2011年09月28日

減災・・戦略的に巨大災害に備える (関西学院大学教授 室崎 益輝)

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 大震災 復興への視点
 減災・・戦略的に巨大災害に備える

 これからの防災対策 (2)
 関西学院大学教授 室崎 益輝



 阪神・淡路大震災の後、防災という言葉に換わって減災という言葉が用いられるようになった。東日本大震災後の復興の議論においても、減災という考え方が強く打ち出されている。

 ところで、この減災は今までの防災とどう違うのであろうか。防災は、被害はゼロにできるという考えに立脚している。それに対して減災は、被害はゼロにできないという考え方に立脚している。ゼロにしようと思わずに、少しでもゼロに近づけようと考えるのが、減災なのである。


 多くの命を救う減災を重視

 小さなリスクについては、被害をゼロにするという「防災」でよい。例えば、寝たばこによる火災のような小さなリスクに対しては、禁煙をはかることに加えて、炎の出ないたばこの開発、防炎製品の義務化などで被害をゼロにすることが、可能である。
 それゆえ、防災でもよいのである。しかし、東日本大震災のような津波災害や富士山の噴火のような火山災害のような巨大リスクに対しては、被害をゼロにしようという不遜な考え方を持ってはならない。

 東日本大震災では、巨大な堤防で何が何でも被害をゼロにしようと考えた結果、避難誘導などが疎(おろそ)かになって多くの犠牲者の発生につながった。津波に堤防が乗り越えられ、家財が流されたとしても、一人でも多くの命を救おうとする減災的発想を重視しておれば、避難などの対応でもう少し犠牲者を少なくできたのでは、と悔やまれる。


 多重的備えで被害の減少を

 さて、この減災をもう少し実践的に考えよう。被害をゼロに近づけるということは、被害を少しでも減らすように試みる、ということである。ここから「対策の足し算による被害の引き算」という、減災の手法が浮かび上がってくる。少しでも減らそうと、小さな努力や着実な試みを積み重ね、被害をゼロに近づけるのである。

 ところで、この減災のための足し算では、闇雲(やみくも)に対策を足し合わせるのではなく、対策の個々の特質や相互の関係を勘案しつつ、効果的に足し合わせることが欠かせない。

 河川の氾濫などに対応する治水対策においては、「総合治水」ということが提唱されている。強大な堤防だけで浸水被害を防ごうとするのではなく、遊水地などの水を溜(た)める場所を設置したり、土地利用によって流入する水量を調整したり、迅速に避難できるシステムをつくったりして、多重的な備えで被害の減少を目指すのである。ここでは、対策の体系的な組み合わせ、有機的な重ね合わせということが、キーポイントとなる。


 戦略的な被害の軽減

 この対策の体系的な足し合わせということで、「4種類の足し算」を提起しておきたい。それは、時間の足し算、手段の足し算、空間の足し算、人間の足し算である。最初の時間の足し算というのは、災害が起きる前の対策としての予防、災害が起きている最中の対策としての応急、災害が起きた後の対策としての復旧あるいは復興という、時系列の異なる対策を足し合わせることをいう。住宅の地震対策において、予防段階の耐震補強と復興段階の再建支援を車の両輪のようにして取り組むのが、その良い例である。

 次の手段の足し算というのは、ハードな対策とソフトな対策、さらにはヒューマンな対策を組み合わせることをいう。津波対策でいうと、堤防で防ぐのはハード、避難に心がけるのはソフト、伝承をはかるのはヒューマンである。
 100年に一回の津波には堤防を主体に考え、1000年に一回の津波には避難を主体に考えるのである。

 3番目の空間の足し算は、幹線道路などのインフラ建設に代表される大きな空間の整備と路地裏などの清掃活動に代表される小さな空間の整備とを足し合わせることをいう。
 最後の人間の足し算は、行政と市民が被害軽減のために協力し合うことはいうまでもなく、さらに企業やコミュニティーの力を合わせる、NPOやボランティアそして専門家の力も足し合わせることを、要請している。

 こうした多種多様な対策の足し算により、被害の軽減を戦略的にはかっていくというのが、減災の神髄なのである。
(『自由民主』より)

shige_tamura at 16:02│Comments(0)TrackBack(0)clip!東日本大地震 

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