2009年09月29日

民主党の「子ども手当」の問題点

 今日(9月29日)、産経新聞「正論」で、民主党政権発足に寄せて 新渡戸文化学園短期大学学長・中原英臣氏が、民主党の「子ども手当」の問題点を指摘しています。
 以下、掲載します。

 ■「手当」による新たな格差を懸念

 今回の衆議院選挙で民主党が掲げたマニフェストの中で最も注目度の高い政策は、子育て支援を目的に中学卒業までの子供1人に対して月額2万6000円、年間で31万2000円を支給する「子ども手当」と思われる。
 マニフェストには初年度の平成22年度は半額支給、23年度からは全額支給とあるが、そうなると23年度からは5兆円を超える財源が必要になる。その財源は児童手当と配偶者控除の廃止や扶養控除の一部廃止などで補うことになる。

 そのため単身世帯と子供のいない共働き世帯は増税にならないが、子供が高校生以上の専業主婦世帯は年収とは無関係に増税となる。
 おそらく民主党は専業主婦世帯はゆとりがあると考えたのだろうが、そうとは限らない。会社を経営している金持ちの場合、妻が役員をしていることが少なくない。そうした妻は税制上は専業主婦でないので、もともと配偶者控除など受けてはいない。高校生以上の子供がいる専業主婦の中には、親の介護などでやむなく仕事を辞めた女性も多いはずである。

 ≪少子化対策には保育充実≫

 さらに、子ども手当が年間31万2000円ということは、中学卒業までの15年間に468万円が支給されるから、子供が3人いる世帯の子ども手当は総額で1404万円になる。これは地方によっては一戸建ての家が買える金額である。子ども手当で得をする世帯と負担が増える世帯では、最大で年間120万円の差が生じるという東レ経営研究所の試算もある。
 世帯によってこれだけ大きな差が出る子ども手当は新たな世帯間格差を生じかねない。鳩山首相にはモットーである「友愛」を感じる政策を実行してほしい。

 ところで、子ども手当は子育て支援にはなるが、少子化対策としての効果には疑問がある。首都圏で14施設の学童保育を運営するキッズベースキャンプが共働きの保護者を対象に実施したアンケートによると、子ども手当が出たらもう1人産みたい人は12%しかいないのに、産まないという人が45%、どちらとも言えない人が43%もいる。
 「産まない」と「どちらとも言えない」という人に理由を聞くと「保育園、学童などの預け先が不足している」という回答が最も多く26%もいた。この数字から、少子化対策には、子ども手当よりも保育の充実が先ということがわかる。

 9月7日に公表された厚生労働省の調査をみても、認可保育所に申し込んでも満員で入れない待機児童が、前年の30%増で2万5384人もいる。これでは日本中に待機児童が溢(あふ)れているようだが、保育所の定員数は213万2081人なのに、実際に保育所を利用している児童は204万974人と定員数を下回っている。意外なことに保育所の定員数からみると保育所は不足していない。

 東京や神奈川には待機児童がたくさんいるが富山、石川、福井など9つの県には待機児童がいない。医療と同じように保育にも地域格差があるが、地方に問題が多い医療の地域格差と違い、保育は待機児童が多い都会に問題がある。
 待機児童の解消のために保育所を増やすとしても地域の状況を考慮する必要がある。

 ≪所得制限で財源の捻出も≫

 それでは保育所さえ増やせば少子化問題は解決されるかというと、そうではなくて、保育の分野では量だけでなく質も問われる。保育所というハードも大切だが、子供を自宅で預かる保育ママの普及といったソフト面の整備も大切である。
 ハードだけでなくソフトもということになると、保育時間を延長して子供を預かる「延長保育」や通常の保育と違って手間のかかる「零歳児保育」、生まれたばかりの乳児を対象とする「産休明け保育」、子供を預けている実家の親が病気になったときの「緊急一時保育」といったサービスも充実していく必要がある。こうした保育に必要な保育士の養成も重要な課題といえる。

 さらに、子育てと仕事を両立させている女性には悩みがある。それは子供が病気になったら仕事を休まなくてはならないことである。そうしたときに必要なのが「病児保育」と「病後児保育」である。風邪などの軽い病気の子供を引き受ける病児保育は、小児科医のいる医療機関に保育室を設置すればいいだけだから、すぐに解決できる。

 インフルエンザが治っても他人に感染させる可能性がある間、保育所に預かってもらえない子供を預かるのが病後児保育である。病児保育や病後児保育の整備は有効な少子化対策となりうる。
 鳩山内閣に望みたいのは、子ども手当の支給に所得制限を設けることで世帯間格差をなくすと同時に、予算を捻出(ねんしゅつ)し少子化対策になる保育所の増設、保育士の養成、保育内容の充実などを進めてほしいということに尽きる。


shige_tamura at 11:03│Comments(2)TrackBack(0)clip!民主党 

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この記事へのコメント

1. Posted by ウォッチ民主党@鳥取県   2009年09月29日 13:19
「子供手当て」目当てに、
・海外の子供を養子にする。
・日本に在住の外国人が、祖国の知人の子供を名目だけ扶養家族にする。
ということでも、「子供手当て」が支給できるなら、悪事を働く人にとっては、美味しい商売になってしまいます。
2. Posted by piku   2009年09月29日 17:22
我が家は子供を持たず私が専業主婦という家庭ですが、自分たちの意思で選んできたのでまだいいですが、体の事情で子供をあきらめた人たちや介護などやむを得ない事情で専業主婦をしている人たちからすると、本当に残酷な制度だと思います。
また所得制限も設けないとなると年収300万円の家庭が年収1000万円の家庭の犠牲になること、外国籍の家庭、その子供が日本国外に住んでいる場合にも一律くばられるなど、到底納得の出来るものではないです。

また、「新型インフルエンザワクチンについても生活保護世帯など低所得者の接種費用を軽減するため、国の予算で600億円を負担する方針を固めた」と本日(9/29)に発表されましたが、きちんと納税している家庭にお子さんが二人いた場合三万円程の出費になります。きちんと納税していても余裕のない暮らしをしている人もたくさんいるのに、「正直者はバカを見る」のような状況に感じられます。

やはり民主党政権が出してくる案は一部の人だけ(ほとんどが在日外国人)が優遇されている社会主義国家のような感じがします。

谷垣総裁を筆頭にきちんと不公平感の残らないように論戦していだきたく思っています。

毎日毎日「もーやだこんな国…」とここ1か月思ってばかりです…

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