2014年07月17日

なぜサンフランシスコに抗日戦争記念館?――全世界に反日運動を広げる中国の狙いは?(遠藤誉氏)

ブログランキングに参加しています。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓

こちらをクリック

 なぜサンフランシスコに抗日戦争記念館?――全世界に反日運動を広げる中国の狙いは?


 7月7日、アメリカのサンフランシスコで「抗日戦争記念館」の設立が宣言された。 
 なぜいまアメリカに抗日戦争記念館を設立するのか?

 その背後にある中国政府の世界戦略を読み解く。

◆支持母体「世界抗日戦争史実維護聯合会」(GA)

 抗日戦争記念館設立準備委員会の代表は女性実業家、李邦琴だが、支持母体として「世界抗日戦争史実維護聯合会」(史維会)がある。

「抗日戦争」とは「日中戦争」(1937年〜1945年)に対する中国側の呼び名で、日本軍に抵抗して戦った(対日抗戦)という意味だ。

 中国国内には江沢民による愛国主義教育以来、200か所以上の愛国主義教育基地が建設され、そのほとんどは「抗日」を記念する建造物である。

 それが海外にまで及んだのは、今回が初めて。

 来年2015年には「抗日戦争勝利70周年記念」を迎えるため、今年「抗日戦争記念館」設立を宣言し、来年の9月3日に竣工式を迎える計画だという。

 日本では終戦記念日は8月15日とされているが、中国や台湾では、日本が降伏文書を「中華民国」政府に手渡した9月3日を以て「戦勝記念日」としている。その「9月3日」に「抗日戦争記念館」を正式に設立すべく準備を進めていると、7月7日に宣言したわけだ。

 支持母体となっている「史維会」は1994年12月に設立され、その拠点をサンフランシスコに置く。英語名は“Global Alliance for Preserving the History of WWII in Asia”(GA)で、主たるメンバーは丁元(Ignatius Ding)や李競芬(Betty Yuan)など。

 李邦琴にしても、丁元や李競芬にしても、いずれも台湾から来た外省人(主として、親あるいは本人が大陸で生まれ、中国共産党との戦いに敗れて中華人民共和国誕生とともに台湾に渡った国民党軍側の者)で、台湾にいた間は日中戦争に関する史実をあまり教わらなかった。ところが渡米して初めて南京事件などを詳細に知り、まるでいま目の前で日中戦争が展開されているような衝撃を受けた。

 筆者が直接取材したところによれば、「以来、日中戦争で日本軍が行った行為を忘れてはならないという強い思いに駆られてGAを設立するようになった」とのこと。


 そのきっかけは、実はクリントン元大統領だ。

 旧ソ連の崩壊(1991年)と同時に、アメリカでも情報公開(ソ連ではグラスノスチ)の嵐が吹き荒れていた。米ソ冷戦が終わったアメリカでは、それまでソ連に対抗するために匿(かくま)っていたナチス戦犯探しに積極的にならざるを得なくなった。

 98年に「ナチ戦犯情報公開法」がアメリカで制定されたが、GAの強い要望を受けてアメリカ政府は「ナチ戦犯犯罪および日本帝国政府記録・省庁間作業部会」を設置。 その結果、戦犯探しは日本にも及び、800万件を上回る日本の戦争犯罪記録を暴き出したという(詳細は拙著『中国動漫新人類  日本のアニメと漫画が中国を動かす』p.345前後)。

 今般の「抗日戦争記念館」設立準備委員会は、同じような記念館を世界中に広げていくと宣言している。


◆世界に反日運動を広げる中国の戦略

 この運動の大きな後ろ盾に、中国政府があることは言うまでもない。

 今年の「7月7日」は「77事変(盧溝橋事件)」の「77周年」を迎える(7が揃う)ことから、習近平は中国のトップ指導層を含む各界代表1000人を従えて、「中国人民抗日戦争記念館」を訪れ、盛大な式典を行った。この記念館は北京市豊台区にある盧溝橋の畔にある。

 歴代の中国の最高指導者が、7月7日に「中国人民抗日戦争記念館」を訪れたのは初めてのことである。

 この日に合わせてアメリカが動いた。サンフランシスコにいる華人華僑たちが動いたのだ。

 そこには、GA以外に、もっと複雑な組織が力を発揮している。

 それは中国政府が主導する「中国和平統一促進会」(和統会)である。1988年に台湾と中国大陸の統一を平和的に達成することを目的として設立された組織で、GAメンバーの大部分は、この「和統会」と連携しながら中国政府の呼びかけに呼応している(一部は台湾独立支持派=統一反対派)。

「和統会」は全世界89カ国に189の支部を持っている。今では、それが主体となってGAと連携しながら世界の華人華僑に呼びかけているので、GAは、このネットワークを通して「抗日戦争記念館を全世界に設立していく」と宣言することができたわけだ。

 GAを立ち上げたころ、GAメンバーの中には、天安門事件に抗議して中国の民主化を叫ぶ反共反中分子が相当数含まれており、必ずしも中国政府と連携していたわけではない。 

 しかし最近では、中国政府が主導する「和統会」と相まって、GAもまた中国政府と足並みを揃える方向に急速に動き始めているのが現実だ。


◆狙いは米中関係における中国の優位

 GAの動きが和統会と一致し始めたのは、中国政府の「以経促統」が功を奏し始めたからと言っていいだろう。「以経促統」とは、「経済の連携を強めることによって、統一を促進する」という戦略だ。

 台湾の馬英九は、完全にその虜になり、今まで反日的言動をしてこなかった馬英九もまた、北京政府に接近するに従って、反日政策が目立ち始めている。

 中国のこういった動きの中で注意を引くのは“Victory over Japan Day”という言葉である。これは「アメリカが対日戦争に勝った日」を指す。

 つまり中国は「アメリカは対日戦争を戦った時の中国の同盟国」という位置づけを強調しているということである。

 もちろんそのときの同盟国は「中華民国」だが、そのような「細かいこと」は無視。台湾は中国の一部なので、この際、今の「中国」が対日戦争時におけるアメリカの同盟国なのである。

 この大きな括りの中で、全世界に歴史認識に関する対日包囲網を形成していったときに、米中の位置関係はどうなるか?

 日米同盟を持つアメリカに不利になっていくことは歴然としている。

 つまり、中国がアメリカに対して優位に立てるのである。

 これが中国の世界戦略だ。

 今般のサンフランシスコ「抗日戦争記念館」設立宣言は、その第一歩であると見ることができる。

 日本が近視眼的に反応してナショナリズム的傾向を増せば、中国のこの戦略達成に利することに注意しなければならない。

 一方で中国は、「中国の日本に対する一連の挑戦は、日本がナショナリズムに向かうことを促している」ことを自覚すべきだろう。もっとも、それこそが逆に中国の狙いであるとするなら、日本は中国のこの世界戦略に「乗せられてしまわないように」、大局的かつ慎重に、賢明な戦略を練っていかなければなるまい。


遠藤誉

東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授、上海交通大学客員教授、(日本)内閣府総合科学技術研究所専門委員などを歴任。著書に『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付』など多数。(ヤフーより連載)

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
ランキング一覧

人気blogランキング

人気blogランキングに参加しました。
応援よろしくお願いします。
月別アーカイブ
最新コメント