2009年08月05日

もし民主マニフェストが実現したら

鳩山 民主党は7月27日、総選挙向けマニフェスト(政権公約)を発表した。万が一、民主党政権が誕生し、これが実行された場合にどうなるか。一言でいえば、かつての細川連立政権のときのような「失われた10年」といわれる低迷の時代が到来することは間違いない。同じ轍を踏まないためには、その問題点と予想される事態を、できるだけ多くの有権者に認識してもらう必要がある。

▼財源なき大判振る舞い――財政破たんは不可避に

 民主党マニフェストの最大の問題点は巨額の新規施策に対する財源のあいまいさだ。
 鳩山由紀夫代表は16・8兆円をねん出すると説明するが果たして、本当にそのようなことができるのか。
特に、ほぼ3分の1にあたる5兆円を財政投融資特別会計や外国為替資金特別会計の運用益と政府保有資産の売却益をあてこんでいるのは問題だ。 
こうした財源は1回限りのもので、それを使ってしまったら終わってしまう。将来にわたって実施される「子ども手当」や高校の実質無料化などの財源としては不適切といわなければならない。
 仮に民主党の計算通り、4年間は賄えたとしても、5年目以降の財源はどうするのか。いつまでも両特別会計の運用益や売却する政府資産があるとは限らない。結果として、赤字国債の大量発行は避けられない。
 責任ある政党なら、 恒久的な政策には恒久的な財源を手当てしなければならない。それをすることなく、巨額財源が必要な恒久的な政策を次々と並べたてるのは、民主主義の「禁じ手」といって過言ではない。
 与謝野馨財務大臣は「人を喜ばすためにつくった選挙対策用のフライフィッシング(疑似餌釣り)でしかない」 と批判し、「財政はおそらく破綻状態になる」と述べた。
 民主党マニフェスト実施されれば、この懸念は間違いなく現実のものとなるだろう。

▼発言のぶれが信頼損なう――日米関係悪化の恐れ

 一昨年の参院選の際のマニフェストには「外交・防衛」の項があったが、今回、「防衛」が抜け落ち「外交」だけになった。民主党の姿勢を象徴するものだ 。
 総選挙後、延長の判断を下さなければならないインド洋での海上自衛隊による給油活動については言及がない。 一時、鳩山代表は政権を獲得すれば、延長を認めるかのような発言をしていたが、最近では 「認めない」と述べるなど発言が大きくブレている 。
 北朝鮮関連船舶への貨物検査については、国会で同特別措置法案の成立を妨害したにもかかわらず、マニフェストでは実施を明記した。また、参院で60日近くも審議を引き延ばしたうえに反対した海賊対処法については「実施する」と方針転換している。
 政権担当能力をアピールするためのポーズかと疑いたくなる。
 一方、「地位協定の改定を提起」、「米軍再編や日米基地のあり方についても見直しの方向で臨む」など、わが国の最も基本的な外交関係である日米関係の悪化を招きかねない政策は前回とほぼ同じだ。
 さらに、「米国の極東におけるプレゼンス(存在)は第7艦隊で十分」(小沢一郎代表代行) 、「米国は核の先制不使用を」(岡田克也幹事長)などの発言も両国関係の信頼を壊しかねない。
 はたして、民主党で日本の平和と安全は維持できるのか。不安が募るばかりだ。

▼成長戦略空きバラマキ政策――景気回復の流れ止まる

 民主党は今年4月の経済対策で「可処分所得の増加による消費刺激により、経済を活性化させる」との考え方を示していたが、マニフェストにはそうした記載はない。
財源の精査を行う過程で、子ども手当など目玉政策の縮小や実施先送りで、当初の効果が見込めなくなったからではないか。
 同党の経済政策には経済成長や景気回復への視点が欠けている 。
 例えば、仮に月額2万6000円の子ども手当が支給されても、経済が悪化して給料が減ったり、失業すれば生活は少しも楽にならない。経済全体を見ずに、予算配分ばかりに気をとられている同党政策の根本的な欠陥だ。
 景気は麻生太郎総理の4度にわたる経済対策で、ようやく最悪期を脱するところまできた。しかし、民主党が政権をとれば回復の流れが止まってしまうことは間違いない。
(「自由民主」8月11日号より)

shige_tamura at 10:58│Comments(6)TrackBack(0)clip!民主党 

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この記事へのコメント

1. Posted by なおなり   2009年08月06日 02:04
もし民主(裏)マニフェストが実現したら・・・

http://blog-imgs-19-origin.fc2.com/s/p/e/specialnotes/shincho2009081320p127ad.jpg

