2012年04月18日

良い結果もたらす政治主導とは(防衛大学校教授・村井友秀)

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 今朝(4月18日)の産経新聞・[正論]防衛大学校教授・村井友秀氏の「良い結果もたらす政治主導とは」は参考になります。
 昨今の政治主導、全てが正しいというわけでないのです。
 以下、掲載します。


 政治主導は常に良い結果をもたらすのか。政軍関係を通じて考えてみる。一般的に軍は軍事力を用いて問題を解決する傾向があり、軍に対し「政治統制」つまり政治主導を確立することが戦争への道を防ぐ効果的な方法であるといわれている。以下、中印戦争(1962年)に至るインドの動きに焦点を当てこの命題を考察する。

 ≪政治統制が効いていたインド≫

 インドでは、独立運動を率いたガンジーやネルーといった政治家が英雄として人気が高く、英領時代に独立運動を鎮圧するため英国が創設したインド軍は植民地主義の手先と見なされ、独立後も政治的影響力は低かった。インドでは「政治統制」は確立していた。

 中印戦争前のインドでは、多くの国民が自国が攻撃される可能性はほとんどないと考えていた。ガンジーによる非暴力不服従運動は世界中に知られており、インドが持つ平和主義のイメージによっていかなる国もインドを攻撃することをためらうであろう、インドのような平和愛好国を攻撃して世界から非難されるようなことをする国があるとは思えない、中国は国連代表権その他でインドの世話になっているのだから、インドを攻撃するはずがない、という考え方がネルーの頭を支配していた。

 その一方で、中華人民共和国が成立したとき、ネルーは、「歴史的に見て、強大な中国が成立したときは常に拡張主義的であり、中国の工業と人口の急激な拡大は爆発的な情勢を生み出す」とも語っていた。ネルーの対中戦略の基本は、中国との友好関係を強化することによって、中国の拡張主義を阻止するというものであった。

 この政策は、中国の攻撃性を抑止することができる積極的なものでなければならず、単なる譲歩や安易な妥協は、中国の拡張主義を助長するだけであるとされた。ネルーは「友好関係は強者と弱者の間には存在しない。人でも国家でも友人であるためには平等と尊敬が必要である」と述べている。

 ≪ネルーに中印戦争迫った世論≫

 1950年代、中印国境線に関して中印両国の見解は一致せず、国境侵犯問題で双方が抗議を繰り返していた。59年3月、チベットで中国共産党の支配に抵抗する反乱が発生し、中国軍の鎮圧作戦を逃れたチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世がインドに亡命した。こうした状況下で、双方の対立は抗議の応酬から軍事行動へエスカレートし、国境線をパトロールするインド軍に戦死者が出るに及んで、インド世論の中国への敵意は急速に高まっていった。

 インドの新聞は「中国の目的は強大な軍事力を誇示することによって、インドの進出を阻止し、インドの名誉を傷つけ、アジアの人々のインドに対する信頼感を打ち砕くことにある」と主張した。

 ネルーは当初、中国との対立をエスカレートさせることに消極的であったが、そんなネルーの態度にインド世論は反発した。当時の新聞は、ネルーの「軟弱外交」を非難し、「中国の脅迫に屈服してはならない」と叱咤(しった)した。インドは民主主義国家であり、政治家は選挙に落選すれば権力を失う。

 軍事行動支持の世論が高まる中で、当初は攻撃的姿勢を戒めていたネルーも態度を変えて、インド軍幹部に「インドは中国の侵入を長く黙認し過ぎた。今こそ、強い態度で全力を挙げて中国人を追い出さなければならない。さもないと政府は完全に国民の信頼を失ってしまうであろう」と述べた。

 ≪軍の反対押し切り甚大な被害≫

 こうして、ネルーは中国との対立を激化させていく。中国軍と直接対峙(たいじ)していた前線のインド軍司令官は、十分な準備もなく戦争を始めようとする政治的決定に反対する意見を上申した。だが、「現在の兵力では中国軍を撃退できない」という軍人の警告は却下される。ネルーの判断に異論を唱えた軍人は解任されて軍法会議に付され、「政治統制」は守られた。

 ネルーは「インドの平和主義は道徳的な機甲部隊となってインド軍を守るだろう」と語っている。民主主義国で軍が政権を倒したり政治に圧力をかけたりすることはあってはならないが、軍事専門家として政治に適切な助言を行うことは「政治統制」の重要な要素の一つである。伝統的に軍人を嫌っていたインドの政治家は十分な軍事知識を持たず、軍事的要素を無視した決定を下したのである。

 62年10月20日、中印両軍の間で大規模な戦闘が始まり、11月20日に戦闘は終了した。インド軍の損害は、戦闘に参加した2個旅団の戦死、捕虜、行方不明者の合計が7047人(兵員の約70%)、第7旅団長が中国軍の捕虜になり、第62旅団長が戦死した。東北辺境特別区のインド軍は壊滅した。

 「民主主義」と「政治統制」は「軍国主義化」を阻む最も効果的な体制であるといわれている。しかし、好戦的な国民が存在する国では、政治家が冒険的な対外政策を主張することによって国民の人気を得ようとする傾向がある。政治主導が良い結果をもたらすためには、有能な政治家と冷静で合理的な国民の存在が不可欠である。

shige_tamura at 10:27│Comments(0)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

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