2010年02月04日

自衛隊のトホホ・・・な事情(桜林美佐氏)

 ジャーナリスト桜林美佐さんのニッポン放送のザ・特集『自衛隊のトホホ・・・な事情』をお送りします。

上柳 仕事での会話に困らない、思わず人に話したくなる話題をお送りする「ザ・特集」今日は、日頃あまり知る機会のない自衛隊のお話を・・・。

桜林 (挨拶)
●今、どこの省庁でも、あるいは一般のお宅でもお金のやりくりが大変。
●その中で防衛予算とはどうなのかというと、実は、来年度の予算が出たが、ここ8年、減り続けていた防衛予算が、なんと0・3%増えている!
●しかし、この数字、実際にはちょっとしたトリックというか、からくりがある。そこでっ、「防衛予算は増えているけど増えてない!」

桜林 ●どういうことかというと、この予算の中には、隊員に支給される「子ども手当」が含まれているため、それで結果、増えてしまった。

●防衛省・自衛隊だけ予算の中に計上されるのか?と疑問に思うかもしれないが、これは他の公務員でも同様に、それぞれの所属の省庁の予算に繰りこまれるが、なにせ自衛隊員は24万人いる大所帯なので、合計で235憶円という大きな額になり、思いがけず前年よりプラスの予算となった。しかし、活動に関わるお金は逆に減っている。

●ちなみに、世界各国の国防予算は近年、多くの国が増加の一途を辿っていて、唯一、着実に減らしていたのが日本。
●しかも内訳にもバラつきが。例えば21年連続2桁増を続けている中国は、この中に武器を買うお金とか、開発の費用などが含まれておらず、実質は公表数値の2倍以上ではないかと言われている。
●一方で日本は、防衛予算の半分近くが人件・糧食費。

●ご承知のように、これまで以上に今回は予算を削減したいという状況だったので、ざっくりと(1452憶円)減らしたが、造っている船や航空機など高額な装備品は、3年ぐらいの分割で支払うため、その後年度負担(分かり易く言えば、ローンの支払い)や、人件・糧食費をいきなりカットすることはできないので、一般物件費という油を買うお金や修理のためのお金などが大幅に減った。


●陸海空自衛隊の中では、特に人の力に重点を置かれる陸自は人数が多いので(14万人)が最も大変な様子。そこで、まずは、
「築百年も珍しくはありません。老朽化する施設に四苦八苦!」


桜林 ●明治時代の建物を、現役で使用している部隊もあり、修理のための予算は、なかなか付かないらしい。隊員は日々メンテナンスに苦慮。(建物の耐震のための補正予算が前政権で70憶ついたが、政権交代で68憶円が執行停止)
●陸自の高田駐屯地(新潟)に行ったが、明治時代の木造の馬の厩舎がまだ現役で1階が倉庫、2階が事務所や宿泊所として使われている。
●因みにここには真夏に行ったが、食堂のエアコンが壊れていて、汗を流してご飯を食べていた・・・。
●習志野にある資料館は明治44年建造で、見ると明らかに傾いているが、修復費が毎年見送られていて、そのうち倒れてしまうのではないかと心配・・・。
●壁や天井が今にも落ちそうな倉庫で作業している姿も。危ない。
●やっと新しい建物ができても、中身まで新調できず、錆びた机に壊れたイスはそのままのミスマッチなかんじ。
そして、古いのはこれだけではない・・・、
「制服がボロボロ、でも買い替えられない!」


桜林 ●古いといえば、事業仕分けでも話題になった被服もあげられる。
制服は6年間着ることになっているが、実際には更新できていない。ある陸自幹部の方のを見たら96年に作った制服を着ていた。陸自では、だいたい実質13年かかって更新しているのが実情らしい。
●(※必要あれば)インナーぐらいは輸入した方が安いと言われたが、国産だとほぼ100%不良品がない状態で納品されるが、仮に輸入にすると、一つ一つ検査をする費用など諸経費がかかるのだそう。
 生地も国内では服のプラス5%で済むが、例えば中国ではプラス15%必要なのだとか。


●実際、装備品の調達を自由競争入札にすればコストダウンが図れるという声を受けて、入札で安い軍手と靴下を購入したが、緑色を指定したのに、一度洗ったら色が落ちてしまうようなものだった。
 長持ちしないとなると、結局、二重コストになってしまう可能性があるという。
●そして、こんなこともあるようです。
 「有料コピー機!」

桜林 ●これは、年間に使用できるコピー用紙やインクの金額が限られているため、人数の多い陸自の場合は、絶対に足りなくなる。その分、部隊によっては、隊員が使用毎にお金を支払って使う所もある。

桜林 ●空自のOBの方に聞いた話では、コピー機その物が足りなくて、隊員でお金を出し合ってリースしたこともある(その後、リース会社が倒産し、コピー機はなくなったのにリース代を払い続けなければならなかったというトホホな後日談も・・)。
●そして、もっと重大なことも起きている・・
 「走らない車両、飛ばない飛行機!」


桜林 ●陸海空で共通の現象。部品が調達できないのが最大の原因。それで、クラッチ版のない車両とか、エンジンのない航空機などがゴロゴロしている。
●仕方がないので、他の車両や航空機から足りない部品を流用する方法をとっていて、止まっているものが常にある。整備の人は、この作業を繰り返しており、超多忙。
●(※)今、ソマリア沖海賊対策でジプチに海自のP3C哨戒機を派遣していて、「保有機数が多い」からもっと出してもいいのでは、とも言われるが、実働数は厳しい状況で余裕はない。
●最後に、これは一番、心配されること・・・。
「燃料不足で訓練が減っている!」


桜林 ●油の購入費を抑えていることから、自衛隊に不可欠な訓練の回数を減らすなど影響が出ている。
●訓練ができても、艦船や航空機のスピードを落として燃費走行するとか、船を動かしながらするものを、止めて訓練したり、実際の想定通りにできない。
●大きな演習なども中止が検討されているなど、このままでは、「夏はジョギング、冬はスキー」といた訓練しかできない、サークルか?という笑えない笑い話も出ている。
●新隊員に施す教育・訓練も縮小されしまうと、隊員の育成にも影響。
●自衛隊の場合、災害派遣に出る可能性もあることから、そのために燃料の余力もなければいけない。そうなると、やはり、日々の生活で使う燃料はまず先に節約対象になる。

●12月に富士山の麓にある演習場に泊まりがけで行ったが、夕方になると無情にも暖房が止まり、ちょっと休んでるだけかなーと、待っていたが、朝までつかなかった!
●どうりで、夕方になると皆さん外で走っていた・・・。
●実は陸自では北海道の最北端の部隊でも夕方には暖房を消している!
●今回の予算を受けて、陸自隊員の入浴は2日に1回にしようかという検討までなされているという。
●災害派遣などで頑張ってくれているが、このような裏側はあまり知られていない・・・。

shige_tamura at 14:10│Comments(1)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

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この記事へのコメント

1. Posted by 観音寺   2010年02月04日 17:08
今日の決算委員会で「防衛予算が増えた」ことを(確か与党議員が)質問していましたが、なんと子供手当分でしたか。もちろんその議員さんはそんなことはおくびにも出さず、しかも「もっと減らすべきだ」みたいなことを言ってたような・・・実情をおわかりでないんでしょうねえ。

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