2008年10月31日

麻生内閣総理大臣記者会見

麻生 太郎1麻生内閣総理大臣記者会見
平成20年10月30日

【麻生総理冒頭発言】
 それでは、今回まとめさせていただきました、国民のための経済対策を発表させていただきます。

 初めに、現在の経済の状況について、私の認識を申し上げさせていただきたいと存じます。現在の経済は、100年に一度の暴風雨が荒れている。金融災害とでも言うべき、アメリカ発の暴風雨と理解しております。米国のサブプライム問題に端を発しました今回の金融危機というものは、グリーンスパン元FRB議長の言葉を借りるまでもなく、100年に一度の危機と存じます。

 証券化商品という言葉がありますが、これに代表されます新しいビジネスモデルが拡大をした。しかし、その中で金融機関がそのリスクを適切に管理できず、金融市場が機能不全に陥ったと存じます。
 ただし、日本の金融システムは、欧米に比べ相対的に安定しております。日本の土台は、しっかりしているということです。しかしながら、全世界的な金融システムの動揺というものは、株式とか債券市場を経て、世界の、また日本の実物経済、実体経済にも影響を及ぼしてくることは確実であろうと存じます。
 こうした状況の中で、何より大事なことは、生活者の暮らしの不安というものを取り除くことだと確信しております。すなわち、国民生活の安全保障であります。暴風雨を恐れて萎縮してはなりませんし、台風が通り過ぎるまでじっとしているだけでもだめです。今回の対策は、こうした認識を背景に策定させていただきました。

 対策は、大きく分けて2つです。

 1つ目は、国内でできること。それは、生活者の安全保障であり、金融の安定です。考えられる限りの大胆な対策を、経済対策としてまとめさせていただきました。
 2つ目は、国際的にしなければならないことであります。金融の安定化のために、国際協調を進めます。
 まず、国民の経済対策について説明させていただきます。概要は配付していると思いますが、その資料のとおりです。今回の経済対策は、国民の生活の安全保障のための国民の経済対策です。ポイントはスピード、迅速にという意味です。これまでにない大胆なもの。重点を絞り、ばらまきにはしない。そして、財源は赤字国債を出さないこと。

 策定に当たっての主な考え方を説明します。まず、日本の経済は全治3年という基本認識の下で、今年度から直ちに日本経済の建て直しに取り組みます。当面は、景気対策。中期的には、財政再建。中長期的には、改革による経済成長という3段階で経済財政政策を進めてまいります。

 また、今回の景気対策の意義は、単なる一過性、その場だけの需要を創出することではありません。自律的な内需拡大による、いわゆる確実な経済成長につなげる必要があります。そして経済の体質を転換し、日本経済の底力を発揮させることであろうと存じます。

 更に、財政規律維持の観点から、安易に将来世代に負担のつけを回すというようなことは行いません。経済成長と財政健全化の両立を目指してまいります。こうした考えに基づき、対策の財源は赤字公債に依存しません。
今回の対策の主なものを紹介します。

 まず第一は、生活者対策です。

 定額減税については給付金方式で、全所帯について実施します。規模は約2兆円。詳細は今後詰めてまいりますが、単純に計算すると、4人家族で約6万円になるはずです。
 雇用につきましては、雇用保険料の引き下げ、働く人の手取金額を増やしたいと存じます。
 また、年長フリーター、ロストジェネレーションとも言いますけれども、正規雇用をするように奨励します。
 介護、子育てについても力を入れます。住宅ローン減税は、控除可能額を過去最大に拡大したいと思います。

 第二に、中小企業・金融対策であります。
 これから年末にかけて、中小企業の資金繰りは苦しくなります。第一次補正で、緊急信用保証枠を6兆円としましたが、その後の国際金融情勢が、より厳しいものとなっております。中小企業、小規模企業の資金繰りをより万全なものとするために、私の指示で20兆円までこの枠を拡大します。
 また、政府系金融のいわゆる緊急融資枠を、3兆円と前回しましたが、これを10兆円まで拡大します。合わせて約30兆円の対策となります。

 省エネ・新エネ設備を導入した場合に、即時償却、すなわち初年度に全額償却できるようにします。
 金融対策につきましては、金融機関への資本参加枠の拡大を行わせていただきます。株式に対する配当課税など、現行10%しております軽減税率を延長させていただきます。

 第三は、地方についてです。
 高速道路料金を大幅に引き下げます。休日はどこまで行っても一律1,000円というわけではなくて、1,000円以下に。最高1,000円。平日は、昼間も3割引にさせていただきます。
 また、道路特定財源の一般財源化に際しましては、1兆円を地方に移します。

 以上のようなことを行い、その際にできるものから、順次実施させていただきます。法律、予算の伴わないものは、でき次第直ちに。

 次に、20年度補正予算と関連法律、その次に21年度の当初予算と関連法律の順に実施してまいります。

 次に、財政の中期プログラムについて申し上げさせていただきます。今回の経済対策の財源は、赤字公債を出しません。しかし、日本の財政は、依然として大幅な赤字であり、今後、社会保障費も増加します。国民の皆さんは、この点について大きな不安を抱いておられます。その不安を払拭するために、財政の中期プログラム、すなわち歳入・歳出についての方針を年内にとりまとめ、国民の前にお示しします。

