2014年03月28日
オバマ大統領のアジア訪問の行方(ワシントン報告、横江公美氏)

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ヘリテージ財団、アジア研究センター、2014年3月27日
オバマ大統領のアジア訪問の行方
先日、ヘリテージ財団では、「オバマ大統領のアジア訪問Preview of the President’s Trip to Asia」についての公開フォーラムが行われた。オバマ大統領は、4月に日本、韓国、マレーシア、フィリピンを訪問することになっている。
モデレーターはヘリテージ財団のアジア部のウォルター・ローマン部長、パネリストは、ジョージ・W・ブッシュ政権で国務省の副次官補をつとめ、現在、Project2049のランダル・シェリバー所長、そして、CIAで韓国部長をつとめたヘリテージ財団のブルース・クリンガー研究員だ。
ローマンは、「ここでの議論は,国務省のブリーフィングスタイルのようにオバマ大統領は何をする予定なのかについてではなく、何をすべきなのかについてを議論する」と口火を切った。
ランダル・シェリバーは、今回のアジア訪問、とりわけ日本への訪問についての意義について語った。
最初にシェリバーは、3つの意義について語った。
1つは、安倍政権が小泉政権以来珍しく、安定した政権あることをあげた。
2つめは、シリア、ウクライナと中東、東ヨーロッパで混乱が続く今こそ、アジアへの回帰に変化がないことをしっかりと表明するときであるとした。
そして、3つ目に、アジアが今まで以上に危機感が必要な状況であるとした。
東シナ海と南シナ海への侵入を繰り返す中国、そして今まで以上にミサイルテストを繰り返し先が読めない北朝鮮と同時に2つの重大な危険要素がアジアで重なる時期は初めてであると、今まで以上に日米同盟が強硬であるとした。
続いてシェリバーは、3つの課題について述べた。
1つ目はTPPであり、その中心であるのが日本との議論であるとした。
シェリバーは「アメリカにとっては議会におけるTPAの承認が重要である」と語り、「TPAがない状態で、日本と農業について交渉すれば、日本側からTPAについてどうなっているか、突っ込まれるだろう」と懸念した。
2つ目は、オバマ大統領は、日本の日米同盟強化のための試みに支援すると表明すべきであるとした。シェリバーはその例として憲法第9条と集団的自衛権をあげた。
3つ目はエネルギーにおけるパートナーシップの構築である。
とりわけ日本は311以後、深刻なエネルギー不足になっており、「ロシアからのエネルギー輸入に大きく頼るようになっている」と懸念を語り、「TPPの結果、日本の問題を解決するために、アメリカのLNGを輸出し、エネルギー・パートナーシップを構築することも必要である」と語った。
続くクリグナーは、韓国訪問について語った。
クリグナーは「オバマ大統領が今回のアジア訪問に韓国訪問を加えたことは正しい」と始め、2つの理由をあげた。
一つは、アメリカの大統領がアジアを訪問する際には必ず日韓の両方を訪問することが先例になっていること、
2つ目は日韓関係が今のようにこじれているときこと、両国を訪問する必要がある、と語った。
さらに、ブルースは、「米韓関係は、現在、もっとも強固な関係にあるだろう」と語った。その理由のひとつは北朝鮮である。北朝鮮がさらに行方が読めない国になっているだけに、米韓の安全保障における関係は強固にならざるを得ないと語った。
もう一つは米韓の経済関係である。日米間ではTPPの交渉の先行きが読めない状況にあるが、米韓の間ではすでに米韓FTAを締結されている、とした。
最後に、東南アジアを専門とするローマンは、マレーシアとフィリピン訪問での意義を3つの分野で語った。
1つは貿易についてで、ローマンは、オバマ大統領は、マレーシアとフィリピンにさらにTPPについてプッシュし、同時にアメリカ議会がTPAを承認するように働きかけるべきだとした。
2つ目は、安全保障についてで、南シナ海での中国のふるまいについてオバマ大統領は強固に立ち向かうべきであるとし、ASEANに強固なバックボーンを与えるべきである、とした。
3つ目は、政治についてで、オバマ大統領が訪問することでマレーシアに世界からの注目が集まることは良いことだ、とした。
キャピトルの丘
3月25日ハーグで、日米韓の首脳会談がついに行われた。
その際、韓国の朴大統領は、挨拶のときですら、安倍首相と目をあわせなかったと報道されていた。日本では報道されていないようだが、韓国では、会談の際に、時折、朴大統領が唇を噛みしめていた、と報道されていた。
通常、仕事では、好き嫌いの感情は、なるべく表にださない努力をする。取引や交渉においては、好き嫌いの感情を出すことはないだろう。ましてや、「政治家」という言葉は、「誰とでも仲良くする」という意味で使われることもある。首脳会談で大統領・首相が好き嫌いの関係を見せることは、非常に稀なことである。
「唇を噛みしめていた」と聞いたときに、朴大統領の「長年の憎しみ」を感じずにはいられない。
「日本への嫌悪感は、最近の生まれたものではなく、もっと根が深いのではないか」と韓国の歴史に詳しいジャーナリストに尋ねてみた。
「もしかしたら、母親が殺されたことかもしれない」という言葉が返ってきた。父である朴大統領はKCIA長官に暗殺される前、1974年、朴大統領がフランス留学中に母親は在日韓国人に殺されている(文世光事件)。母親は韓国では「国母」と呼ばれるほど尊敬され愛されていた。愛する母親の無慈悲な死に面して、憎む対象を持とうとすることは、ある意味、不思議なことではない。
その時に使った銃は日本の警察から盗んだものであり、韓国に入国した際には日本の偽造旅券を使っていた、と言う。
首脳会談の場で唇を噛むほどの思いを持っていることを見せ付けられると、トップ日韓関係改善の足がかりは、思った以上に容易ではないように思われる。日韓関係の改善は、首脳会談以外の手立てを探る必要がある。
横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て2011年7月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。