2009年11月27日

日米同盟は危険水域から脱していない(森本敏拓殖大学大学院教授)

 鳩山政権の政治体質には気になることが多い。

 第1に、同政権は日米同盟依存を排して米国と対等な関係を確立しようとしているが、これは、日米同盟に依存しすぎた自民党政治が誤りであったという考え方に立っている。しかし、日米両国が国益と価値観を共有しているからこそ日米協調を進めてきたのであり、日本は米国に無節制に従属したことはなく、この考え方はおかしい。

 第2は、官僚依存を排した政治主導を進めようとしているが、これは、自民党政治が官僚に依存し過ぎて政界・官界の癒着構造を作ったという見方に立っている。しかし、官僚から十分に情報を受けずに、官僚を活用せず政治ができるはずもない。現実には鳩山政権は官僚依存体質が強く、官僚の答弁を禁止しても閣僚の答弁を書いているのは全て官僚である。

 第3は、マニフェストに拘泥し過ぎである。マニフェストはあくまで選挙公約であり、作ったときと状況や事態は変化している。マニフェストを実行することが政治の優先課題であるというのはおかしい。国民もそんなことは望んでいない。

 第4は、鳩山政権は来年の参院選までの暫定政権のように見えるが、参院選を有利に展開するためか、与党内が分裂や意見対立をもたらすような重要な国家政策をほとんど進める考えがないことである。マニフェストに防衛も安全保障も憲法についても方針を示していないのは、どうかしている。

 11月13日に行われた2回目の日米首脳会談は実質的内容がなかった。協議のための枠組みを2つ作って問題を先送りしただけである。他方、東京でのオバマ米大統領の演説は素晴らしかった。反対に、鳩山総理がオバマ大統領を東京にほったらかしにして、先にシンガポールに行っておこなったアジア政策に関する演説は全く内容のない空虚なものだった。

 しかも、現地で記者団に普天間基地問題について日米間で合意した現行計画にはこだわらない、日米合意が前提なら作業部会を作る必要はないと、日米首脳会談での約束を反故にするような発言をした。この発言は日米間の信頼感を損なうことおびただしく、信じられないような背信行為である。

 この総理の発言が真意であるとすれば、普天間基地問題の行方は限りなく不透明になった。普天間基地問題を決断せず、予算編成にも組み込まれずに1月の名護市長選挙まで待つという事態は、最悪の状態となる。
 もともと、鳩山政権になってから、普天間基地問題の先延ばし、日米地位協定やHNS(接受国支援)減額、インド洋からの海自撤収、核先制不使用や核密約調査、東アジア共同体提案など、米国にとって不快極まりないことばかりして、日米関係を深化させるようなことを一切しない鳩山政権を、米国は忍耐強く見守ってきた。

 しかし、2回の首脳会談で十分である。米国の恩情も年末までであろう。総理官邸の危機感のなさには驚くばかりである。東アジア情勢が厳しく不安定な時に、日本の繁栄と安定の基盤である日米同盟の信頼性をぐらつかせてどうなるのか。

 この政権は、反米だけでなく、反日でさえある。
(自由民主、12月1日号より)

shige_tamura at 14:00│Comments(0)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

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