2011年01月18日

ゲイツ米国防長官の慶応大学での講演

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 今日、自民党外交部会と国防部会でゲーツ米国防長官の訪日について、政府から報告が行われました。
 その際に、1月14日の「ゲイツ米国防長官の慶応大学での講演」が外務省から提示されました。
 安全保障を考える上で参考になる資料ですので、以下、講演概要を掲載します。



 日米同盟は、単に経済的・軍事的必要性に基づくものではなく、共有された価値観、すなわち、民主主義や国際的規範や国際機関を通じた平和と繁栄の追求といった信念に基づくものである。

 日米間の安全保障協力の持つ戦略的な意味合いについて以下の2つの観点から述べたい。

(1)日米両国がアジア太平洋地域において直面している安全保障上の課題の複雑性、及びそういった課題に対し共通利益を有する国家間で対応することがいかに効果的であるか。

(2)前述した複雑な課題に対応するために、日米の軍事的能力や基地の配置を含め、日米安保体制をどのように適応させるか。
                                                                                
 日米同盟は、軍事侵攻を抑止し、日本と地域の繁栄のため安全保障の傘を提供するというその中核的目的を達成してきた。これに加え、今日のアジアでは、北朝鮮や海賊、自然災害等といった従来の脅威から、テロやサイバー攻撃、核拡散といったより新しい脅威まで、日米等地域の主要国を始めとした複数国による協力が必要な課題がある。

 日米は,東南アジア等における自然災害に伴う人道支援や災害援助、アフガニスタン等破綻国家等における平和構築活動、海上交通の安全確保といった分野において密接な連携を続けている。このような活動への参加は、日本を「安全の輸出国」という新しい役割にいざなうものである。また、強固な日米協力により地域的連携の強化を図る必要もある。

 北朝鮮はアジア太平洋地域において引き続きもっとも困難な問題である。
 北朝鮮が核兵器を保持しようとしており、核に関するノウハウや弾道ミサイルを流出させていることは、全世界の安定に対する脅威となっている。度重なる挑発行為に対しては、日米韓の三カ国協力を深めており、これは米国も望んでいたことである。六カ国協議や南北対話の枠組みでこの間題に取り組むためには、まず北朝鮮が国連決議等を順守する姿勢を見せなければならない。また、中国の積極的な協力も必要である。

 中国は地域の繁栄に貢献してきた重要なプレイヤーだが、その意図と不明瞭な軍事力の近代化が近隣の懸念のもととなっている。中国の台頭に係る問題は、日米の相互の条約上の義務を再確認させた尖閣諸島における事件を始めとする、領域に関わる問題(ママ)において顕著になる。米国も、国際法に基づき海洋の「航行の自由」等が確保されることを国益と考えている。
 一方、中国を米国の戦略的な対抗者と見なすことには反対であり、中国が国際社会において建設的な役割を果たすことを歓迎する。今回の私の訪中の目的の一つは、米中の軍事交流を進展させ、米中の共通の利益を見出すことであった。米中間で継続的で信頼できる防衛対話を維持することが重要である。

 このような地域情勢の中で、日米同盟の必要性や重要性は今までにないほど高まっている。このような同盟の活力と信用を維持するためには、我々の防衛力の態勢と防衛協力を新たにしていくことが必要である。日米両国は,ミサイル防衛の分野で高い水準の協力を進めており,サイバーや宇宙の分野における脅威に対抗するための高い技術を有している。

 また、新しい防衛計画の大綱は、「動的防衛力」、ISRの強化及び南西諸島の防衛重点化などの新しい概念を導入しており、日米間の防衛協力をより深化させていく良い機会となるであろう。

 日米同盟が今世紀の安全保障の課題に対応するために進化したとしても、その中核が米軍の前方展開力であることは変わらない。米軍のプレゼンスを抜きにしては、北朝鮮の軍事的挑発は更に激しくなり、中国も周辺国に対してより独善的に振る舞うであろう。紛争や自然災害の際の文民避難や日米間の共同訓練・情報共有等にも支障が生じ得る。

 上記の観点からも、米軍の駐留を支えるHNSに関する合意が成立したことに満足している。このような日本の貢献が、米国が日本に最先端の防衛力を展開することを可能としている。米国はこれを効率的・効果的にかつ透明性を確保しながら活用することを約束する。

 米軍の基地を受け入れている自治体は日本の安全保障に決定的な貢献をしており、米国は米軍の影響を軽減するよう取り組み続ける。普天間飛行場の移転は、土地を返還し、数千の軍隊及び飛行場を人口密集地から移転することにつながり、多くの沖縄の人々の負担を軽減する。

 同盟の深化につれて、日本がその政治的・経済的・軍事的能力にふさわしいリーダーシップを発揮することが重要となる。米国が自国同盟国を守り、潜在的敵国を抑止するための軍事力を維持するためには、日本に確固たる、そして能力がある安全保障のパートナーが必要である。


 なお・講演に引き続き行われた質疑応答の主なものは以下のとおりです。


(質問)東アジアという困難な安全保障環境における日米同盟の役割に関して

(答え)日米同盟は戦略的観点から成功であったし、日本にとって経済的にも利益があったと言える。

(質問)中国との関係を正常に維持するに当たり

(答え)相互に粘り強い交流をすることが重要であるが、海洋における「航行の自由」や「商業の自由」は米国にとって妥協が許されない分野である。

(質問)中国の文民統制に関して

(答え)自分(ゲイツ長官)は、中国軍の活動について中国の軍部と文民指導部との間に意思疎通の欠如の兆候が見られることを懸念しており、米中軍事交流においても、シニア・レベルの軍人・文民の双方を含む対話の場を求めているが、中国においては米国のNSCのような軍民双方による組織がない。

shige_tamura at 13:56│Comments(0)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

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