2009年08月31日

米国の識者から批判されるニューヨークタイムスの「鳩山論文」

鳩山由紀夫民主党代表の『NEW YORK TIMES 』August 26.2009への寄稿論文
<全訳掲載します>

 産経新聞は、この鳩山論文を「米に敵対的、米専門家から異議と失望」(8月30日)と論評している。東アジア共同体、アジア共通通貨、地域の安全保障体制の構築など日本の安全保障を危うくし、媚中・反米の論文である。

劉江永氏(中国・清華大学国際問題研究所教授)は、鳩山代表の東アジア共同体について「チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の訪日や新疆ウイグル独立派の活動への対応を中国国民は注目している。日中で信頼関係をつくれなければ、東アジア共同体の構築は無理だ」と述べている。(8月31日、日経新聞より)
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「日本の新たな道」
民主党代表 鳩山由紀夫 


 市場原理主義と友愛の理念

 冷戦後、日本は、アメリカが主導する運動ではグローバリゼーションと呼ばれることの多い、市場原理主義の風に絶えず吹き付けられてきた。原理主義者が資本主義を追求する際、人は目的ではなく手段として扱われる。結果として人間の尊厳は失われる。
 我々はいかにして、我々の市民の財産と生活を守るため、倫理や節度を欠いた無制限な市場原理主義と金融資本主義に終止符を打てるだろうか。それが我々が現在直面している問題である。
 こうした時代に、我々は−フランスのスローガン「自由、平等、友愛」のように−自由に内在する危険を抑制する力としての友愛の理念に回帰するべきである。
 私の言うところの友愛とは、資本主義という世間に流布しているグローバル化されたブランドの行き過ぎを抑え、我々の伝統を通じて育まれた地域経済の慣習を調整することを目的とした原理として表現できる。
 最近の経済危機は、米国流の自由主義市場経済が世界の理想的な経済秩序を代表しており、すべての国家は自国の経済を支配する伝統と規制をグローバル(むしろアメリカの)スタンダードに合わせて修正しなければならない、という観念に基づいた思考法の結果起きたものである。
 日本では、グローバリゼーションに対してどの程度距離を置くかという点で意見が分かれる。あるものはグローバリズムを積極的に採用し、あらゆることを市場の命令下に置くことを主張した。別のものは、社会のセーフティネットと我々の伝統的な経済活動を守るために努力が払われるべきだと信じ、より控えめなアプローチを支持した。小泉純一郎首相(2001-2006)の就任以来、自由民主党は前者を支持し、我々民主党は後者の立場に傾いてきた。
 いかなる国における経済秩序も長い年月を経て構築されたものであり、伝統や慣習、国民の生活様式の影響を反映している。しかし、グローバリズムは、非経済的な価値、環境問題や資源の制約といった問題を何ら顧みることなく発展してきた。
冷戦の終結以降の日本社会の変化を振り返れば、グローバルな経済が伝統的な経済活動にダメージを与え、地域コミュニティを破壊したと言うことに何ら誇張はない。
 市場の理論から見れば、人は単に人的なコストでしかない。しかし、現実の世界においては、人は地域コミュニティの骨組みを支えるものであり、生活様式、伝統、文化を物理的に体現するものである。個人は、地域コミュニティの中で職業と役割を得、その家族を扶養することができて、人としての尊敬を得るのである。
 友愛の原理において、我々は、農業や環境や医療など人間の生命や安全に関わる分野を、グローバリズムのなすがままにする政策を採用しない。
 政治家としての我々の責任は、グローバリズムの行進によって脇に追いやられた非経済的価値に我々の注意を再び向けることにある。我々は人々を結びつける絆を再生し、自然や環境をより考慮し、福祉と医療制度を再建し、より良い教育と子育て支援を提供し、富の格差に対処する政策に取り組まなければならない。