有志・椙山浩一氏はじめ諸賢が「意見広告」
 新潮誌面(8月13日・20日号)の誌面(P127)に、椙山浩一(すぎやまこういち)氏はじめ有志の「意見広告」を発見したので小稿に報告する。/写真は、「意見広告」の同誌面。

博士の独り言殿からお借りしました!
3. Posted by 地方分権について   2009年08月06日 14:43
 誰か橋下・大阪府知事や全国の知事に教えてあげたら?橋下・大阪府知事や国民は、知らないのだろう。
 重要なのは『統計的に物事を捉えるセンスを養う』事。そのセンスなき者達が、支配層、大衆のどちらになっても国は傾く。

★民主党は「地方への税源移譲、地方分権をする」と言っているが…
 そもそも民主党の年金改革(悪改)により、「消費税は国税。地方税として税源移譲しない」となり、地方分権は行き詰まる。このことはあまり指摘されていない。
「『数字は騙る』特別版 鳩山総理は日本を幸せにするか」[週刊現代 2009/08/15号 P44]から要約
■少なくとも『社会保険料方式と税方式の間に優劣はなく、方式の変更のコストは大きい』という点で、専門家は意見が一致。
 故に、「現行の社会保険料方式から税方式への移行が、年金問題を解決する」という考えは、はなはだ疑わしい。
■「最低保障年金の財源として消費税を充てる」という民主党の考え方は、正しいとは言えない。
 あまり指摘されていないが、「年金財源として消費税を活用」しているのは、世界で見ると「中央集権国家」しかない。
 このことは、『年金に消費税を充てると、本格的な地方分権の障害になる』ことを示唆。
 『「年金と地方分権に関係がある」とは、にわかに信じ難いかもしれない。しかし、これは「国と地方の制度をどう構築するか」と大いに関係する』。
■どういうことかと言うと…
 「年金は国の仕事」、これは世界共通の考え方。『「その財源に消費税を充てる」ことは、「消費税は国税」として考え、「消費税を地方税として税源移譲しない」ことを意味する』。
4. Posted by 郵政民営化について   2009年08月16日 00:22
■郵政民営化が行われた本当の理由は、『2001年の財政投融資改革によって、郵貯事業において預託金からの収益がなくなり、そのままでは事業を継続できなくなったから』だろう。
 とは言え、政治的には郵貯事業そのものを終了させるわけにはいかなかったので、民営化ということになったのだろう。つまり、民営化ですら政治的な妥協策だったのかも。
 新規資金=《財政融資資金預託金からの償還》=税金での穴埋め=《見えない国民負担》
 小泉内閣での《財政融資改革》=《見えない国民負担の解消》により、08年度で償還は完済され、09年度からは新規資金配分はなくなる。

■郵政の利益には、こういう税金によるボロ儲けのトリックがある…。利益の源泉《預託金》が全て完済されたら、郵政は源泉発掘するために色々しないと。
◆郵貯の純利益の推移
 2007年度の純利益(07年4月〜07年9月)…3726.8億円
 2006年度の純利益…9406.9億円
 2005年度の純利益…1兆9304.4億円
 2004年度の純利益…1兆2095.6億円
 2003年度の純利益…2兆2755.2億円
◆郵政全体の純利益の推移
 2007年度の純利益(07年4月〜07年9月)…-4420億円
 2006年度の純利益…9425.7億円
 2005年度の純利益…1兆9331.2億円
 2004年度の純利益…1兆2378.9億円
 2003年度の純利益…2兆3018.4億円
◆郵貯の預託金利息の推移
 2007年度の預託金利息(07年4月〜07年9月)…3963億円
 2006年度の預託金利息…1兆2729.1億円
 2005年度の預託金利息…1兆9438.9億円
 2004年度の預託金利息…2兆8218.9億円
 2003年度の預託金利息…3兆7125.1億円
◆郵貯の預託金の推移
 2007年度の預託金(07年4月〜07年9月)…38兆8585億円
 2006年度の預託金…52兆2435億円
 2005年度の預託金…79兆8969億円
 2004年度の預託金…117兆6119億円
 2003年度の預託金…156兆954億円
5. Posted by 郵政民営化について   2009年08月16日 00:28
続き
 民主党など野党は答えるべき。『郵政に新たな公的資金の投入ですか?それこそ税金の無駄遣いですね。』

