2008年10月31日

「生活対策」について(概要)

麻生 太郎 平成20 年10 月30 日
新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議

第1章 基本的考え方

1.金融経済情勢と対策の意義

(世界的な同時不況の兆し)
 世界の金融資本市場は100 年に一度と言われる混乱に陥っている。本年9月中旬以降、金融危機に加え、実体経済の弱体化が進みつつあり、世界的な景気後退の兆しが強まっている。

(日本経済の現状と先行き)
 海外に比べ、日本の金融システムは健全であり、これまで安定性は確保されている。しかし、外需に依存してきた日本経済は、世界経済の減速に伴い景気後退局面に入っており、今後は下降局面が長期化・深刻化するおそれ。

(国民生活への影響)
 この影響は、いずれ国民すべてに到達し、経済的な弱者には大きな波となって押し寄せてくるおそれがある。暮らしの安心が脅かされている「生活者」、資金繰りに苦しむ「中小・小規模企業」、都市部との格差に悩む「地方」に対し、セーフティネットを強化し、緊急の備えを万全にすることが喫緊の課題。

(新たな成長への展望)
 一方で、現下の世界的な金融経済変動に対応していくためには、内需主導の持続的成長を実現できるよう経済の体質転換を進めていくことが重要である。
このためには、住宅投資の活性化、低炭素社会構築に向けた設備投資の促進、国内金融資産を活かした消費の拡大などが鍵。

2.5つの基本視点

「生活対策」は、国民生活と日本経済を守るため、以下の5つを基本視点とする。

(1)3段階の経済財政政策により、日本経済立て直しに取り組む
 日本経済は「全治3年」という基本認識の下で、今年度から直ちに日本経済の立て直しに取り組む。当面は「景気対策」、中期的には「財政再建」、中長期的には「改革による経済成長」という3段階で、経済財政政策を進める。

(2)最優先課題として「金融資本市場の安定確保」に向け万全の措置をとる

 国際金融資本市場の安定化に向け国際協調を推進する。日本の金融システムは世界でも最も安定しているが、安定性強化に万全を期す。
 日本銀行においては、金融市場の安定確保に取り組むとともに、内外の厳しい経済金融情勢の下、政府における本対策や構造改革への取組を踏まえ、適切かつ機動的な金融政策運営を期待する。

(3)3つの重点分野を位置づけ、その中で「生活者」を一番に置く

「生活対策」は、3つの重点分野として、「生活者の暮らしの安心」、「金融・経済の安定強化」、「地方の底力の発揮」を位置づける。
 このうち、第一に、生活者のための「暮らしの安心」を打ち立てる。

(4)一過性の需要創出対策ではなく、自律的な「内需主導型経済成長」への
移行を後押しする
 今回の対策の意義は、単なる一過性の需要創出ではなく、自律的な「内需拡大」による確実な経済成長実現のため、経済の体質を転換し、日本経済の「底力」を発揮させることにある。

(5)経済成長と財政健全化の両立に向けて取り組む
 本対策の実行にあたっても、これまでの政府・与党の方針に沿って対応し、財政規律の維持の観点から、安易に将来世代に負担をつけまわさず、経済成長と財政健全化を図っていく。こうした考え方に基づき、・対策の財源は、赤字国債に依存しない。

・歳出改革の取組を継続する。
・持続可能な社会保障構築と、その安定財源確保に向けた中期プログラムを早急に策定する。この中には、基礎年金国庫負担割合を1/2 に引き上げるための前提となる税制抜本改革の姿も含める。

第2章 具体的施策

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1.家計緊急支援対策
― 生活者の不安にきめ細かく対処するため、家計への緊急支援として総額2兆円を限度として生活支援定額給付金(仮称)の実施や賃金引上げの環境づくりに取り組む。

○生活支援定額給付金(仮称)の実施
 家計への緊急支援として、特別減税及びこれに関連する臨時福祉特別給付金を実施することとしていた。一方、家計への緊急支援としての効果をより迅速に実現し、かつ、低所得者にも広く公平に行き渡らせるためには、給付方式によることがより適切である。この給付(生活支援定額給付金(仮称))は、総額2兆円を限度として、単年度の措置として今年度内に実施することとし、その実施方式等について早急に検討する。

