2009年02月18日
与党海賊対策等プロジェクトチーム海外調査団報告(その2)
与党海賊対策等プロジェクトチーム
英国・エチオピア・ジブチ・バーレーン・ドバイ調査団報告
(5)在ジブチ仏軍基地及び米軍基地視察
○仏軍基地においては、在ジブチ仏軍ルフォール司令官と懇談後、格納庫〈ドイツ及びスペインにも貸与〉等の施設見学。仏軍施設の中に軍の病院があり、設備が整っている。二国間の合意ができれば施設の使用は可能とのこと。
○米軍基地においては、基地全般を視察の上、CJTF-HOA(アフリカの角統合任務部隊)カータ司令官と意見交換
・CJTF-HOAとCTF-151(連合海上部隊の海賊対策)との関係について確認したところ、基本的には前者は米アフリカ軍、後者は米中央軍隷下であるが、CJTF-HOAの哨戒機は複数の任務を有し、海賊対策のための哨戒飛行を行う際はCTF-151の戦術的な指揮に入る。
・米軍基地内の航空機用施設等はキャパシティ一杯に近い状況で、隣接するジブチの施設についてはジブチ政府の判断。いずれにしても自衛隊が展開する場合には米側として在日米軍に対して頂いているものと同様の友情及び敬意で迎えたい。
(6)バーレーン政府要人との会談
○ハリーファ国防軍総司令官
・日本と同様、海洋国家として海上交通路の確保は重要な課題。かかる観点からバーレーンはペルシャ湾内を担当する連合海上部隊のうちCTF-152(ペルシャ湾内において海上の安全確保及び沿岸国の能力向上の任務)に参加。わが国の海賊対策に係る取り組みを評価するとともに、ソマリア情勢の安定の重要性を指摘。
・二国間の安全保障・防衛面における協力の進展に対する期待感を表明。
○サルマン皇太子
・訪日の思い出を踏まえつつ、日本の文明国家としての特徴は名誉と奉仕にあるとの印象を受けた、これらを踏まえて自衛隊も素晴らしい役割を果たしていると理解。
・わが国の海賊対処にかかる取り組みに関する説明に対し、日本の努力を完全に支援する旨表明。
○ハーリド外相
・日本への協力は惜しまない、これまでのこの地域への継続的な関与に感謝。
・海賊の問題はバーレーンにとっても大きな懸念。他方、過度にアデン湾及びソマリア沖に集中しペルシャ湾がおろそかになることも懸念。
・〈北朝鮮による拉致問題に関する協力に感謝の意を伝えたところ〉この件はよく覚えている、この問題について常に日本の側に立つ決心に変わりない旨発言。
(7)CMF(連合海上部隊)司令部(バーレーン)視察
○ゴートニー米中央海軍司令官兼CMF司令官
・CMFは有志連合からなる連合任務部隊(CTF)を隷下にもつ連合海上部隊であり、米第5艦隊の責任区域内において海上の安全確保のためにテロ対策、海賊対処等の任務に従事。
主として、CTF150は(ペルシャ湾を除く)インド洋におけるテロ対策に、最近新編されたCTF 151は海賊対策に、 CTF 152はペルシャ湾内において海上の安全確保及び沿岸国の能力向上の任務に、それぞれ従事。
・CMF隷下のCTF150, 151, 152の活動状況、海賊の発生状況について説明。海賊の成功件数は減少しているものの、引き続き 海賊の試みは継続しており、これを無くすことが目標である旨説明。
・海賊引渡しについて米英とケニアとの合意が得られたことから海賊の拿捕、引渡しも司令官の命令の中に入ったことを踏まえ、最近の海賊拿捕のケースを説明。但し、CMFは参加国が承認しないことを当該国の軍に求めることはない。
・(当方から自衛官に司法警察職員としての権限が付与されていないことを説明したところ)米軍についても同様の理由から法執行を行うための分遣隊としてコースト・ガード関係者が同乗している旨説明あり。
(8)UK MTOとの意見交換
○UK MTO ( UK Maritime Trade Operations )(英海軍・海運情報集約センター)は英海軍が中東における商船隊との調整、情報提供のために設立し、ドバイに事務所を置く組織。当該事務所を視察するとともに、事務所の長であるバンクロフト海軍中佐から業務の状況について説明を聴取。
・EU NAVFORが海運会社と連携しているのに対し、UK MTOは現場の商船のコンタクトポイント。
・海賊の襲撃等が発生した場合の第一報は携帯に連絡が入り、その情報をCMF及びEU NAVFORへ通報、その後、ウェブサイトを通じて関係者間で情報を共有。
・商船の位置情報については、商船からの任意の通報(例えばイランの海運会社等は本制度に参加せず)によりアップデートされ、1日5回、英国ノースウッドのEU NAVFORに伝達。またCMFを含む関係者が定期的に会合を持ち情報を共有。
・本事務所は1日24時間、365日運用されているが、現在、スタッフは4人。
5.結 論
○当方からの海賊対処に関する検討・調整状況に対して、今回の訪問先ではいずれも強い支援と期待感が表明された。特に、ジブチにおいては大統領の指示の下、施設の使用を含め可能な限りの支援を行う意図が表明された。
○このような国際社会の期待も踏まえつつ、応急の措置としての海上警備行動に基づく艦艇の派遣について、関係先との実務的な調整を含め準備を急ぐとともに、海賊対策に関する新たな法律の策定作業を加速し、各国のモデルとなるような制度を作ることが急務である。
○また、海賊問題の解決のためにはソマリアにおける政治プロセスの進展及び同国の統治能力の向上が必要不可欠である。わが国としても、このような目的に向けた支援に全力を傾注する必要がある。
