2009年11月25日

ジェームス・アワー氏の講演「日米関係は不平等だったのか」その1

ジム11月24日、自民党国防部会(自民党本部)での「日米関係は不平等だったのか」(講師)バンダービルト大学教授 ジェームス・アワー氏の講演録です。


 皆さま、おはようございます。ジェームス・アワーでございます。またここにうかがうことができて大変光栄に思っております。私、バンダービルト大学で今、教鞭を取っておりますけれども、ここで皆さまの前でお話をさせていただくに当たっては、その前に20年間、海軍におりましたが、そのときの気持ちを思い出しております。
 ところで、先週の日曜日にバンダービルト大学から野球のチームがまいりまして、昨日、川崎で法政大学と対戦したんですけれども、勤労感謝の日ということで私も観戦に行きました。4対4という最終スコアで、今日は明治と青山という二つの大学を相手に試合をすることになっておりますが、1勝ぐらいはあげたいものだなと期待をしております。

 本日は日米関係に関して、三つのテーマについてお話をさせていただきたいと思っております。
 日本でも現在、活発な議論が行われていることと思いますが、
一つは、拡大された抑止力、エクステンデッド・ディターレンスの考え方、
第2番目が沖縄の問題、
3番目に対等な日米同盟、日米関係ということです。

 冷戦終了から90年代ぐらいまでは、少なくとも米国は核兵器を持っているということが非常に必要とされておりました。今日、それからそれ以降と比べて、その必要性は大変に大きなものでした。

 これには二つの理由があります。

 まず一つには、核兵器が戦術のレベルにおいても非常に重要だったということなのですが、90年代まではミサイルが精密さ、精度を欠いておりまして、例えばこの建物がソ連の軍の本部であるということがわかっていたとしても、千代田区に向けてミサイルを撃ち込んで、おそらくはこの建物も破壊されるであろうということを願うことしかできなかったわけです。そういう時代でございました。

 第2番目、海軍においては、私、海軍出身なわけなんですけれども、ソ連の潜水艦のほうが日米が持っている魚雷のスピードよりも速いということがありました。ですから、核兵器を海底に撃ち込むことで、それによって衝撃波がおそらくはソ連の潜水艦に伝わるであろうということを期待するよりなかったわけでございます。
 米国が核の能力を持っていることをソ連が信じるということが、信頼性に大きく貢献をしていたわけなのですが、すなわち、すべての米国の船舶及び航空機は核兵器を登載しているとソ連が信じることが非常に重要でした。日本、全世界に対しても、米国はNCND(Neither Confirm Nor Deny)、すなわち核兵器を持っていると確認することもなければ、これを否定することもないという政策ですが、これはパラノイアと言えばそうなのかもしれませんけれども、それによりまして、ソ連はすべての船舶、すべての航空機に核兵器を登載しているということを信じたわけです。

 日本では米国の艦船は必ずしもそういうものを登載していないという発言もあったようでございますが、幸いにしてソ連はこれを信じなかったということがあります。もしこれを信用したとすれば、米国が提供する日本及びこの地域における核の傘というものに対しての信頼性は損なわれたかと思います。

 1980年代の末ぐらいから、こうした長距離ミサイルの精度、確度が飛躍的に向上いたしました。ですので、核もそうですし、通常兵器の精度が向上したために、例えば自民党本部を攻撃するためには、通常兵器の誘導ミサイルを使ってもっともっと正確に、通りを来て、左へ曲がって、右へ曲がってというような精度をもって、この自民党本部を攻撃することができるようになりました。
 そしてまた、魚雷のスピードもずっと上がりましたので、ソ連の潜水艦を凌駕するスピードで進むことができるようになりました。

 ですので、1991年に先代のブッシュ大統領の任期が満了する前に、NCNDの政策は改定されました。
 これによりまして、駆逐艦、巡洋艦、空母、そして潜水艦は核兵器を登載していないということを公にすることになったわけですが、現在は弾道ミサイル潜水艦のみが核兵器を登載しております。

 ですので、ご存じと思いますけれども、原子力潜水艦が日本に寄港することがあったとしても、弾道ミサイル潜水艦は日本、また世界のほかのどの港にも寄港することは今までありませんでした。

 非常に重要なことは、エクステンデッド・ディターレンス、拡大された抑止力というものを、戦術を考えた場合に、戦術的なレベルでは非核の能力が向上したということ、それから核兵器に関しても、われわれは持っているわけですので、そういう持っているということを保持しつつ、形が変わってきたということが言えます。

 私のような年齢の方であれば、日米の防衛の今までということを思い出していただくと、60年代とか70年代に朝日新聞もしくは赤旗などに、横須賀の海兵隊や海軍の若者にインタビューをして、おそらくちょっと酔っぱらっていたのではないかと思いますが、そうすると米国の船、「ミッドウェイ」には核兵器が登載されていて、自分たちはそれを守っているんだよというようなことを言っていたのではないかと思いますけれども、実際はそういう人たちは核兵器があるともないとも知らなかったわけです。

 ですので、先程も申しましたが、91年にはブッシュ大統領が核兵器は登載していないということを公にしましたので、1960年代、70年代、80年代にソ連は米国の艦船に核兵器が積まれているかもしれないということを疑っていた、そういうことに関連しまして、現在、日本の政府が調査をされようとしているということが、私は正直言って理解ができないのですが。(続く)

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この記事へのコメント

1. Posted by 高橋大輔   2009年11月25日 18:01
戦略研究フォーラムのシンポジウム、聴講してきました。
海軍出身の方とは存じ上げませんでした

アメリカの上院・下院も「対等な日米同盟を歓迎するだろう」。ただしその意味は、日本人の大半が意図している(=云いたい事が言える)だけでなく、求められるものも増えるのだという視点は参考になりました。

パネリストの中では浜田靖一・前防衛大臣の主張が最も判りやすかったです。海江田万里議員は立場上仕方なかったのかも知れませんが、何とも歯切れが悪かったです。

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