2011年08月17日

講演録「政治家と官僚との関係の変化」田村重信(その9、終わり)

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(以下の講演録は、平成七年六月に慶應義塾大学大学院にて、変化の著しい政治と官僚の関係について講演したものに加筆したものです。)


〇官僚に求められるもの

 戦後五十年を迎えた今日、ポスト冷戦によって外交・防衛問題がクローズアップされてきている。そこで、今度は外交・防衛の問題について論じてみることとする。

 冷戦時代は、外交は米国の言うとおり、防衛は自衛隊が「合憲」か「違憲」かという議論が中心で、本当の意味での外交・防衛についての議論がなされてこなかった。しかし、冷戦崩壊によって、東西対立という明白な対立軸がなくなり、同時に日米経済対立に象徴されるように、日米関係も新たな段階に入った現在、外交・防衛について真剣に議論する必要が出てきたわけである。つまり、今までは米国追従、国連重視、外交は外務省の専権事項という暗黙の了解があった。また、それで国の舵取りに大きな間違いは生じなかったのである。

 だが、ポスト冷戦によって形成されつつある世界新秩序は、日本に次のような事項の見直しを否応なく迫っている。すなわち、日米安保の再定義、アジアとの関係、戦後五十年問題・戦後処理、EAECのマハティール構想へのコミットをAPECとの違いでどう対応するか、などがある。

また、台湾の李登輝総統の訪米をめぐる米中、中台関係の確執と緊張の中で、日本は台湾、中国に対する立場の確定を迫られている。

 防衛問題では、北朝鮮問題に象徴されるように、米国との対応の違いが少しずつ明らかになってきている。その要因として、北朝鮮のミサイルは米国には届かないが、日本はその射程距離内にあるという、極めて現実的な問題が横たわっている。ソ連のICBMは米国にも届いたのであるから、北朝鮮への対応は日本と米国で違いが生じるのはけだし当然だと言えよう。

 また、国連へのコミットについても、日本はあくまで国連重視だが、米国は湾岸戦争以前、国連は米国の国益に合致しないとして距離を置いていたが、それが一転、湾岸戦争では国連を利用するという行動に出た。しかし、九五年五月の玉沢防衛庁長官訪米と同時に、自民党から伊藤宗一郎、池田行彦、中山利生元防衛庁長官ら防衛関係議員団が訪米し、私も同行したが、政府・議会・シンクタンクなど米国国防関係者と議論した際、米側から国連との関連についての言及が一言もなかった。こうした例からもわかるように、防衛戦略については必ずしも国連重視ではないといった点なども重要だ。

 したがって、こうした外交・防衛に関するすべての問題において、国民的論議が必要となっているのである。先述したゴラン高原のPKO派遣の問題でも、なかなか官僚の思うようにならなかったのは、このような現状があるからだ。従来、外交情報を外務省が割合に独占していてもあまり批判がなかった。しかし、最近は外務省が外交政策そのものを決めてしまうのは行き過ぎであると批判されるようになってきている。官僚は政治に対して政策を押し付けてはならない、という自明のことが議論の俎上にやっとのぼってきたのである。 

先の参議院選挙でも、水俣病問題に対する国の責任を認めた村山首相の発言について、石坂匡環境事務次官が「総理の個人的気持ち」と述べたことに関連し、新党さきがけの菅直人政策調整会議座長は、「環境庁の役人が総理の発言を歪めるのは罷免に値する」と強く批判している。

 村山首相が行政のトップとして発言したことについては、新聞記事になるような官僚からの批判は差し控えるべきであると思う。もし、それが間違っていれば、総理に直接会って意見を述べればいいわけだ。これこそ、官僚の思い上がりと指摘されても仕方がないことである。

 また、外務省についてカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(オランダの特派員で『人間を幸福にしない日本のシステム』の著作がある)は、「外務省はごく最近まで日本の首相が目立たないことを成功としてきた」というようなことも言っている。

 確かに一年に三人も首相が変わったために、諸外国からは日本の首相は誰だということにもなるが、世界は首脳外交の時代となり、首脳同志の個人的な信頼関係が重要になってきている。そこを外務省は考えていく必要があり、著名な外国人特派員からの指摘が本当であったとしたら問題である。

 行政府は日本最大のシンクタンクであると同時に、政策に必要なあらゆる情報や資料をすべて独占している。それを政治の場での政策立案議論に供する形で提供することが、今日、強くに求められている。その意味でも情報公開についての議論がなされ、それが法案化されようとしているわけだ。

 行政改革の必要性と併せて重要なのは、行政が独占する情報をどう国民に開示するかということである。国会で審議する場合でも、行政情報が議員サイドにない場合には議論にならない。両者で必要な情報が共有されて初めて国民のための議論が行われるという認識に、官僚も早く立つべきであろう。情報公開なくして真の民主主義はあり得ないと考える。