 東アジア共同体の創造〜アメリカの時代の終焉と中国の台頭

 友愛の概念から生まれるもう一つの国家的目標は、東アジア共同体の創造である。もちろん、日米安全保障条約は、日本の外交政策の礎であり続けるだろう。
 しかし同時に、アジアに位置する国家としてのアイデンティティを忘れるべきでない。増大する活力を示す東アジア地域は、日本の基本的な存在圏として認識されるべきであると信じている。だから我々は、安定的な経済協力と地域間安全保障のための枠組みを構築し続けなくてはならない。
 金融危機は、多くの人に、アメリカの一国主義の時代は終わるかもしれないと示唆した。そしてそれはまた、世界の基軸通貨としてのドルの永続性に疑いを提起もした。
 私はまた、イラク戦争の失敗と金融危機によって、アメリカ主導のグローバリズムの時代は終焉し、世界はアメリカ一極支配の時代から多極化の時代に向かうだろうと感じている。しかし、今のところアメリカに代わる覇権国家は、見当たらない。ドルに代わる世界の基軸通貨となる通貨も見当たらない。アメリカの影響力は後退しているものの、今後、二、三十年は世界の軍事・経済のリーダーであり続けるだろう。
 近年の情勢を見れば、中国は軍事力を拡大しながら世界の経済を牽引する国家になることは明らかである。日本が経済規模で中国に追い越される日はそう遠くはない。
 覇権国家たらんと奮闘するアメリカと覇権国家になろうとしている中国との狭間で、日本はいかにして政治・経済の自立と国益を守ったらよいのだろうか?この問題は、日本のみならずアジアの中小国家の共通の悩みである。これらの国々は、この地域におけるアメリカの軍事力を有効に機能させたいが、アメリカの政治・経済の過度の影響力は抑制したいと考えている。また、隣国である中国の軍事的脅威を減少させながら、中国の巨大化する経済活動を秩序化したいと希望している。これがこの地域の地域統合を加速させる主要因である。
 今日、良くも悪くもマルクス主義とグローバリズムという超国家主義がとん挫し、再びナショナリズムが国家に大きく影響を与えつつある。我々は、新たな国際協力の枠組みの構築を目指しながら、過剰なナショナリズムを克服し、経済協力と安全保障のルール創りに進むべきである。

 アジア共通通貨と地域の集団安全保障体制の実現

 ヨーロッパと違いこの地域の国々は、国家の規模、発展段階、政治体制も異なり、経済的な統合を短期間で実現することは不可能である。しかし、日本が先頭に立って、韓国、台湾、香港が続き、ASEANと中国の高度成長の先に地域通貨統合の実現を目標とすべきである。通貨統合の背景となる恒久的な安全保障の枠組みづくりの努力を惜しむべきでない。
 アジア共通通貨の実現には、10年以上かかるだろう。共通通貨が政治的統合をもたらすには、さらなる歳月が必要であろう。ASEAN、中国(香港を含む)、韓国、台湾のGDPは世界の4分の1である。東アジアの経済的な力量と相互依存関係は拡大・深化している。地域経済圏として必要・十分な構造は、すでに形成されている。
 他方、この地域では歴史的、文化的対立ばかりでなく安全保障上の対立があり、難しい政治的課題を抱えていることも事実である。軍事力の増大や領土問題は、二国間でたとえば日韓、日中で解決することは不可能である。二国間で交渉すると国民感情が高まり、ナショナリズムの激化を招く危険がある。しかし実は、地域統合を阻害しているイシューは地域統合を進展する中でしか解決できないというパラドクスにある。EUの経験は、我々に地域統合は領土問題を風化させることを示している。
 私は、日本国憲法の理想とする平和主義、国際協調主義を実現する道は、地域統合と地域の集団安全保障体制であると信じる。それはまた、米中の間で日本の政治・経済の独立と国益を守る適切な道である。
 ヨーロッパ統合の世論を創始者であるクーデンホフ・カレルギー伯爵は、85年前に記した『汎ヨーロッパ』(私の祖父である鳩山一郎は伯爵の『全体主義国家対人間』を日本語に翻訳している)で以下のように語っている。
「すべての偉大な歴史的出来事は、ユートピアのような夢で始まり、現実として終わった。ある着想がユートピア的夢で終わるか現実になるかは、それを信じる人々の数とそれを実現する人々の行動力とにかかっている。」

※文章のタイトルは、訳者が付記。
※参照:鳩山由紀夫「私の政治哲学」『Voice』2009年9月号

shige_tamura at 10:17│Comments(1)TrackBack(0)clip!鳩山由紀夫 | 民主党

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この記事へのコメント

2. Posted by yutakarlson   2009年09月01日 11:33
■鳩山代表に欧米から反発噴出 「東アジア共同体」に「友愛」−評論家的態度は慎むべき
こんにちは。鳩山代表、エコノミストに寄稿しましたが、欧米から反発が噴出しています。長い間野党として評論家的なことばかり言ってきたので、日本という国の特殊性を考えず、さらにアメリカの長期戦略などあまり理解しないまま寄稿したのだと思います。一国の元首の国際デビューとしてはお粗末だったと思います。しかし、誰にでも失敗はあるものですから、これから、鳩山さんも民主党の人たちもきちんと勉強して、二の轍を踏まないようにしていただきたいと思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

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