2011年07月13日

「政治と安全保障」講演録(田村重信・11)

「天に向かって!」(歌・田村重信)が、カラオケ「ウガとジョイサウンド」で歌えます。よろしく!

ブログランキングに参加しています。
↓↓↓貴方の応援クリックが明日の活力になります↓↓↓

こちらをクリック

 1997年4月14日(月)「防衛庁防衛研究所一般課程研究員研修(防衛庁防衛研究所・東京)」で講演したものです。


◇危機管理への対応

 危機管理の対応について述べたいと思う。
 危機管理への対応については、まさにペルーの日本大使公邸人質事件とか、ナホトカ号の重油流出事件とか、いろいろと出てきた関係で、これらは、いずれにしても危機管理という問題を日本が真正面から真剣に取り上げて考える必要があるということになってきたわけである。

 そこで、「危機管理に関する提言」を自民党安保調査会で取りまとめたわけである。
 安保調査会は一九九七年になってから、一月末に二つの提言をまとめようということで議論を出発させた。
 一つは「危機管理に関する提言」、もう一つはやはり安全保障の問題についての提言をまとめようということになったわけである。
 そして、問題意識としてはどうしても日本の場合は、例えば災害というのはやはり、洪水とか地震とか、自然災害への対応はそれなりにキチンとやってきているが、ところがそれ以外の災害については対応策をあまり考えていないということだった。

 危機管理については、まず危機管理の概念、災害の概念というものを分かりやすく国民に知らせることが最初に必要だろうということがあった。
 もう一つは、危機管理を考える上では、やはり安全保障の問題を横に置いておいてはいけない、という点があった。危機管理は安全保障問題ともリンクして考えながら対応策を検討する必要があるということである。

 具体的な問題としては、総理大臣権限の問題がある。
 危機になった場合に、総理のリーダーシップをどう発揮するかという点である。
 次に、総理の側に危機管理がわかるプロがいなければならないし、そのプロにはそれなりのポジションが与えられていることが大切なわけである。いわゆる平時の時、危機の時ではなくて平時の時にいろいろと検討をやっておいて、いざとなったら、それらを指示したり発動したりするという関係から、まさに平時においてこそ、危機管理の問題というのは検討しておくことが大切だということである。
 だから識者によっては、危機管理の八〇%から九〇%は、まさに平時の問題なんだということを言ってるわけである。

 これら問題について、安保調査会として真正面から取り組む必要があるということになったわけである。
 それに、これは政治の提言だから、何としても政府にきちんと実行されるようにしなければいけないということを考えた。
 そこで、この提言を発表する以前の案の段階で、安保調査会正副・顧問会議には、内閣官房の内政審議室長、外政審議室長、安全保障室長、内閣情報調査室長、それから内閣広報官という関係者のトップを網羅して党本部に来ていただき、そこで議論をしたうえで、この提言を取りまとめたというわけである。

 その結果、政府の行政改革会議でも、危機管理問題を取り上げるようになって来たわけである。
 また他から、今まで行革について理念がはっきりしないではないか、ということを橋本総理は言われていたわけである。
 そこで、平成九年度政府予算が国会を通った三月末の記者会見の時に、橋本総理は行革の理念の一つとして、「危機管理に対する対応が自分は大切だ、だからそういうものを念頭において、行政改革等の六つの改革をやっていかなければいけない」ということを明言された。

 その後の新聞報道などでも、政府の行政改革会議というのはまさに、自民党安保調査会の提言に盛られているように、総理大臣権限については、危機発生時の指導が、各省庁を直接指揮できるように、内閣発足時の初閣議などで危機への対応方針を事前に閣議決定しておいて、総理の指揮監督が行き届くような体制を整えておくよう提議したというように伝えられている。
 それから、内閣に官房副長官に準ずる「危機管理の担当専門官」を置いてキチンとした対応をする必要があるというような動きも、新聞で報道されるようになってきているわけである。

 この「危機管理に関する提言」の内容をざっと説明すると、「はじめに」という項では、まず、わが国の危機管理をしっかり検討することが政治の最も重要な役割であるということを言っている。
 そのためには、日本の今日までの危機管理が非軍事危機、とくに地震、風水害といった自然災害が中心であった考え方から脱皮して、いわば、世界の常識にそったトータルな危機管理の考え方を構築する必要があるという点を指摘している。

 次に、危機という言葉というのは実はギリシャ語で、医学用語が語源となっていると言ったことも書いてある。
 それから危機管理というのは、一九六二年のキューバ危機を契機に、米国において議論が発展して、そもそも軍事的領域を対象にしていたという点にもふれている。

 さらに、代表的危機の分類と種類ということについては、大きく分けて(1)自然災害(2)人為災害(3)戦争災害の三つに考え方を分けることができる。
 そして、自然災害というのは予知型で、予知型としては風水害とか火山噴火災害などがあり、また、突発的な問題としては地震の問題などもある。
 次に、人為災害だが、これは別名、技術災害と言われるが、一過性のものとしては、航空機の事故があり、持続性のものとしては、原発事故、火災などがある。
 さらには重油流出問題、Oー157の問題もある。次に、戦争災害と政治危機で、これは戦争と特異なものとしてはテロとかハイジャックの問題などがある。
 したがって、これからは、そういったものを全て考えていかなければならないわけである。
 今までの日本は、戦争アレルギーの関係があって仕方がなかったいというところは、若干あったかとは思う。

