2014年03月12日

中国の反日デモは政府批判の表われ(遠藤 誉)

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 中国の反日デモは政府批判の表われ
 習近平政権―― 苦悩する内政と強硬外交
 第1回 習近平はなぜ反日デモを抑えたのか
 東京福祉大学 国際交流センター長 遠藤 誉


 中国共産党指導部が新体制に移行して1年4カ月。しかし、尖閣諸島問題や歴史認識など、日中間の対立は激化する様相を呈している。一方、中国は国会に相当する全国人民代表大会を3月5日から開催、世界はその動向に注目する。世界第2位の経済大国となった隣国・中国との関係をどう図るか。今回、中国問題の権威で第一人者の遠藤誉・東京福祉大学国際交流センター長が、習近平政権の苦悩する内政と強硬外交について4回連載で語る。


「毛沢東の亡霊」に怯える習近平政権
「反日デモ」呼びかける書き込み削除


 2013年9月11日、尖閣諸島国有化1周年の日に反日デモは起きなかった。安倍晋三総理が靖国神社を参拝した12月26日にも反日デモは起きていない。
 なぜか――?
 なぜならそこには「毛沢東の亡霊」がいたからだ。
 習近平政権が最初に乗り越えなければならなかったのは薄熙来裁判。元重慶市書記だった薄熙来は、2012年の第18回党大会で中共中央政治局常務委員入りを果たすべく、2007年から毛沢東礼賛を唱えて貧富の格差に喘(あえ)ぐ底辺層を味方につけ、「毛沢東時代は貧乏だったが平等だった」として「紅いノスタルジー」を呼び起こした。それはやがて政府転覆につながる。だから薄熙来は2012年3月に失脚したのだが、同年9月の反日デモでは反日の横断幕の数以上に毛沢東の肖像画が並んだ。それは自らを「第二の毛沢東」と位置付けた薄熙来への支持を表すと同時に、反政府への意思表示でもあった。

 薄熙来裁判の初公判は2013年8月22日に開かれ、判決は9月22日に出ている。この間に反日デモが起きれば、中国の大地は「毛沢東の肖像画」に埋め尽くされ、反政府デモが起きただろう。だから反日デモを呼び掛ける中国のネットユーザーの書き込みは全て削除され、デモは抑え込まれたのである。


 激しい対日抗議を世界に発信
 尖閣諸島への領海侵犯も強化

 2012年11月に習近平政権が誕生するとすぐ、習近平は政治局会議を招集し、「大衆路線」を決議。大衆路線とは1947年に毛沢東が唱えた路線だ。以来、習近平は「毛沢東回帰」を髣髴(ほうふつ)とさせるようなスローガンを連呼している。
 薄熙来を「毛沢東回帰」を唱えるが故に危険視して無期懲役にまで持って行った習近平が、自分自身は毛沢東回帰をするのは、社会主義国家と名乗りながら事実上は党幹部が利益集団となるという社会主義国家らしくない現実があるからだ。人民の反逆が怖い。だから「毛沢東」に頼り、人民に媚(こ)びるのである。

 特に安倍総理が靖国神社を参拝した昨年12月26日は、毛沢東の生誕120周年記念日だった。その記念大会を開催すべく、まさに26日午前、中共中央および政府の要人が毛沢東記念堂に集まり、毛沢東慰霊を参拝していたところだった。そんな時に反日デモなどが起きたら、ひとたまりもない。中共中央はすぐさま「反日デモは抑えるが、その分だけ激しい対日抗議を発信し続けること」を決議。その瞬間から中国の国営テレビである中央テレビ局CCTVは間断なく安倍総理を非難攻撃するメッセージを出し続けた。さらに「弱腰政府」と人民に言われないようにするために、尖閣諸島への領海侵犯を強化した。


 前中共中央政治局常務委員の腐敗問題
 反日デモどころではない「国内事情」

 また、アメリカの「失望した」というコメントを受けて米中は同じ立場と強調。国際世論を通して対日包囲網を形成すべく、世界各国にいる中国大使に抗議声明を出させたり、当該国の政府要人と英語で対談を行ってテレビ放映し、それらをインターネットで配信した。

 その中国国内では、「毛沢東の亡霊」以上に中共中央を震え上がらせる事態が起きていた。胡錦濤時代に中共中央政治局常務委員の一人だった周永康に関する腐敗問題だ。周永康は石油閥や公安閥として腐敗の温床となってきた。しかし、政治局常務委員を逮捕した前例はないし、逮捕すれば任命責任において党の威信が揺らぐ。だが断行しなければ人民の信頼を失うだろう。習近平は人民の声を恐れている。だから15万人以上の(大小含めた)党腐敗幹部を拘束して周永康の外堀を埋めている最中だった。反日デモどころではなかったのである。


遠藤 誉(えんどう・ほまれ)
 1941年中国で生まれ、53年帰国。筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員教授など歴任。『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』など著書多数。

『自由民主』より



shige_tamura at 13:14│Comments(0)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

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