○経済界に対する賃金引上げの要請
○雇用保険料引下げ等に向けた取組
(雇用保険料0.4%の範囲内の幅で引き下げること等について関係審議会で検討)
○電気・ガス料金の来年1−3月期の値上げ幅の圧縮・平準化を電力・ガス会社に要請
○輸入小麦の政府売渡価格の改定ルール等の早急な見直し

2.雇用セーフティネット強化対策

― 景気後退による影響が最も出やすい非正規労働者、中小企業や地方企業を中心にセーフティネットを強化し、60万人分の雇用下支え強化を行う。
○非正規労働者の雇用安定対策の強化
(年長フリーター等を積極雇用する事業者へ奨励金支給など)
○中小企業等の雇用維持支援対策の強化
(中小企業等への助成金の拡充など)
○地域における雇用機会の創出
(「ふるさと雇用再生特別交付金(仮称)」の創設)

3.生活安心確保対策

― 国民の生活不安の解消のため、消費者政策の抜本的強化等とともに、104万人程度の介護人材等の増強、出産・子育て支援、障害者・医療・年金対策を推進する。
○消費者庁の創設など消費者政策の抜本的強化等
(消費者庁の創設、地方の消費生活相談体制の強化、食の安全対策の強化、悪徳商法・振り込め詐欺対策の推進など)
○介護従事者の処遇改善と人材確保等<介護人材等の10 万人増強>
(平成21年度の介護報酬改定(プラス3.0%)等による処遇改善、介護人材等
の緊急確保対策の実施など)
○出産・子育て支援の拡充
(「安心こども基金(仮称)」創設によるサービス緊急整備、「子育て応援特別手当
(仮称)」の支給、妊婦健診の無料化等に向けた取組の推進など)
○障害者支援の拡充
(障害者基金の延長・積増しなど)
○医療・年金対策の推進
(医療体制整備、新型インフルエンザ対策強化、年金記録問題への対応など)

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4.金融資本市場安定対策

― 国際金融資本市場の安定化に向けて、国際協調を推進するとともに、日本のバブル崩壊後の経験を活かした一段の発信を行う。
○国際金融資本市場の安定化に向けた積極的取組
(国際協調の推進、日本の経験を活かした一段の発信、アジア地域における金融協力の一層の推進)
○国内市場の安定に向けた必要な対策の実施
(企業に対する自社株買いの要請、従業員持株会による株式取得の円滑化、空売り規制の強化、空売り規制の厳正な執行等監視の徹底、銀行の株式保有制限の弾力的運用など)
○「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」の活用・改善
(金融機能強化法の活用・使い勝手の改善を図るとともに、十分な政府の資本参加枠の拡大を検討)
○生命保険会社のセーフティネットにおける政府補助の延長
(平成21 年4 月以降も生命保険契約者保護機構に対する政府補助を引き続き可能と
する(平成24 年3 月末まで))
○適正な金融商品会計に向けた努力へのサポート
(公正価値の算定方法明確化、金融商品の保有目的変更に関する迅速な検討)

○銀行の自己資本比率規制の一部弾力化
(金融機関の金融仲介機能を低下させないため、国際合意の枠組みも踏まえ、規制の一部弾力化を図る)
○証券化商品の透明性・信頼性向上及び流通再開に向けた取組
(証券化商品の販売ルールづくりの支援、格付け会社規制の検討など)
○金融機関の流動性対策
(日本銀行における内外の金融機関への潤沢な流動性供給を期待)
○金融証券税制
(金融所得課税の一体化を推し進め、簡素な制度とすることで、個人投資家が投資しやすい環境を整備。上場株式等の配当等について、3年間現行税制を延長。金融所得課税の一体化の中で、少額投資のための簡素な優遇措置を創設。企業型確定拠出年金における個人拠出(マッチング拠出)を導入。)
なお、銀行等保有株式取得機構等の活用などについては、与党において引き続き検討する。

