2014年07月22日

中国、西沙掘削作業終了前倒しのわけ――中国の国内事情と日本のビジネスチャンス(遠藤誉氏)

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 中国は南シナ海の西沙(パラセル)諸島沖の海底掘削作業を前倒しで終了した。

 その背景には中国の緊迫した内情があり、中国ではすべての政治日程を前倒しする可能性がある。
 日本のビジネスチャンスとも無関係ではない実情を読み解いてみたい。


◆すべての政治日程も前倒しする可能性――周永康事件が与える衝撃に対応か

 中国は今年5月2日から南シナ海の西沙諸島沖の海域で石油掘削作業を行い、ベトナム船との衝突事件を起こすなど、西沙諸島の領有権を主張するベトナムと激しく対立していた。ベトナムでは激しい反中デモも起きたほどだ。

 しかし当初、作業期間を8月中旬までと公表していた中国は、予定1カ月前の7月15日に作業を終了させ、石油掘削装置(海洋石油981プラットホーム)を自国の海南島に移すことになった。

 その理由として考えられるのは、秋に開かれる「四中全会」(第四回中共中央全体会議)あるいはその前に、周永康に関する処分を正式に公布する公算が大きくなったからだ。

 周永康は胡錦濤時代の「チャイナ・ナイン」(中共中央政治局常務委員9名)の一人だった人物。改革開放以来、常務委員だった者が逮捕された前例はない。

 しかし中共中央政法委員会書記で党内序列ナンバー9であった周永康は、「公安・検察・司法」を司るトップとして、あまりに権力を乱用しすぎた。

 周永康はまた、「石油閥のドン」としても腐敗の限りを尽くしてきている(詳細は拙著『中国人が選んだワースト中国人番付――やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』のp.29〜p.48)。

 習近平は何度も「腐敗撲滅の対象に官位の高低はない」と繰り返している。

 おまけに四中全会は「法制」がテーマ。

 もし、ここで、あるいはそれまでに、周永康の処罰を正式に公布しなければ、習近平政権が掲げる「反腐敗」は偽物だと中国人民は判断し、抗議運動につながる可能性を孕(はら)んでいる。

 一方、正式発表をすればしたで、社会に大きな衝撃を与え、その波紋は良きにつけ悪(あ)しきにつけ、しばらくは収まらないだろう。

 となれば、今年11月に北京で開催されることになっているAPEC首脳会談に影響する。

 だから四中全会を前倒しにしなければならない。

 2012年11月の第18回党大会の後、11月15日に開催された「一中全会」同様、昨年の「三中全会」も11月に開催されている(「二中全会」だけは特殊で、3月に開かれる全人代の前に開催)。だから本来なら四中全会は11月に開催されるはずだった。しかし、10月に前倒しするか、あるいは、ひょっとすると、9月に開催する可能性さえ否定できない。それに伴い、四中全会の根回しとなる北戴河の会議も早めに済ませなければならなくなる。

 となると外患もまた、早めに除去しておいた方がいい。国内外に緊張状態を抱えたまま、四中全会に入るわけにはいかないのである。中国では党大会および党の全体会議が開かれる前は、徹底して社会情勢を安定化させておこうとするのが大原則だ。

 だから8月中旬の作業終了を前倒ししたのである。


◆ASEAN地域フォーラムやアメリカ上院決議案の影響は少ない


 一部のメディアでは、今年8月に開かれるASEAN地域フォーラムをにらんで南シナ海を鎮静化しておいた方がいいという配慮から前倒ししたのだろうと憶測している。また一部では、7月10日にアメリカの上院が「東シナ海や南シナ海における中国拡張主義」に対する非難決議案を採択したからだという報道もある。


 しかし筆者は、いずれも違うだろうと思っている。

 なぜなら、ASEAN会議に関しては、掘削真っ最中の6月9日に、すでにミャンマーのヤンゴンでASEAN地域フォーラム閣僚会議を開催しているからだ。それでも撤退などしていない。

 また、アメリカの上院における非難決議案などで、この挑戦的な行動を変更させるくらいなら、最初から掘削など始めていないだろう。

 それどころか、アメリカの企業と共同開発する可能性さえあるのだ。


◆これから本格的な掘削開発事業に入る――海外先進企業と提携

 実は中国が「作業完了」としたのは、あくまでも「探査作業」に関してのみなのである。どのような質の石油や天然ガスが埋まっているのか、周辺の地質も含めてデータを取得するための掘削作業が「完成した」としているだけだ。

 この第一段階が終わると、これからは採取したデータを分析し、その後いよいよ本格的な開発事業の段階に入る。

 その段階になると、中国は絶対に単独では進めない。

 なぜなら、それだけの技術が中国にはないからだ。

 そのため、海外の掘削技術に関する先進的な企業と提携を結ぶことになる。

 そのときに、どの国のどの企業と手を結ぶのか。

 それはアメリカである可能性もあればヨーロッパ諸国の中のどこかの国である可能性もあり、さらに言うならば、日本の企業である可能性だって否定できない。

 中国が高速鉄道開発に当たって、本来日本の新幹線技術を導入しようと思っていたが、反日運動から日本単独を諦め、いくつかの国の企業の入札により落札したことが過去にある。

 あの時と同じように、中国は他の国の先進的な技術を持つ企業に入札を呼び掛け提携することになろう。その結果、ふたたび西沙諸島沖に戻っていく。

 ある意味、日本のビジネスチャンスと無関係ではない撤退であるとも言えよう。中国が他国との技術提携による開発段階に入った時に、ベトナムの領有権に関して他国はどのような役割を果たせるのか。中国を説得する力量が問われる。注目したいところである。


遠藤誉

東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授、上海交通大学客員教授、(日本)内閣府総合科学技術研究所専門委員などを歴任。著書に『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付』など多数。
(ヤフーより転載)

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