2011年06月27日

「政治と安全保障」講演録(田村重信)

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 1997年4月14日(月)「防衛庁防衛研究所一般課程研究員研修(防衛庁防衛研究所・東京)」で講演したものです。


◇55年体制とは

 次に、五五年体制とよく言われますが、そのことをどう考えたらいいかということである。東西冷戦の時代、国際的な東西冷戦の「米国対ソ連」の国内版がまさに「自民党対社会党」という構図だったわけだ。

 自民党対社会党というのは安全保障政策の違い、外交政策の違いが一番大きかったわけである。たしかに、社会福祉の問題とか経済の問題での違いはあるが、一番大きなところはまさに安全保障問題、外交問題であるということだと思う。

 というと、自由民主党は自由主義経済、まさに米国を中心とした自由主義経済、そして日米安保を大事にしようということだったわけである。ところが社会党は、どちらかと言うとソ連とか中国、社会主義の方に近くて、日米安保反対、そして自衛隊は憲法違反だということでずっとやってきたわけである。

 だから、五五年体制というのは安保論議がまさに、社会党から言えば、「自衛隊違憲、日米安保体制反対」ということで、安全保障の論議が中心だったようであるが、実はその根っこに憲法論議が絡んでいて、国会での議論の中心は安全保障論議というように見えていても、その根本には憲法論議があったということである。

 そして、自民党が保守合同したのも社会党が統一した関係で、日本が共産主義・社会主義国家に移ると具合が悪いということで、保守勢力が大同団結して保守合同になったということである。
 ただ、鳩山一郎さんが保守合同後の自民党初代の党首(総裁)になった関係で、米国に公取追放された人物が戻ってきて党首になったわけだから、米国についての思いは特別なものがあったようだ。

 だからこそ、米国からできるだけ、「自主的に独立したい」ということが基本にあって、だから自主憲法制定とか憲法改正というのが自民党結党時の一つの大きなスローガンになったわけである。

 それに対して社会党は「憲法を守るんだ」、「再軍備に反対するんだ」という事が大きなスローガンになって、その後、やはり「日米安保があるから日本が戦争に巻き込まれるんだ」という主張がずっと、ベトナム戦争のころなんかもあったわけである。
 従って、最近まで、「自衛隊は憲法違反」と言う主張によって、まともな安全保障の論議というのは行われなかったというわけである。
 まさに、冷戦時代の日本は、感情論と憲法論議に安全保障論議が終始したというわけだ。

 それは例えば、「福祉を拡大するには戦車一台とか飛行機一機を買わなければ可能になるんだ」という議論が盛んに行われるようになったことでも明らかである。



◇今こそ、まともな安全保障論議が必要

 今こそ、まともな安全保障の論議が必要だということだが、まさに五五年体制は自民党対社会党という構図だったのが、それが冷戦の終結によって国際環境が大きく変わることによって、国内的な自民党対社会党という対決構図そのものが安全保障から言うと無意味になってきたということだ。

 社会党は、細川連立政権から村山連立政権にかけて、「自衛隊を合憲」「日米安保体制を維持・堅持」「日の丸・君が代を認める」ということになり、基本的な対立軸というのがなくなって、自民党との政策の違いもあまりなくなってきたわけである。
 その政策の違いというのはやはり、安全保障をめぐる対立というのが非常に大きかったわけだ。

 だから、冷戦終結後、いくつかの政党ができた。昔は政党の名前が、イデオロギーや思想・考え方を表していた。
 例えば、自由民主党だと「自由」と「民主」、だから自由民主党なわけである。社会党は日本社会党で、社会主義。共産党は共産主義の政党というように、各政党とも政党の名前を聞いただけで「ああ、これはこんな考え方の政党なんだ」ということがわかった。

 ところが、冷戦後の日本の政党というのは、それがどういう名前になったかと言うと、「日本新党」「新生党」とか、それから「新党さきがけ」「新進党」「太陽党」。これらは党の名前を見て、具体的な政策というのはわからない。
 ただやはり、なんとなく「新しい」ということさえキャッチフレーズでつければ、国民がそれに乗っかってくれて、支持が拡大するのではないかということで、「日本『新』党」とか「『新』生党」とか「『新』党さきがけ」となったようだ。

 さらに、「新しい」というのが一つだと具合が悪いということで、新進党は「新しい」という言葉を二つ併せて「新」「新」党、すなわち「新進党」となるわけだ。冷戦の今日はまさにこうした政治状況になってきたわけである。

