2009年01月16日

米の外交戦略/環太平洋とアジアに焦点(僕のインタビュー記事)

新聞今朝の『世界日報』の一面に僕のインタビュー記事が掲載されました。
以下、その記事を掲載します。

09オバマ氏登場と世界―識者に聞く
@慶応大学大学院講師 田村重信氏

@米の外交戦略/環太平洋とアジアに焦点
@日本は国際協力の制約を除け 節目を迎える日米同盟

<<――オバマ氏の登場で米国の外交はどう変わるか。>>

 ブッシュ氏の時は超大国として、国連とは距離をおき有志連合を形成するなどして、米国中心に対外政策を展開した。オバマ氏はNATO(北大西洋条約機構)、国連、同盟国との協力関係を重視する多国間協力を強めていくだろう。
 オバマ氏の最大の特徴はソフトパワー重視。いわゆる対話重視だ。それから、グリーン・ニューディールで雇用を増やそうと言っているように環境問題にも力を注ぐだろう。核兵器の軍縮も取り上げている。そうした面で、協調政策が大きくクローズアップされてくるだろう。

<<――アジア政策はどうなるか。>>

 米国の対外戦略に大きな転換が起きるだろう。今までは欧州との協力関係が一番強かった。オバマ氏になると、その方向が大きく変わる。
 最大の懸案は経済の建て直しだ。これから世界的にどの国の経済が大きくなるかといえば、米国は依然ナンバーワンだが、将来は中国。その次はインドで、四番目が日本という予測だ。中、印、日、それに韓国があり、オバマ氏が住んだことがあるインドネシア。まさに環太平洋とアジアだ。経済発展には地域の安定も欠かせないので、この地域に外交戦略の焦点を絞ってくる。そういう展開が見られるはずだ。
 日本軽視、中国重視という論議もあるが、それはナンセンス。そういう時代でない。いま日中貿易量が日米より大きくなっている。日本も中国とどう折り合いをつけるかということが、あらゆる面で必要だ。その時に不可欠なのが、しっかりした日米安保体制、日米同盟である。

<<――対日政策の担当者が決まりつつあるが。>>

 日米安保の再確認作業として日米安保共同宣言、ガイドラインをつくった頃のクリントン政権の実務家がパワーアップして戻ってくるようだ。ジョセフ・ナイ(駐日大使)、カート・キャンベル(国務次官補)、ウォレス・グレッグソン(国防次官補)などの名前が挙がっているが、共和党政権よりも日本通の人たちだといえる。

<<――対日要求は強まるか。>>

 日本に対し無理は言ってこないだろうが、やはり、できることは求めてこよう。ソマリア沖の海賊対策をはじめ、オバマ氏が重視するアフガン問題についてどういう協力が出来るか。これらは日本として主体的に行うべきだし、米国側もそれを希望している。
 来年ちょうど日米安保五十周年を迎える。わが国では今年、防衛計画大綱を見直す。そういう意味では日米同盟は大きな節目を迎えていると思う。
 日米関係や日本の将来を考えれば、一刻も早く憲法を改正すべきだ。集団的自衛権の問題や、自衛隊の武器の使用制限などが国際協力の制約となっている。
 PKO(国連平和維持活動)の現実は昨年十一月末現在、世界七十九位で全体の〇・〇四%。底上げしないといけない。中国は昨年四月現在十二位。約二千人出ている。海賊対策でも中国はもう軍艦を三隻出している。日本は急がなければならない。

<<――オバマ政権は北朝鮮の核問題、日本人の拉致問題にどう取り組むか。>>

 核問題では、基本的には六カ国協議を利用するだろうが、クリントン政権下のように米朝二国間アプローチが強まる可能性も否定できない。焦点は北朝鮮側の出方だ。今は政権交代期なので模様眺めである。
 米国も拉致問題にかける日本の意気込みを十分に分かっている。キャンベル氏がヒル次官補のように直接対北交渉を担当するか、別の担当官を立てるかはまだ不明だが、基本的には日本の立場も考えながら交渉に臨むと信じていいと思う。
<<(聞き手=政治部・武田滋樹)>>

<プロフィール>
 <<たむら・しげのぶ>> 1953年生まれ。自民党政務調査会の首席専門員。国防・安全保障政策、憲法、テロ対策等を担当。慶応大学大学院講師も兼務。日本論語研究会代表幹事、防衛法制学会理事。著書に『日米安保と極東有事』(南窓社)、『防衛省誕生―その意義と歴史』(共著、内外出版)、『新憲法はこうなる』(講談社)など多数。


 なお、インタビュー連載メンバーは、僕の他に、元米太平洋艦隊司令官ジェームズ・ライオンズ氏、拓殖大学客員教授 石平氏、韓国国防研究院安保戦略研究センター長 白承周氏、英下院外交委員会 マイク・ゲイプス委員長、アルアハラム政治戦略研究所所長 アブデルモネン・サイエド氏、ゴルバチョフ財団主任研究員ワレリー・ソロヴェイ氏、ジェトロ・ニューデリー・センター 松島大輔シニアディレクター、第一生命経済研究所主席エコノミスト 熊野英生氏、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所研究員 マイケル・オースリン氏です。

shige_tamura at 11:41│Comments(0)TrackBack(0)clip!安保・防衛政策 

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