以 上
英国・エチオピア・ジブチ・バーレーン・ドバイ調査団報告
(5)在ジブチ仏軍基地及び米軍基地視察
○仏軍基地においては、在ジブチ仏軍ルフォール司令官と懇談後、格納庫〈ドイツ及びスペインにも貸与〉等の施設見学。仏軍施設の中に軍の病院があり、設備が整っている。二国間の合意ができれば施設の使用は可能とのこと。
○米軍基地においては、基地全般を視察の上、CJTF-HOA(アフリカの角統合任務部隊)カータ司令官と意見交換
・CJTF-HOAとCTF-151(連合海上部隊の海賊対策)との関係について確認したところ、基本的には前者は米アフリカ軍、後者は米中央軍隷下であるが、CJTF-HOAの哨戒機は複数の任務を有し、海賊対策のための哨戒飛行を行う際はCTF-151の戦術的な指揮に入る。
・米軍基地内の航空機用施設等はキャパシティ一杯に近い状況で、隣接するジブチの施設についてはジブチ政府の判断。いずれにしても自衛隊が展開する場合には米側として在日米軍に対して頂いているものと同様の友情及び敬意で迎えたい。
(6)バーレーン政府要人との会談
○ハリーファ国防軍総司令官
・日本と同様、海洋国家として海上交通路の確保は重要な課題。かかる観点からバーレーンはペルシャ湾内を担当する連合海上部隊のうちCTF-152(ペルシャ湾内において海上の安全確保及び沿岸国の能力向上の任務)に参加。わが国の海賊対策に係る取り組みを評価するとともに、ソマリア情勢の安定の重要性を指摘。
・二国間の安全保障・防衛面における協力の進展に対する期待感を表明。
○サルマン皇太子
・訪日の思い出を踏まえつつ、日本の文明国家としての特徴は名誉と奉仕にあるとの印象を受けた、これらを踏まえて自衛隊も素晴らしい役割を果たしていると理解。
・わが国の海賊対処にかかる取り組みに関する説明に対し、日本の努力を完全に支援する旨表明。
○ハーリド外相
・日本への協力は惜しまない、これまでのこの地域への継続的な関与に感謝。
・海賊の問題はバーレーンにとっても大きな懸念。他方、過度にアデン湾及びソマリア沖に集中しペルシャ湾がおろそかになることも懸念。
・〈北朝鮮による拉致問題に関する協力に感謝の意を伝えたところ〉この件はよく覚えている、この問題について常に日本の側に立つ決心に変わりない旨発言。
(7)CMF(連合海上部隊)司令部(バーレーン)視察
○ゴートニー米中央海軍司令官兼CMF司令官
・CMFは有志連合からなる連合任務部隊(CTF)を隷下にもつ連合海上部隊であり、米第5艦隊の責任区域内において海上の安全確保のためにテロ対策、海賊対処等の任務に従事。
主として、CTF150は(ペルシャ湾を除く)インド洋におけるテロ対策に、最近新編されたCTF 151は海賊対策に、 CTF 152はペルシャ湾内において海上の安全確保及び沿岸国の能力向上の任務に、それぞれ従事。
・CMF隷下のCTF150, 151, 152の活動状況、海賊の発生状況について説明。海賊の成功件数は減少しているものの、引き続き 海賊の試みは継続しており、これを無くすことが目標である旨説明。
・海賊引渡しについて米英とケニアとの合意が得られたことから海賊の拿捕、引渡しも司令官の命令の中に入ったことを踏まえ、最近の海賊拿捕のケースを説明。但し、CMFは参加国が承認しないことを当該国の軍に求めることはない。
・(当方から自衛官に司法警察職員としての権限が付与されていないことを説明したところ)米軍についても同様の理由から法執行を行うための分遣隊としてコースト・ガード関係者が同乗している旨説明あり。
(8)UK MTOとの意見交換
○UK MTO ( UK Maritime Trade Operations )(英海軍・海運情報集約センター)は英海軍が中東における商船隊との調整、情報提供のために設立し、ドバイに事務所を置く組織。当該事務所を視察するとともに、事務所の長であるバンクロフト海軍中佐から業務の状況について説明を聴取。
・EU NAVFORが海運会社と連携しているのに対し、UK MTOは現場の商船のコンタクトポイント。
・海賊の襲撃等が発生した場合の第一報は携帯に連絡が入り、その情報をCMF及びEU NAVFORへ通報、その後、ウェブサイトを通じて関係者間で情報を共有。
・商船の位置情報については、商船からの任意の通報(例えばイランの海運会社等は本制度に参加せず)によりアップデートされ、1日5回、英国ノースウッドのEU NAVFORに伝達。またCMFを含む関係者が定期的に会合を持ち情報を共有。
・本事務所は1日24時間、365日運用されているが、現在、スタッフは4人。
5.結 論
○当方からの海賊対処に関する検討・調整状況に対して、今回の訪問先ではいずれも強い支援と期待感が表明された。特に、ジブチにおいては大統領の指示の下、施設の使用を含め可能な限りの支援を行う意図が表明された。
○このような国際社会の期待も踏まえつつ、応急の措置としての海上警備行動に基づく艦艇の派遣について、関係先との実務的な調整を含め準備を急ぐとともに、海賊対策に関する新たな法律の策定作業を加速し、各国のモデルとなるような制度を作ることが急務である。
○また、海賊問題の解決のためにはソマリアにおける政治プロセスの進展及び同国の統治能力の向上が必要不可欠である。わが国としても、このような目的に向けた支援に全力を傾注する必要がある。
以 上