 これは政治がテレビの影響によって、マスメディアの影響によって、新しいのと古いのとの対立構図を浮かび上がらせることで、「我々はフレッシュだ」ということが政治におけるプラス要因になるということで、そうした政党の名前というものが生まれる要因にもなっている。

 それから、党首についても同じようなことが言えるように思う。例えば、民主党なんかでもフレッシュな鳩山由紀夫さん、フレッシュな菅直人さんが党首となった。だから、世の中みんな「フレッシュ」、「新しい」ということが今度の政治における、幅広い国民の支持を得るスローガンになってきたように思われる。

 そういう政治状況の中で、これから本当の安保論議が必要になってくる。今まで冷戦の中にあっては、「僕はアメリカを支持する」「いや、僕は中国やソ連のあのやり方がいいんだ」ということが言えたわけであった。それが、ソ連邦の崩壊で自由主義陣営が勝利することで、今ではこうした対立構図がなくなってきた。

 だからこそ、今後は具体的な安全保障論議をする必要が生じてきたわけである。日本の安全保障を考える場合には、例えば日本の周辺情勢はどんなふうになっているのか、ということを具体的に考えておく必要が出てくるわけである。

 朝鮮半島を見れば、北朝鮮は約百万の地上兵力がある。それから、韓国は約五十五万の地上兵力がある。日本の陸上自衛隊(約十五万)というのは何人いるのかということを考えれば、それは朝鮮半島に存在する軍事力がいかに莫大であるか、ということを想像できるわけである。もし、なにかなければ、なにか心配がなければ、そんなに兵力を置いておく必要がないわけだ。

 たしかに、冷戦が終わったということでヨーロッパの兵力は大幅に減った。減らすこともできたし、軍縮もできた。それでは、アジアの状況はどうかということも子細に検討していく必要があるわけだ。

 ところが、そういうことについて、最近の学生さんだとか、経営者の皆さん、サラリーマンの皆さんも興味を持ってきているが、それをどう勉強するかと言うと、本屋さんに行って本を買って勉強するわけである。実は残念ながら、私から言わせてもらえれば、安全保障に関係するいい本があまりない。どうしても憲法論議の絡んだ安全保障の論議とか、なにせ憲法九条をきちんと世界にPRすることによって日本が平和になるというような話だとか、在日米軍をどんどん無くして日米安保もなくすることが平和への道だというような書物が氾濫しているわけである。

 だから、例えば一九九七年四月十三日の日経新聞に日本の大学性の安全保障についての調査の結果が出ていたが、それを紹介すると、昨年(一九九六年)の五月から十月にかけて、中央大学、帝京大学、立命館など十三の大学に国際関係論を専攻、いわば専門の学生千二百人を対象に実施して、七百人から回答を得たとある。
 それについて、沖縄米軍基地問題については、「兵力を思い切って減らし、海外に移す」、これが二九・九%、そして「日米安保体制を段階的に解消するが、有事駐留方式にする」、これが二五・一%。その結果、「米軍の兵力を何らかの形で削減すべきとの意見が過半数を占めた」と報じている。
 そして、「日米安保条約と自衛隊という日本の安保体制に関しては現在の体制が最も良い」は一五・八%と少数で、「国連の安全保障システムを強化し国連全面依存の体制に変える」との回答が三三・六%でトップになっている。

 この結果を受けて、皆さんは「なんとナンセンスなんだ」というふうに思われるだろうが、実は、これがある意味では日本の大学生の安全保障についての考え方、あるいは国民の少しは安保論議に関心があるという人たちの考え方も、これに近いのではないのかという感じがする。
 だから、今こそ、安全保障の論議を本気でやっていく必要があるし、正しい勉強をしたい人に対しては、そうした情報をきちんと提示していく努力を、これから猛烈にやっていく必要があるというわけである。

 そういう意味では、この防衛研修所の役割というのはこれから非常に大切になってくる。だから私も、こうした問題点が頭にあるものだから、「日米安保と極東有事」という本を出版したわけである。
 私も、仕事の関係で本屋に行って安全保障の本を片っ端から買って読むが、以外とものごとを正確に把握・分析していないで一方的な考え方で書かれた本が多いように感じる。