■「預託金(公的資金注入・国有化)を復活させ、“見せかけの黒字”にすれば良い」と官僚らは謀っているのかもしれないが…
 『納税者の代わりとなる政府が、効率化に掛かる費用と赤字の両方を負担することはできない』。
 なぜなら、最低限必要とされる経費(公的サービス維持という言い訳の赤字補填含む)が増加しては、投資や新規事業の余剰財源が限定されてしまい、《財政硬直化》が起きる。
 だからこそ、「官から民へ」の民営化や規制緩和が歴史上何度も成されている。

■現代の福沢諭吉に逆らい、歴史の歯車を戻すとは…
◆《明治初めの官物払い下げ》を行なった福沢諭吉
「反対運動を制し、官物払い下げは『不快なことが伴う』が、日本の近代化こそが第一にやるべきことであり、それをやろうとする政府を傷つけてはならぬ」
 論壇 加藤 寛:郵政民営化つぶしへの警告[静岡新聞 2009/02/21]より

■歴史から学び、福沢諭吉がした『不快な選択肢』を選ぼう
◆「愚者は体験に学び、賢者は歴史に学ぶ」 by プロシャ(プロイセン)の宰相オットー・フォン・ビスマルク
6. Posted by 郵政民営化について   2009年08月16日 00:29
続き

★「悲惨でも不快でもない選択肢」=「今日や昨日を求む選択肢」などはない。選べるのは「不快な選択肢」=「明日を求む選択肢」だけ。
◆「政治は可能性の芸術ではない。“悲惨なこと”と、“不快なこと”の、どちらを選ぶかという苦肉の選択である」 by 経済学者のガルブレイス
 どうして『悲惨でも不快でもない現実的選択肢』を示せなどと言うのでしょうか。
 ガルブレイス氏の言うように、示せるのは「悲惨な選択肢」か「不快な選択肢」しか有り得ません。
 日本にとって「悲惨な選択肢」とは、不快なのはイヤと拒否し現状を緩やかに崩壊させていく事です。「不快な選択肢」とは、今以上の改革や負担、不快な感情を受け入れ社会を維持していく事です。
 日本人は、どちらかを選ばなければなりません。『「悲惨でも不快でもない現実的選択肢」などという空想に浸っている事は、実は「悲惨な選択肢」を選んでいる事になるのです。』
参考
◆矛盾して引用しされる言葉たち - 酔っ払いのうわごと http://d.hatena.ne.jp/oguogu/20080903/1220416380
7. Posted by 郵政民営化について   2009年08月16日 00:30
終わり
 日本人は公共サービスの受益と負担について理解が足りない
◆「税金は直接に、われわれ国民の負担になります。ところがその一方で、公共サービスは国民一般に及ぶだけに、個々人ではその受益を個別に感じられません。
 そこで税負担を極力低く、受益だけはできるだけ多く確保したいという態度を取りがちとなります。
 私の見る限り、『この受益と負担の間に密接な関係があるのに、日本人はどうも欧米人と比較すると、両者を結びつけて考えない傾向があるように思えます。』
 納税者のことを、英語でタックスペイヤーといいます。その背後には、日本語では納税者は単に税金を納めるだけの人の意味に取られがちですが、欧米では違います。
 つまり税金を納め、その使途を監視するという意味を持ちます。必要な公共サービスのためなら税金を進んで支払うという姿勢になります。
 ところがこれに比べ日本ではよく、税金を「取られる」というように、支払った先の税金が何に使われるかに、国民はほとんど関心をもちません。
 『だから選挙の時に、スローガンとして「増税反対、歳出削減反対」を訴える政治家が容易に当選することになります。
 増税に反対するなら、当然歳出削減に賛成せねばなりません。』
 この矛盾した態度が財政赤字の累増につながり、将来世代へ借金の負担を押し付けているのです。
 『かつてドイツに財政赤字の調査に行ったときに、日本におけるこの政治スローガンについて話をしたら、ドイツではこんな政治家は絶対に当選しないといっていました』」
 by 放送大学学長 石弘光 2008/04/01 視点・論点「租税教育の重要性」

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