2010年04月15日

森本敏 の日米同盟の危機(下)

拓殖大学大学院教授・森本敏 の日米同盟の危機(下)

日米同盟を危うくする

日本人の思想傾向

日米安保の果たした役割

 現下の日米同盟が普天間基地問題をめぐり、ぎくしゃくした関係になっていることは深刻である。しかし、日米同盟が、1つの米軍基地を返還するための代替施設をめぐって、このように傷ついていることは、どう考えても合理的ではない。

 この問題の本質は、鳩山連立政権の反米的性格に米国が不信感を持っているということにある。しかし、その根底にある問題に、目を向けなければならない。それは、日本人の思想傾向である。

 今から50年前の1960年に、日米安保条約改定が行われ、その時に日本社会に起こった事件が、60年安保反対闘争である。日本全体を巻き込んだこの「アンポ反対」闘争は、日本人のナショナリズムであった。「アンポ反対」闘争に身を投じた学生は、日米安保条約のどこに反対だったということではない。ただ、この条約によって、日本が米国の属国になって良いのか、「断じてそれは許すまじ」。これが「アンポ反対」闘争の本質であった。その余韻は70年代まで続き、やがて日本は高度成長期に入って、アンポ反対闘争の闘士は、柔順なサラリーマンになり家庭人になってしまった。

 以来、40年、日本は日米安保に守られ、経済成長に専念して冷戦期を乗り切った。学生の多くは団塊の世代より年上の年代であったが、彼らの多くは定年を迎え、第一線から退いた。ところが、米国はこの間、ベトナム戦争、湾岸戦争、ソマリア戦争、ユーゴ戦争、ハイチ戦争、イラク戦争、アフガン戦争と、絶え間なく戦争を続けてきた。

 現在も、米国は「戦時下」にある。日本は、米国のイラク戦争のころから、反米感情が強くなっていく。自民党時代に、日本の世論の中心軸が親米右派であったものが、今や、反米左派にシフトしている。

 同時に、経済構造改革、規制緩和によって地方経済が疲弊し、国民の多くが自民党政治に失望し、民主党支持に走った。さらに、米国に追随して言いなりになっている自民党というイメージが反映したことは確かである。

 新たな反米運動のうねり

 こうした傾向を助長するが如(ごと)く、反米リベラル主義者が「親中反米」「自主独立」を唱え出している。「対等」な日米関係というスローガンは、米国追随をやめて、自主路線を行こうというものである。日米同盟に依存して米国に追随すると、戦争に引きずられ、ろくなことはないと左翼主義者は訴える。

 普天間基地の辺野古案は、自民党政権とブッシュ政権が結託して作ったものであり、断固としてこの合意には従うべきでない、普天間基地は代替施設なしで返還すべきであると叫ぶ。

 これはどう考えても、第2安保闘争である。経済の低迷、国力の低下、国際的緊張感の欠如、大国へのムカムカした反感。こうした要素が絡まって、反米・反基地運動のうねりが、今や、東京からではなく、沖縄から出てきている。反米リベラル主義者が、これをあおり立てる。彼らの関心には、世界の平和も、アジアの安定もない。ただ、米軍がいなければ日本は平和だと叫ぶだけである。米国が、自国の国益という面もあるが、地域の平和と安定のために、いかなる犠牲を払っているかを考えない。これこそ一国平和主義である。

 第2安保闘争からさめたとき日本の将来が決まる

 しかし、オバマ大統領がいうように、必要な場合には戦争をしても平和を維持しなければならないのである。反米リベラル主義者には、これも理解できない。戦争や武力行使はいかなる場合にも許されるべきでないという。これは、無政府主義か、非武装中立の議論である。

 しかし、国家の安全があって初めて、国民生活の繁栄があり、地域の安定がある。
 日米同盟が、戦後日本の安全にとっていかなる役割を果たしてきたのか、そのもとで、日本がどのようにして今日の繁栄を享受できるまでになったかを、改めて思い知るべきである。

 いま、日本人の思想は再び、反米に向き、日米同盟と日本国は危機的状況にある。日本人が第2安保闘争からさめるのはいつのことか。それが、日本の将来を決めるであろう。 (「自由民主」から転載しました)

shige_tamura at 10:27│Comments(1)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by サラリーマン   2010年04月15日 11:49
2 鳩山総理は反日です。小澤幹事長も

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
ランキング一覧

人気blogランキング

人気blogランキングに参加しました。
応援よろしくお願いします。
月別アーカイブ
最新コメント