2009年01月20日

加藤良三氏(日本プロ野球コミッショナー、前駐米大使)の講演、その3

加藤 昨年11月29日、第43回日本論語研究会での日本プロ野球コミッショナー・加藤良三先生の素晴らしい講演「日米関係―アメリカについて感じたこと―その3」をお届けします。

3.何がオバマを生み出したか

 しからば、米国の中でオバマを生み出したのは何か。
 私は、それは戦争だと思います。

 米国ほど戦争にずっと関わり続けた国はない。第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、9月11日テロ、アフタニスタン、イラク。
 私はこういった主要な戦争を肯定するとか否定するとかいうつもりはありませんが、現実に米国が一貫して深く戦争に関与し続けなければならなかったことは事実であります。

 戦争というのはどういうものかというと、軍事技術が進歩するにつれて戦死者の数は減りますが、やはり多数の命が失われる。血と涙と汗が大量に流れる最も苛酷な環境である。その最も苛酷な環境が日常生活の一部となっている米国では、あれだけ複雑な構成の国であるにもかかわらず、長い間を経て、人種の垣根とかジェンダーの垣根は低くなると思います。

 それに米国の人口動態の変化というのもあります。
 1990年から2000年の10年間に3300万人人口が増えました。 3300万人というとカナダの1.5倍くらいあるはずです。台湾の1.5倍。平均で見ると国際社会の中で、標準以上の国の人口が、10年で生み出されると言うことです。

 さらに逆に言うと、米国が3%台の成長を3年続けると中国の経済が生み出されるという経済規模にもなるわけです。
 その点はありますが、オバマを生み出したのは、タイガー・ウッズを生み出したもの、ジャッキー・ロビンソンを生み出したものと同じだと思います。すなわち垣根は下がっている。
 ただし、それをもって、南部を含む米国のいたるところで、偏見がなくなった、偏見が少なくなった、偏見のレベルが低くなったということを申し上げているわけではありません。そういうものは厳然としてあります。

 例えば、野球の選手についていうと、日本の選手はそういうことを、口に出して言いませんが、そういう環境の中でよくやっている。たいしたものだと思います。
 にもかかわらず、うち続く戦争への関与というものが、米国において、スポーツ界に於けるタイガー・ウッズのみならず、バラック・オバマにつながったということは言えると思います。
 バラック・オバマと、少し前米国のアフリカン・アメリカンを代表するリーダーであったジェシー・ジャクソンとは全然肌合いも違うと思います。バラック・オバマを生み出したものは戦争という、最も苛酷な環境の共有だったと思います。

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