2014年03月31日

<遠藤誉が斬る>案外弱い中国の戦闘力と軍の士気――対日強硬路線は戦意高揚のためか

本『改正 日本国憲法』(田村重信著、講談社+a新書)
 紀伊国屋書店新宿本店の週間ベストセラー12月30日〜1月5日(新書)
 ついに「第1位」になりました。

ブログランキングに参加しています。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓

こちらをクリック

<遠藤誉が斬る>案外弱い中国の戦闘力と軍の士気――対日強硬路線は戦意高揚のためか
(3月31日、レコードチャイナより)


 中共中央軍事委員会は「中央軍事委員会深化国防和軍隊改革領導小組」(国防と軍隊改革を深化させる中共中央軍事委員会指導グループ)なる、非常に長い名前の領導小組(指導グループ)を設立した。
 組長は習近平、副組長は軍事委員会副主席の範長龍(陸軍)、常務副組長は軍事委員会副主席・許其亮(空軍)だ。

 同日開催された第一次全体会議で、習近平は中共中央軍事委員会主席として「重要講話」を行った。

 その内容は「国防と軍隊改革を深化させよ」「思想と行動を党中央と中央軍事委員会の決定に統一させよ」「強軍目標を軸として改革を促進せよ」「強固な国防と強大な軍隊を目指す」など抽象的なものが多い。

 それがいくらか具体的に見え始めたのは、3月17日に全軍と武装警察部隊の各地域各レベルの中国共産党委員会に出された司令だ。中共中央軍事委員会は各支部の会議室に「毛沢東、トウ小平、江沢民、胡錦濤、習近平の標語を掲げること」という奇妙な命令を出したのである。

 たとえば毛沢東の「正確な政治的方向と、質素で艱難辛苦に耐える気風および機動的な戦略戦術を指し示せ」とか、胡錦濤の「党への忠誠、国に報いる崇高な使命感」あるいは習近平の「党の指揮に従い、戦勝を収める」といった具合に、標語の文言まで指示している。

 ここからは以下のことが読み取れる。

1. 軍隊に政治性をしっかり持たせること。

2. 軍隊が腐敗の温床となって軍規律が乱れており、党への忠誠に欠けている(特に中年以上の兵士や幹部は贅沢に慣れ、私腹を肥やすことに専念している)。

3. 若い兵士には艱難辛苦に耐えるガッツはない。


◆戦意がない「一人っ子世代」の兵士たち――薄弱な戦闘力

 この視点の正当性をさらに裏付ける通達が3月20日に発布された。
題して「軍事訓練実戦化のレベルアップに関する意見」。
「いつでも戦える準備をし、戦ったら必ず勝利すること」という習近平政権発足以来のスローガンを前提として、「本当に戦うんだ、ということを兵士に学ばせろ」ということを中心に、「教育」とか「使命感・緊迫感を持て」といった言葉が目立つ。筆者はこの「教育」という言葉に注目した。

 よくよく見れば、3月15日の新指導グループ第一次会議における習近平の重要講話の中には「戦闘力の薄弱さを認識して、改革の方向を定め、問題点を明確にせよ」という趣旨の文言までがある。

 これでようやく分かった。

 つまり、これら一連の動きから見えて来るのは「戦争を知らない若い解放軍世代に、戦争の実感をたたき込み、実践力を学ばせろ」という、中国の戦闘力の「思わぬ落とし穴」だ。

 中国の軍事費増加は前年比12.2%増(2013年)と大きいものの、戦意となると、一人っ子世代が大勢を占めているため、意識高揚でもしない限り上がらない。


◆対日強硬批判は戦意高揚のため?

 中央テレビ局CCTVでは毎日のように日本がいかに右傾化しており、「日本軍国主義」への道を歩もうとしているかを、これでもかこれでもかと報道し続けている。

 この先鋭化する対日批判は、歴史カードを用いてアメリカを弱体化させ日米分断を謀るためだと筆者は論じてきた(詳細は拙著『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』に書いた)。  

 しかし中国が展開する「日本軍国主義化」を中心とする「日本脅威論」は、案外、この「教育」を目的の一つとしているという確信を、軍事委員会新指導グループ設立と新しい通達により得ることができた。

 もっとも重要講話の中には「軍隊組織形態の現代化」という言葉があり、従来の陸海空軍以外に第二砲兵部隊(情報、偵察、核ミサイル迎撃を含む戦略ミサイル部隊)を重視した再編成が成され強軍に向かうのも事実だ。

 しかし中共中央政治局会議は「戦争はしない」という意思を示唆している。強軍目標は日米に対する防衛的な威嚇のための軍事力作りとみなすべきだろう。

 武力から見た戦闘力においても、中国はとてもアメリカの武力には及ばない。

 それは命令指揮系統が「純粋な軍」ではなく、軍は「党の軍」であり、軍事委員会の「総政治部」が大きな力を持っているからだ。

 そのことは3月17日の命令である「毛沢東の標語」(政治方向性を定めよ)にも如実に表れており、また胡錦濤や習近平の「党への忠誠」とか「党の指揮に従う」にも表れている。
 それ故に戦闘指揮系統や作戦戦略に関しても、脆弱さを本質的に抱えているのである。


<遠藤誉が斬る>第28回)

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。

shige_tamura at 13:15│Comments(0)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
ランキング一覧

人気blogランキング

人気blogランキングに参加しました。
応援よろしくお願いします。
月別アーカイブ
最新コメント