのは日本と日本国民だ。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授、上海交通大学客員教授、(日本)内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。著書に『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付』など多数。
(ヤフーより転載)



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