 その骨格は、次のようなものであります。

 景気回復期間中は、減税を時限的に実施します。経済状況が好転した後に、財政規律や安心な社会保障のため、消費税を含む税制抜本改革を速やかに開始します。そして、2010年代半ばまでに、段階的に実行させていただきます。本年末に、税制全般につきまして、抜本改革の全体像を提示します。簡単に申し上げさせていただけるのなら、大胆な行政改革を行った後、経済状況を見た上で、3年後に消費税の引き上げをお願いしたいと考えております。

 私の目指す日本は、福祉に関して、中福祉・中負担です。中福祉でありながら、低負担を続けることはできません。増税はだれにだって嫌なことです。しかし、多くの借金を子どもたちに残していくこともやめなければなりません。そのためには、増税は避けて通れないと存じます。勿論、大胆な行政改革を行い、政府の無駄をなくすことが前提であります。

 次に、国際的な金融、経済問題について申し上げます。

 まず金融機関に対する監督と規制の国際協調体制についてであります。今回のサブプライム問題に端を発した金融危機を見ると、次のような問題が挙げられると存じます。

 1つ目、貸し手側が行ったずさんな詐欺的な融資。
 2つ目、証券化商品の情報というものが不透明。
 3つ目、格付け会社の格付け手法に対する疑問。

 このような証券化商品のあらゆる段階において、不適切な行動が見られたということだと思います。
 更にこうした証券化商品が、世界中の投資家の投資の対象になったことで、危機が全世界に広まったと思います。金融機関という、本来、厳格な規制が必要とされる分野におきまして、ここまで大きな問題点を見過ごした監督体制については、大いに反省すべき点があると思います。

 特に現在のような、各国当局がおのおの監督を行う仕組みでは不十分だと思います。金融機関を監督、規制する際に、いかに国際協調を構築するかについて、現実的な仕組みを来月15日にワシントンで開かれる、金融に関する、いわゆる首脳会議において議論をしたいと思います。

 2つ目は、格付けについての在り方です。格付け会社は、債券市場発展には不可欠なインフラ、いわゆる社会的基盤であります。しかし、サブプライム問題において証券化商品に関する格付けの在り方などに、深刻な問題点があったことは否めないと思います。このことが、世界的な金融不安を増長したという面がありました。こうした影響力を有する格付け会社に対する規制の在り方がどうあるべきか。

 また、アジアなど、ローカルな債券の格付けを行う地場の格付け会社を育成する必要があることを、首脳会議で議論したいと思っております。

 3つ目には、会計基準の在り方についてです。今回のような金融市場が大きく乱高下するような状況において、すべからく時価主義による評価損益の計上を要求することが、果たして適切であろうか。時価主義をどの範囲まで貫徹させるべきか。更に有価証券を売買するか。また、満期まで保有するのかによって、いかなる評価方法が適切であるのか。国際的な合意を目指して、首脳会議で議論を行わさせていただきたいと思っております。これが、国際金融問題に関する、私の問題意識と改革案です。

 以上、国民の経済対策と金融問題への対応について、その骨格を申し上げさせていただきました。かつてない難しいかじ取りであります。日本政府の総力を挙げて取り組んでまいります。国民の皆さんの御理解と御支援をお願いを申し上げて、説明に代えさせていただきます。

【質疑応答】
(問)総理が先ほど発表された、追加経済対策の柱となっています給付金の支給についてですが、平成11年に実施された地域振興券と同じように、財政負担の割には、景気浮揚への効果が薄いのではないかということもあって、野党側からはばらまきではないかという批判も出ています。総理は一貫して、政局より政策と主張されてきていますが、この中身を見ますと、生活対策より選挙対策という声も出ています。この批判について、総理はどうお考えですか。
 そしてもう一つ。この一部を実施するための第2次補正予算について、今国会に提出し、その上で会期を大幅に延長してでも成立を期すというお考えがあるのかどうか、お聞かせください。

(総理)給付方式はばらまきという御批判なんだと思いますが、私は減税方式に比べまして、少なくとも今年度内に行き渡るということが第一。税金を払っていない、あるいは納付額が少ないという家計にも給付される点において、より効果が多い方式だと私自身は思っております。
 また、これを今、補正予算等々の話を第2次補正にするか、これは今後の国会の運営の中で考えていくべき段階であって、今これを臨時国会中に出すか出さないかというのを、今の段階で決めているわけではありません。

(問)衆議院の解散総選挙の時期についてお伺いします。今後の国会は早期解散を求める民主党が抵抗を強めて、政策の実現は難しくなることが予想されます。党内には選挙で直近の民意を得て、本格的に政策を実現すべきという声もありますが、総理は解散総選挙をいつ断行するおつもりでしょうか。