5.中小・小規模企業等支援対策

― 中小・小規模企業等の資金繰り対策を更に拡充するとともに、税制措置等による活性化を図る。
○「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」の活用・改善(再掲)
○「安心実現のための緊急総合対策」による資金繰り対策の早期実施
○緊急保証と政府系金融機関等による貸付について21 兆円規模の追加を実施(「安心実現のための緊急総合対策」における9兆円規模に加え、合計30 兆円規模に拡大)
・信用保証協会による緊急保証枠について、「安心実現のための緊急総合対策」における6兆円規模に加え、新たに14 兆円規模の追加を行い、合計20 兆円規模に拡大
・政府系金融機関等による貸付枠について、「安心実現のための緊急総合対策」にお
ける3兆円規模に加え、日本政策金融公庫等によるセーフティネット貸付の金利や貸付条件の見直しを含めた拡充、商工中金による金融危機対応業務の発動により新たに7兆円規模の追加を行い、合計10 兆円規模に拡大
○商工中金、政策投資銀行による金融危機対応業務の発動(再掲)
○日本企業の海外における事業に対する貸付の拡充
(日本政策金融公庫(国際協力銀行)の活用)
○民間金融機関による金融仲介機能の強化
(民間金融機関による資金供給の実態把握と円滑化の要請、中小・小規模企業向け融資の貸出条件緩和が円滑に行われるための措置と金融検査における徹底)
○建設業の資金調達の円滑化
(「地域建設業経営強化融資制度」の活用)
○中小企業対策税制、人材確保・研究開発支援
・中小企業に対する軽減税率の時限的引下げ
・中小企業の欠損金の繰戻し還付の復活
・人材確保・技術承継支援、研究開発支援
○中小企業の新技術の商品化・調達に向けた一貫支援
(新商品開発の補助・融資、製品性能評価、公的機関の導入、販路開拓など調達までつながる一貫支援)
○下請法、独禁法違反行為への厳正な対処
(違反行為への厳正な対処、下請保護情報ネットワークの活用)

6.成長力強化対策

― 企業活力を高める「成長力強化税制」の導入、世界最先端の研究開発促進等により日本経済の「底力」を飛躍に結びつける取組を進める。
○時限的に即時償却を可能とする省エネ・新エネ設備等の投資促進のための税制措置
○海外子会社利益の国内還流
○省エネ・新エネ対策、金属資源開発の推進等
(省エネ・新エネ設備等の投資促進税制(再掲)、国内クレジット制度の活用、レアメタル・鉄鉱石等の探鉱開発支援)
○原油市場安定化に向けた資源外交強化、石油製品価格等市場動向監視
○世界最先端の研究開発、イノベーション促進
(世界最先端の研究開発促進、ライフサイエンス分野の新事業創出に資する規制改革、技術情報等流出防止、イノベーション創造機構(仮称)・イノベーション特区(仮称))
○日本版ESOP(従業員株式所有制度)導入促進のための条件整備

掘ッ亙の底力の発揮

7.地域活性化対策
― 都市部との格差が拡大している地方の「底力」が発揮できるよう、高速道路料金の大幅引下げや地域経済の活性化、強い農林水産業づくりを進める。
○高速道路料金の大幅引き下げ
(国民生活や地域経済の支援や地球温暖化防止の観点から、(流効率化のため、平日、割引がなかった時間帯への割引の導入等、観光振興や地域の生活・経済支援のため、休日、地方部の長距離利用料金や、首都・阪神高速利用料金の引下げ等を当面平成22年度まで実施)
○地域企業再生、商店街活性化、ICT活用、PFI活用による地域経済活性化
(地域力再生機構の早期設立と第3セクター改革、商店街活性化、地域におけるICT基盤整備・ICT 利活用、放送デジタル化へ円滑移行、PFI 活用)
○観光立国の推進
(観光圏の整備促進、宿泊施設等受入れ体制の整備、出入国管理・査証発給体制整備等の観点を踏まえた訪日査証の見直し等)
○地域建設業の新分野進出や他産業との連携事業等の支援
○安全・安心な交通空間確保と物流コストの低減等に直結する交通ネットワーク整備
(通学路・交差点などの交通安全対策、鉄道駅のバリアフリー化、地域バス利便性向上、LRTプロジェクト、地方活力向上と国際競争力に資する道路ネットワーク整備、都市鉄道の整備等、貨物運送の中小零細企業対策、羽田空港・一般空港の機能高質化、スーパー中枢港湾、安全な海上交通路の整備等)
○地域づくりの推進
(美しく活力あるふるさとづくり、過疎地域への定住促進、地域の生活排水対策、国が整備した施設の油流出の防止、施設周辺の騒音対策等)
○農業の将来を担う経営の育成と雇用創出等
(水田フル活用に取組む農業者への支援、担い手に対する融資の円滑化、施設整備支援、新規に就農しようとする者の実践研修支援、企業的な農業経営を目指したネットワーク形成の支援、リース方式による最新生産方式の導入拡大)
○技術開発の加速と農商工連携、国産農産物の積極的活用等
(IT 技術等の活用促進、農業関係施設の省エネ推進、国産原料を安定的に活用する農商工連携への支援・地場農産物の販路拡大、畜産経営安定対策の緊急実施、エコツーリズムなどとの連携、きめ細やかな基盤整備の推進等、地域活性化に向けた農山漁村施策と関係省庁の施策連携)
○森林・林業の活性化
(国産材の住宅等への利用拡大、木質バイオマスの利用促進、森林における路網整備の推進等)
○水産業の活性化
(水産物の産地販売力の強化、漁業用資材・餌飼料の使用の改善合理化等による収益力強化の支援、水産基盤等の整備推進等)
○食に対する信頼確保等
(事故米穀とは知らずに販売・加工した善意の事業者への支援等)
○親切でわかりやすい農林水産行政の展開

