2009年02月18日

原発と地震ー柏崎刈羽「震度7」の警告(新潟日報社特別取材班、講談社)

原発 僕は、長岡市(旧栃尾市)の出身。
 今回、新潟日報社特別取材班による『原発と地震ー柏崎刈羽「震度7」の警告』という本が講談社から出版された。 新潟日報は、新潟県内で発行部数50万部を誇る地方紙で、新潟県民のほとんどが読んでいる。
 2007年7月、世界最大の原発集積地を襲った中越地震を契機に、地震発生1週間後の7月23日から約1年間にわたり、原発と地震の問題を深く掘り下げた連載、特集、関連ニュースの報道を展開した。
 長期連載「揺らぐ安全神話 柏崎刈羽原発」と関連ニュース報道が高く評価され、2008年度の日本新聞協会賞を受賞した(2004年度の「拉致・北朝鮮」以来4年ぶり6回目の受賞)。
 
 以下、新潟日報社取締役編集局長 小田敏三氏による「まえがき」を掲載した。
 小田氏は、政治部記者として田中角栄担当をするなど、新潟県内「NO.1」の政治通で、かつて早坂茂三氏(政治評論家)なども新潟に行くと必ず会って話を聞く人物だ。
 僕も、長年の付き合いで、新潟を訪れた際には、必ずお会いして、ご指導をいただいている。


「まえがき」

「運転中の柏崎刈羽原発7号機の中央制御室、午前十時十三分。運転責任者のA氏は『立っていられない』ほど強く横に揺さぶられた。思わず本棚につかまった」

 緊迫の場面の再現から長期連載は始まった。二〇〇七年七月十六日、中越沖地震によって東京電力柏崎刈羽原発で動いていた原子炉がすべて緊急停止した。設計時の想定を大幅に上回る激しい揺れ。世界最大の原発集積地で起きた非常事態を前にして原発立地住民と運命共同体である地元新聞社の記者たちは、強い疑問を抱いた。

「これほど大きく揺れた場所になぜ、原発が建てられたのか」
「国の安全審査は妥当だったのか」
 各地に断層が走る地震国・日本の原発の在り方を根底から問うテーマでもあった。
 報道展開は、停止中の原発がやがて運転再開へと向かうであろう時間との競争をも強いられた。徹底検証は急がなければならない。

 紙面展開ではあらゆる手法を絡ませた。「連載」と「生ニュース」、タイムリーな「特集」や「解説」も欠かせない。問題意識は徹底性が求められた。鋭い「なぜ」を突き付けながら「新たな事実の発掘」を含めた「多角的な検証」、そして何より「原発と地震」という専門性が高く、難解な問題を分かりやすく伝えることだ。

 しかし、分かりやすくだけでは不十分だ。「一般読者が興味を持って読んでもらえるように」、なおかつ「専門家が読んでも深みのある内容」にしなければならない。新たな報道スタイルの模索でもあった。

 報道の成果は相次いだ。原発予定地の売却益約四億円が一九七一年、東京目白の田中角栄元首相邸に運ばれ、自民党総裁選に絡んで政界へ流れた経緯を証言で引き出した。歴史の闇に埋もれようとしていた事実を白日の下にさらしたスクープだった。海底断層の評価をめぐる重大な初歩的ミスや、安全審査議事録の国によるずさんな管理も指摘した。これらスクープは友好紙である北海道新聞、河北新報、中国新聞の一面や社会面トップを飾るなど注目を集めた。

 タブーとされたテーマにも挑んだ。「原発と裁判」。国策を裁く重圧や裁判官の独立性を脅かす慣習の存在。元裁判官の証言には苦渋がにじんでいた。また、原発への責任を電力会社が負う日本独特の法体系の歪みとその原因を、歴史をたどって切開した。

 原発立地地域においては、住民と電力会社と国は言わば「安全保障協定」を結んでいる関係にある。根底は「信頼」。信頼を確固たるものにするのは「徹底した情報開示」。連載の使命も、情報提供の重要性を訴えることで、原子力行政の透明性を高めることにあった。

 柏崎刈羽原発の運転再開に向けた動きは、地震から丸二年を迎える二〇〇九年夏をはさんで本格的な論議となることが予想される。論議に際しては中越沖地震が発した警告の重さを忘れてはならない。本書が警告を発し続ける手引き書となってもらえれば幸いである。

新潟日報社取締役編集局長 小田 敏三
二〇〇九年一月

 *是非とも、ご一読を!

shige_tamura at 09:44│Comments(0)TrackBack(0)clip!本の紹介 

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