 例えば、あまり名指しはしたくはないが、岩波新書で出ている都留重人さんの「日米安保解消への道」という本がある。かなり部数が出ているようだが、これを読むと、まず気がつくのは国際情勢認識というのが何もないことだ。
 あるのは、朝日新聞が中心で引用されたものばかりで、それでは自分の考え方は何かと言うと、それは朝日新聞の「社説」だというわけである。それで、都留さんはサミュエルソンの翻訳で知られる有名な経済学者である。
 それが日本の学者の最高レベルというわけである。

 というのは、日本の大学教授というのは、外国の学者の文献の翻訳をして、それを日本に紹介することによって自らの地位を高めるということのようだ。それが今日までの日本の大学教授の姿であったと思う。今までの開発途上の日本では、それでよかったのかも知れないが、これからはやっぱり、そういう諸外国の問題も全部含めて、自分で消化して、それをどう日本に合った考え方として打ち立てていくのか、ということが実は非常に大事な点ではないか。現在でも、そこのところがないというのが非常に残念でならない。

 私は、大学を卒業して、すぐに大平正芳さんの事務所で仕事をした。大平正芳事務所と言っても、これは宏池会と言って、派閥の事務所に勤務したわけである。この宏池会というのは歴代、経済の問題を政策の中心としてやってきた。とくに池田勇人さんの月給二倍論、これなんかは下村治さんが素案を作って、それが国の政策として採用されてきたというもので、伝統的を守って、今日でもこうした研究会が存在する。実は今でも私は、その財政経済の勉強会に身を置いて勉強している。

 そこで当時、高橋亀吉さんという著名な経済学者、実践経済学の評論家がおられたが、私はその高橋さんが研究会にこられて時間があるようだったので、高橋さんのところに行って質問をした。それは当時、米国ではこういう経済政策があるのに、何で日本では同じようなことをやらないのか、といった論調が雑誌や新聞に多かったので、「なぜ、日本は米国と同じ政策をしないのですか」というようにマスコミと同じような質問を高橋さんに行った。
 すると、高橋さんはこう言われた。「そりゃ、君ね、日本は日本だよ」と。

 それはどういうことかと言うと、「米国で成功した例、ヨーロッパで成功した例があっても、それは日本にそのまま持ってきてうまくいく例もあるが、うまくいかない例もあるわけだ。そこはまさに、日本にとってどうしたらいいかということを本気で考えて、そしてその中で、例えそれが借りものであっても日本としてのオリジナティをどう打ち出していくかを考えることが重要なことだ」と言うことを教わった。
 まさに今の時代は、その点が非常に大事になってきている。
 従来は、欧米に手本があったが、今の日本にはそれがない。自らで作り出していく時代なのである。だからこそ、常々私は高橋さんの言葉を頭に入れてやってきている。

 ということはやはり、日本の大学だと研究者、それは官僚組織でも同じ事だが、できるだけいろんなことを勉強して、それをキチンを自分のものとして、外国のものはそれをいかに日本に合ったものにして、また、どう打ち出すかということの工夫、そうしたことがこれから、ものすごく必要になるということを考えなければいけない。

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この記事へのコメント

1. Posted by プチ・リタイア   2011年06月27日 14:53
5 保守思想のかけらもない浜田議員を即刻除名にし辞職させるべきだと思います。売国民主党と手を組むとはいったいどういうことなのでしょうか。国会議員の役割は国体を守ることが何よりも第一です。

今後自民党は候補者選定にあたり、本当に保守思想を持っている人物だけを公認してもらいたいものだと思います。
2. Posted by アル中やもめ   2011年06月27日 20:30
3 戦後政治史のおさらいにもなり、著作共々愛読させていただいております。 
 ところで、日経新聞のアンケートには大いに疑問を抱きました。私は'93年に中大総合政策学部一期生として上京しましたが、こと学部内では安全保障論が語られており、森本敏先生から教えを受けました。その後大学院でも正課として続く筈です。
 当時から、自民党への不満や中道政党への支持は一定以上あり、民主政権への遠因である故に大きなことは申せませんが、たとい学生運動が盛んであった大学のひとつといえど、米軍の漸減をはるかに超す空理空論がはびこっていたとは信じがたいです。同時期に学んだ者としては悲しい限りです。
 因みに、私個人は日本福音ルーテル教会で約15年前に洗礼を授かった基督教徒ですが、日米安保維持(米軍漸減)と共に自衛隊国軍化、できれば自前の核武装、情報機能強化を強く支持するものです。投票にて町村先生の名前を記すことに一片の疑いも持ちませんが、加藤紘一氏や白川、中山(揮)、野中氏が支部長なら迷わず共産党などの名前を書く類の人間です。蛇足ながら。

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