(総理)解散の時期につきましては、しかるべき時期に私自身が判断をさせていただきます。

(問)それに関連してですけれども、公明党も早期解散を主張していましたが、先ほどの公明党の太田代表との会談、解散についてはどのようなやりとりがあったんでしょうか。

(総理)解散につきましては、公明党の方々の御意見、何も公明党に限らず、党内でもいろいろな御意見がありましたのは、御存じのとおりです。したがって、私自身としては、いろいろなことを勘案して、この解散の時期というのを決めさせていただくということで、公明党の方々と綿密な意見を交換させていただき、十分に意思の疎通が図られたと思っております。

(問)今の質問とも関連するんですけれども、公明党は11月30日に総選挙という前提で、本格的に準備を進めていたのではないかと思います。この点について、今後その選挙の時期に関する考え方の違いというのが、連立を運営していく上で何か影響があるのではないかということと、ここに至る経緯についての意思疎通について、何かしらの問題がなかったということでよろしいんでしょうか。

(総理)いろいろ特定な新聞社には面白おかしく書かれた例は、知らないわけではありませんけれども、私どもと太田代表との間に、いろいろな意味で意思の疎通によって、連立関係はおかしくなるというような関係はありません。

(問)今、解散についてお話しいただけなかったと思うんですが。

(総理)解散の時期については、私が決めますというのが答えです。

(問)この3年間、国民の審判を得ないまま、3代にわたって総理大臣が代わりました。麻生総理御自身も『文藝春秋』の論文で、国民の審判を最初に仰ぐのが使命だとお書きになっていたと思うんですが、その政権で政局より政策をずっと実現することに対する正当性について、どうお考えなのか。

(総理)うちは大統領制でないということは、よく御存じのとおりだと思います。ここは議院内閣制ですから。したがって、議院内閣制によって運営されているのであって、大統領制とは全く違うということであって、その正当性ということに関しては、全く問題がないと思っております。また、今、少なくとも世の中において、政局よりは政策、何より景気対策という世論の声の方が圧倒的に私は高いと思っております。

(問)総理の先ほどのお話の中で、2次補正については今国会に出すかどうかは、まだ決めていらっしゃらないということでありましたけれども、民主党の協力が得られるようであれば、今国会に提出することは当然考えていくということでしょうか。

(総理)私どもとしては、これは国会の運営上の話と密接に関係をしますので、それが本当に得られるかどうか。それを見極めながらでないと、何とも答えが出せない。もう御存じのとおりです。そういったことでありますので、きちんと今国会にしゃにむに出しますとも出さないとも言えないというのは、そういうことであります。

(問)地方への1兆円のことでお伺いしたいんですが、現在、国の道路特定財源の中から、約7,000億円を地方に交付する地方道路整備臨時交付金というのがあります。今回、一般財源化に当たって、臨時交付金というのはなくした上で、新たに1兆円を交付する仕組みをつくるのか。また、7,000億円を地方に交付する制度は維持した上で、これに加えて1兆円を交付する制度をつくるのか。そのいずれでしょうか。

(総理)これはまだ詳細に決めているわけではありません。しかし、基本としては1兆円というものを地方にということが基本です。

(問)総理は今、解散総選挙のことに関連して政局よりも政策、景気対策を求めるのが国民の声だとおっしゃいました。確認になりますけれども、ということは現在のところにおいては、当面は、解散はないというふうに受け取っていいわけですね。

(総理)NHKの当面という言葉の定義は詳しくわかっていないのでうかつなことは言えないんですが、当面と言ったではないかと言われて、どの程度が当面なのかよくわからぬからお答えのしようがありませんけれども、少なくとも今の段階において、補正予算というものが通るか、通らないか、国会の対応等々を見た上で、解散の時期等々はそれに関連してくるのは当然のことだと思いますが、いずれにしても私どもとしては、この政策というものを是非実現して、結果として国民の生活不安に応える必要があるというのが、私は優先順位からいったら一番なんだと、私自身はそう思っております。

(問)先ほど総理は100年に一度の危機だとおっしゃいました。そして、アメリカの大統領の選挙がありまして、アメリカもしばらく政治空白になることが予想される中で、やはり日本が解散によって政治空白をつくることがあるのかどうか。それについての率直な麻生総理の今のお考えをお聞かせください。

(総理)アメリカの場合は、11月4日から1月20日まで、いわゆる移行期間の間がなかなか難しい。これは4年に一遍必ず訪れる話ではあります。
 そういった時期に、世界第一の経済大国と第二の経済大国の日本とともに、それがかなり選挙等々でごちゃごちゃしているという状況は極めて好ましくないと、多分世界は思っている。事実言われたこともありますけれども、そういったことは確かに考えておかねばならない大事なところだと思います。
 しかし、一番大事なのは、この政治空白という言葉をどういう意味で言っておられるのかよくわかりませんけれども、少なくとも選挙になったからといって、突如と行政がなくなるわけではありませんし、政府はそこに存在をしておりますので、議院内閣制としては、アメリカのように一挙に何千人もお役人が変更するとか、変わるということもありませんし、そういった意味での政治空白というのは、この種の話の定義は難しいところですけれども、そういった意味で直ちに政治空白が起こると考えているわけではありません。

shige_tamura at 10:24│Comments(0)TrackBack(0)clip!麻生太郎 

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