 だからこそ、ウォルフレン氏が指摘しているように、民主主義国家では、権力を行使する側にはいわゆる「説明する責任」(アカウンタビリティ)がある。日本の官僚に欠けているのは、そういう「説明する責任」の履行である。というのが氏の見方であるが、実際にそのとおりだと思う。それは、与党三党の場でも、例えば外務省一つ例にとっても、資料の提示の仕方が非常に不親切なことが挙げられる。

 だから、こうした点は大いに改善していく必要がある。にもかかわらず、外務省の中には、今までどおりのスタンスで外交は自分たちでやるんだから、政治家や国会にはある程度の資料を出しておけばいい、という考え方がある。一方、同じ外務省の中にもポスト冷戦で時代も変わったのだから、例えば、国連の安保理入りの問題なども基本的には国民の同意を得なければいけない、そのためにはできるだけわかりやすい資料を国民に提示して、国民によく理解してもらい、支持してもらって、それからきちんと外交を進めるべきだという声も最近、大きくなってきているのも事実だ。

 こうした外務省の変化は大いに歓迎すべきであり、これからの時代はどうしても情報をオープンにするようにすべきだろう。そうでないと、今回のゴラン高原のPKO派遣とか八月十五日の戦後五十年の集い問題のようにスムーズに行かない。これからは、国民世論に支えられた外交を目指して、国内世論に対するPRを大いに考えていく必要がある。


〇新しい政治と官僚の関係


 細川連立政権の誕生で政権交代が可能となり、また、新しい選挙制度が実施されることによって、政党はほかの政党とは明らかに違う政策を提示しなければならなくなった。それには、政党自らで政策立案能力を高めていく必要がある。与党であれば確かに官僚の力を借りればいいわけだが、野党になるとそうはいかない。このことは、私自身も自由民主党が下野した時代の政調会長室長として実感している。

 後藤田正晴氏は、その著書『政と官』の中で、「役人の頭の中には、政党には情報もなければ分析能力もない。したがって政策立案能力もない。だから、自分たちが政策をつくるんだという意識がある。現実問題としてその点は間違いないところである。だからといって、役人が思い上がった意識になるなら、政党の政務調査会を充実させればよい。その気になれば簡単にできる」と述べている。

 今後の政治のテーマは、いずれも行政側の官僚に「いい知恵を出してください」というようなことで事足りるものではない。政治家が国民の真の代表として率先して考えなければならないテーマばかりである。

 今後の政治と官僚の関係について、加藤政調会長が日経新聞(九五年六月十九日)のインタビューに対して、「自民党の場合、中央官庁の役人と二人三脚で考え政策を立案してきた。どんな小さな規制緩和も役所の『ご説明』に納得してしまうところがある。中央官庁のやることは七割は正しい。しかし、あとはエゴもあり自己満足もある。政治家は距離を置いて役所に対応しなければならない時代になった」と答えている。

 こうした自民党と官僚が距離を置く必要性は、自民党が野党を経験し、連立政権に参加することで明らかになったことである。

 自民党は長期政権によって、自民党は政策に精通することになり、官僚の上に立つこともできた。しかし、その政策の中味といえば、官僚が組み立てたものの上に乗ったばかりではなかったのか、官僚そのものの政策だったのではないか、という疑念が生じてきたわけである。

 戦後五十年を経た日本の政策のあり方は、官僚の限界を越え、国民サイドに立った政策を政治家、政党自らで作り上げるものでなければならない。このように見てみると、従来の官僚との関係を改めるために村山連立政権の果たした役割は大きいといえる。

 フランスのドゴールは、「政治を主導するのは官僚ではなく政治家だ。そして、それを最終的に決めるのは国民自身」であると述べているが、この言葉は現在の日本においてこそ蘇るべきものであろう。

shige_tamura at 11:46│Comments(1)TrackBack(0)clip!講演録 

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この記事へのコメント

1. Posted by みるる   2011年08月22日 06:32
http://www.youtube.com/watch?v=tfQJvnkj-Zo

フジテレビ抗議デモ動画です
報道では6000人となっておりますが
実際はそれを大きく上回って2万人超えています。

民主党は麻生さん達に寝ないで仕事しろと散々言っていながら連日料亭で宴会騒ぎ
自民党が献金パーティーも控えているのに何度もやっています
また総理は原発で1週間寝ていないとか言いますが嘘です絶対
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110821/plc11082100360000-n1.htm
寝ないで仕事しろと言った人は寝てはいけないと思いますし緊急時であるので眠れないと愚痴も愚かです

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