8.住宅投資・防災強化対策

― 住宅投資を促進するとともに、公共施設の耐震化等の防災対策を進める。
○住宅ローン減税(個人所得課税)の延長・拡充等
(最大控除可能額の過去最高水準までの引上げ、環境・高齢化問題等のための省エネ・バリアフリー等の住宅リフォーム減税の検討)
○各種土地税制の延長・拡充等
○容積率の緩和
(高度な環境対策を行う建築物、優良な都市開発プロジェクト等)
○優良な都市開発プロジェクト支援、不動産の証券化、流動化の促進
○改正建築基準法・改正建築士法等の円滑な運用・施行に向けた対応
○公共施設の耐震化等防災対策
(学校や住宅等の耐震化の加速、公共施設の震災対策(空港、上下水道施設、廃棄物処理施設、矯正施設、官庁施設等)・グリーン化・エコ改修等、道路橋等老朽化の進む社会資本ストックの長寿命化、集中豪雨、津波・高潮対策の実施、気象施設の整備、都市公園の整備等による都市防災機能の向上、救助技術向上のための消防団資機材の充実、個室型店舗等の消防用設備等の自己点検実施支援等緊急防火対策の徹底)

9.地方公共団体支援策
― 地方公共団体が地域の活性化に積極的に取り組むことができるように支援する。
○道路特定財源の一般財源化に際し、1兆円を地方の実情に応じて使用する新たな仕組みを作る
○地方自治体(一般会計)に長期・低利の資金を融通できる、地方共同の金融機構の創設について検討する
○地域活性化等に資するきめ細かなインフラ整備などを進めるため、「地域活性化・生活対策臨時交付金」(仮称)を交付する
○景気後退や本対策に伴う地方税や地方交付税の原資となる国税5税の減収等について、地方公共団体への適切な財政措置を講じる

第3章 財源

○ 経済成長と財政健全化の両立

1.国費と事業規模
○本対策の財源については、赤字国債に依存しないこととし、そのための特例措置として、平成20年度における財政投融資特別会計から国債整理基金特別会計への繰入れを停止するなど財政投融資特別会計の金利変動準備金の活用等を行う。
○「生活対策」の財源である国費と事業規模は、別紙のとおりである。

2.持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラムの策定
○以下を「基本骨格」とする中期プログラムを、年末の税制改正においてとりまとめる。

⑴ 景気回復のための減税等
 世界経済の混乱から国民生活を守り、3年以内の景気回復を最優先で図るため、景気回復期間中に、減税措置及び生活支援定額給付金(仮称)を税制抜本改革を前提に時限的に行う。

⑵ 社会保障安定財源の確保
 社会保障制度については、その機能強化と効率化を図る一方、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げに要する財源をはじめ、国・地方を通じて持続可能な社会保障制度とするために安定した財源を確保する必要がある。
 このため、経済状況の好転後に、年金、医療、介護等の社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通しを踏まえつつ、給付に見合った負担という視点及びこれらの費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税制抜本改革を速やかに開始し、時々の経済状況をにらみつつ、2010 年代半ばまでに段階的に実行する。
 その際、国民の理解を深めるため、現在行われている歳出の無駄排除と行政改革を引き続き行うとともに、社会保障給付とその他の予算とは厳密な区分経理を図る。

shige_tamura at 09:56│Comments(0)TrackBack(0)clip!麻生太郎 

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