 また、各国によって危機管理に対して対応のウェイトがかなり違っていることもある。
 それは例えば、イギリスなどでは技術災害に対しては一生懸命で、それは何故かと言えば、北海油田などかあり、油・オイル漏れなどの問題があった関係で、それらに対して、一生懸命に対応を考え、ノウハウもそろっているということである。

 それから、メキシコなどは比較的、日本に割合似ていて、自然災害に対してだけについて一生懸命のようである。
 それは国の安全保障は、米国がすぐ隣に位置している関係から、それほど考えなくてもいいだろう、という気持ちがあるのかも知れない。
 だから、国によってだいぶ災害及び危機への対応のウエートが違っている。

 確かに今までは、日本も自然災害を中心の危機への対応で、冷戦時代までは良かったわけだ。
 本当に、阪神淡路大震災が起きるまではそれで良かったわけである。
 ところが、阪神淡路大震災を境にして、危機に関する様々な問題というのが出てきた関係から、こういうした様々な問題についても、本気でトータルで真正面から考えていく必要性が生じてきたわけだ。

 わが国の危機管理は、これまで一九七三年のオイルショックで、経済的な問題を中心に危機管理ということで注目が集まり、その後はいろいろな風水害は従来からあった関係で自然災害を中心に考えるようになってきたわけである。
 ただ、そこではいつも危機については、どうしても戦後の風潮であった「軍事的な問題についてあまり考えたくない」というようなことがあった。
 しかし、もうそんなことは言えない、言っていられない、ということで、やはり危機の問題を真正面から考えなければいけないということになったわけである。

 具体的提言としては、政府全体としての危機管理体制の構築ということでは、やはり自衛隊、警察、海上保安庁などの危機対象機能を、組織的かつ効率的に活動させることが不可欠ということである。
 わが国の危機対象機能を統括できる機関の基本政策の策定、総合的な訓練の実施が不可欠で、責任を明確にした組織づくりと、人的資源の手当てをすることが早急に必要だということである。

 そして、緊急事態時における総理大臣権限の強化ということである。

 この点については、かなり議論して考えたが、総理の直接指揮監督権の明確化を図るためには、実は内閣法第六条がネックになるのではないかという議論があった。
 しかし、憲法第七十二条の内閣総理大臣は、内閣を代表して行政、閣議の指揮監督するとの関係から整理する必要があって、なかなか内閣法をさっと改正するには憲法の問題と絡んで難しいというところがあった。
 そこで、法律を改正しないで初閣議の時にきちんと事前に決めておくことで、例えば、あらかじめこういうケースの時にはきちんと総理は指揮監督を強化してやります、ということが明確になるわけである。

 次に、官邸の危機管理体制の強化については、これはまさに専門的ノウハウを擁する危機管理専門官が必要になる。
 そして、実際に総理を補佐してやっていかなければならないわけである。
 これは例えば、内閣官房には内政室、外政室、安保室あるが、それらは横並びになっている関係で、やはりその上に危機管理担当官がいればきちんとこれらの室を統括できるわけである。
 どうしてもランクが同じだと横並びになって、互いに牽制し会ってうまく機能しない、そこでそれらの上に危機管理専門官、官房副長官クラス、あるいはそれに準ずるクラスのポストが必要となるわけである。

 それから、内閣官房の危機管理体制の見直しも必要となる。

 さらに大事なことは、米国のFEMA、すなわち米国の緊急事態支援活動、その中でもESP、関係省庁分担表というのがある。
 実は、こういものをきちんと作るということが重要なわけである。
 例えば、緊急事態対応にしても、外務省と防衛庁だけで済むわけではない。
 例えば、民間飛行場の使用ということになれば運輸省、食糧ということになれば農水省、医療ということになれば厚生省の関係になる。
 そういったものがきちんと、こういう時には、どういう問題については、それが主にどこの省庁が中心になるのか、またどこの省庁がサポートするのか、といった事をきちんと事前に整理しておかないとうまくいかない、ということをESPのように明記しておく必要があるわけだ。

 次は、危機管理体制を有効に機能するための施策ということで、具体的な対処計画の作成と実施のための訓練の重要性ということである。
 訓練をきちんと本気でやらないでいると、いざと言うときに大変な事になる。
 だから、いくらいい計画を作っていても、例えば、阪神淡路大震災の時にも、一度も自衛隊が現場に行って、こういうケースの時にこうしたらいいというような実際の計画上の訓練をやっていなければ、行動をおこす事が無理なわけである。
 だから計画を作ったら、やはり実際の訓練をきちんとやっておくということが非常に大切だということである。

 さらに、危機への対処、危機管理に必要な法制面の整備ということである。
 もうぼちぼち、有事法制の問題などもきちんと議論していく必要があるということである。それから緊急事態対応、すなわち総理指示の問題とか、ガイドラインの問題もある。これらを本気でやっていく必要があるということだ。

 次に、国民の危機管理に対する意識の高揚、やはりこうした問題もきちんとやっていく必要があるということである。
 国民レベルにおいての自治会とか、町内会等のボランティア組織の成熟による国民の自助努力による初動体制が、非常に大事だということなのだある。

 そして、どうしても憲法の問題というのがその他にある。憲法の論議がこれから盛んに行われるようになるだろうが、諸外国では国家緊急事態の対応というのは憲法の中に明記されている。
 こうした問題についても、これからはきちんと議論していく必要があるし、憲法を見直す場合には、国家緊急事態への対応問題を抜きにしてはいけないということである。

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
ランキング一覧

人気blogランキング

人気blogランキングに参加しました。
応援よろしくお願いします。
月別アーカイブ
最新コメント